目次
- 1 出生前診断の必要性人生設計から考える検査の価値
- 1.1 1. 出生前診断とは何か?|基本知識と検査の目的
- 1.2 2. 出生前診断の必要性|ライフプランから考える検査の価値
- 1.3 3. 出生前診断のメリット|早期発見がもたらす安心と準備
- 1.4 4. 出生前診断のデメリットとリスク|知っておくべき注意点
- 1.5 5. 障害のあるお子さんを持つご家族の体験談
- 1.6 6. 出生前診断への想い|臨床遺伝専門医の原体験
- 1.7 7. NIPTと医療費控除|知っておきたい費用の話
- 1.8 8. ミネルバクリニックの費用サポート|互助会制度で安心
- 1.9 出生前診断の必要性に関するよくある質問(FAQ)
- 1.10 まとめ|出生前診断は「人生のリスクヘッジ」
- 1.11 参考文献
出生前診断の必要性
人生設計から考える検査の価値
Q. 出生前診断は本当に必要ですか?費用が高くて迷っています。
A. 出生前診断は「浪費」ではなく「人生のリスクヘッジ(投資)」です。
NIPT(新型出生前診断)の費用を「高い」と感じるお気持ちはよくわかります。しかし、出産を機に離職した場合の生涯賃金損失は約2億円。検査費用と比較すれば、将来への備えとしての価値が見えてきます。
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➤生涯賃金への影響 → 大卒女性が出産離職すると約2億円の生涯賃金がマイナスに。ファイナンシャルプランニングの視点で検査の価値を考えます。
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➤リスクヘッジの考え方 → 海外ではリスク管理の一環として出生前診断が普及。日本でも意識が変わりつつあります。
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➤実際の体験談 → 障害のあるお子さんを持つご家族のリアルな声から、検査の意味を考えます。
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➤院長の原体験 → 筋ジストロフィー患者との出会いが、出生前診断への想いを形作りました。
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➤検査でわかること・わからないこと → NIPTの限界と可能性を正しく理解しましょう。
1. 出生前診断とは何か?|基本知識と検査の目的
【結論】 出生前診断とは、妊娠中に胎児の健康状態や遺伝的な疾患を調べる検査です。赤ちゃんの状態を事前に知ることで、心の準備や環境整備ができ、ご家族の意思決定を支援することを目的としています。
「出生前診断を受けるべきかどうか」と悩んでいらっしゃる方は多いと思います。検査費用のこと、結果を知ることへの不安、倫理的な葛藤…さまざまな思いが交錯しますよね。
まず、出生前診断がどのような検査なのか、基本的なところから一緒に確認していきましょう。
- ①
定義:妊娠中に胎児の染色体異常や遺伝性疾患の有無を調べる検査
- ②
目的:赤ちゃんの状況を把握し、ご家族の意思決定を支援すること
- ③
時期:妊娠10週前後から受検可能(検査の種類により異なる)
- ④
選択:受けるかどうかはご本人・ご家族の自由な意思に委ねられています
出生前診断の種類とその特徴
出生前診断にはいくつかの種類があり、それぞれ検査方法や精度、リスクが異なります。大きく分けると「非確定検査(スクリーニング検査)」と「確定検査」の2種類があります。
🔬 非確定検査(スクリーニング)
- •
NIPT(新型出生前診断)
母体血液から胎児DNAを分析。精度が高く、流産リスクなし。妊娠10週から受検可能 - •
コンバインド検査
超音波検査+母体血清マーカー。妊娠11〜13週に実施 - •
NT検査
胎児の首の後ろのむくみを超音波で測定。妊娠11〜13週に実施
🔍 確定検査
- •
- •
絨毛検査
胎盤の一部を採取。より早期(妊娠11〜14週)に実施可能 - •
注意点:わずかながら流産リスクあり(約0.1〜0.3%)
⏰ 検査時期の目安:NIPTは妊娠10週から受検可能ですが、検査結果が出るまでに1〜2週間かかります。陽性の場合は確定検査が必要となるため、妊娠12週頃までに受検されることをお勧めします。時間的な余裕をもって検討しましょう。
近年、NIPT(新型出生前診断)の技術が大きく進歩しています。従来はダウン症候群(21トリソミー)などの染色体の数の異常が主な検査対象でしたが、現在では微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで検査範囲が拡大しています。
2. 出生前診断の必要性|ライフプランから考える検査の価値
