この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

白点状眼底(はくてんじょうがんてい)は、眼底に白い小さな点がたくさん見え、子どものころから暗い所で見えにくい(夜盲)遺伝性の網膜の病気です。眼底に白い点や斑点が見える病気は「斑状網膜(Flecked Retina)」とまとめて呼ばれ、白点状網膜症・黄色斑眼底(スターガルト病)・クリスタリン網膜症・コロイデレミア・若年網膜分離症など、見た目が似ていても原因の遺伝子が違う病気が含まれます。夜盲はあってもほとんど進まない型もあれば、年齢とともに見え方が落ちていく型もあり、型によって見通しはまったく違います。このページでは、14の遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査で何がわかり、わかったあとに何ができるかを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
白点状眼底(RDH5など)・白点状網膜症(RLBP1)・黄色斑眼底やスターガルト病(ABCA4)・クリスタリン網膜症(CYP4V2)・コロイデレミア(CHM)・若年網膜分離症(RS1)など、眼底に白い点や斑点が見える病気の原因14遺伝子を一度に調べ、どの型かを確かめます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
眼科で眼底の白い点・斑点を指摘された方、子どものころから夜に見えにくい(夜盲症)のに原因がはっきりしない方、ご家族に同じ目の病気の人がいて、ご自身やお子さんへの遺伝が気になる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療にも対応しています。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。型がわかると、見え方の見通し、気をつけたいこと、お子さんやご家族に遺伝する確率が具体的になります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 白点状眼底(斑状網膜)とは:眼底の白い点と夜盲の原因になる病気のグループ
白点状眼底(眼底白点症、英語ではfundus albipunctatus)は、生まれつき暗い所で見えにくい「夜盲」があり、眼底に小さな白い点が散らばって見える病気です[1]。眼底に白〜黄色の点や斑点が見える遺伝性の網膜の病気をまとめて「斑状網膜(Flecked Retina)」と呼び、白点状眼底はその代表的な病気のひとつです。
眼底の斑点は眼科の診察で見つかりますが、見た目が似ていても、原因の遺伝子が違えば、進み方も、ご家族への遺伝のしかたも違います。このページの遺伝子検査は、その「どの型か」を確かめるためのものです。
白点状眼底(眼底白点症):夜盲が中心で、多くは進みにくい型
白点状眼底の原因として最も多いのはRDH5遺伝子です。RDH5は、光を感じた視物質を元に戻す「視覚サイクル」で働く酵素(11-シス-レチノール脱水素酵素)を作る遺伝子で、ほかにRLBP1遺伝子などでも起こることが知られています[1]。
白点状眼底の特徴は、暗い所に目が慣れる(暗順応)までにとても長い時間がかかることです。ふつうの網膜電図(ERG)の検査の暗順応の時間(20〜40分ほど)では暗い所で働く細胞(杆体)の反応が弱く出ますが、時間をかけて暗順応すると反応が正常に近づくのが典型的です。報告された1人の患者さんでは、120分の暗順応で反応が正常になりました。ただし、数時間かけてもほとんど変わらない方もいます[1]。
夜盲そのものは多くの場合あまり進みませんが、年齢が上がると、見る中心(黄斑)や色・細かいものを見る細胞(錐体)の働きが落ちていく方がいます。日本の白点状眼底の患者さん14人(12家系)を調べた研究では、全員にRDH5の変化があり、6人に錐体ジストロフィーが見られ、40歳を超えた方に多いという結果でした[3]。日本のより大きな研究(25人・22家系)では、OCT(網膜の断面を見る検査)で12人に黄斑の変化が見られ、年齢の高い方に多い一方で、44眼(88.0%)が良い視力(logMAR 0.10以下)を保っていました[2]。
💡 日本人に多い変化:RDH5のp.L310delinsEV
日本のRDH5による白点状眼底の研究では、見つかった変化のうち最も多かったのがp.L310delinsEVで、46アレルのうち30アレル(65.2%)を占めていました[2]。日本人の白点状眼底では、原因の変化に偏りがあることを示す結果です。
白点状網膜症など、RLBP1による型
RLBP1遺伝子の変化は、眼底に白い点が見える白点状網膜症のほか、Bothnia型網膜ジストロフィーやニューファンドランド型杆体錐体ジストロフィーといった杆体錐体ジストロフィーの型の原因になり、白点状眼底の原因になることもあります(OMIM・GenCCなどで確認)。白点状眼底の原因としては、RDH5よりずっと少ないとされています[1]。
