この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

角膜ジストロフィーの遺伝子検査は、角膜(黒目の表面の透明な膜)が濁る遺伝性の病気の原因を、24の遺伝子から一度に探す検査です。顆粒状角膜ジストロフィー・格子状角膜ジストロフィー・アベリノ角膜変性症(顆粒状角膜ジストロフィー2型)など、見た目が似ていても原因の遺伝子と遺伝のしかたは型ごとに違います。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかった型は、レーシックなど屈折矯正手術を受けるかどうかの判断、ご家族の検査、お子さんへの遺伝を考えるときまで、この先ずっと使える情報になります。このページでは、角膜ジストロフィーの原因・種類・遺伝する確率と、この検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 角膜ジストロフィーの遺伝子検査で何がわかりますか?
角膜ジストロフィーに関係する24の遺伝子をまとめて調べ、顆粒状・格子状・アベリノ型・斑状・膠様滴状などのうち、どの型の遺伝子の変化があるかを確かめます。型がわかると、遺伝のしかた(顕性か潜性か)もわかります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
眼科で角膜ジストロフィーと言われ型をはっきりさせたい方、ご家族に角膜ジストロフィーの方がいる方、レーシックなど屈折矯正手術を考えていて家族歴が気になる方、角膜移植やレーザー治療のあとに濁りが戻ってきた方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。顕性遺伝の型ならお子さんに伝わる確率は1人ごとに2分の1、潜性遺伝の型ならご両親がともに保因者のとき4分の1です。ご家族の検査や、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 角膜ジストロフィーとは:原因・症状・種類(角膜変性症と呼ばれることも)
角膜ジストロフィーは、遺伝子の変化によって角膜に異常な物質がたまったり、角膜の細胞の働きが落ちたりして、角膜が濁る病気のグループです。多くは両方の目に起こり、時間をかけて進みます。日本では「角膜変性症」「アベリノ角膜変性症」などと呼ばれることもあります。国際的な分類(IC3D分類、2024年の第3版)では、角膜のどの層に病気が起こるか、どの遺伝子が原因かで型を分けています[1]。
一般的な遺伝子検査のしくみや種類については、遺伝子検査(遺伝学的検査)とはで解説しています。このページでは、角膜ジストロフィーの遺伝子検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
原因:角膜のどの層に、何がたまるか
角膜ジストロフィーの原因は、角膜をつくるたんぱく質の遺伝子の変化です。角膜は外側から、上皮(表面)・実質(中間の厚い層)・内皮(内側の1層の細胞)に分かれます。上皮の病気では表面がはがれやすくなり、実質の病気では白い濁りがたまり、内皮の病気では角膜がむくんで見えにくくなります[1][2]。
もっとも多くの型に関わるのがTGFBI遺伝子です。同じTGFBI遺伝子でも、変化の場所によって、顆粒状角膜ジストロフィー1型・2型(アベリノ型)、格子状角膜ジストロフィー1型、ライス・ビュックラー角膜ジストロフィー、ティール・ベンケ角膜ジストロフィーと、別の型になります[2][6]。中国の漢民族の大きな集団を調べた研究では、遺伝子で原因がわかった角膜ジストロフィーの約91%がTGFBI遺伝子によるものでした[6](日本人の割合を示した数字ではありません)。
主な種類と原因遺伝子:顆粒状・格子状・斑状・膠様滴状・フックス
主な型と、原因の遺伝子・遺伝のしかたを表にまとめます。「顕性遺伝(優性遺伝)」は変化が1つあれば発症しうる遺伝のしかた、「潜性遺伝(劣性遺伝)」は両親から1つずつ、2つそろったときに発症する遺伝のしかたです。
👁️ 角膜ジストロフィーの主な種類と原因遺伝子
※分類と原因遺伝子はIC3D分類[1]と総説[2]、斑状角膜ジストロフィーの遺伝のしかたは文献[6]、膠様滴状は文献[9]による。フックス角膜内皮ジストロフィーのTCF4のリピート伸長は、この検査では調べられません(第5章)。
日本人に多い型:顆粒状角膜ジストロフィー2型(アベリノ角膜変性症)
顆粒状角膜ジストロフィー2型(アベリノ型)は、日本・韓国・米国で多く、ヨーロッパでは1型が多いとされています[2]。日本人の角膜ジストロフィーの遺伝子を調べた報告では、TGFBI遺伝子の124番目(R124)と555番目(R555)が変化の集中する場所で、その多くがアベリノ型の原因となるR124Hという変化でした[4]。韓国の報告でも、アベリノ型のR124Hがもっとも多い変化でした[5]。
膠様滴状角膜ジストロフィーも、日本で多いことが知られている型です。原因遺伝子(TACSTD2、旧名M1S1)を見つけた日本の研究では、調べた家系の変化の多くが同じ変化(Q118X)でした[9]。
見え方・症状と進み方、失明するのか
症状は型によって大きく違い、ほとんど気づかないまま過ごす型もあれば、若いうちから見えにくくなる型もあります。主な症状は、見えにくさ(かすみ)、まぶしさ、目の痛み、異物感、涙が出ることです。表面の上皮がはがれる型では、朝起きたときの強い痛みを繰り返すことがあります[1]。
