この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

黄斑変性症の遺伝子検査は、若いうちに「黄斑変性」と言われた方や、黄斑ジストロフィー・スターガルト病が疑われる方が、原因の遺伝子を確かめるための検査です。高齢の方に多い加齢黄斑変性は、体質・喫煙・年齢など多くの要因が重なって起こる病気で、遺伝子1つで決まるものではありません。一方、黄斑ジストロフィーは遺伝子の変化1つで起こる病気で、原因がわかると、病名・見通し・気をつけたい生活習慣・治験の対象かどうか、そしてお子さんやきょうだいに伝わる確率が具体的になります。このページでは、2つの病気の違いと、19の遺伝子をまとめて調べるこの検査でわかること・わからないことを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この遺伝子検査で何がわかりますか?
黄斑ジストロフィー(スターガルト病・黄色斑眼底など)や、X連鎖の網膜の病気の原因となる遺伝子を含む19遺伝子を一度に調べます。加齢黄斑変性の「なりやすさ」を点数で出す検査ではありません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
10〜40代で黄斑の異常を指摘された方、「加齢黄斑変性」と言われたが年齢が若い方、ご家族に同じ目の病気の方がいる方、子どもに遺伝するかを知りたい方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、お子さんに伝わる確率(遺伝のしかたで2分の1・ほぼゼロなど大きく違う)やご家族の検査、意義がまだわからない変化(VUS)の扱いまでご説明します。
1. 黄斑変性症と黄斑ジストロフィー:遺伝子検査が役立つのはどちらか
「黄斑変性症」という名前で呼ばれる病気には、高齢の方に多い加齢黄斑変性と、遺伝子の変化1つで起こる黄斑ジストロフィーの2つがあり、遺伝子検査で原因がはっきりするのは主に黄斑ジストロフィーのほうです。どちらも網膜の中心の「黄斑」が傷む病気で、見え方の症状はよく似ていますが、原因・遺伝のしかた・検査の意味がまったく違います。
黄斑とは:見え方の中心を担う場所
黄斑は、目の奥の網膜の中心にある小さな場所で、文字を読む・人の顔を見分ける・色を見分けるといった、細かいものを見る働きの中心を担っています。そのため黄斑が傷むと、視野の真ん中が暗く見える(中心暗点)、まっすぐな線がゆがんで見える(変視症)、文字が読みにくい、色の区別がつきにくい、といった見え方の変化が出ます。周りの視野は保たれることが多く、「見たいところだけが見えない」のが黄斑の病気の特徴です。
加齢黄斑変性の原因:遺伝子1つでは決まらない
加齢黄斑変性は、体の中の補体(免疫のしくみのひとつ)・脂質・血管・炎症などの働きの乱れが重なって起こる「多因子」の病気です[6]。遺伝の面では、多くの「なりやすさ」に関わる遺伝子の変化が見つかっており、とくに大きいのはCFH遺伝子とARMS2遺伝子の領域とされています。遺伝以外の大きなリスク因子は、喫煙と、抗酸化物質(亜鉛・カロテノイド)の摂取が少ないことです[6]。
欧米の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)では、進行した加齢黄斑変性の患者さん16,144人と、そうでない17,832人を比べて、34の領域に52の関連する変化が見つかりました[5]。1つ1つの変化の影響は小さく、それが積み重なってなりやすさが決まる、という病気です。日本で2015年度に新しく視覚障害の認定を受けた18歳以上の方の原因では、黄斑変性は緑内障・網膜色素変性・糖尿病網膜症に次ぐ4番目(8.0%)でした[8]。
💡 加齢黄斑変性の「遺伝子検査」は勧められていません
米国眼科学会の専門委員会は、加齢黄斑変性のような遺伝的に複雑な病気について、特定の遺伝子型の人に役立つ治療や経過観察の方法が臨床試験で示されるまでは、日常の診療で遺伝子検査をしないよう勧めています(2012年の報告、2014年の改訂版も同じ趣旨)[4]。加齢黄斑変性と診断された方や、ご家族が加齢黄斑変性の方は、遺伝子検査よりも、眼科での定期的な検査と禁煙が大切です。
黄斑ジストロフィー(指定難病301):遺伝子の変化1つで起こる
黄斑ジストロフィーは、遺伝学的な原因によって網膜の黄斑がゆっくり傷み、両目の視力低下や視野の異常を起こす病気の総称です。難病情報センターでは、卵黄状黄斑ジストロフィー(ベスト病)・スタルガルト病(スターガルト病)・錐体-杆体ジストロフィー・X連鎖性若年網膜分離症・オカルト黄斑ジストロフィー(三宅病)・中心性輪紋状網脈絡膜萎縮などがここに含まれるとされています(2026年10月時点)。加齢黄斑変性と違い、子どもや若い大人のうちに見え方の変化が始まることが多いのが特徴です。網膜の病気の全体像は遺伝性網膜ジストロフィで解説しています。
🧬 加齢黄斑変性と黄斑ジストロフィーの違い
※加齢黄斑変性の原因は文献[5][6]、遺伝子検査の勧めは文献[4]、黄斑ジストロフィーは難病情報センターの情報(2026年10月時点)による。黄斑ジストロフィーは指定難病301(第9章)。
2. この検査で調べる主な病気:スターガルト病・黄色斑眼底など