同じ「白い点」でも、RDH5による白点状眼底と、RLBP1による杆体錐体ジストロフィーの型とでは、見通しの立て方が違います。眼底の見た目だけで区別しきれないときに、遺伝子で原因を確かめる意味があります。
そのほかに眼底に斑点が見える遺伝性の病気
このパネルでは、白点状眼底のほかにも、眼底に白〜黄色の斑点や結晶が見える病気や、夜盲を起こす網膜の病気の原因遺伝子をあわせて調べます。主なものは次のとおりです。
- ●黄色斑眼底・スターガルト病(ABCA4):網膜に黄白色の斑点が出て、見る中心(黄斑)が傷み、中心の見え方が落ちていきます。スターガルト病は最も多い遺伝性の黄斑ジストロフィーで、8,000〜10,000人に1人とされています[7]。
- ●クリスタリン網膜症(ビエッティ結晶性網膜症、CYP4V2):網膜(と角膜の縁)に、きらきらした結晶状の沈着が見える潜性遺伝の病気です。原因のCYP4V2遺伝子は2004年に見つかり、調べた25人のうち23人でこの遺伝子の変化が見つかりました[6]。
- ●コロイデレミア(CHM):X連鎖の病気で、主に男性に起こります。子ども時代(多くは思春期前)の夜盲から始まり、周りの視野が欠けていき、50〜70歳ごろに中心の見え方も大きく落ちるとされています。5万〜10万人に1人と推定されています[8]。※コロイデレミアは、脈絡膜欠損(コロボーマ)とは別の病気です。
- ●若年網膜分離症(X連鎖性網膜分離症、RS1):網膜の層が裂けるように分かれる病気で、主に男の子に起こります。10歳までに見つかることが多く、小学校に入るころに視力の低さで気づかれることが多いとされています。5,000〜25,000人に1人と推定されています[9]。
- ●良性家族性斑状網膜(PLA2G5):網膜に黄白色の斑点が見えますが、報告された7人はいずれも見え方にも網膜電図にも異常がありませんでした[5]。
- ●コーエン症候群(VPS13B):網膜ジストロフィーと強い近視に、知的障害・小頭症・好中球減少などをともなう全身の病気です。網膜の病気は小学生のころまでに現れることが多く、夜盲は7歳ごろ以降に気づかれることが多いとされています[10]。
- ●そのほか:網膜色素変性症・先天停止性夜盲の原因になるRHO、網膜色素変性症や黄斑ジストロフィーなど多くの病気の原因になるPRPH2・PROM1、ドルーゼン(網膜の下の沈着物)が多発する黄斑の病気のEFEMP1、スターガルト病3型のELOVL4、レーバー先天黒内障14型などのLRATも調べます(第4章の表)。
型によって見通しが大きく違う
「眼底に斑点がある」という同じ所見でも、見え方にほとんど影響しない型から、年齢とともに見え方が落ちていく型まであります。どの型かがわかることが、これからの見通しを立てる出発点になります。
🔭 斑状網膜の主な型と見通しの目安
※同じ型でも、症状の重さや進み方には個人差があります。見通しは、眼科の検査結果とあわせて考えます。
2. 夜盲症の原因は遺伝?ビタミンA不足との見分けと、遺伝子検査が役立つ場面
夜盲症(夜盲、いわゆる鳥目)は、暗い所で見えにくくなる症状の名前で、原因はひとつではありません。ビタミンAが足りないときにも起こり、世界保健機関(WHO)は、夜盲をビタミンA不足を評価する目安のひとつとして扱っています(2014年の資料)。一方で、白点状眼底・網膜色素変性症・コロイデレミアのように、網膜そのものの遺伝性の病気で起こる夜盲もあります。
まずは眼科で、眼底の診察・視野・網膜電図などの検査を受けることが出発点です。そのうえで、子どものころから夜盲があり、眼底に白い点や斑点がある、ご家族に同じ症状の方がいる、といった場合は、遺伝子検査で型を確かめる意味が大きくなります。先天性の夜盲の中には、このページのパネルの対象ではない病気もあるため、どの検査を選ぶかは第3章の表を参考にしてください。
3. 白点状眼底の遺伝子検査を受けるとよい人
眼底の白い点・斑点を指摘された方や、原因のはっきりしない夜盲がある方、ご家族に同じ目の病気がある方に向く検査です。症状だけでは型を見分けにくいことが多く、遺伝子で確かめることで、病院を回り続ける時間を短くできる可能性があります。
こんな方に向いています
- ●眼科で「眼底に白い点(斑点)がある」「白点状眼底・斑状網膜の疑い」と言われた方
- ●子どものころから暗い所で見えにくく、原因がはっきりしない方
- ●黄色斑眼底・スターガルト病・コロイデレミア・若年網膜分離症などと言われ、原因の遺伝子を確かめたい方
- ●ご家族に同じ目の病気の方がいて、ご自身やお子さんへの遺伝が気になる方
- ●結婚や妊娠を考えていて、ご自身が原因の変化をもっているかを知っておきたい方