見え方への影響の例として、再発性上皮びらんジストロフィーでは30代後半までに最大で半数の方に視力の低下が起こりうるとされています[1]。膠様滴状角膜ジストロフィーは進行性で、角膜全体が濁って視力が大きく下がることがあると、難病情報センターは説明しています(2026年10月時点で確認)。一方で、多くの型は時間をかけて進み、すべての方が見えなくなるわけではありません。濁りが強くなった場合は、眼科で、レーザーで角膜の表面を削る治療(治療的表層角膜切除術、PTK)や角膜移植が検討されます。ただし、TGFBI遺伝子の型では移植した角膜にも濁りが戻ることが多く、表面を削る治療のあとも数年以内に再発しやすいとされています[1]。
2. 角膜ジストロフィーは遺伝する?子どもに遺伝する確率は型で決まる
角膜ジストロフィーは遺伝する病気で、子どもに遺伝する確率は型(原因の遺伝子と遺伝のしかた)によってまったく違います。同じ「角膜ジストロフィー」でも、顕性遺伝の型と潜性遺伝の型では、お子さんへの確率もご家族の考え方も変わります。だからこそ、遺伝子で型を確かめることに意味があります。
顕性遺伝(優性遺伝)の型:お子さんに伝わる確率は50%
顆粒状角膜ジストロフィー・格子状角膜ジストロフィー・アベリノ型などのTGFBI遺伝子の型は、常染色体顕性(優性)遺伝です[2][6]。親のどちらかが変化をもっていれば、お子さんに伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1(50%)です。男の子か女の子かには関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。
潜性遺伝(劣性遺伝)の型:ご両親がともに保因者なら25%
斑状角膜ジストロフィー(CHST6)や膠様滴状角膜ジストロフィー(TACSTD2)は、常染色体潜性(劣性)遺伝です[6][9]。ご両親がともに変化を1つずつもつ保因者の場合、お子さんが発症する確率は4分の1(25%)、保因者になる確率は2分の1です。保因者の方は、ふつう症状がありません。患者さんのお子さんは、パートナーが保因者でなければ全員が保因者になり、発症はしません。
⚠️ 顕性の型でも「親が軽いから子も軽い」とは言えません
顕性遺伝の型では、同じ遺伝子の変化をもつ家族でも、濁りの出方や見え方には差があります。同じ型でも、角膜にけがや手術を受けたかどうかで進み方が変わることもあります(第3章)。ご家族の様子だけで先の見通しを決めず、型を確かめたうえで計画することに意味があります。
家族に角膜ジストロフィーの人がいて「自分もなるのでは」と不安な方へ
親やきょうだいが角膜ジストロフィーと言われ、「自分もいつか見えにくくなるのでは」「目のかすみは始まりなのでは」と不安を抱えながら暮らしている方もいます。ご家族の原因の変化がわかっていれば、ご自身がその変化を受け継いでいるかを、同じ変化だけ調べることができます。
ご家族で確認されている病的変異を調べ、受け継いでいないとわかった場合は、その変異による角膜ジストロフィーの発症は通常考えにくくなります(ほかの原因による角膜ジストロフィーや、ほかの目の病気を否定するものではありません)。受け継いでいるとわかった場合は、屈折矯正手術を避ける判断や眼科での定期的な診察など、第6章のような計画が立てられます。知らないでいることを選ぶのも、ご本人の大切な選択です。当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。検査の前後で、臨床遺伝専門医と時間をかけて考えることができます(発症前の検査(予測的検査)とは)。
3. 角膜ジストロフィーの遺伝子検査を受けるとよい人
角膜ジストロフィーの遺伝子検査は、角膜の濁りがあって型をはっきりさせたい方、ご家族に角膜ジストロフィーの方がいる方、屈折矯正手術や角膜の治療を考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは型が決められないことも多いので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
レーシックなど屈折矯正手術を考えている方(家族歴がある・角膜の濁りを指摘された)
アベリノ型(顆粒状角膜ジストロフィー2型)では、レーシック(LASIK)などで角膜に傷がつくと濁りが早く増えるため、国際的な分類(IC3D分類)は、レーシックを行うべきではない(禁忌)としています[1]。アベリノ型は角膜にけがや手術を受けると速く進み、典型的な格子状角膜ジストロフィーではこうした進み方はしないとされています[1]。総説でも、アベリノ型ではレーシックやほかの屈折矯正手術は禁忌とされています[2]。
韓国から報告された研究では、近視のレーシックのあとに角膜に顆粒状の濁りが出て遺伝子を調べた6人全員が、アベリノ型の変化を1つもっていました。濁りは手術から12か月以上たってから現れ、濁りが増えるにつれて視力が下がっていました。著者らは、アベリノ型の方にはレーシックを避けるべきだと結論しています[3]。韓国の別の報告でも、レーザー屈折矯正手術のあとに濁りが出た例が報告されています[5]。
ご家族に角膜ジストロフィーの方がいる場合、手術の前に遺伝子で型を確かめておくと、眼科で手術を受けるかどうかを判断する材料になります。当院は手術を行っていないため、検査の結果をもとに、手術の可否は眼科でご相談ください。なお、遺伝子検査で変化が見つからなくても、手術の可否は眼科の診察で判断されます。
眼科で角膜ジストロフィーと言われ、型をはっきりさせたい方
顆粒状・格子状などの型は、眼科の顕微鏡の検査(細隙灯顕微鏡検査)で見当がつくことが多いものの、見た目が似ている型もあります。遺伝子で原因がわかると、型が確定し、遺伝のしかた(顕性か潜性か)と、ご家族への影響まで具体的に考えられるようになります。IC3D分類も、型の確定に遺伝子の情報を使っています[1]。
角膜移植・PTKを考えている、または受けたあとに濁りが戻ってきた方
