目次
出生前診断でわかること・わからないこと
臨床遺伝専門医がわかりやすく解説
Q. 出生前診断で赤ちゃんの障害はすべてわかりますか?
A. いいえ、すべてはわかりません。出生前診断でわかるのは染色体異常や一部の遺伝子疾患のみです。自閉症・発達障害・知的障害の多くは検査できません。基本的には自立して生活することに支障が出るレベルの重篤な疾患のみが出生前診断の対象となります。
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わからないこと → 自閉症・発達障害・知的障害の多く、すべての先天異常 -
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従来NIPTの限界 → 微小欠失の陽性的中率わずか約70%(偽陽性が多い) -
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COATE法の革新 → 微小欠失・単一遺伝子疾患の陽性的中率99.9%以上 -
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ダイヤモンドプラン → 染色体+微小欠失+56の単一遺伝子(30以上の疾患)を網羅
1. 出生前診断でわかること一覧
【結論】 出生前診断でわかるのは、染色体異常(数的異常・構造異常)と一部の単一遺伝子疾患です。基本的には自立して生活することに支障が出るレベルの重篤な疾患のみが対象となります。
「出生前診断で赤ちゃんの病気がわかるって聞いたけど、どこまでわかるの?」そんな疑問を持ってこのページをご覧になっている方も多いでしょう。まず大切なのは、出生前診断には「わかること」と「わからないこと」があるという事実を理解することです。
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性染色体異常:ターナー症候群(45,X)、クラインフェルター症候群(47,XXY)など
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微小欠失症候群:22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)、1p36欠失症候群など
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単一遺伝子疾患(一部):ヌーナン症候群、軟骨無形成症、結節性硬化症など
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超音波でわかる形態異常:心臓の構造異常、四肢の異常、水頭症など
💡 トリソミーとは?
通常、人間の染色体は2本ずつペアになっていますが、特定の染色体が3本になっている状態を「トリソミー」と呼びます。21番染色体が3本あるのがダウン症候群(21トリソミー)です。
検査方法別にわかること
| 検査方法 | 検査時期 | わかること | 精度 |
|---|---|---|---|
| NIPT | 妊娠10週〜 | 染色体異常・微小欠失・単一遺伝子疾患 | スクリーニング |
| コンバインド検査 | 11〜13週 | 染色体異常の確率 | スクリーニング |
| 羊水検査 | 15〜18週 | 染色体異常・遺伝子異常 | 確定診断 |
| 絨毛検査 | 11〜14週 | 染色体異常・遺伝子異常 | 確定診断 |
| 胎児超音波検査 | 妊娠全期間 | 形態異常(心臓・脳・四肢など) | 観察による判断 |
2. 出生前診断でわからないこと
【結論】 出生前診断では、自閉症・発達障害・知的障害の多く、すべての先天異常・遺伝子異常は検出できません。出生後にわかる疾患のほうが圧倒的に多いのが現実です。
「出生前診断を受ければ安心」と思いがちですが、すべての障害や疾患がわかるわけではありません。これは検査の限界であり、現在の医学でもまだ解明されていないことが多いためです。
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自閉スペクトラム症(ASD)の大部分(単一遺伝子に起因しないもの)
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発達障害(ADHD、学習障害など)
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多因子遺伝性の知的障害(遺伝と環境が複合的に関与)
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脳性麻痺(主に周産期の要因による)
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すべての単一遺伝子疾患(数万種類あり、すべては検査できない)
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出生後の環境要因による障害(感染症、事故など)
💡 先天異常のうち検出できる割合は?
先天異常は全出生の約3〜5%に見られますが、そのうち染色体異常は約0.5〜0.6%程度です。つまり、出生前診断で検出できるのは先天異常全体の一部にすぎません。検査を受けて「陰性」でも、100%安心というわけではないことを理解しておきましょう。
3. 自閉症・発達障害は出生前診断でわかる?
【結論】 一般的な自閉症・発達障害の多くは出生前診断ではわかりません。ただし、重度の知的障害を伴う「症候群性自閉症」の一部は、単一遺伝子検査で検出可能です。
「出生前診断で自閉症がわかりますか?」これは非常に多いご質問です。結論から言うと、一般的な自閉スペクトラム症(ASD)は出生前診断では検出できません。その理由と、例外的にわかるケースについて解説します。
自閉症が出生前診断でわからない理由
多因子遺伝である
自閉症の多くは、数百〜数千の遺伝子が複合的に関与し、さらに環境要因も影響します。単一の遺伝子で決まるわけではないため、遺伝子検査では検出できません。
発達を見て診断される
自閉症は、生後の発達過程(言葉、コミュニケーション、行動パターン)を観察して診断されます。胎児の段階ではこれらを評価することは不可能です。
💡 症候群性自閉症とは?