別の検査が向いている場合:眼の検査ページの選び方
眼底の斑点や夜盲が中心ならこのページの検査、症状がほかの網膜の病気に近い・目の症状が多い場合は、次の検査のほうが向いていることがあります。比べているのは検査の種類で、どれが合うかは眼科の所見で変わります。
🔍 症状・病名から選ぶ眼の遺伝子検査
※どの検査が合うかは、眼科の診察・検査の結果やご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
ご家族に同じ病気の人がいて「自分も見えなくなるのでは」と不安な方へ
親やきょうだいが目の病気と診断されると、夕方に見えにくいと感じるたびに「自分も始まったのでは」と不安になりながら暮らしている方もいます。ご家族の原因の遺伝子の変化がわかっていれば、ご自身がその変化を受け継いでいるかを、ピンポイントで調べられます。
受け継いでいないとわかれば、その病気について、ご家族と同じ確率を心配する必要はなくなります。受け継いでいるとわかった場合は、眼科での定期的な検査や、生活で気をつけたいこと(第7章)を前もって計画できます。知らないでいることも、同じように選べる選択肢です。検査の前後で、臨床遺伝専門医と時間をかけて考えていただけます。
4. 調べる14遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、斑状網膜に関係する14の遺伝子(ABCA4・CHM・CYP4V2・EFEMP1・ELOVL4・LRAT・PLA2G5・PROM1・PRPH2・RDH5・RHO・RLBP1・RS1・VPS13B)をまとめて調べます。遺伝子を1つずつ順番に調べるのではなく、一度の検査で14遺伝子を同時に確かめます。
🧬 斑状網膜(白点状眼底)パネルで調べる14遺伝子
※関係する病気と遺伝のしかたは、OMIM(ヒトの遺伝性疾患のデータベース)の分類にもとづき、UniProt・GenCCなどの公的データベースでも確かめたもの(2026年10月時点)。同じ遺伝子でも、変化の種類によって病気や遺伝のしかたが変わることがあります。「潜性」は劣性、「顕性」は優性と同じ意味です。
5. 白点状眼底は遺伝する?子どもに遺伝する確率と遺伝のしかた
白点状眼底は常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で、ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します[1]。ただし、このパネルの14遺伝子には、潜性・顕性・X連鎖のすべての遺伝のしかたが含まれていて、子どもに遺伝する確率は原因の遺伝子で大きく変わります。だからこそ、どの遺伝子かを知ることに意味があります。
常染色体潜性(劣性)遺伝:白点状眼底・スターガルト病など
常染色体潜性(劣性)遺伝では、同じ遺伝子の2本のコピーの両方に変化があると発症します。片方だけに変化をもつ方は「保因者」で、ふつうは症状がありません。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1、どちらも受け継がない確率は4分の1です。保因者のしくみは劣性遺伝(潜性遺伝)と保因者のしくみで詳しく解説しています。
ご本人が発症している場合でも、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんは保因者にはなりますが、ふつうは発症しません。そのため、潜性遺伝の病気では、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを調べることが、お子さんの確率を知る鍵になります。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の遺伝子一覧には、このパネルのうちABCA4・CHM・LRAT・RDH5・RLBP1・RS1・VPS13Bが含まれています(CYP4V2・PLA2G5は含まれていません。2026年10月時点で一覧を確認)。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスもあります(単独では受けられません)。
常染色体顕性(優性)遺伝:PRPH2・EFEMP1・ELOVL4など
常染色体顕性(優性)遺伝では、2本のうち1本に変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。同じ変化をもっていても、症状の重さが人によって違うことがあり、親御さんの症状が軽いからといって、お子さんも軽いとは限りません。
X連鎖:コロイデレミア・若年網膜分離症
X連鎖の病気は、X染色体にある遺伝子の変化で起こり、主に男性が発症します。誰が変化をもっているかで、お子さんへの確率がまったく違います[8][9]。
