口蓋裂と口唇裂|新生児の500人に一人|ダウン症児など染色体異常の多くが合併

口唇裂・口蓋裂とは?

口唇裂と口蓋裂は、妊娠中に赤ちゃんの口唇や口の中が適切に形成されないことで起こる先天性の奇形です。これらの先天性異常を合わせて口顔裂と呼びます。口唇口蓋裂は日本人の新生児でもっとも多い奇形となっています。

口唇裂とは?

口唇口蓋裂

口唇は妊娠4週目から7週目の間に形成されます。妊娠中に赤ちゃんが成長すると、体の組織や頭の両側の特殊な細胞が顔の中心に向かって成長し、結合して顔を作ります。口唇や上顎、口蓋を形成するための突起といわれる組織がそれぞれ上方や側方から顔面や口蓋の中央部にのびてきて左右が結合することで口唇や口蓋や顔面ができていきます。口唇裂は、口唇を構成する組織が出生前に完全に結合しなかった場合に起こります。その結果、上唇に開口部ができます。唇の開口部は、小さな切れ目になることもあれば、唇を通って鼻に入る大きな開口部になることもあります。口唇裂は、唇の片側または両側にできることもあれば、唇の中央にできることもあります。口唇裂のある子供は口蓋裂を合併することもあります。口唇裂・口蓋裂あわせて口唇口蓋裂ともいわれます。口唇口蓋裂は歯ぐきも割れている顎裂を合併することもあります。
顔面の形成

口蓋裂とは?

口の屋根(口蓋)は、妊娠6週目から9週目の間に形成されます。口蓋裂は、妊娠中に口蓋を構成する組織が完全に結合しない場合に起こります。口蓋の前部と後部の両方が開いていたり、口蓋の一部だけが開いていたりとさまざまです。

口唇裂・口蓋裂の問題

口蓋裂の有無にかかわらず口唇裂があると多くの場合、摂食や発声に問題があり、耳の感染症(中耳炎)を起こすことがあります。また、聴力に問題があったり、歯に問題があったりすることもあります。
食べ物のみものを経口摂取したり、おしゃべりをしたり、息を吹いたり吐いた呼気や食物が鼻に逆流しないようにするために、のどの奥のさわったら骨のない柔らかいところ(軟口蓋)で蓋をする機能のことを鼻咽腔閉鎖機能と言いますが、口唇口蓋裂のお子さんではこの鼻咽腔閉鎖機能に問題が生じます。鼻咽腔閉鎖機能は口蓋の手術をしてすぐにできる場合もありますが、少しずつゆっくりできていく場合もあり、様々な経過をたどります。
また、新生児の時から哺乳力に問題があるため、歯科口腔外科の早期の介入が望まれます。あごの発育状態などから適切な時期に口唇形成術、口蓋形成術を行うことになります。手術は形成外科でする場合もあります。
口唇口蓋裂では構音障害もあるため、発声練習などの言語治療も必要になるでしょう。見た目、機能それぞれの問題に多角的にアプローチする必要があります。

口唇裂・口蓋裂の赤ちゃんの生まれる頻度(割合)は?

米国の報告では口唇裂・口蓋裂の赤ちゃんの生まれる頻度は690人に1人と推定されています。日本でも口唇裂・口蓋裂の発生頻度は,500~600人に1人と言われています。身体の外表奇形(外から見てわかる奇形)としては、どの国でも最も頻度が高いものです。白人の口唇裂・口蓋裂の頻度は1/1000と報告さえrているのに対し、日本では約2倍となっていることにも注意が必要でしょう。

口唇裂・口蓋裂は遺伝するの?