自閉症の約10〜20%は、特定の遺伝子変異や染色体異常に起因する「症候群性自閉症」です。これらは多くの場合、重度の知的障害や身体的合併症を伴い、単一遺伝子検査で検出可能な場合があります。代表例として、レット症候群(MECP2遺伝子)、結節性硬化症(TSC1/TSC2遺伝子)などがあります。
出生前診断で検出可能な「症候群性自閉症」の原因疾患
以下の疾患は、重度の自閉症状や知的障害を伴うことが多く、当院のダイヤモンドプランで検査可能です。
| 疾患名 | 原因遺伝子 | 主な症状 |
|---|---|---|
| レット症候群 | MECP2 | 重度知的障害、自閉症状、手の常同運動 |
| 結節性硬化症 | TSC1/TSC2 | 自閉症、てんかん、皮膚腫瘍 |
| ヌーナン症候群 | PTPN11など | 心疾患、発達遅延、特徴的顔貌 |
| コルネリア・デランゲ症候群 | NIPBL/SMC1A/SMC3 | 重度知的障害、自閉症状、成長障害 |
| CDKL5欠損症 | CDKL5 | 難治性てんかん、重度発達遅滞 |
🩺 院長コラム【「自閉症は検査できますか?」への回答】
「自閉症は出生前診断でわかりますか?」というご質問は本当に多くいただきます。結論から申し上げると、一般的な自閉症の大部分は検査できません。
ただし重要なのは、「症候群性自閉症」と呼ばれる、重度の知的障害を伴うタイプは検査可能だということです。これらは単一遺伝子の変異が原因であり、当院のダイヤモンドプランで56の遺伝子を調べることで検出できます。
基本的に出生前診断の対象となるのは、自立して生活することに支障が出るレベルの重篤な疾患です。「軽度の発達特性」や「個性の範囲」といえるものは、そもそも出生前診断の対象にはなりません。
4. 従来NIPTの限界|偽陽性の問題
【結論】 従来のNIPTには大きな限界があります。特に微小欠失症候群の陽性的中率はわずか約70%で、陽性と出ても約3割が偽陽性(実際は異常なし)です。また、父親由来の新規突然変異(de novo変異)は検出できません。
NIPTは非常に優れた検査ですが、すべてのNIPTが同じ精度というわけではありません。検査方法によって精度に大きな差があり、特に微小欠失や単一遺伝子疾患の検出においては、従来法には大きな限界があります。
従来NIPTの問題点
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①
微小欠失の偽陽性が多い
全ゲノム解析法では、微小欠失症候群の陽性的中率(PPV)は約70%程度。陽性と出ても10人中3人は実際には異常がありません。 -
②
限局性胎盤モザイク(CPM)の影響
胎盤と胎児で染色体構成が異なる場合、偽陽性や偽陰性の原因になります。特に7番染色体などで問題になりやすいです。 -
③
父親由来の新規変異が検出できない
単一遺伝子疾患の約80%は父親由来の新規突然変異(de novo変異)ですが、従来法では検出不可能です。 -
④
検査項目が限定的
多くのNIPTは3つのトリソミー(21/18/13)のみ。微小欠失や単一遺伝子疾患は検査対象外のことが多いです。
💡 de novo変異(新規突然変異)とは?
両親にはない遺伝子変異が、精子や卵子の形成時に新たに生じることを「de novo変異」と呼びます。単一遺伝子疾患の約80%はこのde novo変異が原因です。特に父親の年齢が高いほどリスクが上昇します。従来のNIPTでは母体血中のDNAしか見られないため、父親由来の変異は検出できません。

5. COATE法の革新|従来NIPTの限界を克服
【結論】 COATE法は従来NIPTの限界を克服した革新的技術です。微小欠失・単一遺伝子疾患の陽性的中率99.9%以上を実現し、父親由来のde novo変異も検出可能です。
当院では、従来NIPTの問題点を解決するため、COATE法(COmbined Accurate Targeted Enrichment)を採用しています。この技術により、これまで検出困難だった疾患も高精度で検査可能になりました。
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SNP解析+ターゲット融合技術:母体と胎児のDNAを高精度で区別し、偽陽性を大幅に削減
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陽性的中率99.9%以上:微小欠失・単一遺伝子疾患で従来法の約70%から大幅改善
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父親由来のde novo変異を検出:従来法では不可能だった新規突然変異も検査可能
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胎児DNA濃度(FF)3%から検査可能:妊娠早期や肥満の方でも検査しやすい
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胞状奇胎・三倍体・バニシングツインも検出:従来法では見落としがちな異常も発見
従来法とCOATE法の比較
| 比較項目 | 従来法(全ゲノム解析) | COATE法 |
|---|---|---|
| 微小欠失の陽性的中率 | 約70% | 99.9%以上 |
| 父親由来のde novo変異 | 検出不可 | 検出可能 |