- ●お母さんが保因者のとき:妊娠ごとに2分の1の確率で変化を受け継ぎます。受け継いだ男の子は発症し、受け継いだ女の子は保因者になります。
- ●お父さんが発症しているとき:娘さんは全員が保因者になり、息子さんは受け継ぎません。
コロイデレミアの保因者の女性は、ふつうは症状がありませんが、詳しい眼底の検査で色素の変化などが見られることがあり、年齢が上がってから夜盲や視野の欠けが出る方もいます[8]。若年網膜分離症の保因者の女性は、ほとんどの場合、眼底も見え方も正常とされています[9]。
家族に網膜の病気の人がいると、結婚に差し支える?
目の病気があること、ご家族に目の病気の人がいることは、結婚できない理由にはなりません。お子さんに遺伝する確率は、病気の種類と、ご家族の誰がどの変化をもっているかで大きく違い、「遺伝するかもしれない」というあいまいな不安の多くは、調べれば具体的な数字に置き換えられます。
たとえば潜性遺伝の病気なら、パートナーの保因者検査でお子さんの確率がわかります。知ったうえで、自然に妊娠して出生前診断を受ける、そのまま産む、といった選び方ができます。どの選択も尊重されるべきもので、反対する側も、される側も、責められるものではありません。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、14遺伝子の小さな変化(1つの文字の置き換わりや、小さな欠けや挿入)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、遺伝子検査とはどの方法にも限界があり、この検査にも次のような限界があります。
- ●調べる場所:遺伝子の中でタンパク質の設計図になる部分と、そのつなぎ目を読みます。遺伝子の働きを調節する場所(プロモーター)や、つなぎ目から20塩基より奥の場所(深いイントロン)の変化は、ほとんど調べられません。
- ●欠失・重複:遺伝子まるごと、または2つ以上続くエクソン(血液の検体の場合)の欠失・重複を調べます。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べられない変化:染色体の一部が入れ替わる転座や逆位、繰り返し配列の伸長、体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)は、この検査の対象外です。
- ●似た配列:よく似た配列(偽遺伝子など)があると、まれに正しく読み分けられないことがあります。読み取りの質が低い場所は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
- ●調べていない遺伝子:14遺伝子以外の原因は調べていません。夜盲や網膜の病気の原因には、ほかの遺伝子もあります。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうかまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で検出できない原因が残る可能性があります。
調べた目的とは別の病気の原因が見つかることがあります(二次的所見)。当院での扱いは二次的所見の開示方針をご覧ください。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかると、「どの型か」が決まり、これからの見通しと、ご本人・ご家族・次のお子さんのためにできることが具体的になります。立場ごとに整理します。
① ご本人(症状がある方)
病名と型が決まり、見通しが立ちます。たとえば白点状眼底なら、夜盲はあまり進まないことが多い一方で、年齢とともに黄斑や錐体の働きが落ちる方がいるため、眼科で黄斑の状態を見ていくことが大切になります[1][2]。若年網膜分離症なら、網膜剥離や硝子体出血を減らすため、頭をぶつけることや激しい接触のあるスポーツを避けることが勧められています[9]。スターガルト病(ABCA4)では、動物の研究をもとに、ビタミンAのサプリメントを避けること、強い日差しを避けて紫外線を防ぐサングラスを使うことが勧められています[7]。コーエン症候群(VPS13B)とわかれば、目だけでなく、年1回の眼科の検査と血液検査(好中球の数)など、全身の見張りにつながります[10]。
治療の研究も進められています。白点状眼底では、7人の患者さんに9-シス-β-カロテンを90日間飲んでもらった小規模な研究で、視野と網膜電図の改善が報告されました。ただし比較の対象を置かない第1相の研究で、まだ確立した治療ではありません[4]。コロイデレミアでは遺伝子治療の第3相試験(STAR試験)が行われましたが、開発企業は2021年6月に、主な評価項目を達成しなかったと発表しています。治療・治験の対象になるかは、病気と遺伝子によって違うため、眼科の主治医や専門の医療機関でご確認ください。
