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骨形成不全症・エーラス・ダンロス症候群合併2型(OIEDS2)とは?骨のもろさと関節のゆるみを併せ持つ希少な結合組織疾患

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

骨形成不全症・エーラス・ダンロス症候群合併2型(OIEDS2)は、COL1A2遺伝子の変異によって、骨がもろく折れやすい「骨形成不全症」の特徴と、関節がゆるく皮膚が伸びやすい「エーラス・ダンロス症候群」の特徴が、同じ人に重なって現れる、とてもまれな遺伝性の結合組織疾患です。近年は「COL1関連オーバーラップ障害(C1ROD)」という新しい考え方のもとで整理されつつあり、知的発達は通常保たれます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 COL1A2・骨形成不全症・EDS・臨床遺伝
臨床遺伝専門医監修

Q. 骨形成不全症・エーラス・ダンロス症候群合併2型(OIEDS2)とはどんな病気ですか?まず結論だけ知りたいです

A. COL1A2遺伝子の変異によって、骨がもろい「骨形成不全症」の特徴と、関節がゆるく皮膚が伸びやすい「エーラス・ダンロス症候群」の特徴が、同じ人に重なって現れる、常染色体顕性(優性)遺伝の希少な結合組織疾患です。近年は「COL1関連オーバーラップ障害(C1ROD)」として整理されつつあります。知的発達は通常保たれることも大切な特徴です。

  • 疾患の定義 → OMIM #619120、原因はCOL1A2遺伝子、I型コラーゲンの成熟の異常
  • 分子のしくみ → コラーゲンの「N末端」を切り落とせず、線維が乱れる
  • 主な症状 → 易骨折・青色強膜(OI側)+関節脱臼・皮膚過伸展(EDS側)
  • 鑑別診断 → 純粋なOI/EDS、関節弛緩型EDS、OIEDS1との違い
  • 診断・管理 → 結合組織疾患NGSパネルで確定し、多職種で長期管理

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1. OIEDS2とは:ふたつの病気が重なる希少疾患

骨形成不全症(こつけいせいふぜんしょう/OI)は、骨がもろく折れやすいことを主な特徴とする病気のグループです。一方、エーラス・ダンロス症候群(EDS)は、関節がやわらかく動きすぎる(過可動)こと、皮膚がよく伸びること、組織がもろいことを主な特徴とする病気のグループです。長いあいだ、このふたつは別々の病気として扱われてきました。

ところが、骨折を繰り返すうえに関節も極端にゆるい、あるいは皮膚が伸びやすいのに青色強膜(白目が青みがかる)もあるといった、両方の特徴を同時に持つ患者さんが報告されるようになりました。そこから「骨形成不全症とエーラス・ダンロス症候群のあいだには、はっきり線を引けない連続したスペクトラムがある」ことが分かってきたのです。

この重なり合った状態をもたらす原因のひとつが、第7染色体(7q21.3)にあるCOL1A2遺伝子の変異です。COL1A2が原因のものを「合併2型(OIEDS2、OMIM #619120)」[1]、よく似た病気でCOL1A1遺伝子が原因のものを「合併1型(OIEDS1、OMIM #619115)」[2]と呼びます。どちらも非常にまれな疾患で、いずれも親から子へ伝わりうる常染色体顕性(優性)遺伝の形をとります。

💡 用語解説:常染色体顕性(優性)遺伝

「常染色体」とは、性別を決める性染色体(X・Y)以外の染色体のことです。「顕性(けんせい)」は以前「優性(ゆうせい)」と呼ばれていた言葉で、2本ある染色体のうち片方に変異があるだけで症状が現れるという意味です。つまりOIEDS2では、変異した遺伝子をひとつ持つだけで発症し、その子どもへ伝わる確率は理論上50%です。ただし実際には、両親には変異がなく、お子さんで初めて生じる新生突然変異(de novo変異)で発症することも少なくありません。

こうした「OIとEDSの境界にある患者さん」は、医師から「骨折しやすいEDS」「関節がやわらかいOI」などと曖昧に扱われ、はっきりした診断名がつかないまま不安を抱えることが少なくありませんでした。そこで2020年、Morlinoらの研究グループは、COL1A1・COL1A2の変異による一連のオーバーラップ病態をまとめて「COL1関連オーバーラップ障害(COL1-related overlap disorder:C1ROD)」として整理することを提唱しました[4]。OIEDS2は、このC1RODという大きな枠組みの中に位置づけられます。

