この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

全色盲(1色覚)とは、網膜で色を感じる「錐体(すいたい)」が生まれつき働かず、明るさを感じる「杆体(かんたい)」だけで物を見ている状態です。色がほとんど区別できないだけでなく、強いまぶしさ・視力の低下・眼振(目の揺れ)を伴います。両親から1つずつ受け継いだ遺伝子の変化で起こる常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で、原因遺伝子がわかると、似た病気との見分けやご家族への遺伝の確率を考える手がかりとなり、遺伝子治療の臨床試験についても対象条件を確認できるようになります。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご本人の見通しにも、ご家族やこれからの妊娠・出産を考えるときにも、ずっと使える情報になります。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 全色盲(1色覚)の遺伝子検査で何がわかる?
全色盲の主な原因遺伝子であるCNGA3・CNGB3・GNAT2・PDE6Cの4つをまとめて調べ、どの遺伝子の変化が原因かを確かめます。原因がわかると、進行する錐体ジストロフィーなど似た病気との区別や、ご家族への遺伝の確率がはっきりします。
👀 Q. どんな人が受けるとよい?
乳児期から眼振やまぶしがる様子があり、色がわかりにくい方、網膜電図(ERG)で錐体の反応がないと言われた方、兄弟姉妹が全色盲の方、結婚・妊娠を前に確率を知りたい方です。視力が保たれていて赤と緑だけが分かりにくい場合は、別の検査が向いています。
💰 Q. 費用・結果までの日数・検体は?
検査料は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短縮)。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)で別にかかります。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・粘膜ならオンライン診療でも受けられます。
📋 Q. 結果のあとはどうなる?
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ご両親がともに同じ遺伝子の保因者である場合、兄弟姉妹が発症する確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1です。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあり、その扱いも含めてご説明します。
1. 全色盲(1色覚)とは|色だけでなく「まぶしさ・視力・眼振」を伴う生まれつきの病気
全色盲は、色を感じる錐体が働かないために、色の識別がほとんどできず、視力の低下・振り子のような眼振・強いまぶしさ(羞明)を伴う、生まれつきの網膜の病気です。海外の代表的な診療ガイドであるGeneReviewsは、全色盲を「視力の低下、振り子様の眼振、光に対する過敏さ(羞明)、小さな中心暗点、偏心固視、色の識別の低下または消失」を特徴とする病気と記載しています[1]。遠視が多いことも知られています[1]。
「色盲」という言葉から、色だけの問題だと思われがちです。けれども全色盲で生活に一番影響するのは、多くの場合、明るい場所でのまぶしさと視力の低さです。この点が、色の見分けにくさが中心の赤緑色覚異常とは大きく違います(第3章で表にまとめます)。網膜の遺伝性の病気全体の中での位置づけは、遺伝性網膜ジストロフィの解説も参考になります。
錐体が働かず、杆体だけで見ている状態
網膜には、明るい場所で働き色を感じる「錐体」と、暗い場所で働き明るさを感じる「杆体」の2種類の視細胞があります。全色盲では錐体が働かず、杆体だけで物を見ています。網膜電図(ERG)という検査では、明るい場所での反応(錐体の反応)が消えているか大きく低下している一方、暗い場所での反応(杆体の反応)は正常か軽い異常にとどまります[1]。
日本では、全色盲は「1色覚(いっしきかく)」とも呼ばれます。完全型は「杆体1色覚」とも呼ばれます。英語では achromatopsia(アクロマトプシア)といい、海外の文献や遺伝子検査の報告書ではこの名前で書かれています。
どのくらいまれな病気か
全色盲は、およそ3万人に1人未満と推定されるまれな病気です[1]。ただし、この数字は海外の推定で、日本人での頻度を直接調べた値ではありません。
地域によって頻度が大きく違うのも、この病気の特徴です。ミクロネシアのピンゲラップ島では、全色盲の頻度が4〜10%と非常に高いことが知られています。これは、島の人口が少数の祖先から増えたことで、CNGB3遺伝子の特定の変化(p.Ser435Phe)が島の中に広がった「創始者効果」によるものです[1]。