この検査の中心は、子どもや若い大人に多い黄斑ジストロフィーの代表であるスターガルト病(ABCA4遺伝子)と、顕性遺伝の黄斑ジストロフィー、X連鎖の網膜の病気(RPGR遺伝子)です。あわせて、加齢黄斑変性との関連が報告されている補体の遺伝子なども調べます。
スターガルト病(スタルガルト病):いちばん多い遺伝性の黄斑ジストロフィー
スターガルト病1型は、大人でも子どもでも、最も多い遺伝性の黄斑ジストロフィーです。有病率は8,000〜10,000人に1人と推定されています[1]。原因はABCA4遺伝子で、網膜の視細胞で、光を感じたあとにできる物質を運び出す働きを担っています。この働きが落ちると、黄斑の細胞に老廃物がたまり、少しずつ細胞が傷んでいきます。
見え方の変化が始まるのは子どものうちが最も多く、次に多いのが若い大人の時期で、大人になってから遅く始まる方は少数です。遅く始まる方ほど、見え方の見通しはよい傾向があるとされています[1]。同じABCA4遺伝子の変化でも、早く始まって速く進む錐体杆体ジストロフィー3型から、とても遅く始まる軽い型まで幅があります[2]。眼底に黄色い斑点が広がる黄色斑眼底や、網膜色素変性症19型も、同じABCA4遺伝子が原因になる病気です。
ドイツの1つの施設で、黄斑ジストロフィーまたは錐体・錐体杆体ジストロフィーの患者さん251人を続けて調べた研究では、74%で病気の原因となる遺伝子の変化が見つかり、ABCA4だけで37%を占めていました[3]。黄斑の病気の遺伝子検査で、ABCA4がいちばん大事な遺伝子であることがわかります。
顕性遺伝の黄斑ジストロフィー(ELOVL4・PRPH2・EFEMP1)
親から子へ2分の1の確率で伝わる顕性(優性)遺伝の黄斑ジストロフィーも調べます。ELOVL4遺伝子は、スターガルト病によく似た顕性遺伝の黄斑ジストロフィー(スターガルト病3型)の原因として見つかりました[10]。EFEMP1遺伝子の特定の変化(Arg345Trp)は、ドイン蜂巣状網膜ジストロフィー(マラッティア・レヴェンティネーゼとも呼ばれます)の原因で、黄斑の周りに小さな沈着物(ドルーゼン)が若いうちから出るのが特徴です[9]。
PRPH2遺伝子は、黄斑の病気から網膜全体の病気(網膜色素変性症)まで、さまざまな網膜ジストロフィーの原因になります。同じ家族の中でも、人によって病気の出方が大きく違うことが知られています[11]。「親は黄斑だけ、子は網膜全体」ということもありうるため、ご家族の見え方だけで先の見通しを決めないことが大切です。
X連鎖の網膜の病気(RPGR)
RPGR遺伝子は、X染色体にある遺伝子で、網膜色素変性症3型や、X連鎖の錐体杆体ジストロフィー、X連鎖の萎縮性黄斑変性の原因になります(OMIMによる)。主に男性が発症し、女性は保因者になることが多い病気ですが、女性の保因者にも網膜の変化が出ることがあります。RPGRの保因者の女性23人を調べた英国の研究では、男性と同じような重い変化をもつ方が13%いました[12]。
若年性黄斑変性:「加齢」と言われたが若い方へ
30代・40代など比較的若いうちに「黄斑変性」と言われた方は、加齢黄斑変性ではなく、黄斑ジストロフィーの可能性も考えます。スターガルト病は大人になってから見え方の変化が始まることもあり[1]、英国の調査では、受診したときの年齢の中央値は27歳でした[13]。眼底の見た目だけでは区別が難しいこともあるため、年齢のわりに進んだ黄斑の変化がある・両目に同じような変化がある・ご家族にも同じ目の病気がある、といった場合は、遺伝子で原因を確かめる意味があります。
3. 遺伝のしかたと、子どもに遺伝する確率
黄斑ジストロフィーが子どもに遺伝する確率は、原因の遺伝子と遺伝のしかた(潜性・顕性・X連鎖)によってまったく違います。難病情報センターも、黄斑ジストロフィーの遺伝のしかたには常染色体顕性・常染色体潜性・X連鎖性潜性があり、必ずしも子どもに遺伝するとは限らない、としています(2026年10月時点)。だからこそ、遺伝子で原因を確かめることで、ご家族ごとの確率が具体的になります。遺伝のしかたの全体像は遺伝形式とはで解説しています。
👨👩👧 遺伝のしかたと、お子さんに伝わる確率の目安
※遺伝のしかたはOMIMの記載による。実際の確率は、原因の変化の種類・ご家族の検査結果によって変わるため、遺伝カウンセリングでご家族ごとにご説明します。
スターガルト病は潜性遺伝:親が元気でも子に起こる
スターガルト病1型は常染色体潜性(劣性)遺伝です。父と母の両方から受け継いだ2つのABCA4遺伝子の両方に変化があると発症し、1つだけ変化をもつ人(保因者)は発症しません。2つの変化が別々の種類であることも多く、これを複合ヘテロ接合といいます。ご両親に症状がなくても、お子さんに起こることがあるのはこのためです。
反対に、スターガルト病のご本人が子どもを持つ場合、パートナーが同じABCA4遺伝子の保因者でなければ、お子さんは保因者にはなっても発症はしません。パートナーが保因者かどうかは、当院の拡大版保因者スクリーニングで調べられます(ABCA4は女性版787遺伝子・男性版714遺伝子の両方に含まれています)。保因者のしくみは劣性遺伝(潜性遺伝)とはでも解説しています。
顕性遺伝は2分の1:「自分が軽いから子どもも軽い」とは言えない