💡 用語解説:COL1関連オーバーラップ障害(C1ROD)

I型コラーゲンをつくるCOL1A1・COL1A2の特定の変異によって、骨形成不全症の特徴とエーラス・ダンロス症候群の特徴が混ざり合って現れる病態をまとめた、比較的新しい疾患概念です。OIEDS1(COL1A1)とOIEDS2(COL1A2)の両方が含まれます。「純粋なOIでも純粋なEDSでもない患者さん」を見落とさず、適切な遺伝子検査と長期管理につなげるために提案されました。

2. 原因遺伝子COL1A2と発症のしくみ

OIEDS2を理解する鍵は、I型コラーゲンという「体を支えるロープ」がどのように作られ、なぜそれが乱れるのか、という点にあります。

💡 用語解説:I型コラーゲンとプロコラーゲン

I型コラーゲンは、骨・皮膚・腱・角膜などに最も多く含まれる、体の「引っ張り強さ」を支える主役のタンパク質です。2本のα1鎖(COL1A1がつくる)と1本のα2鎖(COL1A2がつくる)が、三つ編みのように絡み合った三重らせん構造でできています。作られた直後は両端に大きなコブ(プロペプチド)が付いた「プロコラーゲン」という未完成の形で、このコブが切り落とされて初めて、線維へと束ねられる準備が整います。

プロコラーゲンが細胞の外に出ると、専用のハサミ(酵素)が両端のコブを切り落とします。N末端側を切る酵素を「N-プロテイナーゼ」と呼びます。コブが取れたコラーゲンは、規則正しく平行に並び、しっかりと束ねられた丈夫な線維になります。

💡 用語解説:N末端プロペプチドの切断(プロセシング)

コラーゲンの端に付いている「コブ(N末端プロペプチド)」を、酵素が正しく切り落とす作業のことです。この切断がうまくいかないと、コブが付いたままのコラーゲンが残ってしまい、線維をきれいに束ねる作業の邪魔になります。OIEDS2の発症の中心にあるのが、まさにこの「切り落とし不全」です。

OIEDS2では、COL1A2の三重らせん領域、それもN末端のハサミが入る場所のすぐ近くに変異が生じます[3]。重要なのは、変異が「ハサミそのもの」や「切れ目の位置」を壊しているわけではない、という点です。変異によって三重らせんの形がわずかに歪み、その歪みが物理的な障害物となって、N-プロテイナーゼがコブに近づけなくなるのです。その結果、コブ(N末端プロペプチド)が付いたままの未熟なコラーゲンが組織にたまり、線維が不規則で力学的にもろい網目になってしまいます。この「線維の乱れ」が、骨のもろさ(OIの特徴)と、皮膚の伸びやすさ・関節のゆるみ(EDSの特徴)の両方を同時に引き起こす、生化学的な正体です。

💡 用語解説:ミスセンス変異と新生突然変異(de novo変異)

ミスセンス変異とは、DNAの文字が1つ変わることで、設計図がコードするアミノ酸が別の種類に置き換わるタイプの変異です。タンパク質の形が少し変わり、機能に影響します(くわしくは ミスセンス変異の解説ページ もご覧ください)。

新生突然変異(de novo変異)とは、両親の精子・卵子、または受精の直後に新しく生じた変異で、両親には同じ変異がありません。OIEDS2でもこのタイプが知られています。

変異のタイプはミスセンス変異だけではありません。スプライシング(遺伝子の読み合わせ)の異常で、設計図の一部(エクソン)が読み飛ばされてしまうケースもあります。OIEDS2の表現型を示す家系を最初に詳しく報告したNathansonらの研究では、こうしたスプライシング異常によってコラーゲン鎖が短くなり、線維どうしを丈夫につなぐ「架橋(かけ橋)」の位置がずれてしまうことが示されました[8]。さらに、らせんの反対側(C末端側)の変異では、典型的なOI・EDSの症状に加えて短指症(指が短い)や強い歯の形成異常(象牙質形成不全)を伴う非典型例も報告されており[7]、変異が起こる場所によって症状の出方が連続的に変化することが分かってきています。

