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NIPTの検査項目

遺伝専門医が一般の方向けになるだけわかりやすく説明します に戻る

NIPTの検査項目には基本検査、オプションで追加できる微細欠失症候群全染色体検査、性別、性染色体の異数性の検査があります。当院ではNIPTの遺伝子検査も取り扱っており、日本で当院でのみ検査可能な単一遺伝子疾患をチェックできる第三世代NIPTのスーパーNIPTジーンプラス、両親には異常がないにも関わらず赤ちゃんだけに起こる新生突然変異をみるNIPT de novoの遺伝子検査があります。

ここではNIPTの基本検査について考えていきたいと思います。

他の検査は別ページに詳細に説明しておりますので御参照下さい。

NIPTの基本検査

NIPTの基本検査は13・18・21番の常染色体のトリソミーになっています。

常染色体トリソミーとは?

トリソミーは、染色体異常の一種で、23対46本ある常染色体またはX染色体のどれか一本が多く、47本になったものをいいます。染色体には一般の遺伝情報が含まれる常染色体と性別を決定する性染色体があり、そのどちらかが一本多いかによって常染色体トリソミー、性染色体トリソミーに分けられます。

トリソミーは染色体分離の異常によって引き起こされます。染色体分離の異常は配偶子(精子、卵子といった生殖細胞)ができるとき、減数分裂をするのですが、その際に分け方に失敗してしまうことをさします。
ヒトで最も多い変異は、染色体の分離に関連したもので、典型的には不分離が生じた染色体を2コピー持つか、1コピーも持たない異常な配偶子が形成されます。
2段階の減数分裂のどちらかの段階でおこるのですが、通常は第一減数分裂のときとされています。こうして不分離が生じた24本の染色体を有する配偶子が受精して、23対47本の染色体となったものがトリソミーです。

染色体異常がある場合には、胎児の段階で死亡することがほとんどですが、いくつかのトリソミーでは出生することがあります。
新生児にみられる常染色体トリソミーのほとんどは、ダウン症候群(21トリソミー)として有名な21トリソミー(trisomy21)と18トリソミー(trisomy18)と13トリソミー(trisomy13)です。
これらの常染色体(13、18、 21番)は染色体中に存在する遺伝子数が最も少ない3つの常染色体です。これはトリソミーの臨床的重症度と一番相関しているのは当該染色体に含まれる遺伝子の数であることを示唆しています。
頻度は低いですが13/18/21番染色体よりも遺伝子数が多い常染色体トリソミーでもモザイクを含め出生例を認めます。

トリソミーの中で13・18・21トリソミーがNIPTの対象になる理由

NIPTについて調べていくと、基本検査はどの施設でも13・18・21番染色体の3つのトリソミーを対象としていることに気が付かれたと思います。ミネルバクリニックにいらっしゃる患者さんの中でも、この3つのトリソミーだけの検査を希望する方はたくさんいらっしゃいます。

なぜ13・18・21トリソミーだけがNIPT基本検査の対象になっているんだろう?

なぜ13・18・21番染色体以外の1番~22番までの常染色体のトリソミー検査はオプション扱いなんだろう?

答えは『13・18・21トリソミー以外の常染色体のトリソミーは出生まで至らないことがほとんどだから』です。

染色体の大きさと,各染色体に含まれている遺伝子の量を下にグラフで示します。

<a href=                  染色体の大きさと含有する遺伝子量を表したグラフ”

この中で,13・18・21番染色体に注目してください。1番~22番染色体の中でも、13・18・21番染色体は遺伝子の量が少ないTOP3の染色体であることが分かります。

つまり遺伝子数(量)が少ない=トリソミーで遺伝子量が増えても、他の染色体に比べて体への影響が少ない

⇒だから13・18・21トリソミーは出生できるのです。

とはいえ、一番遺伝子量の増加が少ない21トリソミー(ダウン症候群(21トリソミー))でも、21番染色体が2本から3本になり遺伝子量が1.5倍になった影響は大きく、約7割の方は流産になります。遺伝子の量が多すぎても少なすぎても体には影響が出るんです。

無事に出生できたから大丈夫なのか?

赤ちゃんが障害をもって生まれてくるという現実があります。

心臓や消化器などの障害に対して大きな手術や薬物療法などが必要になります。

繰り返しの手術が必要になることもあります。

生活環境は一変し、日常生活への負担は計り知れません。どこまで介護が可能なのか?

産んであげるべきなのか?産まれた子供は幸せなのか?自分たちは幸せになれるのか?

NIPTはとても簡単に受けられる検査ですが、だからと言って何も考えないで気軽に受けていい検査ではないと思います。大事な大事な赤ちゃんの命が、あなたの人生が関わる検査です。

障害がある御子様を出産しても毎日が楽しくて幸せでと言われるお母様もおいでます。幸せの基準は人それぞれです。

NIPTを受けようと思うのならもしも陽性の時はどうするか考えてみてください。すぐに答えが出る問題ではありません。出せなくてもいいですから考えてみて下さい。悩んで、悩んで、気持ちが変わることもあると思います。その時に一緒に考えていくことができるのが、私たち臨床遺伝専門医です。もし悩んでいたら、話したいことがあったら、聞いてほしいことがあったら、気軽にミネルバクリニックの遺伝カウンセリングにいらしてください。

 

(Y染色体が一番遺伝子量が少ないですが、Y染色体に存在する遺伝子の大部分が性腺や性器の発達に関連した機能で、生命の維持に関わる機能ではないので、今回のトリソミーのお話では注目しませんでした。)

☆グラフ出典:トンプソン&トンプソン遺伝医学第2版 図2.7

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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