TGFBI遺伝子の型では、移植した角膜にも濁りが戻ることが多く、とくに顆粒状角膜ジストロフィー1型・2型では、格子状角膜ジストロフィーより早く、多く戻るとされています。一方、斑状角膜ジストロフィーは、移植後に戻ることが比較的少ないとされています[1]。型がわかれば、治療のあとの見通しを立てやすくなります。治療の方法は眼科でご相談ください。
この検査より別の検査が向いている場合
角膜以外の目の病気もある場合や、目以外にも症状がある場合は、別の検査のほうが向いていることがあります。症状から選ぶ目安を表にまとめます。
🔍 目の症状・病名から選ぶ遺伝子検査
※どの検査が合うかは、眼科の診断・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで、どの検査がよいかもご相談いただけます。
4. 調べる24遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、角膜ジストロフィーと、角膜に濁りや異常が出る病気に関係する24の遺伝子を、まとめて調べます。角膜だけの病気のほか、全身の病気の一部として角膜に症状が出る病気の遺伝子も含まれています。
💡 角膜だけの病気ではないこともあります
LCAT遺伝子の家族性LCAT欠損症は、角膜の濁りに加えて、貧血・たんぱく尿・腎臓の働きの低下が進み、透析が必要になることもある病気です[10]。GSN遺伝子の遺伝性ゲルゾリンアミロイドーシスは、格子状の角膜の濁り・皮膚のたるみ・脳神経の症状を主な特徴とする全身の病気で、30〜40代に発症するとされています[11]。角膜の検査として受けて、全身の病気の見張りにつながることがあるのも、この検査の大切な点です。
5. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、24の遺伝子の中の小さな変化(1文字の変化や、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の一部または全体がなくなったり増えたりする変化です。一方、遺伝子の外側や、繰り返し配列の長さの変化などは調べられません。
わかること
- ●遺伝子のたんぱく質をつくる部分と、その境目(スプライス部位)の小さな変化。次世代シークエンサーという方法で読み取ります
- ●遺伝子の一部または全体の欠失・重複(遺伝子1つ全体の変化、血液の検体では2つ以上続くエクソンの変化)。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します
- ●読み取りの質が十分でない部分は、サンガー法という別の方法で確かめます
くわしい技術情報(読み取りの深さ)
調べる範囲の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る深さ(20x)で読んでいます。同じ場所を何度も読むほど、読み間違いと本当の変化を見分けやすくなります。
わからないこと:フックス角膜内皮ジストロフィー(TCF4のリピート伸長)など
この検査は、繰り返し配列が長くなる変化(リピート伸長)を調べられません。フックス角膜内皮ジストロフィーの多くは、TCF4遺伝子の中の「CTG18.1」という3文字の繰り返し配列が長くなることで起こります。日本人のフックス角膜内皮ジストロフィーの方47人を調べた研究では12人(26%)に、ドイツの患者さん203人を調べた研究では162人(80%)に、この繰り返しの伸長がありました[7][8]。このリピート伸長はこの検査では見つからないため、フックス角膜内皮ジストロフィーの原因を調べたい方は、検査を選ぶ前にご相談ください。くわしくはフックス角膜内皮ジストロフィ3型(FECD3)で解説しています。
このほか、次のような変化も調べられません。
- ●染色体の一部が入れ替わる変化(転座)や向きが逆になる変化(逆位)
- ●遺伝子の働きを調節する部分(プロモーター)や、エクソンから20塩基より離れたイントロンの奥の変化
- ●体の一部の細胞だけにある変化(体細胞モザイク)
- ●1つのエクソンだけの欠失・重複(見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です)
- ●この24遺伝子以外の遺伝子の変化。角膜ジストロフィーの中には、原因の遺伝子がまだわかっていない型もあります
陰性・VUS(意義がまだわからない変化)のとき
病的な変化が見つからなくても(陰性)、角膜ジストロフィーではないとは言い切れません。上のように調べられない変化や、まだ見つかっていない原因があるためです。陰性のときも、眼科での診断と経過の観察が引き続き大切です。
また、病気との関係がまだはっきりしない変化(VUS)が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断を決めたり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進むと、のちに「病的」または「病気と関係ない」と分類が見直されることがあります。ご希望により、VUSを報告に含めない選択(無料)もできます。
6. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子の変化がわかると、型が決まり、手術や治療の選び方、ご家族の検査、お子さんを持つときの計画まで、具体的に考えられるようになります。わかったあとに何ができるかを、立場ごとにまとめます。
ご本人:型が決まると、手術・治療の選び方が変わる
- ●屈折矯正手術:アベリノ型などTGFBI遺伝子の型とわかれば、レーシックなどの手術を避ける判断の材料になります(第3章)。手術の可否は眼科でご相談ください