完全型と不完全型
全色盲には、すべての錐体が働かない「完全型」と、一部の錐体がわずかに働いている「不完全型」があります。不完全型はまれです[1]。不完全型では、完全型よりも視力が保たれ、色の手がかりがわずかに残ることがあります。どちらのタイプになるかには、原因となる遺伝子の変化の種類が関係します(第4章)。
2. 全色盲の見え方と視力|生活で困ることと工夫
全色盲の方は、色の違いを明るさの濃淡として見ています。明るい場所ほどまぶしくて見えにくく、薄暗い場所のほうが見やすいのが特徴です。暗い場所で働く杆体だけで見ているため、日中の屋外や白い紙の照り返しなど、明るさが強いと見えにくくなります。
どう見えているのか
色の区別が難しいため、信号の色、色分けされた地図や資料、熟した果物かどうかなど、色だけで情報を伝えるものが分かりにくくなります。一方で、形・明暗・位置の手がかりは使えます。視野の中心に小さく見えにくい部分(中心暗点)があるため、中心を少し外して見る「偏心固視」になることがあります[1]。
視力はどのくらいか
GeneReviewsでは、視力は完全型で20/200以下、不完全型で20/80程度まで、と記載されています[1]。日本で使う小数視力に換算すると、完全型で約0.1以下、不完全型で約0.25程度にあたります(換算は当院によるもの)。眼鏡で遠視などを矯正しても、錐体が働かないことによる視力の低さは残ります。
いつ気づかれるか
多くは赤ちゃんのころに気づかれます。生後数週間で眼振が現れ、続いて明るい光をまぶしがる様子が見られるようになります[1]。色が分からないことは、言葉で色を答えられるようになるまで気づかれにくいため、最初のきっかけは「目が揺れる」「明るい所で目を細める・嫌がる」であることが多い病気です。
進行するのか
全色盲は基本的に進行しない病気で、視力はたいてい長い間安定しています。眼振とまぶしさは、年齢とともにやや軽くなることがあります[1]。この「進行しない」という点が、年齢とともに見え方が悪くなる錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーとの大事な違いです[1]。
ただし、網膜の断面を詳しく見る光干渉断層計(OCT)では、黄斑(網膜の中心部)に変化が見られることがあり、こうした変化が進行のはじまりを示している可能性も指摘されています[1]。眼科での定期的な診察は続けることが大切です。
生活の工夫と使える支え
まぶしさには、色の濃いフィルター眼鏡(遮光眼鏡)や赤色系のコンタクトレンズが役立ちます。まぶしさが軽くなり、視力が上がることもあります[1]。あわせて、拡大鏡や拡大読書器、タブレットの拡大機能などの見え方を補う道具(ロービジョンケア)、学校での座席の位置や、色だけに頼らない資料づくりなどの配慮も助けになります。
運転免許や身体障害者手帳については、第9章「日本の制度」でまとめます。
3. 色覚異常の種類で遺伝のしかたが違う|赤緑色覚異常・青錐体1色覚との違い
同じ「色盲」と呼ばれても、原因の遺伝子と遺伝のしかたは病気ごとに違います。もっとも多い赤緑色覚異常の多くはX連鎖で遺伝し、全色盲は常染色体潜性(劣性)で遺伝します。そのため、ご家族に遺伝する確率も、男女での起こりやすさも変わります。「色盲は遺伝する?」という疑問には、まずどの種類の色覚の異常なのかを確かめることが出発点になります。
🎨 色の見え方に関わる主な病気と遺伝のしかた
※全色盲の鑑別(青錐体1色覚・錐体ジストロフィーの遺伝のしかたと進行の有無)はGeneReviews[1]による。赤緑色覚異常・青錐体1色覚の原因遺伝子は当院の検査ページ・疾患ページの記載による。
とくに見分けが大切なのが青錐体1色覚です。視力の低下や眼振など、全色盲とよく似た症状が出ますが、X連鎖で遺伝し、主に男性に起こります[1]。どちらの病気かによって、お母さんが保因者かどうか、兄弟姉妹や次のお子さんの確率がまったく変わります。症状だけでは見分けにくいことがあるため、遺伝子で確かめる意味があります。
また、大人になってから色が分かりにくくなった場合は、生まれつきの全色盲ではなく、網膜や視神経などの病気が原因のことがあります。この場合はまず眼科で原因の病気を調べることが先で、このページの遺伝子検査の対象ではありません。
4. 全色盲の原因遺伝子と遺伝のしかた
全色盲の原因として、これまでにATF6・CNGA3・CNGB3・GNAT2・PDE6C・PDE6Hの6つの遺伝子が知られています。どの遺伝子でも、両親から1つずつ働かないコピーを受け継いだときに発症する常染色体潜性(劣性)遺伝です[1]。
錐体が光を電気信号に変える「部品」の遺伝子
錐体が光を受け取ると、細胞の中で順番に反応が起こり、光の情報が電気信号に変わります。全色盲の原因遺伝子は、この流れの「部品」をつくる設計図です[1]。どれか1つの部品が働かなくなるだけで、錐体は光の信号を伝えられなくなります。
光を受け取る錐体の視物質