常染色体顕性(優性)遺伝の黄斑ジストロフィーでは、親が変化をもっていれば、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継ぎます。PRPH2のように、同じ家族の中でも病気の出方が大きく違う遺伝子があります[11]。これを表現型の多様性といいます。
⚠️ 親の見え方が軽くても、お子さんが同じとは限りません
顕性遺伝の網膜の病気では、親御さんが軽い症状で気づいていなかったり、黄斑だけの変化にとどまっていたりしても、同じ変化を受け継いだお子さんでは別の出方をすることがあります[11]。ご家族の見え方の印象だけで判断せず、原因を知ったうえで計画することに意味があります。
X連鎖(RPGR):男性に多く、女性の保因者にも変化が出ることがある
RPGRはX連鎖遺伝です。男性はX染色体を1本しかもたないため、変化があると発症します。女性はX染色体が2本あるため保因者になることが多いのですが、2本のX染色体のどちらが働くかの偏り(X染色体の不活性化の偏り)によって、保因者の女性でも重い変化が出ることがあります[12]。お母さんが保因者かどうかで、息子さん・娘さんの確率が変わります。
結婚・妊娠を考えるとき
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。黄斑ジストロフィーがあることは、結婚できない理由にはなりません。遺伝の確率は遺伝のしかたによってまったく違い、スターガルト病のような潜性遺伝なら、パートナーが保因者でなければお子さんが発症することはふつうありません。「わからないから不安」を、「調べてわかった確率で考える」に変えられるのが、遺伝子検査の大きな意味です。ご本人の原因を確かめ、必要ならパートナーの保因者検査を行えば、ご夫婦ごとの見通しをお伝えできます。
「自分もいつか見えなくなるのでは」と不安な方へ
親やきょうだいが黄斑ジストロフィーと診断されると、少し見えにくい日があるだけで「始まったのでは」と心配しながら暮らしている方もいます。ご家族の原因の変化がわかっていれば、ご自身がその変化を受け継いでいるかを、その場所だけを調べて確かめられます(発症前の検査(予測的検査))。受け継いでいないとわかれば、その病気について、ご家族と同じ確率を心配し続けなくてよくなります。受け継いでいるとわかった場合は、眼科での経過観察・生活で気をつけること・治験の情報など、第8章の「次にできること」を一緒に考えます。
当院は、ライフステージごとに患者さんの人生をサポートするという考え方で診療しており、知りたいと願う方を拒むことはしません。遺伝カウンセリングで十分に考えたうえで、ご本人が知りたいと決めた場合は、その意思を尊重して検査まで行います。知らないでいる選択も、同じように尊重します。結果を知ったあとの気持ちの変化は、陽性でも陰性でも起こりえますので、結果のあとも遺伝カウンセリングで相談を続けていただけます。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
若いうちに黄斑の異常を指摘された方、スターガルト病・黄斑ジストロフィーが疑われる方、ご家族に同じ目の病気の方がいる方、子どもに遺伝するかを知りたい方に向く検査です。
- ●子ども・10〜40代で視力が下がり、眼科で黄斑の異常や黄色い斑点を指摘された方
- ●スターガルト病・黄色斑眼底・黄斑ジストロフィーと言われ、原因の遺伝子を確かめたい方
- ●「加齢黄斑変性」と言われたが、年齢が若い・両目に同じ変化がある・家族にも同じ病気がある方
- ●ご家族に黄斑ジストロフィーの方がいて、ご自身やお子さんへの影響を知りたい方
- ●結婚・妊娠を考えていて、海外でのPGT-M(着床前遺伝学的検査)や出生前診断を含めて計画したい方
原因がわからないまま眼科を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません。先ほどのドイツの研究では、サンガー法と遺伝子パネル検査(NGS)を組み合わせた2段階の方法で74%に原因が見つかりましたが、この数字は当院の19遺伝子検査の検出率を示すものではありません[3]。見つからなかった場合の次の選択肢も、遺伝カウンセリングでご説明します。
この検査より別の検査が向いている場合
この検査には、ベスト病(卵黄状黄斑ジストロフィー)の原因のBEST1遺伝子と、オカルト黄斑ジストロフィー(三宅病)の原因のRP1L1遺伝子は含まれていません。この2つは、どちらも当院の網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査(278遺伝子)に含まれています。黄斑ジストロフィーまたは錐体・錐体杆体ジストロフィーの患者さん251人を調べた研究では、全体の57%でABCA4・PRPH2・BEST1のいずれかに原因が見つかったという報告があり[3]、ベスト病が疑われる方や、黄斑の病気の型がしぼれない方には、網膜症・視神経萎縮パネルのほうが向いています。
🔍 目の症状・病名から選ぶ検査
※各検査の対象遺伝子は、それぞれのページでご確認ください。どの検査が合うかは、眼科の所見とご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