- ●角膜の治療:型によって、移植や表面を削る治療のあとに濁りが戻りやすいかの見通しが違います。治療の時期や方法は、眼科で型を踏まえて検討されます
- ●全身の見張り:LCAT遺伝子やGSN遺伝子の病気とわかった場合は、腎臓・神経・皮膚など目以外の診療科での確認が必要になります(第4章)
- ●目を守る:脆弱角膜症候群(ZNF469・PRDM5)とわかった場合、角膜が破れる危険がとても高いため、保護めがねの着用が勧められています[12]
症状のないご本人:家族歴で受けた方・保因者とわかった方
顕性遺伝の型の変化をもっているとわかった方は、今は症状がなくても、眼科での定期的な診察や、屈折矯正手術を受ける前の相談が役立ちます。潜性遺伝の型の保因者とわかった方は、ふつう症状はありません。お子さんへの影響を考えるときは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかが大切になります。パートナーの検査には拡大版保因者スクリーニングもあります(その遺伝子が対象かどうかは遺伝子一覧でご確認ください)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。
ご家族:症状のないきょうだい・親・お子さんを、同じ変化だけ調べる
原因の変化がわかれば、ご家族は24遺伝子すべてではなく、同じ変化があるかどうかだけを調べる検査で、ご自身の状態を確かめられます。症状のない方の検査は、ご本人が理解し、同意したうえで行います。あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんがこれからの目の健康や手術の判断を考える手がかりになります。
お子さんを持つとき:知ってから選べること
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の見通しや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください(羊水検査・絨毛検査)。
日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは、海外でPGT-Mを考えている方へ(受ける前に必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)で解説しています。もちろん、何もせずにそのまま出産することも、同じように尊重される選択です。
結果の説明とその後
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果の意味、ご家族への影響、次にどうするかを一緒に考えます。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、二次的所見の開示方針をご覧ください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
7. 日本の制度:指定難病になっている角膜ジストロフィー(2026年10月時点)
膠様滴状角膜ジストロフィーは、指定難病332に指定されています。難病情報センターでは、原因遺伝子をTACSTD2、遺伝のしかたを常染色体潜性(劣性)遺伝とし、日本で欧米より多いこと、角膜移植のあとも濁りが戻るため、手術を繰り返すことが多いことなどを説明しています(2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。このページで扱うほかの型が指定難病の対象になるかを含め、認定の基準や申請の方法は、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円で、24遺伝子を一度に調べ、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれでも、オンライン診療で受けられます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の提出唾液・粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
唾液・頬の内側の粘膜・血液は、いずれもオンライン診療で受けられます。多くの場合は唾液か頬の内側の粘膜で検査できます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血していただきます。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採らないでください。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【「まだ濁っていないから大丈夫」では決められない】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
角膜ジストロフィーは、型によって症状が出る年齢が子どものころから中年以降までさまざまで、症状が出る前は、ご自身が受け継いでいるかどうかを見た目で判断できない病気です。アベリノ型のように、レーシックで角膜に傷がついたあとに濁りが増える型もあります。「まだ濁っていないから」「家族は軽いから」という印象だけで手術や将来の計画を決めず、先に型を確かめておくことに意味がある、と私は考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで手術や結婚、妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 角膜ジストロフィーは遺伝しますか?子どもに遺伝する確率は?
