この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

生まれつきの赤緑の色覚異常(色盲・色弱)は、X染色体にあるOPN1LW・OPN1MWという2つの遺伝子に関わる体質で、お母さんを通して息子さんに伝わることがある「X連鎖」のしかたで遺伝します。日本人では男性の約20人に1人にみられ、女性の約10人に1人が保因者とされています。ところが、女性が保因者かどうかは、ふだんの見え方の検査ではわからないことが多いのです。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の見え方を知るためにも、結婚や妊娠の前に、お子さんに伝わる確率を考えるためにも、この先ずっと使える情報になります。このページでは、色覚異常が遺伝する確率と、OPN1LW/OPN1MWを調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 色覚異常は遺伝しますか?この遺伝子検査で何がわかりますか?
生まれつきの赤緑の色覚異常は、X連鎖潜性(劣性)遺伝で遺伝します。この検査は、赤(L)と緑(M)の錐体の色素を作るOPN1LW・OPN1MWの2遺伝子の全遺伝子領域を調べ、必要に応じて欠失・重複(CNV)や構造変異(SV)の解析を追加します。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
お父さんや兄弟などに色覚異常の方がいて、ご自身(女性)が保因者かどうかを結婚・妊娠の前に知りたい方、小さいころから赤と緑の見分けにくさがあり、原因を遺伝子で確かめたい方です。保因者かどうかは、見え方の検査ではわからないことが多くあります。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は330,000円(税込)、結果までは検体の品質確認後、約3〜5週間です。検体はEDTA全血・唾液キット・抽出DNA(5〜10µg)・FFPE(条件あり)です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。保因者とわかった女性では、息子さん1人ごとに2分の1の確率で色覚異常が、娘さん1人ごとに2分の1の確率で保因者になることが伝わります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 色覚異常(色盲・色弱)は遺伝する?まず知っておきたいこと
生まれつきの赤緑の色覚異常は、X染色体にある遺伝子に関わる体質で、X連鎖潜性(劣性)遺伝のしかたで親から子へ伝わります。日本眼科医会は、色覚異常の遺伝子はX染色体にあり、色覚異常は「母親を中継して表にでてきます」と説明しています(2026年10月時点で確認)。
色覚異常とは:1型色覚・2型色覚の違い
目の奥の網膜には、色を感じる3種類の細胞(錐体)があります。赤(長い波長の光)に強く反応するL錐体、緑(中くらいの波長)に反応するM錐体、青(短い波長)に反応するS錐体です。それぞれの錐体には、光を受け取る色素(オプシン)があり、L錐体の色素はOPN1LW遺伝子、M錐体の色素はOPN1MW遺伝子から作られます。この2つの遺伝子はX染色体の端(Xq28)にあり、S錐体の色素の遺伝子は7番染色体にあります[1]。
日本眼科医会によると、L錐体(赤錐体)に異常がある場合を1型色覚、M錐体(緑錐体)に異常がある場合を2型色覚といいます。2型色覚では黄緑と橙、緑と茶や灰色、青と紫、ピンクと灰色などを混同しやすく、1型色覚ではそれに加えてピンクと水色も混同しやすく、赤が薄暗く見えるとされています。S錐体(青錐体)の異常は非常にまれです(2026年10月時点で確認)。
日本人での割合:男性の20人に1人、女性の500人に1人
日本眼科医会は、日本人では男性の20人に1人、女性の500人に1人に色覚異常があり、色覚異常の保因者は女性の10人に1人としています。型ごとでは、2型色覚が日本人男性の4%弱、1型色覚が1%強で、2型色覚がいちばん多い型です(2026年10月時点で確認)。決して珍しいものではなく、クラスに1人くらいの男の子がもっている計算になる、身近な体質の違いです。