見え方に不自由があるときは、拡大鏡やまぶしさを抑える眼鏡などを使うロービジョンケアを眼科で相談できます。また、身体障害者手帳の視覚障害の等級は、視力と視野の両方で決められています。対象になるかは、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
② 症状のないご本人(保因者だった方・家族歴で受けた方)
潜性遺伝の病気の保因者だった場合、ご自身はふつう発症しません。お子さんのことを考えるときは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを確かめることが次の一歩です(第5章)。X連鎖の病気の保因者の女性は、息子さんへの確率が2分の1になるため、妊娠を考える段階から計画できます。
③ 子どもを持つときに選べること
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ただし、出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断するため、妊娠を考えている段階からご相談ください(羊水検査・絨毛検査)。日本でも、日本産科婦人科学会の指針(2026年9月改定)にもとづく審査を経て、着床前遺伝学的検査(PGT-M)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。何もせずに自然に妊娠・出産することも、同じように選べる選択肢です。
④ ご家族
ご本人の原因がわかると、きょうだい・ご両親・ほかの血縁の方は、同じ変化をもっているかをピンポイントで調べられます。X連鎖の病気では、お母さんや女のきょうだいが保因者かどうかを確かめることが、次の世代を考える手がかりになります。症状のない方の検査は、ご本人の同意のうえで行います。
⑤ 当院でのその後
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
陰性だったとき・VUSが見つかったとき
14遺伝子に原因が見つからなかった場合でも、病気が否定されたわけではありません(第6章)。眼科の所見に合わせて、より多くの遺伝子を調べる包括的眼疾患パネルや全エクソーム検査(WES)を考えます。VUSは、それだけで診断やご家族の発症リスクの判断には使いません。ただし、その変化が病気の原因かを検討するため、ご本人・ご家族の同意のもとで家族解析を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
網膜の遺伝性の病気では、網膜色素変性症(指定難病90)と黄斑ジストロフィー(指定難病301)が指定難病です。医薬基盤・健康・栄養研究所の難病の情報データベースでは、黄斑ジストロフィー(指定難病301)にスターガルト病と若年網膜分離症(X連鎖性)が含まれ、網膜色素変性症(指定難病90)には杆体ジストロフィ・杆体錐体ジストロフィが関連する病名として載っています(2026年10月時点で確認)。
白点状眼底やコロイデレミアなどがどの病名で対象になるかは、診断名・診断基準・重症度によって個別に判断されます。網膜色素変性症の重症度分類では、良い方の眼の矯正視力と視野の狭さで程度を分け、医療費の助成の対象はII度以上とされています。申請できるかは、眼科の主治医と、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・口の粘膜など
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。ご自身の判断で検体を採らないでください。決められた手順で採らないと、検体の取り違えや品質の問題で、正しい結果が出せなくなるおそれがあるためです。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【同じ「白い点」でも、未来は型で変わる】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
眼底に白い点がある、と言われたとき、多くの方は「このまま見えなくなるのでは」と考えます。けれども、このページで見てきたように、斑状網膜は、見え方にほとんど影響しない型から、年齢とともに見え方が落ちていく型まで幅の広いグループです。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査で型がわかれば、その情報は、ご自身の見え方の見通しにも、ご家族やこれからのお子さんのことを考えるときにも、ずっと使えます。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。結婚や妊娠を考える方には、パートナーの保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 白点状眼底は進行しますか?失明しますか?
