この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

エーラス・ダンロス症候群(エーラスダンロス症候群、EDS)の遺伝子検査は、22の遺伝子をまとめて調べ、原因の遺伝子がわかっている病型のどれに当たるかを見分ける検査です。EDSには13の病型があり、とくに血管型かどうかで、その後に気をつけることが大きく変わります。一方で、いちばん多いとされる関節型(過可動型・hEDS)は原因の遺伝子がまだわかっておらず、遺伝子検査では確定できません。病型を1回の検査で見分けられれば、原因がわからないまま検査を重ねる回り道を短くできる可能性があります。このページでは、この検査でわかること・わからないこと、結果のあとにできること、ご家族への影響を、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
原因の遺伝子がわかっているEDSの12の病型について、どの型に当たるかを22の遺伝子でまとめて調べます。血管型(COL3A1)かどうかも確かめられます。関節型(hEDS)は原因の遺伝子が不明なため、この検査では確定できません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
EDSが疑われて病型を確かめたい方、若くして動脈や腸、子宮の破裂などがあった方とそのご家族、ご家族がすでにEDSと診断されている方、妊娠を考えていて家族歴が気になる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液や頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。病型が決まれば、気をつけることやご家族に受け継がれる確率がわかります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. エーラス・ダンロス症候群(EDS)とは:13の病型と、遺伝子でわかる型・わからない型
エーラス・ダンロス症候群は、皮膚・関節・血管などを支える「結合組織」が弱くなる遺伝性の病気をまとめた呼び名です。2017年の国際分類では13の病型に分けられ、関節型(hEDS)以外の12の病型は、確定に遺伝子検査が必要とされています[1]。英語の Ehlers-Danlos syndrome の頭文字をとって、EDSとも呼ばれます。
コラーゲンと結合組織の病気
結合組織は、皮膚や関節、血管の壁などに強さとしなやかさを与えている組織で、その主な材料がコラーゲンです。EDSの原因となる遺伝子の多くは、コラーゲンそのものや、コラーゲンを作ったり整えたりするタンパク質の設計図です[2]。どの遺伝子のどんな変化かによって、皮膚が中心の型、血管が中心の型、関節が中心の型などに分かれます。
13の病型と原因遺伝子・遺伝のしかた
13の病型のうち12の病型は原因の遺伝子がわかっており、このページの検査の22遺伝子に、その12の病型の原因遺伝子がすべて含まれています。遺伝のしかたは病型によって、常染色体顕性(優性)遺伝のものと、常染色体潜性(劣性)遺伝のものがあります[2]。
🧬 EDSの13の病型と、このパネルで調べられるか
※病型・原因遺伝子・遺伝のしかたは文献[1][2]による。2020年の総説では、類古典型の2型(AEBP1)が暫定的な病型として加えられていますが[2]、AEBP1はこのパネルの対象に入っていません。
いちばん多い関節型(過可動型・hEDS)は、遺伝子検査で確定できない
関節型(hEDS)は、原因となる遺伝子がまだ見つかっていないため、遺伝子検査で診断を確定することはできません。診断は、診察で確かめる国際的な診断基準によって行われます[1][5]。遺伝子検査が役立つのは、「ほかの病型ではないこと」を確かめる場面です。関節型の診断基準には、ほかの病気を除外することが含まれており、その除外に遺伝子検査が使われることがあります[5]。
関節がやわらかく痛みなどの症状があっても、関節型の診断基準を満たさない方には、「関節可動性スペクトラム障害(HSD)」という診断名が使われます[2]。また、エーラス・ダンロス協会は、2017年以来はじめて、すべての病型とHSDの診断基準を改訂し、2026年12月に新しい基準を医学誌で公表する予定だと発表しています(2026年10月時点)。基準が変わったときは、このページも見直します。
何人に1人?病型ごとの頻度
EDS全体の正確な頻度はわかっていません。病型によって大きく違い、古典型は約2万人に1人、血管型は5万〜20万人に1人と推計されています[2][4]。すべての型を合わせて「少なくとも約5,000人に1人」という推計が2002年に示されていますが、その根拠ははっきりしないとされています[2]。
英国ウェールズの医療記録を調べた研究では、EDSまたは関節過可動症候群と診断されていた人は、2016〜2017年に人口10万人あたり194.2人でした[7]。ただし、これは「診断がついていた人」の数で、病型を遺伝子で確かめた数ではありません。関節型は、ウェールズの医療記録を調べた研究で約3,100人に1人とされ、見逃されている人がいるため実際より少ない可能性も指摘されています[5]。
寿命・治るのか:型によって見通しが大きく違う
寿命の見通しは病型によって大きく違い、もっとも注意が必要なのは血管型です。血管型の1,200人以上をさかのぼって調べた研究では、生存期間の中央値は50歳でした[3]。同じ研究では、男性は女性より約5年短く、遺伝子の変化の種類によっても差があるとされています[3]。
EDSの原因である遺伝子の変化そのものを治す治療は、2026年10月時点で確立していません。治療は、症状や合併症に合わせた管理と、合併症を早く見つけて備えることが中心です[3]。だからこそ、どの病型かを確かめることが、見通しを考え、気をつけることを決める出発点になります。
血管型(vEDS):動脈・腸・子宮の合併症と妊娠
血管型は、動脈の解離や破裂、腸(多くはS状結腸)の破裂、妊娠中の子宮破裂などが起こりうる病型です[3]。20歳までに大きな合併症を経験する人は約12〜24%とされ、多くの人は大きな合併症をきっかけに見つかり、その平均年齢は30歳でした[3]。
GeneReviewsでは、血管型の方に、超音波・MRアンギオグラフィー・CTアンギオグラフィーなど体への負担の少ない画像検査で動脈を確かめること(動脈に異常がなければ18〜24か月ごとが一般的)、血圧を定期的に測って高血圧を早く治療すること、計画した治療の一部としての場合を除いて、カテーテルを使う造影検査を避けることなどが挙げられています。ぶつかり合うスポーツや重い物を持ち上げることも避けるよう勧められています[3]。