加齢黄斑変性の「なりやすさ」を知りたい方へ
この検査には、加齢黄斑変性との関連が報告されている補体の遺伝子(CFH・C3・CFB・CFI)やHTRA1なども含まれています。しかし、この検査は「なりやすさを点数で出す検査」ではありません。加齢黄斑変性で大きな影響をもつARMS2遺伝子は対象に含まれておらず、HTRA1でよく知られた変化(rs11200638)は遺伝子の働きを調節するプロモーターという場所にあり[7]、この検査が読む範囲(遺伝子の情報が書かれた部分とその境目)の外にあります。加齢黄斑変性と診断された方・ご家族が加齢黄斑変性の方は、第1章のとおり、眼科での定期的な検査と禁煙を優先してください。
5. 調べる19遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、黄斑ジストロフィー・X連鎖の網膜の病気の原因遺伝子と、加齢黄斑変性との関連が報告されている遺伝子をあわせた19遺伝子を一度に調べます。同じ遺伝子が、目以外の病気の原因として知られていることもあります。下の表の病名と遺伝のしかたは、OMIM(遺伝性疾患のデータベース)の記載によります。
🧬 対象の19遺伝子と関係する病気
※対象遺伝子は当院の検査内容による(2026年10月確認)。病名・遺伝のしかたはOMIMの記載による(「なりやすさ」はOMIMで感受性として登録されているもの)。CX3CR1・TLR4はOMIMの表の細部まで確かめきれていないため、関連が報告されている遺伝子として記載しています。
💡 用語解説:補体と、珍しい変化
補体は、血液の中で働く免疫のしくみのひとつです。加齢黄斑変性では、補体の働きの乱れが病気に関わると考えられています[6]。大規模な研究では、CFH・CFIなどのとても珍しい遺伝子の変化が、加齢黄斑変性の原因として働いている可能性が示されました[5]。CFH・CFI・C3・CFBは、腎臓の病気である非典型溶血性尿毒症症候群にも関わる遺伝子ですが、関連する病気は見つかった変化によって異なります。結果に応じて、目以外の意味も含めてご説明します。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、19遺伝子の中の小さな変化(1文字の置き換わりや、短い挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
検査は次世代シークエンサー(NGS)で行い、遺伝子の情報が書かれた部分(エクソン)とその境目を読みます。調べる範囲の99%以上を、20回以上重ねて読む精度で調べます。読み取りの質が十分でない場所は別の方法(サンガー法)で確かめ直し、見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べていない場所:遺伝子の働きを調節するプロモーターや、エクソンから20塩基より離れた深いイントロンの変化は、ほとんど検出できません。染色体の入れ替わり(転座・逆位)や、繰り返し配列が伸びる変化も対象外です。
- ●小さな欠失・重複:エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象ではありません。2つ以上続くエクソンの欠失・重複は、血液の検体の場合に検出できます。
- ●RPGRの一部:RPGR遺伝子の「ORF15」という複雑な領域は、多くの変化を見つけられますが、一部の範囲は今の技術で完全には調べきれません。
- ●よく似た配列:偽遺伝子など、よく似た配列がある場所では、まれに判定が難しくなることがあります。
- ●体の一部の細胞だけの変化:体細胞モザイク(体の一部の細胞にだけ変化がある状態)を見つけるようには作られていません。
- ●含まれていない遺伝子:BEST1(ベスト病)・RP1L1(三宅病)・ARMS2(加齢黄斑変性)など、この19遺伝子以外の原因は調べていません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。希望があれば、VUSを報告に載せない方法も選べます(無料)。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、黄斑ジストロフィーではないとは言い切れません。この検査で調べていない遺伝子や場所に原因があることもあります。
7. 結果の受け取り方(陽性・陰性・VUS)
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の見方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
陽性だったとき:病名がはっきりする
病気の原因となる変化が見つかると、病名と遺伝のしかたがはっきりします。潜性遺伝の病気では、2つの変化がそろっているか(それぞれ父・母のどちらから受け継いだか)を確かめるため、ご両親の検査をお勧めすることがあります。病名が確定していることは、指定難病などの制度を使うとき(第9章)や、治験の対象かを確かめるときの手がかりにもなります。
陰性だったとき:次の検査の選択肢