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トランスデューシンが働くGNAT2
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cGMPを分解PDE6C(PDE6H)
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CNGチャネルが閉じるCNGA3・CNGB3
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電気信号として脳へ
光で活性化した錐体の視物質は、GNAT2遺伝子がつくるトランスデューシン(Gタンパク質の一種)を働かせます。トランスデューシンは、PDE6C遺伝子がつくるホスホジエステラーゼを働かせ(PDE6Hはそのブレーキ役の部品です)、細胞の中のcGMPという物質を分解します。cGMPが減ると、CNGA3とCNGB3の2つの遺伝子がつくるCNGチャネル(cGMPで開閉するイオンの通り道)が閉じ、それが電気信号になります[1]。
常染色体潜性遺伝|両親が保因者なら、子は4分の1
ご両親がともに同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん一人ひとりについて、発症する確率は4分の1(25%)、症状のない保因者になる確率は2分の1(50%)、どちらのコピーも受け継がない確率は4分の1(25%)です[1]。この確率は妊娠のたびに同じで、「1人目が発症したから、次は大丈夫」ということはありません。
保因者は、働かないコピーを1つだけ持っている人で、症状はなく、この病気を発症することもありません[1]。そのため、ご両親とも保因者だと気づかないまま、お子さんが全色盲で生まれることがあります。遺伝のしくみ全体は常染色体潜性遺伝の解説で詳しく扱っています。
🧬 ご両親がともに保因者のときの、お子さんの組み合わせ
※保因者になる確率は、表の2マスを合わせて2分の1です。
ご本人が親になるとき
全色盲のご本人のお子さんは、少なくとも1つの原因となる遺伝子の変化を受け継ぎます[1]。お子さんが発症するのは、パートナーも同じ遺伝子の保因者(または発症者)の場合で、パートナーが保因者なら確率は2分の1です。パートナーが保因者でなければ、お子さんが発症することはありません。そのため、ご本人が結婚・妊娠を考えるときは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかが一番大事な情報になります(第8章)。
遺伝子ごとの割合と地域による違い
どの遺伝子が原因として多いかは、地域や民族によって大きく違います。GeneReviewsがまとめた報告では、欧州ではCNGB3が約60%、CNGA3が5〜33%を占める一方、イスラエル・パレスチナではCNGA3が84%、中国ではCNGA3が80%と報告されています[1]。
🔬 全色盲の原因遺伝子と、報告されている割合
※割合はGeneReviews(2018年更新)の表による[1]。日本人での内訳は、この表には含まれていません。
CNGB3の中では、c.1148delCという変化が世界でもっとも多い原因で、CNGB3の原因となる変化の約70%、全色盲全体の原因の約40%を占めると報告されています[1]。ただし、これは欧州系の集団を中心としたデータです。日本人でどの遺伝子が多いかは、この表からは言えません。だからこそ、1つの遺伝子だけを調べるのではなく、主な原因遺伝子をまとめて調べる意味があります。
変化の種類と症状の重さ
同じ遺伝子でも、変化の種類によって、タンパク質がまったく働かなくなる場合と、少しだけ働きが残る場合があります。一般に、タンパク質の途中で設計図が終わってしまうナンセンス変異や、読み枠がずれるフレームシフト変異は働きを失わせやすく、アミノ酸が1つ置き換わるミスセンス変異では働きが一部残ることがあります。このような遺伝子の変化と症状の関係を遺伝子型-表現型相関といいます。ただし、一人ひとりの見え方を変化の種類だけで言い当てることはできず、目の検査の結果とあわせて判断します。
5. 遺伝子検査で原因を確かめる意味|名前がつくと次の一手が決まる
遺伝子で原因がわかると、「似た別の病気ではないか」「この先進行するのか」「家族にはどのくらいの確率で遺伝するのか」「治療の臨床試験の対象になるのか」という問いに、根拠をもって答えられるようになります。GeneReviewsも、原因遺伝子を特定するには全色盲の原因遺伝子を含む多遺伝子パネル検査がもっとも適していると記載しています[1]。
生まれつきの見え方の病気は、眼振やまぶしさ、視力の低さといった症状が重なり合い、眼科でいくつもの検査を受けても、はっきりした病名がつかないまま年月がたつことがあります。遺伝子検査は、その回り道を終わらせる手がかりになります。遺伝子検査(遺伝学的検査)で何がわかり何がわからないかの全体像は、別のページで解説しています。