なぜ男性に多いのか:X連鎖潜性(劣性)遺伝
女性はX染色体を2本、男性はX染色体とY染色体を1本ずつもっています。女性は2本のX染色体のうち1本だけに色覚異常の遺伝子がある場合、もう1本の遺伝子が働くため、通常は色覚異常が表に出ず「保因者」になります。ただし、X染色体不活化の偏りなどによって、保因者の女性にも色覚異常が現れることがあります[5]。男性はX染色体が1本しかないので、そのX染色体に色覚異常の遺伝子があると色覚異常になります。これが、色覚異常が男性に多い理由です。こうした遺伝のしかたをX連鎖遺伝(X連鎖潜性遺伝)といいます。ほかの遺伝のしかたとの違いは遺伝形式の解説をご覧ください。
生まれつき(先天)と、あとから起こる(後天性)色覚異常の違い
このページで扱うのは、生まれつきの赤緑の色覚異常です。目の病気などに伴って、大人になってから色の見え方が変わることもあります。大人になってから急に色の見え方が変わった、片方の目だけ見え方が違う、視力も落ちてきた、という場合は、遺伝子検査より先に眼科で目の状態を調べてもらうことが大切です。この検査は、後天性の原因(目の病気・薬など)を除外するものではありません。
色覚異常は治る?日常生活への影響
日本眼科医会は、色覚異常は治療で治るものではないとしています。一方で、色を間違えた経験を積むと、色以外の手がかりを使って色を判断する力が身についていくこと、自動車運転免許はほとんど問題なく取れることも説明しています。ただし、暗い中で小さな信号灯の色を瞬時に見分けることが求められる、航空機のパイロットや鉄道運転士、船舶航海士には適性がないとされ、就職のときは仕事の内容を具体的に調べておくことが大切とされています(2026年10月時点で確認)。ご自身がどの型で、どの色を見分けにくいのかを知っておくことが、進路や仕事を考えるときの助けになります。
2. 色覚異常が遺伝する確率:お父さん・お母さんから息子・娘へ
お父さんが色覚異常でも、お母さんが保因者でなければ、息子さんは色覚異常になりません。娘さんは全員が保因者(通常は色覚正常)になります。お母さんが保因者なら、息子さん1人ごとに2分の1の確率で色覚異常になります。お父さんのX染色体は娘さんにだけ、お母さんのX染色体は息子さんにも娘さんにも伝わるためです。
👪 色覚異常が遺伝する確率(お子さん1人ごと)
※日本眼科医会「色覚異常といわれたら」の遺伝形式(伴性劣性遺伝)の説明をもとに、お子さん1人ごとの確率として整理しました(2026年10月時点で確認)。同じ遺伝子の、同じ型の色覚異常が前提です。確率は、上のお子さんの結果で変わりません。「保因者」の欄の娘さんは通常は色覚正常ですが、X染色体不活化の偏りなどにより、まれに色覚異常が現れることがあります[5]。
お父さんが色覚異常の場合:息子には伝わらず、娘が保因者に
お父さんは、息子さんにはY染色体を、娘さんにはX染色体を渡します。そのため、お父さんの色覚異常の遺伝子は息子さんには伝わらず、娘さんは全員がお父さんの色覚異常に関わるX染色体を受け継ぎます。お母さんが保因者でない場合、娘さんは通常は保因者となりますが、X染色体不活化の偏りなどによって色覚異常が現れる場合もあります[5]。「父親が色覚異常だから、息子も色覚異常になる」と心配される方がいますが、息子さんが色覚異常になるかどうかは、お母さんが保因者かどうかで決まります。
お母さんが保因者の場合:息子さん1人ごとに2分の1
保因者のお母さんは、2本のX染色体のうちどちらか一方を、お子さん1人ごとに半々の確率で渡します。色覚異常の遺伝子が乗ったX染色体を受け取った息子さんは色覚異常に、娘さんは保因者になります。お母さんご自身の色覚は多くの場合正常なので、息子さんが色覚異常とわかってはじめて、保因者だったと気づくことも少なくありません。
「隔世遺伝」「孫に遺伝」と言われるのはなぜ?