19遺伝子に原因が見つからなかった場合は、第4章の表のように、ベスト病・三宅病などを含む網膜症・視神経萎縮パネルや、包括的眼疾患パネル、全エクソーム検査などを考えます。潜性遺伝の病気で変化が1つしか見つからなかった場合は、もう1つの変化がこの検査で調べていない場所にある可能性も含めて、結果の意味をご説明します。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断やご家族の発症予測、PGT-Mの判断の根拠にはしません。ただし、その変化の意味を調べるために、ご本人・ご家族の同意を得て家族検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針のとおりです。
8. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因がわかるのはゴールではなく、ご本人・ご家族・これから生まれるお子さんのために、次の一手を決めるための出発点です。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、この先ずっと使える情報になります。
① ご本人:見え方を守るために気をつけること
スターガルト病(ABCA4)とわかった方には、強い日差しを長く浴びないこと、紫外線(UVA・UVB)を防ぐ質のよいサングラスをかけること、ビタミンAのサプリメントを避けることが助言されています[1]。これは、ABCA4の働きがないマウスで、強い光や大量のビタミンAによって網膜の傷みが早まったという研究にもとづく助言で[1]、人での臨床試験で確かめられたものではありません。ふだんの食事を制限する必要はありませんので、サプリメントや目の健康食品を使う前に、眼科の主治医にご相談ください。
治療については、病気のしくみに働きかける薬の臨床試験(治験)が複数行われてきました[14]。米国では、開発企業の2026年8月の発表によると、病変の広がりを遅らせることをめざす飲み薬の新薬承認申請が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査の対象になっています(審査の期限は2027年2月)。この発表の時点で、スターガルト病の治療薬としてFDAに承認されたものはまだありません。治験の多くは、原因の遺伝子が確定していることを参加の条件にしています。原因の遺伝子を確かめておくことは、新しい治療が出てきたときに「自分が対象かどうか」をすぐに判断するための準備になります。
見え方の変化にあわせて、拡大読書器や見やすい照明などの補助具、視覚障害の身体障害者手帳などの支援があります。補助具や支援の使い方は、眼科・ロービジョンケアの窓口でご相談ください(当院では眼科の診療は行っていません)。
② 症状のないご本人(家族歴で受けた方・保因者だった方)
ご家族の原因の変化を受け継いでいるとわかった場合は、眼科で定期的に見え方を確かめ、変化に早く気づけるようにします。潜性遺伝の病気の保因者だった方は、ご自身が発症することはふつうありませんが、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。当院の拡大版保因者スクリーニングでは、ABCA4・CNGB3・RLBP1・ERCC6は女性版787遺伝子・男性版714遺伝子の両方に、X連鎖のRPGRは女性版787遺伝子に含まれています(男性版714遺伝子)。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(単独では受けられません)もあります。
③ 子どもを持つときの選択肢
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、子どもを持つときの選択肢が増えます。自然に妊娠したうえで、妊娠中に赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。体外受精でできた受精卵を調べるPGT-M(下の項目)を考える方もいます。何もしないでそのまま妊娠・出産することも、もちろん選べる選択肢です。どの選択も尊重します。なお、この19遺伝子は当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)の対象遺伝子には含まれていません。
④ ご家族:同じ変化を持っているかをピンポイントで
ご本人の原因がわかると、ご両親・きょうだい・お子さん・いとこなどが同じ変化を持っているかを、その場所だけ調べて確かめられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行います。X連鎖のRPGRなら、お母さん・姉妹が保因者かどうかが、そのご家族の将来のお子さんの確率に関わります。あなたの1回の検査が、ご家族が自分の状態を知る手がかりになります。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院には、海外でPGT-Mを受けたいというお問い合わせが多く寄せられています。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。
欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の指針では、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室のもの)、③ご家族の検体、が求められています[15]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読み取れない「アレル・ドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるため、変化のある場所の両側にある目印で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます[15]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。
指針の目安では、ご夫婦に加えて、潜性遺伝(スターガルト病1型など)なら患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方、顕性遺伝なら患者さん少なくとも1人(できれば2人)および/または発症していない方1人、X連鎖(RPGR)なら患者さんおよび/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)の検体が必要とされています[15]。血縁者がいない場合には、ご夫婦で目印を調べたうえで治療周期の受精卵や1個の精子を調べる方法も挙げられていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[15]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断をお伝えすると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[16]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。
PGT-Mの対象になる病気は、国によって違います。日本では症例ごとに学会が審査し、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[17]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。
⑤ 当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご本人の見え方の見通し、ご家族の検査、パートナーの保因者検査、妊娠したときの出生前診断まで、次にどうするかを一緒に考えます。遺伝カウンセリングは30分22,000円(税込)、出生前診断に関する遺伝カウンセリングは30分33,000円(税込)です。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
黄斑ジストロフィーは、指定難病301に指定されています。難病情報センターによると、スタルガルト病(スターガルト病)・ベスト病・錐体-杆体ジストロフィー・X連鎖性若年網膜分離症・オカルト黄斑ジストロフィー(三宅病)・中心性輪紋状網脈絡膜萎縮などが含まれ、厚生労働省の研究班による全国の主な医療機関の調査では、2020年の時点で4,423人が黄斑ジストロフィーと診断されていました(難病情報センター、2026年10月更新の情報で確認)。
医療費の助成を受けるには、認定の基準を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。見え方の変化が進んだ場合の身体障害者手帳などは、お住まいの自治体の福祉の窓口が相談先です。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを受けたあと、ご自宅で採った検体をお送りいただけます。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取唾液・粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の低下を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【「黄斑変性」という名前の中にある、2つの病気】
「黄斑変性」と聞くと、多くの方は高齢の方の病気を思い浮かべます。けれども、同じ名前で呼ばれていても、体質や生活習慣が重なって起こる加齢黄斑変性と、遺伝子の変化1つで起こる黄斑ジストロフィーとでは、遺伝子検査の意味がまったく違います。私は、前者には遺伝子検査を勧めず、後者には原因を確かめる意味が大きいと考えています。若いうちに「黄斑変性」と言われた方が、病名がはっきりしないまま不安を抱えて過ごすのは、もったいないことだと思います。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
目の病気は、ご本人が大人になって、結婚や子どもを持つことを考える病気です。スターガルト病のような潜性遺伝なら、パートナーが保因者でなければお子さんが発症することはふつうありません。顕性遺伝やX連鎖なら、確率がわかったうえで、出生前診断や海外でのPGT-Mまで含めて選ぶことができます。遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 黄斑変性症は遺伝しますか?