似た病気と見分けられる
全色盲は基本的に進行しませんが、錐体ジストロフィー・錐体杆体ジストロフィーは年齢とともに進行します[1]。小さいころは症状がよく似ていることがあり、どちらなのかで、将来の見通しや眼科での経過の見方が変わります。また、前の章で触れた青錐体1色覚(X連鎖)と区別できれば、ご家族への遺伝の確率も正しく考えられるようになります。
遺伝子治療の臨床試験の対象になるかが分かる
CNGA3とCNGB3については、正常な遺伝子を網膜に届ける遺伝子治療の臨床試験が行われていますが、いずれも安全性を確かめる初期段階の試験で、標準治療ではありません。
CNGA3が原因の方を対象にした第Ⅰ相試験の3年間の結果では、1年目以降に治療薬に関連する有害事象は起きず、1年目に治療した目で見られた機能の改善は2年目・3年目も続いていました。一方で、多くの評価項目では、治療した目と治療していない目の間に統計的にはっきりした差は示されていません[2]。CNGB3が原因の方を対象にした試験(大人と子ども23人)では、安全性はおおむね許容できるとされましたが、23人中9人に目の中の炎症が起き(多くは軽度〜中等度)、効果については全体として一貫した変化は見られず、一部の参加者で色覚やまぶしさの改善が見られたと報告されています[3]。
こうした臨床試験は、原因遺伝子ごとに対象が決まります。将来、治療の選択肢が広がったときに対象になるかどうかを判断するためにも、原因遺伝子がわかっていることが前提になります。ただし、遺伝子検査を受けることが治療につながると約束するものではありません。
ご家族が自分の状態を知る手がかりになる
ご本人の原因遺伝子と変化がわかると、ご両親やご兄弟姉妹は、同じ変化を持っているかどうかを狙って調べられるようになります。ご兄弟姉妹が将来、結婚や妊娠を考えるときに、自分が保因者かどうかを知る手がかりにもなります。あなたの1回の検査が、ご家族が自分の状態を知るきっかけになります。
6. どんな人がこの検査を受けるとよいか
全色盲を疑う症状があり原因を確かめたい方と、ご家族に全色盲の方がいて自分や子どもへの影響を知りたい方が、この検査の主な対象です。具体的には、次のような場面です。
💡 この検査が向いている方
・赤ちゃんのころから眼振や、明るい場所をまぶしがる様子があり、色がわかりにくい
・矯正しても視力が上がらず、明るい場所で特に見えにくい
・網膜電図(ERG)で、錐体の反応が消えている・大きく低下していると言われた
・全色盲(1色覚)と診断されているが、原因遺伝子はわかっていない
・兄弟姉妹やご家族に全色盲の方がいる
・全色盲のご本人で、結婚・妊娠を前に、お子さんへの影響を考えたい
この検査より別の検査が向く場合
症状によっては、このページの4遺伝子パネルより、別の遺伝子検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は当院のほかの検査の種類で、どれが合うかは遺伝カウンセリングでご説明します。
🧭 症状ごとの検査の選び方
※遺伝子数・料金は、2026年10月時点の当院の各検査ページの記載による。どの検査も、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
大人になってから色が分かりにくくなった場合は、生まれつきの病気ではないことがあるため、まず眼科で原因を調べることをおすすめします。
7. ミネルバクリニックの全色盲遺伝子パネル検査の内容
当院の全色盲遺伝子パネル検査は、CNGA3・CNGB3・GNAT2・PDE6Cの4つの遺伝子を、次世代シークエンサー(NGS)で一度に調べる検査です。以前は、1つの遺伝子を調べて見つからなければ次の遺伝子を調べる、という順番の検査が必要でしたが、4遺伝子をまとめて調べることで、その手間と時間を省けます。結果までの期間は2〜3週間です。
調べる4遺伝子と、それぞれでわかる病気
🧬 この検査で調べる遺伝子
※はたらきはGeneReviews[1]による。調べる遺伝子は当院の検査ページの遺伝子リストのとおりです(足したり減らしたりしていません)。
この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、4つの遺伝子の中の小さな変化(1つの塩基の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の一部が大きく抜けたり重なったりする欠失・重複です。遺伝子のたんぱく質をつくる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を中心に読み取ります。
⚠️ この検査ではわからないこと
・ATF6・PDE6Hなど、4遺伝子以外の原因遺伝子による全色盲
・染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)や、同じ配列がくり返し伸びる変化(リピート伸長)