① 正常なコラーゲンの成熟 N端 C端 N端を切り落とす(成功) 規則正しく束ねられた丈夫な線維 ② OIEDS2でのコラーゲン N端 変異 C端 N端を切れない(失敗) コブが残り、線維が乱れる

正常なコラーゲンはN末端のコブが切り落とされて規則正しい線維になるが、OIEDS2では切れ目の近くの変異により切断が妨げられ、コブが残ったまま線維が乱れる。

3. 主な症状と表現型のスペクトラム

OIEDS2の症状は、全身の結合組織に幅広く現れます。患者さんによって、骨の症状が前面に出る人もいれば、関節や皮膚の症状が目立つ人もいて、その出方には大きな個人差があります。以下に、体の部位ごとに代表的な症状をまとめます。

🦴 骨・整形外科

  • 軽い力での骨折を繰り返す
  • 骨密度の低下(骨減少症・骨粗鬆症)
  • 低身長・軽度の長管骨の湾曲
  • 大頭症・前頭部の突出

🤸 関節・筋肉

  • 全身の関節がゆるい(過可動性)
  • 関節の脱臼を繰り返す(股・肩・膝など)
  • 乳児期の筋緊張低下(体がやわらかい)
  • 細く長い指(クモ状指)

🩹 皮膚

  • 皮膚がよく伸びる(過伸展性)
  • やわらかくパン生地のような質感
  • あざ・内出血ができやすい
  • 傷あとが薄く広がる(萎縮性瘢痕)

👁️ 目・耳

  • 青色強膜(白目が青みがかる)
  • 難聴(伝音性・感音性)
  • 耳硬化症

❤️ 心臓・血管

  • 動脈の脆弱性(まれに破裂のリスク)
  • 僧帽弁逸脱・二尖弁
  • 臍ヘルニア・鼠径ヘルニア

💡 用語解説:青色強膜(せいしょくきょうまく)

白目(強膜)を作っているコラーゲンが薄く、透明度が増すことで、その下にある層の色が透けて見え、白目が青みがかって見える状態です。骨形成不全症の代表的なサインのひとつで、OIEDS2でもしばしば見られます。「白目が青い」という見た目の手がかりが、骨や関節の症状とあわせて診断のヒントになります。

下の表は、典型的な骨形成不全症、典型的なエーラス・ダンロス症候群、そしてOIEDS2(C1ROD)で、それぞれの特徴がどのくらい強く・よく現れるかを比べたものです。OIEDS2が、両者の特徴を「ほどよく併せ持つ」位置にあることが見てとれます。

臨床的特徴 古典的なOI(I型・III型) 古典型・関節型EDS OIEDS2(C1ROD)
青色強膜 +++ ++
骨のもろさ・骨折 +++ + ++
関節の過可動 + +++ +++
皮膚の過伸展 +++ ++
萎縮性瘢痕(傷あと) ++ ++
低身長 ++ +
先天性骨折・著しい長管骨変形 ++

+++ 重度・高頻度/++ 中等度/+ 軽度・まれ/− ほとんどなし

知的発達は通常、正常に保たれます。また、子宮の中で多発骨折が起こるような最重症型のOI(II型など)の経過とは異なり、OIEDS2の骨折は歩き始めなどの軽い外力で起こることが多いとされています。これらは、ご家族が将来を見通すうえで重要なポイントです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「OIかEDSか」ではなく「両方かもしれない」と考える】

骨折を繰り返すお子さんは「骨形成不全症」、関節がやわらかいお子さんは「エーラス・ダンロス症候群」と、私たちはつい片方の引き出しに入れてしまいがちです。けれどもOIEDS2は、その両方の引き出しにまたがって存在する病気です。「骨折もするし関節も極端にゆるい」「皮膚が伸びるのに青色強膜もある」——この“ちぐはぐさ”こそが、実は最大の手がかりなのです。

どちらか一方の診断名で説明しきれない違和感を覚えたとき、COL1A1・COL1A2を含む検査へ一歩踏み出せるかどうかが、正確な診断までの時間を大きく左右します。このページが、その“違和感”を言葉にする助けになればと願っています。

