目次
NIPT(新型出生前診断)とはどんな検査か?|検査方法・出生前診断の種類
NIPT(出生前診断)とは
NIPTとは、胎児の先天性疾患であるダウン症(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)を筆頭に染色体に異常がないかを調べるスクリーニング検査です。検査方法は母体血を採取し血液中にある胎児の染色体を調べます。
従来からある出生前診断よりも精度が高いのも大きな特徴です。
NIPT(出生前診断)の種類
出生前診断は、大きく分けて非確定検査と確定検査の2つになります。NIPT(新型出生前診断)は非確定検査に分類されています。精度が高くても100%ではないというのが理由です。
非確定検査はNIPT以外に、超音波検査、母体血清マーカーが含まれています。どれも流産する可能性はなく安全に検査を受けられます。ただし、検査結果の精度は100%ではありません。
羊水検査と絨毛検査の2つが確定検査です。検査結果は100%の精度であり、医師も結果を見た上で診断をします。
では、それぞれの検査の違いを下の表にまとめていますのでご確認ください。
非確定検査 | 確定検査 | ||||
---|---|---|---|---|---|
NIPT | 超音波検査 | 母体血清マーカー | 羊水検査 | 絨毛検査 | |
検査方法 | 採血 | 母体の腹部に超音波を当てて、首のむくみを見る | 採血 | 母体の腹部に針を刺す | |
検査で分かる疾患 | 13、18,21トリソミー(施設によっては1~22番染色体異常、性染色体異常、微小欠失、性別の判別可能) | 13、18、21トリソミー | 18、21トリソミー、(開放性神経管奇形) | すべての染色体異常 | |
流産のリスク | なし | なし | なし | 1/300 | 1/100 |
検査費用 | 5~40万(調べる染色体によって変わる) | 1~2万 | 2~3万 | 10~20万 | |
検査できる妊娠週数 | 9週から | 11~13週 | 15~18週 | 15~16週以降 | 11~14週 |
結果が出るまでの期間 | 2日から2週間(施設によって変わる) | 当日 | 2週間 | 2~3週間 |
NIPT(新型出生前診断)の特長
特長として挙げられるのが、先述したように検査精度の高さです。99.9%と100%に近い確率で結果を出し、施設によっては偽陰性が100%となるほど高い精度を誇ります。
もう一つの特長は母体への負担が小さいことです。妊婦さんは採血をするだけで結果が来るのを待つだけになります。羊水検査や絨毛検査のようにお腹に針を刺すことはありません。
そして妊娠9週目からと、他の出生前診断よりも早く検査が受けられるのも特長の一つです。早く受けられるということは早く結果もわかるため考える時間も長く取れますし、もし陽性の判定が出て中絶を決断したとしても負担の少なく済む場合が多いです。また、非確定診断ですのでその後に羊水検査を受けることも可能です。
染色体について
ここではNIPT(新型出生前診断)にとって重要な染色体について解説をします。
染色体とは
人間の細胞には46本の染色体があり、それぞれ2つで1つのペアとなっています。46本中44本(22組)が、常染色体と呼ばれる男女ともに共通した染色体です。残り2本(1組)は、性別を決める性染色体と呼ばれています。性染色体は男性はXY、女性はXX染色体を持っています。
染色体は、父と母からそれぞれ1本ずつ遺伝子情報を受け継き、胎児の染色体を構成していきます。その際に何かしらの理由で変化が起きてしまいます。変化によって胎児は先天性疾患を持ってしまうのです。主な異常は以下の通りです。
- 本来2本のペアであるはずの染色体が3本になるトリソミー
- 本来2本のペアであるはずの染色体が1本しかないモノソミー
- それぞれの染色体が3本あって全体で69本になる三倍体
染色体の異常による先天性疾患と母親の年齢との関係
下の表はミネルバクリニックでNIPTを受けた年齢の割合です。
年代 | 割合(%) |
20代 | 5% |
30代前半 | 30% |
30代後半 | 50% |
40代 | 15% |