・遺伝子のスイッチ部分(プロモーター)や、遺伝子の奥深く(エクソンから20塩基より離れた部分)の変化
・体の一部の細胞だけに変化がある状態(モザイク)。この検査はモザイクを見つけるようには作られていません
・1つのエクソンだけの小さな欠失・重複は、見つかることもありますが、いつも見つけられるわけではありません
全色盲の方のうち10〜25%は、既知の原因遺伝子で説明できないと報告されています[1]。そのため、この検査で原因が見つからなくても、全色盲ではないとは言えません。また、病気との関係がまだはっきりしない変化(VUS(意義がまだわからない変化))が見つかることもあります。
精度に関する技術情報
▶ くわしく見る(読み取りの深さ・確認の方法)
・読み取りの深さ(カバレッジ):調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上読み取ります(≥99% at 20x)。同じ場所を何回も読むほど、読み間違いを見分けやすくなります。
・見つかった変化のうち、読み取りの質が十分でないものは、従来の方法(サンガー法)でもう一度確かめます。
・欠失・重複は、1つの遺伝子まるごとの変化(頬の粘膜・血液の検体)と、2つ以上続くエクソンの範囲の変化(血液の検体のみ)を見つけられます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
・似た配列(偽遺伝子など)が多い場所では、まれに正しく読み取れないことがあります。腫瘍の組織はこの検査の対象外です。
8. 結果が出たあと(陽性・陰性・VUS)
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけを郵送やメールでお送りすることはありません。結果ごとに、次のように考えます。
2つの変化が見つかった場合
同じ遺伝子に病気の原因となる変化が2つ見つかり、それぞれが別のコピーに存在することが確認できれば、全色盲の原因として遺伝学的に確かめられたことになります。この2つが、お父さん由来とお母さん由来に1つずつ分かれていることを確かめるために、ご両親の検査をおすすめすることがあります(同じ側のコピーに2つ並んでいる場合は、病気の原因と言えないため)。原因の変化がわかれば、ご兄弟姉妹は、その変化に絞って調べられます。
変化が1つだけ見つかった場合
潜性遺伝の病気で変化が1つだけ見つかった場合は、「保因者で、全色盲の原因は別にある」可能性と、「もう1つの変化がこの検査では見つけにくい場所にある」可能性の両方を考えます。症状や目の検査の結果とあわせて判断し、必要なら、より多くの遺伝子を調べる検査なども含めて次の進め方をご説明します。
変化が見つからなかった場合
原因が見つからない理由としては、4遺伝子以外の遺伝子(ATF6・PDE6Hなど)が原因の場合、この検査で見つけにくい種類の変化の場合、全色盲以外の網膜の病気の場合などが考えられます。次の選択肢として、包括的眼疾患遺伝子検査(510遺伝子)などがあります。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかった場合
VUSは、今の知識では病気の原因かどうか判断できない変化です。VUSだけを根拠に診断を確定したり、ご家族の検査や出生前の検査に使ったりはしません。研究が進むと、のちに判定が見直されることがあります。
なお、当院の遺伝子検査で、調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、二次的所見の開示方針で定めています。
結婚・妊娠を考えるとき
全色盲のご本人やご兄弟姉妹が結婚・妊娠を考えるとき、一番大切なのは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかです。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)の遺伝子一覧には、CNGA3とCNGB3が含まれています。GNAT2とPDE6Cは、これらの一覧には含まれていません(2026年10月時点の一覧で確認)。原因がGNAT2・PDE6Cの場合のパートナーの調べ方は、遺伝カウンセリングでご説明します。
妊娠中の赤ちゃんの検査(出生前診断)が全色盲で対象になるかどうかは、病気の重さの考え方や国内の指針に照らして、個別に検討が必要です。当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っており、妊娠を考えるときは、出生前診断ができるかどうかも含めて当院でご相談いただけます。原因の変化がわかっていなければ、出生前に何を調べればよいかを決めることができません。
9. 日本の制度(指定難病・小児慢性特定疾病・保険・身体障害者手帳・運転免許)
全色盲で使える支えは、病名そのものよりも「視力・視野・色の識別」がどの程度かで決まるものが多くあります。主なものを2026年10月時点の情報でまとめます。