色覚異常のおじいさんから、保因者の娘さん(お母さん)を通って、孫の男の子に色覚異常が現れることがあります。間の世代のお母さんは色覚が正常なので、一代とばして現れたように見え、「隔世遺伝」と言われます。実際には、色覚異常の遺伝子はおじいさん→お母さん→孫と、途切れずに受け継がれています。お母さんの父親(母方のおじいさん)や、お母さんの兄弟に色覚異常の方がいる場合は、お母さんが保因者の可能性があります。保因者とはどういう状態かも、あわせてご覧ください。
3. 女性が保因者かどうかは、見え方の検査ではわかりにくい
保因者の女性は、色覚の検査(見え方の検査)では正常と判定されることが多く、保因者かどうかを確かめるには、色の色素の遺伝子を調べる必要があります。ここが、この遺伝子検査がいちばん役に立つところです。
色覚異常の保因者かどうか、見え方の検査ではわからない理由
台湾南部の学生約19万人を調べた研究では、生まれつきの赤緑の色覚異常は男性の3.46%、女性の0.14%にみられました。この研究で、無作為に選んだ女性80人の色素の遺伝子を調べたところ、7人(8.8%)が保因者とわかりましたが、7人とも石原式の色覚検査は正常でした。著者らは、保因者を見つけられるのは色素の遺伝子を調べたときだけだとしています[2]。日本眼科医会も、2本のX染色体のうち1本だけに色覚異常の遺伝子がある女性は、色覚異常が表に出ない保因者になると説明しています。
女性の体の細胞では、2本のX染色体のうち1本が細胞ごとに働かなくなる「X染色体不活化」が起こります。保因者の女性の網膜では、この働きによって、正常な色素の遺伝子が働く錐体と、変化した遺伝子が働く錐体が混ざっています[1]。正常な錐体が働くため、見え方の検査では違いが出にくいのです。ただし、保因者の色覚には個人差があり、英国の研究では、保因者の女性は色覚検査表の成績が色覚正常の女性より劣る傾向がみられました[4]。働くX染色体の割合が大きく偏ると、まれに保因者の女性にも症状が出ることが報告されています[5]。見え方の検査の結果だけでは、保因者かどうかを決められません。
保因者かどうかを遺伝子で確かめる意味
ご自身が保因者かどうかがわかれば、将来のお子さんに伝わる確率を「かもしれない」ではなく、具体的に考えられるようになります(第2章の表)。保因者でなかったとわかれば、ご家族の色覚異常について、ご自身からお子さんに伝わることを心配する理由の1つがなくなります。保因者だったとわかれば、お子さんが小さいうちに色覚の検査を受けて、早めに見え方の特徴に合わせた工夫を始めることもできます。ご家族に色覚異常の方がいる女性の場合、あなたの1回の検査結果は、姉妹や娘さんがご自身のことを考える手がかりにもなります。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
ご家族に色覚異常の方がいて保因者かどうかを知りたい女性、小さいころから赤と緑の見分けにくさがあり原因を遺伝子で確かめたい方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは、保因者かどうかはわかりません。
結婚・妊娠の前に、保因者かどうかを知りたい女性
お父さん・兄弟・母方のおじいさんやおじさんなどに色覚異常の方がいる女性は、ご自身が保因者の可能性があります。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。妊娠の前に保因者かどうかを知っておけば、お子さんに伝わる確率を知ったうえで、家族の計画を考えることができます。パートナーの方が色覚異常の場合は、娘さんが色覚異常になる可能性があるかどうかも、あなたが保因者かどうかで変わります(第2章の表)。
見分けにくさがあり、原因や型を確かめたい方
幼いころから一貫して赤と緑の見分けが難しい方、ご家族にも同じような見え方の方がいる方で、遺伝子の面から原因を確かめたい方です。日本眼科医会は、1型と2型を正確に区別するにはアノマロスコープという特殊な器械が必要としています。遺伝子の結果は、眼科での見え方の検査の結果とあわせて、型や原因を考える手がかりの1つになります。
お子さんが色覚異常とわかったご家族
息子さんが色覚異常とわかった場合、お母さんが保因者かどうかは、次のお子さんや、娘さんの将来を考える手がかりになります。ご家族のどなたかの原因の変化がわかっていれば、ほかのご家族は、その変化があるかどうかを確かめる形で検査を考えられます。
この検査を受けなくてよい場合・別の検査が向いている場合
色の見分けにくさのほかに、視力が低い、まぶしさが強い、目が揺れる(眼振)といった症状がある場合は、赤緑の色覚異常とは別の病気を考えます。たとえば1色覚(全色盲)は、視力の低下・眼振・まぶしさが特徴で、CNGA3・CNGB3などの別の遺伝子が原因です[3]。
🔍 見え方の症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、見え方の検査の結果・眼科の所見・ご家族の情報で変わります。遺伝子検査で調べる網膜の病気全体については遺伝性網膜ジストロフィで解説しています。