病気の種類によって違います。高齢の方に多い加齢黄斑変性は、多くの遺伝子の小さな影響に喫煙・食生活・年齢などが重なって起こる病気で、子どもに伝わる確率を数字で示すことはできません。一方、黄斑ジストロフィー(スターガルト病など)は遺伝子の変化1つで起こる病気で、遺伝のしかた(潜性・顕性・X連鎖)によって、子どもに伝わる確率が決まります。
Q2. 加齢黄斑変性のなりやすさは、この遺伝子検査でわかりますか?
この検査は、なりやすさを点数で出す検査ではありません。加齢黄斑変性で大きな影響をもつARMS2遺伝子は対象に含まれておらず、HTRA1でよく知られた変化はこの検査が読む範囲の外にあります。米国眼科学会の専門委員会も、加齢黄斑変性のような遺伝的に複雑な病気には、日常の診療で遺伝子検査をしないよう勧めています。眼科での定期的な検査と禁煙が大切です。
Q3. スターガルト病は何歳ごろ発症しますか?
見え方の変化が始まるのは子どものうちが最も多く、次に多いのが若い大人の時期で、大人になってから遅く始まる方は少数です。遅く始まる方ほど、見え方の見通しはよい傾向があるとされています。英国の調査では、受診したときの年齢の中央値は27歳でした。
Q4. スターガルト病は失明しますか?
スターガルト病は、見たいところの中心の視力が下がる病気で、周りの視野は保たれることが多い病気です。どこまで進むかは、見え方の変化が始まった年齢や原因の変化の種類によって大きく違います。見通しは眼科の主治医とご相談ください。遺伝子で原因を確かめておくと、治験など新しい治療の対象かを判断する手がかりにもなります。
Q5. 黄斑ジストロフィーが子どもに遺伝する確率は?
原因の遺伝子と遺伝のしかたで決まります。スターガルト病1型(ABCA4)のような潜性遺伝なら、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんは保因者にはなっても発症しません。顕性遺伝なら、お子さん1人ごとに2分の1です。X連鎖(RPGR)なら、お父さんが患者さんの場合、息子さんには伝わらず、娘さんは全員保因者になります。
Q6. 黄斑ジストロフィーは結婚に差し支えますか?
病気があることは、結婚できない理由にはなりません。遺伝の確率は病気の型によってまったく違い、遺伝子検査でご本人の原因を確かめ、必要ならパートナーの保因者検査を行えば、ご夫婦ごとの見通しがわかります。そのうえで、出生前診断や海外でのPGT-Mを含めて選ぶことができます。
Q7. 黄斑ジストロフィーは指定難病ですか?
はい。黄斑ジストロフィーは指定難病301です。難病情報センターによると、スタルガルト病(スターガルト病)・ベスト病・錐体-杆体ジストロフィー・X連鎖性若年網膜分離症・オカルト黄斑ジストロフィー(三宅病)・中心性輪紋状網脈絡膜萎縮などが含まれます(2026年10月時点)。医療費の助成を受けるには、認定の基準を満たして申請する必要があります。
Q8. ベスト病や三宅病もこの検査で調べられますか?
調べられません。ベスト病の原因のBEST1遺伝子と、三宅病(オカルト黄斑ジストロフィー)の原因のRP1L1遺伝子は、この19遺伝子に含まれていません。どちらも当院の網膜症・視神経萎縮遺伝子パネル検査(278遺伝子)に含まれていますので、そちらをお選びください。
Q9. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。PGT-Mの準備には、ご本人の結果に加えてご家族の検体が必要になることがふつうです。くわしくは、海外でPGT-Mを考えている方向けのページで解説しています。
🧬 若いうちの「黄斑変性」は、原因を確かめることから
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。黄斑ジストロフィーの原因がわかれば、生活で気をつけること・治験の対象かどうか・ご家族の検査・お子さんに伝わる確率まで、具体的に考えられるようになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、パートナーの保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
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