表を見る限り30代後半、30代前半、40代の妊婦さんがNIPT検査を受けています。その理由はご自分の年齢です。
年齢が高くなればなるほど染色体の先天性疾患を持つ子どもが生まれやすくなるからです。
高齢出産になるとダウン症といった先天性疾患を持つ確率が高くなるのは卵子の劣化からです。年齢が上がると卵子は劣化してき、35歳を境に急速にさらに加速していきます。40代に入ると卵子の劣化による流産の可能性も高くなるほどです。ダウン症などの先天性疾患の確率も高くなります。
下に出産時の年齢と胎児が、ダウン症やエドワーズ症候群、パトウ症候群を持って生まれてくるリスクを表にしています。
出産時年齢 | ダウン症候群(21トリソミー) | エドワーズ症候群(18トリソミー) | パトウ症候群(13トリソミー) |
---|---|---|---|
20歳 | 1/1068 | 1/2484 | 1/7826 |
25歳 | 1/946 | 1/2200 | 1/6930 |
30歳 | 1/626 | 1/1456 | 1/4548 |
35歳 | 1/249 | 1/580 | 1/1826 |
40歳 | 1/68 | 1/157 | 1/495 |
NIPT(新型出生前診断)を受けるか受けないか決める前に
NIPTは2013年に検査が始まってから多くの妊婦さんが検査を受けています。陽性の判定が出て泣く泣く中絶を選択した方も珍しくありません。そのたびマスコミや医師会、日本産婦人科学会からは「命の選別につながる」と批判をされてきました。
しかしながらその指摘は100%正しいとはいえません。中絶手術を選択した妊婦さんは安易の気持ちで選んだわけではありません。染色体の先天性疾患は治療をしても完治することはなく、合併症にかかる可能性もあります。ダウン症は近年長生きできるようになりましたけど、行政のサポート体制が不足していたり、ご両親の職業や生活環境によって育てていくのが難しかったりするケースが良くあります。
そうした個々の状況を踏まえず、一律で「命の選別」と言うのは如何なものでしょう。そういった批判をするならばダウン症の子どもが育てやすい社会環境を作る方が先です。精神的ダメージを受けている妊婦さんに厳しい言葉を浴びせる前に、政府に対して同じように強く批判するべきだと思います。
そして妊婦さんに医院選びをする際は、事前カウンセリングを行っている医療機関を選んでください。どんな検査を受けるのかわからずにNIPTを受けないでほしいからです。きちんと検査内容を理解した上で受けてもらいたいと思います。
できれば、検査後のアフターケアもきちんとしているクリニックを選んでください。もし陽性と判定されても相談できるところであれば、後悔の少ない選択ができると思います。事前カウンセリングもなく、検査後の相談を受け付けていない医院は論外です。羊水検査の費用を負担してくれても避けた方がいいでしょう。
中絶手術を受けると精神的なダメージを受けるのは妊婦さん本人です。だからこそ安易な気持ちでNIPTを受けず、最悪の事態を想定してから医院選びをして検査を受けてほしいと思います。
NIPT(新型出生前診断)が陽性結果だった場合に備えて知っておくべきこと
もしNIPT(新型出生前診断)の検査を受けた結果が陽性の判定が出たとします。その場合、先ず医師と相談をしてください。
ただし、無認可でNIPTを実施している医療機関は相談を受け付けていないところがほとんどです。そうした施設で受検したときにはアフターケアをしている施設に相談をしましょう。
ご自分の妊娠週数はもちろん、出産後に育てるためのサポート体制はどうなっているのか、何よりご自分とパートナーのお気持ちはどうなのかを話し合って決断をしないといけません。だからこそNIPT(新型出生前診断)を受ける医療機関やクリニックの選定はとても重要なのです。
しっかりとした医院でNIPT(新型出生前診断)を受けてほしいと思います。
以下の関連記事は陽性の判定が出た場合にどうしたらいいのか、もし次のステップとして確定診断である羊水検査について詳しく記載してありますので、ぜひご覧ください。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号