口唇口蓋裂は多因子遺伝であり、遺伝要因がすべてではありません。遺伝的要因と環境要因が合わさって発症します。しかし、血縁者に唇裂口蓋裂の方がいると、約10倍発生頻度が高くなります。

口唇烈・口蓋裂の原因と危険因子

ほとんどの乳児の口蓋裂の原因は不明です。中には、遺伝子染色体の変化が原因で口唇裂や口蓋裂になるお子さんもいます。口唇裂や口蓋裂は、遺伝子や他の要因の組み合わせによって引き起こされると考えられています(多因子疾患)。要因の中には母親がから摂取したものや妊娠中に摂取した特定の薬などがあります。

口腔裂を持つ赤ちゃんを産む可能性を高める要因

喫煙

妊娠中にタバコを吸う女性は、タバコを吸わない女性に比べて、顔面裂のある赤ちゃんを産む可能性が3~5割高くなると報告されています。催奇形性は、タバコの成分(カドミウム)と低酸素に関係しています。

糖尿病

妊娠前に糖尿病と診断された女性は、糖尿病を持っていない女性と比較して、口蓋裂の有無にかかわらず、口唇裂のある子供が生まれるリスクが高くなります

特定の薬の使用

-妊娠第1期(最初の3ヶ月間)に中顔面発達に特異性を持つ催奇形性薬剤を使用した女性は、これらの薬を使用しなかった女性に比べて、口蓋裂の有無にかかわらず、口唇裂のある赤ちゃんを産むリスクが高くなります。

フェニトイン、バルプロ酸ナトリウムトピラマートなどの抗けいれん薬 や、葉酸拮抗薬のメトトレキサートなどは、一般的に投与される薬物の一例であり、口唇裂・口蓋裂と関連しています。口唇裂・口蓋裂の相対的リスクは増加するのですが、薬物曝露後の絶対的リスクは依然として小さいものですので、原疾患の治療の利益と不利益を比較して投与を続けるかどうかを決定します。

口唇裂・口蓋裂とコルチコステロイドの使用との関連は、最近の研究では支持されていません。

ジアゼパムはマウスにおけるCPの発生率を増加させるが、ヒトの研究からは口唇裂・口蓋裂の増加は示されていません。

口腔裂を合併しやすい症候群

口唇裂・口蓋裂は特定の症候群の症状の一つとして見られることが多いものです。口唇裂・口蓋裂を合併する症候群は多数(200以上)あります。

● ピエール・ロバン(Pierre Robin)症候群
● ダウン症候群
● 13トリソミー(パタウ症候群):75%で顔面裂を合併します
● 18トリソミーエドワーズ症候群):15%で顔面裂を合併します
● 21トリソミーダウン症候群):約2%で顔面裂を合併します
● 22q11.2欠失症候群
● トリーチャー・コリンズ(Treacher Collins)症候群
● 第1第2鰓弓症候群
● ロイス・ディーツ症候群
などがあります。です。このような場合は、たとえば心臓の奇形などそれぞれの症候群に特徴的な他の重篤な疾患を合併するため、全体としての治療とのタイミングを見定めながら、口唇裂・口蓋裂の治療を行っていきます。

口腔裂に合併しやすい疾患

唇裂口蓋裂のお子さんの約15~20%が他の病気を合併しています。
よく合併している疾患としては以下のようなものがあります。
手足の異常:合指症、多指症
心奇形:心室中隔欠損症、ファロー四徴症
頭蓋の異常:頭蓋骨早期癒合症
耳介の異常:副耳、小耳症

口唇裂・口蓋裂の診断

口蓋裂、特に口蓋裂の有無にかかわらず口唇裂は、妊娠中に定期的な超音波検査で診断することができます。また、赤ちゃんが生まれた後に、口蓋裂を診断することも可能ですが、一部の口蓋裂(粘膜下口蓋裂など)は、生後にでは診断されにくいこともあります。粘膜下口蓋裂は口蓋に裂け目がないように見えるのですが、粘膜の下で断裂がおきているものです。

口唇裂・口蓋裂の管理と治療

口唇裂のある小児に対する治療は、口唇裂の重症度、お子さんの年齢やニーズ、関連する症候群や他の先天奇形の有無、などよって異なります。
口唇裂の術前術後
口唇裂を修復する手術は通常、生後数ヶ月で行われ、生後12ヶ月以内に行うことが推奨されています。口蓋裂の手術は、生後18ヵ月以内、可能であればそれ以前に行うことが推奨されています。多くの子どもたちは、年長になると追加の外科手術を必要とします。外科手術によって、お子さんの顔の見た目が改善され、呼吸、聴力、言語の発達が改善されることもあります。顔面裂のある子どもは、特別な歯科治療や矯正治療、言語療法など、他の治療を必要とする場合があります。

治療により、ほとんどの子供たちは健康的な生活を送ることができます。

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号