この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ブルーム症候群は、BLM遺伝子の2本ともに変化があると起こる、まれな常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。生まれる前からの小柄な体格、日光で出る顔の赤い発疹、免疫の弱さ、そして若いうちから多くの種類のがんになりやすいことが特徴です[1]。遺伝子検査で診断がつくと、何歳から何のがんを見張るか、放射線を使う検査をできるだけ控える、抗がん剤の量に気をつけるといった、その後の医療で大切なことがはっきりします。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご本人の健康管理だけでなく、ご家族の検査やこれからの妊娠を考えるときにも、ずっと役に立ちます。このページでは、症状・遺伝のしかた・保因者の意味と、BLM遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
ブルーム症候群の原因であるBLM遺伝子1つを調べ、遺伝子の小さな変化と、遺伝子の一部や全体がなくなる・増える変化(欠失・重複)を見つけます。2本ともに変化があれば診断の確定に、1本だけなら保因者とわかります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
生まれる前からの小柄さや、日光で出る顔の赤い発疹などからブルーム症候群が疑われる方、ご家族にブルーム症候群の方がいる方、妊娠を考えていてパートナーと保因者どうしかを知りたい方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は275,000円(税込)、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短くなります)。血液・唾液・頬の内側の粘膜で検査でき、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。診断がつけば、専門の医療機関でのがんの見張りの計画につながります。ご両親が保因者なら、次のお子さんの確率は1人ごとに4分の1です。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ブルーム症候群とは
ブルーム症候群は、BLM遺伝子の2本ともに働きを失う変化があると起こる、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。生まれる前から続く体の小ささ、日光に当たると出る顔の赤い発疹、免疫の弱さ、インスリンの効きにくさ(糖尿病)、そして若いうちから多くの種類のがんになりやすいことが特徴です[1][2]。
BLM遺伝子は、DNAの二重らせんをほどく酵素「RecQヘリカーゼ」の仲間をつくる遺伝子です。この酵素が働かないと、DNAの傷を直すしくみがうまく進まず、染色体が壊れやすくなります。そのため、細胞の中で姉妹染色分体どうしが入れかわる「姉妹染色分体交換(SCE)」が大きく増えるのが、この病気の目印です[2]。ブルーム症候群は、こうした「染色体が壊れやすい病気(染色体不安定症候群)」の代表とされています[2]。
主な特徴:体格・顔つき・皮膚・免疫
遺伝性疾患の解説書GeneReviews(2023年更新)は、米国のブルーム症候群レジストリ(登録制度)のデータをもとに、次のような特徴をまとめています[1]。
- ●体格:おなかの中にいるときから小さく(胎児発育不全)、出生体重の平均は男の子1,760g、女の子1,754gでした。大人の身長の平均は、男性149cm(128〜164cm)、女性138cm(115〜160cm)です[1]。
- ●顔の発疹:多くは1〜2歳ごろ、日に当たったあとに鼻と頬に赤い発疹が出ます。蝶が羽を広げたような形になることが多く、手の甲や前腕に出ることもあります。肌の色が抜けた部分やカフェオレ斑も、ほかの人より多くみられます[1]。
- ●顔つき:顔が細く、頬骨や下あごが小さめで、頭の形が細長いと表現されます。ただし、ブルーム症候群でない人と見分けがつかないこともあります[1]。
- ●免疫:血液中の免疫グロブリン(とくにIgMとIgA)が低いことが多く、子どものころはきょうだいや同年代より感染症が多いとされます。一方で、ふつうはかからない病原体による感染(日和見感染)は報告されていません[1]。
- ●糖尿病:レジストリの294人のうち51人(17.3%)が糖尿病と診断され、診断時の平均年齢は26.2歳(4〜48歳)でした[1]。