5. この遺伝子検査で調べる2つの遺伝子と、わかる色覚の型
この検査では、OPN1LWとOPN1MWの2遺伝子の全遺伝子領域を解析し、必要に応じて欠失・重複(CNV)と構造変異(SV)の計算解析を追加します。
🧬 調べる遺伝子と、関係する色覚の型
※対象遺伝子は当院の検査内容による。関係する型と遺伝のしかたはOMIM(OPN1LW:303900・303700、OPN1MW:303800・303700)と文献[1]による。
OPN1LW・OPN1MWは、似た遺伝子が並んでいて読みにくい
OPN1LWとOPN1MWは、X染色体の上にほぼ同じ配列の遺伝子が縦に並んだ形(タンデムな並び)をしていて、一般的な遺伝子検査では読みにくい場所です。2つの遺伝子の塩基配列は98%以上が同じで[1]、一般的な解析では、読み取ったDNAがどちらの遺伝子のものかを割り当てにくくなります。
さらに、この場所には次のような特徴があります。
- ●遺伝子の本数が人によって違う:並んでいる遺伝子の本数や構成には個人差があります(コピー数の違い=CNV)。
- ●2つの遺伝子が混ざった「ハイブリッド遺伝子」ができる:似た配列どうしの間で、卵子ができるときの組換えがずれて起こると(非対立遺伝子相同組換え)、前半がOPN1LW・後半がOPN1MWのような混ざった遺伝子や、遺伝子の欠失ができます。赤緑の色覚異常の多くは、こうした遺伝子の組み換わりで起こります[1]。
- ●どの位置の遺伝子に変化があるかが大事:並んだ遺伝子のうち、ふつう働くのは先頭の2つだけです[1]。そのため、変化の有無だけでなく、並びのどこにあるかで影響が変わることがあります。
- ●大きな構造の変化が原因になることがある:DNAの大きな欠失・重複・並び替えなど(構造変異=SV)が関わることもあります。
この検査の調べ方:全遺伝子領域の解析と、必要に応じたCNV・SV解析
この検査では、OPN1LW・OPN1MWの全遺伝子領域を対象に、塩基配列の変化などを調べます。この場所では遺伝子の本数の変化(CNV)や構造の変化(SV)が関わることがあるため、医学的な必要性に応じて、CNV・SVの計算解析を追加できます。そのため、検査法・解析の組み立て・結果の解釈(検査の技術的な限界と、医学的な限界の区別)が特に大切になります。どの解析を追加するかは、遺伝カウンセリングで見え方の特徴やご家族の情報をうかがったうえでご相談します。
青錐体1色型色覚・1色覚(全色盲)との違い
同じOPN1LW・OPN1MWの場所の変化でも、赤と緑の両方の色素の遺伝子が働かなくなると、青錐体1色型色覚という、より見え方への影響が大きいまれな状態になります。原因として、遺伝子の働きを調節する領域(遺伝子座制御領域)の欠失や、1本を残して遺伝子が欠失したうえで残った遺伝子が働かなくなる変化が知られています[1]。一方、1色覚(全色盲)は常染色体潜性遺伝の別の病気で、CNGA3・CNGB3・ATF6・GNAT2・PDE6C・PDE6Hの遺伝子が原因です[3]。1色覚が疑われる場合は、1色覚の遺伝子検査パネルが向いています。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、OPN1LW・OPN1MWの塩基配列の変化と、追加解析を行った場合の遺伝子の本数や構造の変化です。一方で、この場所は構造が複雑なため、遺伝子検査の中でも限界がはっきりある検査です。
- ●どのコピーにある変化か:解析の条件によっては、変化が並んだ遺伝子のどれにあるのか、遺伝子がどの順番で並んでいるのかを確定できないことがあります。
- ●追加の解析が必要なことがある:CNVやSVなど、変化の種類によっては追加の解析が必要になります。
- ●女性の結果は男性より複雑:女性はこの遺伝子を2本のX染色体にもっているため、変化がどちらのX染色体にあるかを判断するのが、男性より複雑になることがあります。ご家族の検査結果や家系の情報をあわせて評価します。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):色覚に影響するかどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:変化が見つからなくても、見え方の検査の結果と食い違わないことがあります(陰性=色覚異常ではない、とは限りません)。
- ●調べていない原因:この検査はOPN1LW・OPN1MWを対象にしたもので、青(S錐体)の色素の遺伝子や、1色覚など別の病気の遺伝子、後天性の原因(目の病気・薬など)は調べていません。
結果は、眼科での見え方の検査の結果やご家族の情報とあわせて解釈することが大切です。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果の意味・限界・ご家族への影響・これからの方針を、一緒にご説明します。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
色覚異常の原因の変化が見つかったとき