4. 鑑別診断:似た病気との見分け方

OIEDS2は、症状が他の結合組織疾患と重なるため、見分けるのが難しい病気です。とくに次のような疾患との区別が重要になります。

純粋な骨形成不全症(OI)との違い

OIEDSにあってOIに乏しい特徴:関節の極端なゆるみ・反復脱臼、皮膚の過伸展、萎縮性瘢痕。

見分けるポイント:骨折だけでなく軟部組織のゆるさが目立つ場合はOIEDSを疑います。

古典型・関節型EDSとの違い

OIEDSにあってEDSに乏しい特徴:反復する骨折、青色強膜、骨密度の低下。

見分けるポイント:関節や皮膚の症状に加えて「骨がもろい」サインがあれば、ただのEDSと片づけないことが大切です。

関節弛緩型EDS(aEDS)との違い

aEDSも同じCOL1A2が関わり、先天性の股関節脱臼など関節の症状が前面に出ます。

見分けるポイント:OIEDSでは骨折・青色強膜などの「OI寄りの所見」がより目立ち、最終的には遺伝子検査での変異の位置と種類で区別されます。

なお、原因遺伝子がCOL1A1であるOIEDS1は、OIEDS2と臨床的に非常によく似ています。両者の最終的な区別は、どちらの遺伝子に変異があるかという遺伝子検査の結果によります。乳児期に骨がもろい別の疾患としてカフェー病(乳児骨皮質過形成症)も鑑別に挙がることがあります。

5. 診断と遺伝子検査の進め方

OIEDS2の診断は、特徴的な症状の組み合わせから疑い、遺伝子検査でCOL1A2の変異を確認するという流れで進みます。世界的に統一された診断基準はまだ確立されていませんが、C1RODのスクリーニング基準(Morlinoら)が、遺伝子検査へ進むべき患者さんを見きわける目安として役立ちます[4]

💡 遺伝子検査を考える主な手がかり(C1RODの考え方)

  • 青色強膜がある
  • 年齢・性別に応じた全身性の関節過可動性(Beightonスコアなどで評価)
  • とてもやわらかい皮膚、または明らかな皮膚過伸展
  • 思春期前の骨折歴・反復する関節脱臼・難聴・低身長・萎縮性瘢痕などの合併

出生後の診断:症状の確認と遺伝子検査

生まれたあとの確定診断は、診察・X線・聴力検査などで症状を確認したうえで、次世代シーケンサー(NGS)を使った遺伝子パネル検査でCOL1A1・COL1A2の変異を調べることで行います。当院では、エーラス・ダンロス症候群やマルファン症候群、骨形成不全症などをまとめて調べる結合組織疾患NGSパネル検査にCOL1A2が含まれており、関連疾患をまとめて評価できます。原因がしぼり込めない場合は、より広く調べるクリニカルエクソーム検査も選択肢になります。

診断で気をつけたいのが変異の解釈です。COL1A2に変異が見つかると、自動的に「ただの骨形成不全症」または「ただのエーラス・ダンロス症候群」と判断されてしまうことがあります。臨床遺伝専門医は、見つかった変異がN末端のプロセシングに関わる位置にあるかなどを、ACMG(米国臨床遺伝医学会)の基準と最新の論文に照らして慎重に評価し、OIEDS2(C1ROD)という重なり合った病態を見落とさないようにします。

出生前の診断:家系内で変異が分かっている場合

ご家族の中ですでにCOL1A2の変異が特定されている場合には、次のお子さんについて、絨毛検査・羊水検査による出生前の遺伝子診断が選択肢になります。既知の変異を狙って調べるため、確実性の高い診断が可能です。また、COL1A2を含む病態は、当院のNIPTダイヤモンドプランインペリアルプランといった単一遺伝子もカバーするNIPTで、出生前のスクリーニング対象として扱われることがあります。どの検査を選ぶかは、あくまでご家族の価値観に沿って決めていただくものです。

6. 治療と長期管理

現時点では、原因となる遺伝子やコラーゲンそのものを治す根本的な治療法はありません。そのため、症状をやわらげ、合併症を防ぎ、生活の質を保つことを目的に、整形外科・小児科・循環器科・耳鼻科・臨床遺伝科などが連携する多職種チームでの管理が大切になります。