- ●妊娠のしやすさ:男性は、調べられた人の多くが無精子症か重い乏精子症でした。女性は妊娠できることが多い一方、早く閉経することがあります。レジストリでは女性11人が妊娠し、7人が合わせて11人の健康な赤ちゃんを出産しています[1]。
- ●知的な発達:大多数の方は、ふつうの範囲とされています[1]。
若いうちから多くの種類のがんになりやすい
がんは、ブルーム症候群でいちばん多い合併症で、いちばん多い死因です。がんは一般の人よりずっと若い年齢で起こり、1人に複数のがんが起こることも一般の人よりはるかに多いとされています[1]。レジストリでは、1954〜2022年に155人で合わせて251のがんが見つかっています[1]。
🩺 ブルーム症候群でみられたおもながん(ブルーム症候群レジストリ)
※GeneReviews(2023年更新)の表(1954〜2022年、251のがん・155人)より主なものを抜粋[1]。口・のどのがんは舌10・咽頭7・扁桃4・その他7の合計。このほか、骨髄異形成症候群が24人(中央値23歳)にみられ、少なくとも7人が急性骨髄性白血病に進んでいます。
寿命と見通し
GeneReviewsには、ブルーム症候群の平均寿命の数字は示されていません。がんが最も多い死因で、肺の働きが落ちて亡くなった方も6人報告されています[1]。平均の数字よりも大切なのは、一人ひとりで、何歳ごろからどのがんに気をつければよいかがわかっていることです。
子どもで起きたがんの治療については、フランスの全国の医療機関の調査で、ブルーム症候群でがんになった9人のお子さんを調べた報告があります。多くは抗がん剤の量を減らして治療され、重い合併症が起きた方や亡くなった方もいた一方で、5人は寛解(がんが見えなくなった状態)に至りました[4]。ブルーム症候群とわかったうえで治療を組み立てることの大切さを示す報告です。
どれくらいまれな病気か
ブルーム症候群は、どの集団でもまれな病気です。GeneReviews(2023年更新)によると、ブルーム症候群レジストリに知られている方は294人です[1]。
アシュケナージ系ユダヤ人では、blmAshと呼ばれる特定の変化(c.2207_2212delinsTAGATTC)の保因者が多く、米国のアシュケナージ系ユダヤ人で約157人に1人、イスラエルでは約111人に1人と報告されています[1]。これは、ある集団のもとになった少数の祖先がもっていた変化が受け継がれて広がる「創始者効果」によるものです。日本人の患者さん4家系を調べた研究では、blmAshは見つからず、別の変化(631delCAA)が比較的多いと報告されています[3]。調べた家系の数は少ないので、日本人の患者さんがみなこの変化をもつ、という意味ではありません。
日本の制度(2026年10月時点)
ブルーム症候群は、小児慢性特定疾病の対象疾病に含まれています。また、指定難病65「原発性免疫不全症候群」の「免疫不全を伴う特徴的な症候群」のひとつとして、ブルーム(Bloom)症候群が挙げられています。厚生労働省が示している診断基準では、症状からブルーム症候群が疑われるときに姉妹染色分体交換の頻度を調べ、確定診断にはBLM遺伝子の変化を確かめるとされています(いずれも2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センター・難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。病気そのもののくわしい解説は、ブルーム症候群(疾患の解説)をご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. 診断がつくと、何が変わるか(次の一手)
ブルーム症候群と診断がつくと、何のがんを何歳から見張るか、どんな検査や治療に気をつけるかが決まります。ブルーム症候群の原因そのものを治す治療はまだありませんが、日光から肌を守る、感染症をしっかり治療する、糖尿病を見張る、がんを早く見つける、といった備えが大切とされています[2]。名前がつくことで、こうした「次の一手」を、年齢に合わせて計画できるようになります。
がんの見張り:何を・いつから
GeneReviews(2023年更新)は、ブルーム症候群の方の見張り(サーベイランス)の例として、次のような検査を挙げています[1]。
🔍 ブルーム症候群で勧められている見張りの例
※GeneReviews(2023年更新)の推奨による[1]。実際の見張りの内容と間隔は、専門の医療機関で、年齢や体の状態に合わせて決めます。当院はがんの見張りや治療を行っていません。
放射線を使う検査・抗がん剤への注意
ブルーム症候群の方は、DNAを傷つける薬や放射線に弱い体質です。GeneReviewsは、放射線を浴びる量をできるだけ少なくし、必要のないレントゲンやCTは避け、使えるときはMRIや超音波検査を選ぶよう勧めています[1]。