運転免許
運転免許の適性試験では、普通第一種免許などで「両眼で0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上」(または、一眼が0.3に満たない場合は他眼の視野が左右150度以上で視力0.7以上)という視力の基準と、「赤色、青色及び黄色の識別ができること」という色の識別の基準があります(警視庁「適性試験の合格基準」、2026年10月時点)。基準を満たすかどうかは、各都道府県の運転免許試験場で判断されます。
身体障害者手帳(視覚障害)
身体障害者手帳の視覚障害の等級は、色の識別ではなく、矯正した視力と視野の程度で決まります(身体障害者福祉法施行規則 別表第5号)。たとえば1級は「視力の良い方の眼の視力が0.01以下」、6級は「視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下」です。申請は、指定を受けた医師の診断書をもとに、お住まいの市区町村で行います。
医療費助成と保険
指定難病や小児慢性特定疾病の医療費助成の対象になるかどうかは、病名だけでなく、それぞれの対象疾病の一覧と診断基準で決まります。最新の情報は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターでご確認ください。当院の全色盲遺伝子パネル検査は自費診療で、保険は使えません。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
ご予約のあと、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで検査の内容と限界を説明し、ご納得いただいてから検査を行います。検査を受けるかどうかは、説明を聞いてからお決めいただけます。
検査の流れ
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
お支払い・検体キットはお支払い後に送付
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解析2〜3週間
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結果のご説明そのあとマイページへ
当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。見た目や家族歴だけでは判断できないことがあり、検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないかを、検査の前にていねいにご説明します。
費用
💰 費用と結果までの期間
※自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。
検体とオンライン診療
検体は、血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出したDNA(3μg)、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液のいずれかで検査できます。唾液・頬の粘膜・血液のいずれでもオンライン診療が可能で、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
検体採取キットは、検査料金のお支払いのあとにお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。決められた手順で採取しないと、検体の取り違えや品質の低下で、正しい結果が出せなくなるおそれがあるためです。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【わからないまま悩むより、わかったことから次を考える】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です(遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由)。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。
全色盲は、命に関わる病気ではありません。けれども、まぶしさや視力の低さとどう付き合うか、進行する別の病気ではないのか、兄弟姉妹や将来の子どもにどう関わるのか、という問いは、ご本人やご家族の人生のいろいろな場面でくり返し出てきます。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、これからの見通しや、結婚・妊娠を考えるときにも、ずっと使える情報になります。知る・知らない、どちらを選ぶかも含めて、ご本人とご家族の選択を尊重したいと考えています。
12. よくある質問(FAQ)
Q1. 全色盲の視力はどのくらいですか?