遺伝する病気です。お子さんに伝わる確率は型によって違い、顆粒状・格子状・アベリノ型などの顕性遺伝の型では、お子さん1人ごとに2分の1です。斑状角膜ジストロフィーや膠様滴状角膜ジストロフィーなどの潜性遺伝の型では、ご両親がともに保因者のとき、お子さんが発症する確率は4分の1です。ご家族に角膜ジストロフィーの方がいることは、結婚できない理由にはなりません。型を調べれば、ご自身が変化をもっているか、お子さんへの確率がどれくらいかを具体的に知ることができます。
Q2. レーシックなど屈折矯正手術の前に、遺伝子検査を受けたほうがよいですか?
ご家族に角膜ジストロフィーの方がいる場合や、角膜の濁りを指摘されたことがある場合は、手術の前に型を確かめておくと判断の材料になります。アベリノ型(顆粒状角膜ジストロフィー2型)では、レーシックで角膜に傷がつくと濁りが早く増えるため、国際的な分類ではレーシックは禁忌とされています。手術を受けるかどうかは、検査の結果と診察をもとに眼科でご相談ください。
Q3. 角膜ジストロフィーは失明する病気ですか?治りますか?
型によって大きく違います。ほとんど気づかないまま過ごす型もあれば、膠様滴状角膜ジストロフィーのように角膜全体が濁って視力が大きく下がることがある型もあります。遺伝子の変化そのものを治す治療はありませんが、濁りが強くなった場合は、眼科でレーザーで表面を削る治療(PTK)や角膜移植が検討されます。TGFBI遺伝子の型では、治療のあとに濁りが戻りやすいとされています。
Q4. 角膜ジストロフィーと角膜変性症(アベリノ角膜変性症)は違う病気ですか?
「アベリノ角膜変性症」は、顆粒状角膜ジストロフィー2型(アベリノ型)を指して使われることが多い呼び名です。国際的な分類では、遺伝子の変化が原因で両方の目に起こる角膜の濁りを角膜ジストロフィーと呼び、TGFBI遺伝子の変化による顆粒状角膜ジストロフィー2型として分類しています。呼び名だけでは型がわからないこともあるため、遺伝子で確かめることができます。
Q5. フックス角膜内皮ジストロフィーも、この検査でわかりますか?
一部しかわかりません。フックス角膜内皮ジストロフィーの多くは、TCF4遺伝子の中の繰り返し配列(CTG18.1)が長くなることで起こりますが、この検査はこのリピート伸長を調べられません。COL8A2・ZEB1・SLC4A11・AGBL1など、ほかの遺伝子の小さな変化による一部の型は調べられます。フックス角膜内皮ジストロフィーの原因を調べたい方は、検査を選ぶ前にご相談ください。
Q6. 角膜ジストロフィーは指定難病ですか?
膠様滴状角膜ジストロフィーは指定難病332に指定されています(2026年10月時点、難病情報センターの情報)。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。ほかの型が対象になるかを含め、くわしくは難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
Q7. 角膜移植を受けたあとでも、遺伝子検査を受ける意味はありますか?
あります。遺伝子は角膜移植をしても変わらないため、血液や唾液で調べられます。型がわかれば、移植した角膜に濁りが戻りやすいかの見通しや、ご家族への影響、お子さんへの確率を考えられるようになります。TGFBI遺伝子の型では、移植した角膜にも濁りが戻ることが多いとされています。
Q8. 費用はいくらですか?保険は使えますか?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。至急オプション(55,000円)を付けると、結果までの期間が約7日短くなります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族の目のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。角膜ジストロフィーの型がわかれば、屈折矯正手術や治療の判断だけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では、検査の前後の遺伝カウンセリングを臨床遺伝専門医が行い、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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