がんの治療では、抗がん剤の量を減らすのがふつうで、ふつうの量の50%以下でないと耐えられないことが多いとされています。アルキル化薬と呼ばれる種類の抗がん剤や放射線治療は危険が大きいため、できるかぎり避けるとされています[1]。
⚠️ 病名を伝えることが、身を守ることにつながります
けがや病気でほかの医療機関にかかるとき、CTやレントゲンを撮る前に「ブルーム症候群です」と伝えておくことが大切です。病名がわかっていなければ、こうした注意をすることができません。診断を確かめておく意味の一つはここにあります。
日光・感染症・糖尿病への備え
日光については、とくに乳幼児期に顔などの肌を日に当てないことが勧められています。具体的には、日差しの強い時間(午前10時〜午後4時)は日陰を選ぶ、つばの広い帽子と日差しを防ぐ服、紫外線を防ぐサングラスを使う、SPF30以上の日焼け止めを1日2回(外にいるときは2〜3時間ごと)塗る、といった方法です[1]。感染症はしっかり治療すること、糖尿病は早めに見つけるための定期的な検査が大切とされています[1][2]。
3. 遺伝のしかたと保因者(常染色体潜性遺伝)
ブルーム症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝です。BLM遺伝子の2本ともに変化があると発症し、1本だけに変化がある人は「保因者」で、ブルーム症候群にはなりません[1]。2本の変化は、同じ変化が2つの場合も、違う変化が1つずつの場合(複合ヘテロ接合)もあります。
ご両親が保因者のとき:お子さんごとに4分の1
ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、ブルーム症候群になる確率は4分の1(25%)、保因者になる確率は2分の1(50%)、どちらの変化も受け継がない確率は4分の1(25%)です[1]。この確率は、お子さん1人ごとに同じです。上のお子さんがブルーム症候群だったからといって、下のお子さんの確率が下がることも上がることもありません。しくみは潜性遺伝と保因者のしくみでくわしく解説しています。
原因がわかれば、次のお子さんで同じことが起こる可能性がどれくらいあるか、そして次の妊娠でどう備えられるかを、具体的に考えられるようになります。保因者であることは誰のせいでもありません。遺伝子の変化は、誰もがいくつかもっているものです。
きょうだいが保因者である確率
ブルーム症候群の方のきょうだいで症状のない方は、3分の2の確率で保因者です。上の4分の1・2分の1・4分の1のうち、「ブルーム症候群になる4分の1」を除いた残りのうち、保因者が占める割合だからです[1]。きょうだいの方が将来、結婚や妊娠を考えるときには、ご自身が保因者かどうかを知っておくことが、計画の出発点になります。
ご本人が子どもを持つとき
ブルーム症候群のご本人のお子さんは、必ずBLM遺伝子の変化を1つ受け継ぎます。パートナーが保因者でなければ、お子さんは保因者になりますが、ブルーム症候群にはなりません。パートナーも保因者であれば、お子さん1人ごとに2分の1の確率でブルーム症候群になります。そのため、ご本人が子どもを持つことを考えるときは、パートナーが保因者かどうかを調べることが大切です。
保因者に健康への影響はあるか
GeneReviewsは、保因者全体としてのがんのリスクは、まだはっきりしていないとしています[1]。今の時点で、保因者の方に特別ながんの見張りが勧められているわけではありません。研究が進めば考え方が変わることもあるため、気になる方は遺伝カウンセリングで最新の情報をお伝えします。
妊娠の前に、保因者検査で調べられます
妊娠の前に保因者かどうかを知っておけば、出生前診断まで計画できます。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)・男性版714遺伝子・女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子は、いずれもBLM遺伝子を対象に含んでいます。ブルーム症候群だけでなく、ほかの潜性遺伝の病気の保因者かどうかも一度に調べられます。
すでに妊娠している方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子)があります。NIPTと一緒に受ける検査で、単独では受けられません。くわしい対象遺伝子は、遺伝カウンセリングでご提示します。
4. BLM遺伝子検査の概要
この検査では、BLM遺伝子1つについて、遺伝子の小さな変化と、遺伝子の一部や全体がなくなる・増える変化(欠失・重複)の両方を調べます。GeneReviewsによると、ブルーム症候群の原因となる変化のうち、遺伝子の配列を読む方法で見つかるのが96〜97%、欠失・重複を調べる方法で見つかるのが3〜4%です[1]。この検査はその両方を含んでいます。