白点状眼底の夜盲そのものは、多くの場合あまり進まないとされています。一方で、年齢が上がると黄斑や錐体の働きが落ちていく方がいます。日本の25人の研究では、OCTで12人に黄斑の変化が見られましたが、44眼(88.0%)は良い視力を保っていました。型や年齢によって違うため、眼科で定期的に黄斑の状態を確かめていくことが大切です。
Q2. 白点状眼底に治療はありますか?
確立した治療はまだありません。7人の患者さんに9-シス-β-カロテンを90日間飲んでもらった小規模な研究で、視野と網膜電図の改善が報告されていますが、比較の対象を置かない第1相の研究で、まだ研究の段階です。見え方に不自由があるときは、眼科でロービジョンケアを相談できます。
Q3. 夜盲症は遺伝しますか?
夜盲症の原因はひとつではなく、ビタミンAの不足でも起こります。一方で、白点状眼底・網膜色素変性症・コロイデレミアのように、遺伝性の網膜の病気で起こる夜盲もあります。子どものころから夜盲があり、眼底に白い点や斑点がある場合やご家族に同じ症状の方がいる場合は、遺伝子検査で原因を確かめる意味があります。
Q4. 子どもに遺伝する確率はどれくらいですか?
原因の遺伝子で大きく変わります。白点状眼底のような常染色体潜性(劣性)遺伝では、ご両親がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1です。常染色体顕性(優性)遺伝では2分の1です。X連鎖のコロイデレミアや若年網膜分離症では、お母さんが保因者なら妊娠ごとに2分の1の確率で変化を受け継ぎ、お父さんが発症していれば娘さんは全員が保因者、息子さんは受け継ぎません。
Q5. 家族に網膜の病気の人がいると、結婚に差し支えますか?
目の病気があること、ご家族に目の病気の人がいることは、結婚できない理由にはなりません。お子さんに遺伝する確率は、病気の種類と、ご家族の誰がどの変化をもっているかで大きく違い、調べれば具体的になります。潜性遺伝の病気なら、パートナーの保因者検査でお子さんの確率がわかり、知ったうえで出生前診断などを選ぶこともできます。
Q6. 検査で原因が見つからなかったら、どうなりますか?
原因が見つからなくても、病気が否定されたわけではありません。この検査で調べられない種類の変化や、14遺伝子以外の原因の可能性があるためです。眼科の所見に合わせて、より多くの遺伝子を調べる包括的眼疾患パネルや全エクソーム検査を考えます。
Q7. 費用はいくらですか?保険は使えますか?
検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。結果までは2〜3週間です。
Q8. 「白点状眼底」は何と読みますか?
「はくてんじょうがんてい」と読みます。眼底白点症(がんていはくてんしょう)とも呼ばれ、英語ではfundus albipunctatusといいます。
🧬 一度の検査で、見え方の見通しとご家族のこれからを
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。白点状眼底(斑状網膜)の型がわかれば、ご自身の見え方の見通しや気をつけたいことだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、パートナーの保因者検査、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Skorczyk-Werner A, Pawłowski P, Michalczuk M, et al. Fundus albipunctatus: review of the literature and report of a novel RDH5 gene mutation affecting the invariant tyrosine (p.Tyr175Phe). J Appl Genet. 2015;56:317-327. [DOI: 10.1007/s13353-015-0281-x]
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- [3] Nakamura M, Hotta Y, Tanikawa A, Terasaki H, Miyake Y. A high association with cone dystrophy in Fundus albipunctatus caused by mutations of the RDH5 gene. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2000;41(12):3925-3932. [PMID: 11053295]
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