海外の診療ガイド(GeneReviews)では、完全型(すべての錐体が働かないタイプ)で20/200以下、不完全型で20/80程度まで、と記載されています。日本で使う小数視力に換算すると、完全型で約0.1以下、不完全型で約0.25程度にあたります。視力は時間がたっても大きく変わらないことが多く、眼振とまぶしさは年齢とともにやや軽くなることがあります。
Q2. 全色盲の人はどのように見えていますか?
色を感じる錐体が働かないため、色の違いを明るさの濃淡として見ています。明るさを感じる杆体で見ているので、明るい場所ではまぶしくて見えにくく、薄暗い場所のほうが見やすいのが特徴です。視野の中心に小さく見えにくい部分(中心暗点)があり、少し視線をずらして見ることもあります。
Q3. 全色盲は治りますか?
全色盲を根本から治す治療は、まだ確立していません。まぶしさを抑える遮光眼鏡や赤色系のコンタクトレンズで、まぶしさが軽くなり、見やすくなることがあります。CNGA3・CNGB3を対象にした遺伝子治療は、安全性を確かめる初期段階(第Ⅰ/Ⅱ相)の臨床試験が報告されている段階で、標準治療ではありません。
Q4. 両親とも色覚は正常なのに、なぜ子どもが全色盲になるのですか?
全色盲は常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で、両親から1つずつ、同じ遺伝子の働かないコピーを受け継いだときに発症します。片方だけ持っている保因者は症状がないため、ご両親とも保因者であることに気づかないまま、お子さんが発症することがあります。
Q5. 子どもや兄弟姉妹に遺伝する確率は?
ご両親がともに保因者の場合、兄弟姉妹が発症する確率は4分の1(25%)、症状のない保因者になる確率は2分の1(50%)です。全色盲のご本人のお子さんは全員が保因者になり、パートナーが同じ遺伝子の保因者であれば、お子さんが発症する確率は2分の1です。パートナーが保因者でなければ、お子さんが発症することはありません。
Q6. 赤緑色覚異常(色弱)とは何が違いますか?
赤緑色覚異常は、赤と緑の見分けがつきにくい一方で、視力は保たれ、まぶしさや眼振はありません。原因は主にX染色体上のOPN1LW・OPN1MW遺伝子で、X連鎖の遺伝のしかたをします。全色盲は、色の識別がほとんどできないうえに視力の低下・強いまぶしさ・眼振を伴い、常染色体潜性遺伝で、原因遺伝子も違います。
Q7. 検査で原因が見つからなかったら?
全色盲の方のうち10〜25%は、既知の原因遺伝子で説明できないと報告されています。この検査はCNGA3・CNGB3・GNAT2・PDE6Cの4遺伝子を調べる検査で、まれな原因であるATF6・PDE6Hは調べません。見つからなかった場合は、より多くの遺伝子を調べる包括的眼疾患遺伝子検査(510遺伝子)などの次の選択肢を、遺伝カウンセリングでご相談いただけます。
Q8. 保険は使えますか?
当院の全色盲遺伝子パネル検査は自費診療で、保険は使えません。検査料は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
👁️ 全色盲(1色覚)の遺伝子検査を、これからの計画に
CNGA3・CNGB3・GNAT2・PDE6Cの4遺伝子をまとめて調べ、結果は2〜3週間でわかります。検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。原因がわかれば、パートナーの保因者検査や、羊水検査・絨毛検査を院内で行う出生前診断のご相談まで、当院で続けて支えられます。
お問い合わせはこちら | 遺伝子ブライダルチェック(保因者検査)
参考文献
- [1] Kohl S, Jägle H, Wissinger B, Zobor D. Achromatopsia. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-. Initial posting: 2004 Jun 24; Last update: 2018 Sep 20. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1418/
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