配列は次世代シークエンサー(NGS)で読み、欠失・重複(コピー数の変化(CNV))もあわせて調べます。遺伝子検査の種類やわかることの全体像は、別のページで解説しています。
🧪 ブルーム症候群 BLM遺伝子検査の概要
※料金・日数・検体・オプションは当院の検査内容による。VUSは、病気との関係がまだよくわかっていない変化のことです。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
5. どんな人がこの検査を受けるとよいか
症状からブルーム症候群が疑われる方、ご家族にブルーム症候群の方がいる方、妊娠を考えていてブルーム症候群が気になる方に向く検査です。見た目や家族歴だけで判断できることは限られるので、まず遺伝カウンセリングで状況をうかがい、合う検査を一緒に決めます。
症状からブルーム症候群が疑われる方
- ●生まれる前から小さく、その後も身長・体重の伸びが小さいお子さん
- ●乳幼児期から、日に当たったあと鼻や頬に赤い発疹が出る方
- ●感染症を何度もくり返し、免疫グロブリンの低さを指摘された方
- ●若い年齢でがんになった方や、複数のがんにかかった方で、ほかの特徴もある方
- ●姉妹染色分体交換(SCE)の検査で、増えていると言われた方
ブルーム症候群の方では、SCEが1つの細胞あたり平均40〜100回と、ふつう(10回未満)よりずっと多くなります。ただしGeneReviewsは、SCEの検査だけでは診断に十分ではなく、診断はBLM遺伝子の2本ともに病気の原因となる変化を見つけることで確定するとしています[1]。SCEで疑われた方が、診断を確かめるために受ける検査がこの検査です。似た症状をもつ病気には、ファンコニ貧血や毛細血管拡張性運動失調症などがあり、見分けるためにも遺伝子の確認が役立ちます。
ご家族にブルーム症候群の方がいる方
お子さんがブルーム症候群と診断されたご両親、ブルーム症候群の方のきょうだい、ご親族にブルーム症候群の方がいる方です。ご家族で原因の変化がわかっていると、同じ変化をもっているかどうかを確かめられます。
お子さんがブルーム症候群とわかったご両親にとっては、原因を知ることが、次のお子さんの確率(1人ごとに4分の1)を知り、次の妊娠で出生前診断を計画するための出発点になります。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかを決められません。
この検査より別の検査が向いている場合
ブルーム症候群が強く疑われるなら、まずこの検査です。反対に、症状からまだ病気をしぼりきれない場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。料金・日数・遺伝子数は各検査ページによる。
6. 調べる遺伝子と関係する病気
この検査で調べるのはBLM遺伝子1つで、関係する病気はブルーム症候群です。
🧬 対象遺伝子と関係する病気
※病名と遺伝のしかたはOMIMとGeneReviews[1]による。
7. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、BLM遺伝子の大切な部分(タンパク質をつくる部分とその境目)の小さな変化と、遺伝子の一部や全体の欠失・重複です。一方で、どの遺伝子検査にも限界があります。
- ●小さな欠失・重複:遺伝子全体の欠失・重複は血液でも唾液・頬の粘膜でも、2つ以上続くエクソン(遺伝子の区切り)の欠失・重複は血液の検体で調べられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることはありますが、いつも見つけられるわけではありません。
- ●調べていない変化:染色体の一部が入れかわる変化(転座・逆位)、繰り返し配列が長くなる変化、遺伝子のはたらきを調節する部分(プロモーター)や、エクソンから20塩基より離れたイントロンの深い部分の変化は調べていません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態や、がんの組織の中だけにある変化を見つけるための検査ではありません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の時点では判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:変化が見つからなくても、この検査で見つけられない種類の変化が残る可能性があります。症状からブルーム症候群が強く疑われる場合は、SCEの検査や、ほかの病気との見分けを考えます。