骨と関節を守る

骨密度の低下や反復骨折に対して、骨を強くする薬(ビスホスホネート製剤など)が検討されることがあります。関節の脱臼を防ぐための理学療法(関節まわりの筋力強化)や、足の変形に対する装具も役立ちます。急に強い力がかかるコンタクトスポーツは控えることがすすめられます。

心臓・血管の見守り

血管型EDSほど頻度は高くないものの、動脈の脆弱性や心臓弁の異常が報告されています。診断後は定期的な心エコー検査に加え、必要に応じてMRA・CTAなどで血管を評価することがすすめられます。

皮膚・手術・麻酔

皮膚がもろいため、手術が必要なときは縫合がほどけたり、傷あとが広がったりしやすく、張力を抑える特別な縫合の工夫が必要です。全身麻酔の際は、関節の脱臼や首の不安定さにも細心の注意を払います。

長期的には、関節のゆるさや脱臼を繰り返すことで関節の軟骨がいたみ、若いうちから変形性関節症や慢性的な関節の痛みが問題になることがあります。痛みの管理を含め、年齢に応じて支援の内容を見直していくことが大切です。なお、生命予後そのものは、致死性の高い一部の病型とは異なり、適切な管理のもとで良好に保たれることが多いと考えられています。

7. 遺伝カウンセリングの意義

OIEDS2と診断がついたあと、ご家族には遺伝カウンセリングが大切です。医師は情報を提供する立場であり、特定の選択を勧めたり、安心を保証したり、不安をあおったりすることはありません。決めるのはご家族ご自身です。

  • 遺伝形式と再発リスク:常染色体顕性(優性)遺伝のため、患者さんご本人がお子さんを持つ場合、伝わる確率は理論上50%です。一方で、多くは新生突然変異(de novo変異)であり、その場合は両親に同じ変異はありません。ただし、生殖細胞だけに変異がある「生殖細胞モザイク」の可能性は完全には否定できません。
  • 予後についての情報:知的発達が通常保たれることや、生命予後が比較的良好なことは、長期的な見通しを立てるうえで大切な情報です。
  • 出生前診断の選択肢:家系内の変異が分かっていれば、絨毛検査・羊水検査による確実な出生前診断が可能です。受けるかどうかも含めて、中立的に情報をお伝えします。
  • 心理的サポート:希少疾患では情報が限られがちです。臨床遺伝専門医と継続的につながり、不安を整理しながら歩んでいくことが支えになります。

8. よくある誤解

誤解①「COL1A2変異=ただの骨形成不全症」

COL1A2の変異が見つかっても、すべてが純粋なOIとは限りません。N末端付近の特定の変異は、OIとEDSが重なるOIEDS2を引き起こします。変異の位置と種類の丁寧な解釈が必要です。

誤解②「関節がゆるいだけのEDSだ」

関節や皮膚の症状にばかり目が向くと、骨折しやすさという危険なサインを見逃すおそれがあります。「ゆるさ」と「もろさ」が同居していないかを確認することが大切です。

誤解③「最重症のOIと同じだ」

OIEDS2では、子宮内での多発骨折や著しい長管骨変形といった最重症型OIの特徴は通常みられません。表現型はOIからEDSまで連続的に幅広いのが特徴です。

誤解④「親が健康だから遺伝ではない」

OIEDS2には新生突然変異(de novo変異)で発症するケースがあり、両親に同じ変異がないことも少なくありません。「親が元気だから遺伝病ではない」という思い込みが診断を遅らせることがあります。

9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【正確な診断名が、その後の見守りを変える】

OIEDS2のように「骨形成不全症」と「エーラス・ダンロス症候群」のあいだにある病気は、長いあいだ、どちらの診断名にも収まりきらず、ご家族が宙ぶらりんの不安を抱えることが少なくありませんでした。C1ROD(COL1関連オーバーラップ障害)という枠組みが整理されてきたことは、そうした患者さんにきちんとした“居場所”を与える、大きな前進だと感じています。

診断名が定まると、骨を守る対策、血管の見守り、麻酔・手術の注意点といった、その人に必要な備えが一気に具体的になります。希少疾患だからこそ、ひとりひとりの診断の精度が、その後の人生の見通しに直結します。私が遺伝子疾患の情報発信を続けている理由の一つが、まさにここにあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. OIEDS2は遺伝しますか?