妊娠については、家系の記録を調べた研究で、妊娠に関連した死亡が565回の分娩のうち30回(5.3%)でした。聞き取り調査では、分娩の14.5%で命にかかわる合併症があり、動脈の解離・破裂が9.2%、子宮破裂が2.6%でした。一方で、出産した女性としなかった女性で全体の生存に差はみられませんでした[6]。血管型とわかっている方の妊娠・出産は、ハイリスク妊娠に対応できるかかりつけの産科で計画することが大切です。当院は分娩を行っていませんので、妊娠前の遺伝カウンセリングと出生前診断の面からお手伝いします。
マルファン症候群・ロイス・ディーツ症候群との違い
マルファン症候群やロイス・ディーツ症候群も結合組織の遺伝性の病気ですが、EDSとは原因の遺伝子が違い、このパネルの22遺伝子には含まれていません。EDSは、ほかの結合組織の病気と症状が重なることがあり、症状だけで見分けるのが難しい場合があります[1]。大動脈の病気が気になる場合や、どの病気かしぼれない場合の検査の選び方は、第2章でご説明します。大動脈の病気の全体像は遺伝性大動脈疾患 総論で解説しています。
日本の制度:指定難病168(2026年10月時点)
エーラス・ダンロス症候群は、指定難病168に指定されています(難病情報センター、2026年10月時点で確認)。また、小児慢性特定疾病でも、結合組織異常症の中に「エーラス・ダンロス症候群」が含まれています(2026年10月時点で確認)。難病情報センターは、病型を診断するには診察と遺伝子検査が必要としています。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。病型を遺伝子で確かめておくことは、制度を使うときの手がかりにもなります。
病気そのものをさらに詳しく知りたい方は、エーラス・ダンロス症候群の病気そのものの解説(総論)もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. エーラス・ダンロス症候群の遺伝子検査を受けるとよい人・受けなくてよい人
EDSが疑われて病型を確かめたい方、血管型を心配している方とそのご家族、ご家族がすでにEDSと診断されている方に向く検査です。病名と病型がわかると、受けるべき検査、避けたいこと、使える制度が決まります。
こんな方に
- ●皮膚や関節の症状からEDSが疑われ、どの病型かを確かめたい方
- ●若くして動脈の解離・破裂、腸の破裂、妊娠中の子宮破裂などがあった方と、そのご家族
- ●ご家族がすでにEDSと診断されていて、ご自身も同じ変化をもっているか知りたい方
- ●関節型と言われているが、ほかの病型ではないことを確かめたい方
- ●結婚や妊娠を考えていて、家族歴が気になる方
血管型は、多くの方が大きな合併症をきっかけに見つかっています[3]。病型がわかっていれば、動脈の定期的な画像検査や血圧の管理、避けたい検査や運動、妊娠の計画など、次の一手を前もって決めておけます。
症状のないご家族が受ける場合(発症前の検査)
GeneReviewsは、血管型の方の第一度近親者(親・きょうだい・子)を評価することは、定期的な検査や早めの対処が役立つ人を見つけるうえで適切だとしています[3]。症状のない方が、将来の合併症の可能性を調べる検査は「発症前の検査(予測的検査)」にあたります。
当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえます。当院では、結果をお伝えしたあとも、遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。
お子さんの検査については、予防のための治療がないことから議論があるとされる一方、知っていることで適切な対処や危険を減らす行動につながる面もあると、GeneReviewsは記載しています[3]。お子さんの検査をいつ、どのように考えるかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。
関節型(hEDS)が疑われるだけのとき
関節型だけを確かめるためにこの検査を受けても、関節型の診断にはなりません。この検査で調べられるのは、関節型「以外」の病型です。皮膚が薄い・傷あとが広がる・血管の合併症がある・ご家族に別の病型の方がいるなど、ほかの病型を考える理由があるときに、除外のために役立ちます。そうした理由がなく、関節のやわらかさと痛みだけが気になる場合は、まず診察で関節型・HSDの診断基準に当てはまるかを確かめることが先になります。受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで一緒に考えましょう。
この検査と、ほかの検査の選び方
EDSが疑われ、病型を確かめたいなら、まずこの検査です。症状によっては、次の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類です。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
3. 調べる22遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、EDSの12の病型の原因遺伝子19個に、骨形成不全症などの原因となる3個(CRTAP・P3H1・FLNA)を加えた、22の遺伝子をまとめて調べます。同じ遺伝子の変化でも、変化の種類によって別の病気になることがあるため、関係する病気も一緒に示します。
🧬 エーラス・ダンロス症候群遺伝子パネル検査で調べる22遺伝子
※対象の22遺伝子は当院の検査内容による。EDSの病型と遺伝のしかたは文献[1][2]、そのほかの病気はOMIMの遺伝子と病気の対応(米国国立医学図書館の遺伝子データベース経由)による。COL1A1・COL1A2による骨形成不全症は常染色体顕性遺伝。
CRTAP・P3H1・FLNAは、EDSの13の病型の原因遺伝子ではありませんが、このパネルの対象に含まれています。これらの遺伝子に病気の原因となる変化が見つかった場合は、その遺伝子の病気として結果をご説明します。骨が折れやすいことが中心の方は、骨系統疾患パネル(521遺伝子)のように、骨の病気を広く調べる検査も選べます。
4. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、22の遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や小さな挿入・欠失)と、遺伝子全体などの大きな欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●関節型(hEDS):原因の遺伝子がわかっていないため、この検査では確定できません[5]。