見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。読み取りの質が十分でない場所は、サンガー法という別の方法で読み直します。
📊 読み取りの精度(くわしく知りたい方へ)
BLM遺伝子の調べる範囲の99%以上を、同じ場所を20回以上読む精度(≥99% at 20x)で読んでいます。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。
造血細胞移植を受けた方の検体
ほかの人から造血幹細胞移植を受けた方では、血液をつくる細胞がドナー由来に置きかわるため、ドナーの遺伝子の変化が持ち込まれることがあります。移植のあとの生まれつきの遺伝子の検査では、どの検体を使うかの判断が大切とされています[5]。移植を受けたことのある方は、検査の前に必ずお知らせください。
8. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。2つの変化が見つかったとき、1つだけのとき、見つからなかったときで、次にできることが違います。
2つの変化が見つかったとき:診断の確定
BLM遺伝子の2本ともに病気の原因となる変化が見つかれば、ブルーム症候群の診断が確定します[1]。第2章でご紹介したがんの見張り、放射線や抗がん剤への注意、日光・感染症・糖尿病への備えを、専門の医療機関で計画していただくことになります。小児慢性特定疾病や指定難病の申請でも、遺伝子で原因が確かめられていることが手がかりになります(第1章)。ご両親・きょうだいの方の検査もご相談いただけます。
1つだけ見つかったとき:保因者
BLM遺伝子の1本だけに変化が見つかった場合は、保因者です。ブルーム症候群にはなりません。パートナーも保因者かどうかで、お子さんの確率が変わるので、パートナーの検査(第3章の保因者検査)を考えます。
見つからなかったとき・VUSのとき
変化が見つからなかった場合、ブルーム症候群の可能性は低くなりますが、ゼロにはなりません(第7章)。症状に合わせて、染色体不安定症候群パネルやほかの検査を考えます。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
次の妊娠を考えるとき
ご家族のBLM遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠中に赤ちゃんで同じ変化があるかを調べる出生前検査は可能とされています[1]。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断をどう進めるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-Mが行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数
検査費用は275,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。血液・唾液・頬の内側の粘膜のどれでも検査でき、オンライン診療でもお受けできます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身の判断で先に検体を採らないでください。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、決められたキットと手順で採っていただく必要があります。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【名前がつくと、守り方が決まる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
ブルーム症候群は、病名がわかっているかどうかで、医療の受け方そのものが変わる病気だと考えています。放射線を使う検査を控える、抗がん剤の量に気をつける、何歳から何を見張るかを決める。どれも、名前がついていなければできないことです。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。生まれ持った遺伝子は一生変わらないからこそ、一度確かめておくことが、ご本人とご家族のこれからを守る土台になります。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。きょうだいの方が結婚や妊娠を考えるときの保因者検査から、妊娠したときの出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。知る・知らない、どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ブルーム症候群の平均寿命は?