見え方の特徴を遺伝子の面から裏づけることができ、ご家族の中で同じ変化があるかを調べる手がかりになります。症状のある男性で原因の変化がわかれば、お母さんや姉妹が保因者かどうかを、その変化にしぼって確かめることもできます。
病的変異が見つかったら、次にできること
わかるだけでは意味がありません。結果がわかったあとに何ができるかを、立場ごとにまとめます。
- ●ご本人(見分けにくさのある方):どの錐体の色素に関わる変化かがわかると、眼科の検査結果とあわせて、見分けにくい色の組み合わせを知る手がかりになります。進学・就職の前に、仕事の内容と見え方の特徴を照らし合わせて考えることもできます。
- ●保因者とわかった女性:ご自身の見え方に特別な対応が要らないことが多いです。お子さんへの確率は、息子さん1人ごとに2分の1で色覚異常、娘さん1人ごとに2分の1で保因者です(第2章の表)。パートナーが色覚異常かどうかで、娘さんの確率が変わります。
- ●子どもを持つときの選択肢:知ったうえで、そのまま自然に妊娠・出産を迎えることも、もちろん選べる選択肢です。生まれたお子さんが色覚異常の可能性があるとわかっていれば、早いうちに眼科で色覚の検査を受け、見え方に合わせた環境づくりを始められます。
- ●ご家族:原因の変化がわかれば、お母さん・姉妹・娘さんなどが同じ変化をもっているかを、ピンポイントで調べられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行います。
- ●当院でのその後:結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご家族の検査をどうするか、妊娠をどう考えるかを一緒に考えます(遺伝カウンセリング料は30分22,000円・税込)。
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることも、技術的には考えられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断します。色覚異常の多くは日常生活を工夫して送れる体質の違いであることも含めて、妊娠を考えている段階からご相談ください。
変化が見つからなかったとき
保因者かどうかを調べた女性で、ご家族で見つかっている変化がなかった場合は、その変化についてはお子さんに伝わる心配をしなくてよいことになります。ご家族の変化がわかっていない状態で何も見つからなかった場合は、この場所の解析の限界(第6章)があるため、「保因者ではない」と言い切れないことがあります。見分けにくさのある方で変化が見つからなかった場合は、見え方の検査の結果とあわせて、ほかの原因や追加の解析を考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
妊娠中の方・パートナーと一緒に考えたい方
色覚異常以外の遺伝の病気について、カップルで保因者かどうかを調べたい方には、拡大版保因者スクリーニングがあります。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子、単独では受けられません)もあります。ただし、どちらもOPN1LW・OPN1MWは対象外なので、色覚異常の保因者かどうかは、このページの検査で調べます。結婚相手と一緒に受ける保因者検査の考え方は、結婚相手と受けたい保因者検査で解説しています。
8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は330,000円(税込)、結果までは検体の品質確認後、約3〜5週間です。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
お支払い・検体の提出キットはお支払い後に
▶
結果のご説明約3〜5週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
検体の採り方は、検査の目的に合わせて最適な方法をご案内します。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。検体の取り違えや、検査に使えない品質の検体になることを防ぐためです。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
9. 院長コラム
🩺 院長コラム【「たぶん保因者ではない」では、計画は立てられない】
色覚異常は、日本人男性の20人に1人にみられる、ごく身近な体質の違いです。病気というより、色の感じ方の個性のひとつと考えてよいものだと思います。それでも、お父さんや兄弟に色覚異常の方がいる女性が、「自分の子どもはどうなるのだろう」と気にかけるのは自然なことです。そして、その答えの鍵を握る「保因者かどうか」は、ご自身の見え方からはわからないことが多いのです。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。知ってから選ぶのと、知らずに選ぶのとでは、同じ選択でも意味が違います。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 色覚異常(色盲)は母親から遺伝するのですか?