- ●欠失・重複の範囲:遺伝子1つ全体の欠失・重複(頬の粘膜と血液の検体)と、2つ以上続くエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)を見つけられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、いつも見つかるとは限りません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べられない変化:染色体の一部が入れ替わる転座や逆位、同じ配列の繰り返しが長くなる変化、遺伝子の働きを調節する領域や、エクソンから離れたイントロンの奥の変化は調べられません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることを目的とした検査ではありません。
- ●似た配列の影響:よく似た配列(偽遺伝子など)があると、まれに変化を正しく読み取りにくいことがあります。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、EDSではないとは言い切れません。この検査で検出できない変化や、関節型の可能性、EDS以外の病気が残ります。
読み取りの精度の目安として、調べる範囲の99%以上を20回以上読み取る設計になっています。同じ場所を何度も読むことで、読み間違いを減らすためです。
5. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:病型が決まる
病気の原因となる変化が見つかり病型が決まると、何に気をつけて過ごせばよいかがはっきりします。たとえば血管型なら、体への負担の少ない画像検査で動脈を定期的に確かめること、血圧の管理、カテーテルを使う造影検査やぶつかり合うスポーツを避けること、妊娠をハイリスク妊娠として計画することなどが挙げられています[3]。指定難病などの制度を使うときにも、遺伝子で病型が確かめられていることが手がかりになります(第1章)。
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、これからの妊娠・出産の計画や、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立つ情報です。研究が進めば、同じ結果の意味が新しくわかることもあります。
陰性だったとき
原因が見つからなかった場合も、EDSが否定されたわけではありません(第4章)。関節型(hEDS)の可能性があれば、診察で診断基準に当てはまるかを確かめます。症状がEDSらしくない場合や、ほかの症状も多い場合は、全エクソーム検査(WES)などのより広い検査を考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の方針もあわせてご覧ください。
ご家族への影響(遺伝のしかた別)
ご家族に受け継がれる確率は、病型の遺伝のしかたで変わります。
- ●常染色体顕性(優性)遺伝の型(古典型・血管型・関節弛緩型・歯周型など):親が病型の原因をもっている場合、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます[3][4]。
- ●常染色体潜性(劣性)遺伝の型(皮膚脆弱型・心臓弁型・後側弯型・類古典型・筋拘縮型・脊椎異形成型・脆弱角膜症候群):ご両親がともに保因者の場合、妊娠ごとに4分の1の確率でお子さんが発症し、2分の1の確率で保因者になります。
古典型と血管型では、診断された方の約半数が、親から受け継いだのではなく、新しく起きた変化(de novo)によるものとされています[3][4]。ご両親が検査で変化をもっていなくても、次のお子さんの確率はゼロにはなりません。親御さんの卵子や精子のもとになる細胞だけに変化がある「性腺モザイク」がありうるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
潜性遺伝の型では、パートナーが同じ病気の保因者かどうかが大切になります。保因者検査(拡大版保因者スクリーニング)の対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。
妊娠を考えている方へ:出生前診断とNIPT
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断を行えるかは、病型の重さなどを踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
このパネルの22遺伝子のうち、COL1A1とCOL1A2は、当院のNIPTのダイヤモンドプラン・インペリアルプランでも調べられます。FLNAはインペリアルプランで調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性なら、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。一方、血管型の原因のCOL3A1や、古典型の原因のCOL5A1・COL5A2など、そのほかの19遺伝子はNIPTの対象に入っていません。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、その変化が書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)を用意することが勧められています[8]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるため、変化のある場所の両側の目印で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[8]。そのため、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要になります。指針の目安は、顕性遺伝の型なら患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人、潜性遺伝の型なら患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方です[8]。血縁者がいない場合、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで治療周期の受精卵や1個の精子を調べる方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。新しく起きた変化(de novo)で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[8]。古典型・血管型は約半数が新しく起きた変化によるため、とくに注意が必要です。