遺伝性疾患の解説書(GeneReviews、2023年更新)には、平均寿命の数字は示されていません。がんが最も多い合併症で、最も多い死因とされています。若いうちから多くの種類のがんが起こりうるため、診断がついたら専門の医療機関で、年齢に合わせたがんの見張りを続けることが大切です。
Q2. ブルーム症候群はどうやって診断しますか?
BLM遺伝子の2本ともに、病気の原因となる変化が見つかることで診断が確定します。姉妹染色分体交換(SCE)が大きく増えていることも手がかりになりますが、GeneReviewsはSCEの検査だけでは十分ではないとしています。日本の指定難病の診断基準でも、確定診断にはBLM遺伝子の変化を確かめるとされています。
Q3. ブルーム症候群の保因者とは?保因者に症状はありますか?
保因者とは、BLM遺伝子の2本のうち1本だけに変化をもつ人のことで、ブルーム症候群にはなりません。保因者全体としてのがんのリスクは、まだはっきりしていないとされています。ご夫婦がともに保因者の場合、お子さんは1人ごとに4分の1の確率でブルーム症候群になります。
Q4. ブルーム症候群の顔つき・特徴は?
顔が細く、頬骨や下あごが小さめで、頭の形が細長く見えることがあります。乳幼児期から、日に当たったあと鼻や頬に赤い発疹が出やすいことも特徴です。ただし、顔つきだけでは区別がつかない方もいるため、気になる場合は遺伝子検査で確かめます。
Q5. 家族も検査を受けたほうがよいですか?
ブルーム症候群の方のご両親は、ふつうどちらも保因者です。症状のないきょうだいは、3分の2の確率で保因者です。結婚や妊娠を考えるときに、ご自身とパートナーが保因者かどうかを知っておくと、出生前診断まで計画できます。ご家族の検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
Q6. 染色体不安定症候群パネルとどちらを選べばよいですか?
ブルーム症候群が強く疑われる場合や、ご家族でブルーム症候群とわかっている場合は、このBLM遺伝子検査が向いています。染色体が壊れやすい病気のうちどれか絞りきれない場合は、BLMを含む7遺伝子を調べる染色体不安定症候群パネルが向いています。どちらがよいかは、遺伝カウンセリングで症状やご家族の情報をうかがって決めます。
Q7. 次の子どもで同じ病気になる確率は?出生前診断はできますか?
ご両親がともに保因者の場合、次のお子さんがブルーム症候群になる確率は、1人ごとに4分の1です。ご家族のBLM遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠中の出生前検査は可能とされています。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っていますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
🧬 一度の検査で、ご本人とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ブルーム症候群の原因がわかれば、がんの見張りや放射線・抗がん剤への注意といったご本人の医療だけでなく、ご家族の保因者検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Langer K, Cunniff CM, Kucine N. Bloom Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2006 (Updated 2023 Oct 12). [NCBI Bookshelf NBK1398]
- [2] Cunniff C, Bassetti JA, Ellis NA. Bloom’s Syndrome: Clinical Spectrum, Molecular Pathogenesis, and Cancer Predisposition. Mol Syndromol. 2017;8(1):4-23. [DOI: 10.1159/000452082](PMID: 28232778)
- [3] Kaneko H, Isogai K, Fukao T, et al. Relatively common mutations of the Bloom syndrome gene in the Japanese population. Int J Mol Med. 2004;14(3):439-442. [DOI: 10.3892/ijmm.14.3.439]
- [4] Pacaud C, Nazon C, Pages M, et al. Management of Paediatric Cancers Associated With Bloom Syndrome. Hum Mutat. 2025;2025(1):7065233. [DOI: 10.1155/humu/7065233]
- [5] Godley LA. Prioritization of patients for germline testing based on tumor profiling of hematopoietic malignancies. Front Oncol. 2023;13:1084736. [DOI: 10.3389/fonc.2023.1084736]
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