生まれつきの赤緑の色覚異常は、X連鎖潜性(劣性)遺伝のしかたで遺伝します。息子さんに色覚異常が現れるのは、お母さんから色覚異常の遺伝子が乗ったX染色体を受け継いだときで、保因者のお母さんから生まれる息子さんは1人ごとに2分の1の確率で色覚異常になります。お母さんご自身の色覚は多くの場合正常です。
Q2. 父親が色覚異常だと、息子も色覚異常になりますか?
お父さんの色覚異常の遺伝子は、息子さんには伝わりません。お父さんは息子さんにY染色体を渡すためです。お母さんが保因者でなければ、息子さんは色覚異常になりません。一方、娘さんは全員がお父さんのX染色体を受け継ぐため、通常は保因者になります(まれに色覚異常が現れることもあります)。
Q3. 色覚異常はなぜ男性に多いのですか?何人に1人ですか?
男性はX染色体を1本しかもたないため、そのX染色体に色覚異常の遺伝子があると色覚異常になります。女性は2本のうち1本だけなら保因者になり、通常は色覚異常が表に出ません。日本眼科医会によると、日本人では男性の20人に1人、女性の500人に1人に色覚異常があり、女性の10人に1人が保因者です。いちばん多いのは2型色覚です。
Q4. 女性が色覚異常の保因者かどうかは、見え方の検査でわかりますか?
わからないことが多くあります。台湾の研究では、遺伝子を調べて保因者とわかった女性7人は、全員が石原式の色覚検査で正常でした。保因者かどうかを確かめるには、OPN1LW・OPN1MWの遺伝子を調べる必要があります。
Q5. 色覚異常の保因者だと、結婚に差し支えますか?
色覚異常は日本人男性の20人に1人にみられる身近な体質の違いで、保因者の女性も10人に1人とされています。保因者かどうかで、お子さんに伝わる確率は具体的に計算できます。保因者の女性では、息子さん1人ごとに2分の1の確率で色覚異常、娘さん1人ごとに2分の1の確率で保因者です。知ったうえで、お二人で家族の計画を考えることができます。
Q6. 色覚異常は治りますか?
日本眼科医会は、色覚異常は治療で治るものではないとしています。一方で、経験とともに色以外の手がかりを使って色を判断する力が身につくこと、自動車運転免許はほとんど問題なく取れることも説明されています。ご自身の型と見分けにくい色を知っておくことが、日常生活や進路を考える助けになります。
Q7. 保因者検査(ブライダルチェック)で色覚異常も調べられますか?
当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)には、OPN1LW・OPN1MWは入っていません(2026年10月時点)。色覚異常の保因者かどうかを知りたい場合は、このページのOPN1LW/OPN1MW遺伝子検査をお選びください。
🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。色覚異常の保因者かどうかは、見え方の検査ではわからないことが多いのですが、遺伝子を調べれば、お子さんに伝わる確率を具体的に考えられるようになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、ご家族の検査、羊水検査・絨毛検査のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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