| 必要な胎児DNA濃度 | 4%以上 | 3%以上 |
| 胞状奇胎・三倍体 | 検出困難 | 検出可能 |
| 単一遺伝子疾患 | 対象外 | 56遺伝子を検査可能 |
COATE法のエビデンスについて詳しくは、COATE法のエビデンス解説ページをご覧ください。
6. ダイヤモンドプラン|最も包括的な出生前診断
【結論】 ダイヤモンドプランは、染色体異常+微小欠失12種+56の単一遺伝子(30以上の疾患)を網羅する、日本で最も包括的なNIPTプランです。ダウン症(#1)、ヌーナン症候群(#2)、ディジョージ症候群(#3)の頻度上位3疾患すべてをカバーします。
「できる限り多くの疾患を調べたい」「何かあったら早めに知っておきたい」そんな方に選ばれているのが、ダイヤモンドプランです。出生前診断で検査可能な疾患を、現時点で最も広くカバーしており、当院で最も人気のあるプランです。
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①
常染色体トリソミー6種:13, 15, 16, 18, 21, 22番染色体
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②
性染色体異常4種:45,X / 47,XXX / 47,XXY / 47,XYY
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③
微小欠失症候群12種:1p36欠失、2q33欠失、4p16欠失(ウルフ・ヒルシュホーン症候群)、5p15欠失(猫鳴き症候群)、8q23q24欠失、9p欠失、11q23q25欠失(ヤコブセン症候群)、15q11.2-q13欠失(プラダーウィリ/アンジェルマン症候群)、17p11.2欠失(スミス・マゲニス症候群)、18p欠失、18q22q23欠失、22q11.2欠失(ディジョージ症候群)
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④
単一遺伝子56種(30以上の疾患):ヌーナン症候群(PTPN11など)、軟骨無形成症(FGFR3)、結節性硬化症(TSC1/TSC2)、レット症候群(MECP2)、コルネリア・デランゲ症候群(NIPBL/SMC1A/SMC3)、コステロ症候群(HRAS)など
ダイヤモンドプランが選ばれる理由
🥇 頻度上位3疾患をすべてカバー
#1 ダウン症候群、#2 ヌーナン症候群、#3 ディジョージ症候群をすべて検査できるのはダイヤモンドプランのみです。
🔬 56遺伝子の累積リスク 1/600
56の単一遺伝子疾患の累積リスクは約1/600。当院実績では約1/60で陽性が出ています。
👨⚕️ 父親の年齢リスクもカバー
COATE法により、父親由来のde novo変異も検出。高齢父親のリスクにも対応できます。
🏥 米国トップ4社の技術を集結
ダイヤモンドプランは、米国トップ4社の遺伝子検査技術を組み合わせた最先端の検査です。
🩺 院長コラム【検査プランはご家族で決めるもの】
どの検査プランを選ぶかは、ご家族で話し合って決めていただくものです。私が「これがいい」とおすすめすることはありません。
ダイヤモンドプランは、ダウン症(#1)、ヌーナン症候群(#2)、ディジョージ症候群(#3)という頻度上位3疾患すべてをカバーできる唯一のプランであり、当院では最も多くの方に選ばれています。一方で、「まずは基本的な染色体異常だけ調べたい」という方にはスタンダードプランもあります。
大切なのは、「どのリスクを除外したいか」をご家族で考えることです。遺伝カウンセリングでは、各プランで何がわかり、何がわからないのかを丁寧にご説明しますので、ご納得の上でお決めください。
7. ミネルバクリニックのサポート体制
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による一貫した診療体制を整えています。検査から陽性時のフォローまで、すべてを院内で完結できる体制が当院の強みです。
🏥 院内で確定検査まで対応
2025年6月より産婦人科を併設。羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能。転院の必要がありません。
👩⚕️ 臨床遺伝専門医が常駐
検査前後の遺伝カウンセリングを臨床遺伝専門医が担当。結果説明から選択肢の提示まで、専門家が寄り添います。
💰 互助会で費用面も安心
互助会(8,000円)により、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を全額カバー。上限なしで安心です。
🛡️ トリプルリスクヘッジ
当院では経済的・時間的・心理的の3つのリスクをカバーしています。互助会により羊水検査費用は全額補助(上限なし)。院内で確定検査まで完結するため結果は約3日で判明(マイクロアレイは約2週間)。転院不要で心理的負担を最小限に抑えられます。
よくある質問(FAQ)
🏥 一人で悩まないでください
出生前診断について心配なこと、検査を受けるかどうか迷っていること、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。
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参考文献
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