常染色体顕性(優性)遺伝の疾患で、患者さんご本人からお子さんへ伝わる確率は理論上50%です。一方で、両親に変異がない新生突然変異(de novo変異)で発症する例も知られています。次のお子さんについて気になる場合は、家系内の変異の有無を含めて、臨床遺伝専門医にご相談ください。

Q2. 骨形成不全症やエーラス・ダンロス症候群とどう違うのですか?

OIEDS2は、骨形成不全症の特徴(骨折・青色強膜)とエーラス・ダンロス症候群の特徴(関節のゆるみ・皮膚の伸びやすさ)を、同じ人が併せ持つ「重なり合った病気」です。どちらか片方の診断では説明しきれない症状の組み合わせがある点が、純粋なOIや純粋なEDSとの大きな違いです。

Q3. どうやって診断しますか?

青色強膜・関節過可動性・皮膚過伸展・反復骨折などの組み合わせから臨床的に疑い、COL1A1・COL1A2を含む結合組織疾患NGSパネル検査などでCOL1A2の変異を確認することで診断します。見つかった変異が「ただのOI/EDS」なのか「OIEDS2」なのかは、変異の位置や種類を専門医が丁寧に解釈して判断します。

Q4. 知的障害はありますか?

OIEDS2では、知的発達は通常正常に保たれます。これは将来の教育や社会参加を考えるうえで、ご家族にとって大切な希望の根拠になります。ただし、体の症状に応じたリハビリや発達支援が役立つ場面はあります。

Q5. 出生前にわかりますか?

家系内ですでにCOL1A2の変異が分かっている場合は、絨毛検査や羊水検査によって出生前に確実に調べることができます。受けるかどうかは、メリットと限界を理解したうえでご家族が決めるものです。中立的な立場で情報をお伝えしますので、臨床遺伝専門医にご相談ください。

Q6. 治る病気ですか?どんな治療をしますか?

現時点では根本的に治す治療法はなく、症状をやわらげ合併症を防ぐ管理が中心です。骨密度低下や骨折に対する薬、関節を守る理学療法、足の装具、血管や心臓弁の定期的な見守りなどを、多職種チームで組み合わせていきます。

Q7. 血管の合併症は心配したほうがよいですか?

血管型エーラス・ダンロス症候群ほど頻度は高くありませんが、OIEDS2でも動脈の脆弱性や心臓弁の異常が報告されています。重大な合併症を早く見つけるために、診断後は心エコー検査などによる定期的な評価がすすめられます。気になる症状があるときは早めに主治医に相談してください。

🏥 希少疾患の診断・遺伝カウンセリングについて

OIEDS2をはじめとする希少な遺伝性結合組織疾患に関するご相談は、臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにお気軽にお寄せください。

関連記事

参考文献

  • [1] OMIM #619120. Combined Osteogenesis Imperfecta and Ehlers-Danlos Syndrome 2 (OIEDS2). Johns Hopkins University. [OMIM]
  • [2] OMIM #619115. Combined Osteogenesis Imperfecta and Ehlers-Danlos Syndrome 1 (OIEDS1). Johns Hopkins University. [OMIM]
  • [3] OMIM *120160. Collagen, Type I, Alpha-2 (COL1A2). Johns Hopkins University. [OMIM]
  • [4] Morlino S, et al. COL1A1 and COL1A2 variants in Ehlers-Danlos syndrome phenotypes and COL1-related overlap disorder. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2023. [PubMed]
  • [5] COL1-Related Disorders: Case Report and Review of Overlapping Syndromes. Front Genet. 2021. [PMC8138308]
  • [6] Malfait F, et al. Helical mutations in type I collagen that affect the processing of the amino-propeptide result in an Osteogenesis Imperfecta/Ehlers-Danlos Syndrome overlap syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2013. [PMC3662563]
  • [7] A novel mutation in COL1A2 leads to osteogenesis imperfecta/Ehlers-Danlos overlap syndrome with brachydactyly. Mol Genet Genomic Med. 2019. [PMC6545454]
  • [8] NCBI MedGen. Combined osteogenesis imperfecta and Ehlers-Danlos syndrome 2 (OIEDS2). [NCBI MedGen]
  • [9] COL1A1- and COL1A2-Related Osteogenesis Imperfecta. GeneReviews. University of Washington. [GeneReviews]

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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