海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。臨床遺伝専門医としての判断として、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[9]。当院は、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でも、当院でご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)」に関する指針(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患では、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。
PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では症例ごとに学会が審査し、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[10]。米国生殖医学会の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[11]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
6. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。唾液や頬の内側の粘膜の検体なら、遠方の方もクリニックにお越しにならずに、オンライン診療で受けていただけます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液など
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療の場合は、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れになります。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、検体の採り方は遺伝カウンセリングでご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
7. 院長コラム
🩺 院長コラム【病型がわかって、はじめて計画が立てられる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。エーラス・ダンロス症候群は、「関節がやわらかい」「皮膚がよく伸びる」といった見た目の印象が似ていても、病型によって気をつけることがまったく違う病気です。とくに血管型かどうかは、本人とご家族のこれからを大きく左右します。見た目の印象だけで「たぶん関節型だろう」と決めてしまわず、確かめられる病型は確かめておくことが大切だと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. エーラスダンロス症候群は何人に1人くらいですか?
病型によって大きく違い、正確な数はわかっていません。古典型は約2万人に1人、血管型は5万〜20万人に1人と推計されています。すべての型を合わせて少なくとも約5,000人に1人という推計もありますが、その根拠ははっきりしないとされています。英国ウェールズの医療記録の研究では、EDSまたは関節過可動症候群と診断されていた人は人口10万人あたり194.2人でした。
Q2. エーラスダンロス症候群の寿命は?
病型によって大きく違います。もっとも注意が必要なのは血管型で、1,200人以上をさかのぼって調べた研究では、生存期間の中央値は50歳でした。血管型では、動脈の定期的な画像検査や血圧の管理などが勧められています。どの病型かを確かめることが、見通しを考える出発点になります。
Q3. エーラスダンロス症候群は治る病気ですか?
原因である遺伝子の変化そのものを治す治療は、2026年10月時点で確立していません。治療は、症状や合併症に合わせた管理と、合併症を早く見つけて備えることが中心です。病型によって気をつけることが違うため、病型を確かめておくことが大切です。
Q4. エーラスダンロス症候群は遺伝しますか?子どもに遺伝する確率は?
遺伝のしかたは病型によって違います。古典型・血管型などの常染色体顕性遺伝の型では、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。皮膚脆弱型・後側弯型などの常染色体潜性遺伝の型では、ご両親がともに保因者の場合、妊娠ごとに4分の1の確率でお子さんが発症します。古典型・血管型では、約半数が親から受け継いだのではなく新しく起きた変化によるものとされています。
Q5. 関節型(過可動型・hEDS)も遺伝子検査でわかりますか?
わかりません。関節型は原因となる遺伝子がまだ見つかっていないため、遺伝子検査で確定することはできず、診察で国際的な診断基準に当てはまるかを確かめて診断します。この検査は、関節型以外の病型ではないことを確かめるために役立ちます。
Q6. 検査で何も見つからなかったら、エーラスダンロス症候群ではないということですか?
そうとは限りません。関節型は遺伝子検査ではわからず、またこの検査で検出できない種類の変化もあります。結果をふまえて、診察による診断基準の確認や、より広い遺伝子検査を考えます。
Q7. 費用と結果が出るまでの日数は?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間で、至急オプション(55,000円)を使うと約7日短くなります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多いため、検査の段階からご相談ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
🧬 一度の検査で、病型とご家族のこれからを確かめる
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。エーラス・ダンロス症候群の病型がわかれば、ご自身の合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Malfait F, Francomano C, Byers P, et al. The 2017 international classification of the Ehlers-Danlos syndromes. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2017;175(1):8-26. [DOI: 10.1002/ajmg.c.31552]
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