【結論】 出生前診断の費用を「高い」と感じる方は多いですが、出産離職による生涯賃金損失は約2億円。ファイナンシャルプランニングの視点で見ると、NIPTは「浪費」ではなく「人生のリスクヘッジ(投資)」と捉えることができます。
「出生前診断の費用が高くて、受けるかどうか迷っている」
そのお気持ちは、とてもよくわかります。NIPTは健康保険が適用されない自由診療であり、決して安い検査ではありません。しかし、ここで少し視点を変えて、ファイナンシャルプランニング(人生設計)の観点から検査の価値を考えてみましょう。
大学卒女性の生涯賃金|出産離職の影響
ニッセイ基礎研究所のデータによると、女性の働き方と生涯賃金には大きな差があります。
| 働き方のパターン | 生涯所得(退職金含む) | 差額 |
|---|---|---|
| 同一企業で働き続けた場合 | 約2億5,816万円 | 基準 |
| 出産・育休2回、第2子3歳まで時短 | 約2億2,070万円 | △3,748万円 |
| 第1子出産後退職→フルタイム非正規で復帰 | 約9,670万円 | △1億6,146万円 |
| 第1子出産後退職→パートで復帰 | 約6,147万円 | △約2億円 |
出典:ニッセイ基礎研究所
正規雇用されていた大卒女性が出産を機に退職すると、
単純に約2億円の生涯賃金がマイナスになります。
リスクヘッジとしての出生前診断
当院にいらっしゃる妊婦さんの中には、ファイナンシャルプランナーとしてお仕事をされている方々もいます。そうした方々は、出生前診断を「リスクヘッジ」として捉えています。
海外ではリスク管理の一環として普通に行われる出生前診断ですが、日本ではまるで「悪いこと」のような文脈で語られることが多いのが現状です。本当にそうでしょうか?
💡 出生前診断とは「未来から現在にタイムスリップして選択する機会」
今でなければ違法になることが、今であれば違法ではない。その短い時間に検査をして、決断して、選択する。出生前診断とは、未来を見据えた上で、今できる準備をする機会なのです。
3. 出生前診断のメリット|早期発見がもたらす安心と準備
【結論】 出生前診断を受けることで、心の準備、環境の整備、医療体制の確保が可能になります。「知らない不安」よりも「知った上での準備」の方が、多くの方にとって心理的な安定につながります。
早期発見による安心感
「お腹の赤ちゃんは元気に育っているだろうか」「障害がないだろうか」——妊娠中は誰しもが抱く不安です。特に妊娠中はホルモンバランスの変化もあり、心が不安定になりやすい時期。その不安は、とても自然なことです。
出生前診断で「陰性」という結果が出れば、その不安から解放され、穏やかな気持ちで妊娠期間を過ごすことができます。もちろん、すべての異常がわかるわけではありませんが、知ることができる範囲で安心を得ることには大きな価値があります。
出産準備の計画が立てやすくなる
万が一、検査で何らかの異常が見つかった場合でも、事前に知っておくことで準備ができます。
心の準備
急な告知ではなく、時間をかけて受け入れることができます
環境整備
専門病院の手配、自宅のバリアフリー化などの準備
情報収集
疾患について学び、支援制度を調べる時間
家族との対話
パートナーや家族とじっくり話し合う時間
医療的サポートの選択肢を広げる
疾患によっては、出産前や出産直後から治療が必要なケースがあります。事前に診断がついていれば、専門医との連携や医療体制の整った病院での出産を計画することができます。
また、出生前診断は次のお子さんを持つきっかけになることもあります。第1子に障害があり、第2子の妊娠に踏み出せなかったご夫婦が、出生前診断によって安心して次の妊娠に臨めたというケースは少なくありません。
4. 出生前診断のデメリットとリスク|知っておくべき注意点
【結論】 出生前診断には心理的負担、選択のジレンマ、検査の限界といったデメリットもあります。メリットだけでなく、これらを十分に理解した上で検査を受けるかどうかを決めることが大切です。
結果による心理的影響
出生前診断で「陽性」という結果が出た場合、大きな心理的負担がかかります。「このまま妊娠を継続するか」「中絶を選択するか」——誰にとっても簡単に答えが出せる問いではありません。
また、NIPTは「スクリーニング検査」であり、陽性が出ても100%確定ではありません。確定診断のためには羊水検査などが必要になり、その待ち時間も精神的に辛いものがあります。
出生前診断の限界|わからないこともある
Q. 将来自立できないほど重い障害が心配です。NIPTでわかりますか?
A. 「将来社会的に自立できるかどうか」までを判定できる検査は、残念ながら存在しません。
NIPTでわかるのは、あくまで染色体や一部の遺伝子の変化に起因する疾患の「可能性」(確率)です。同じ染色体異常を持っていても、症状の重さや将来の発達には個人差があり、生まれてみないとわからない部分も多いのが現実です。
ただし、NIPTで検出される疾患の中には、重い発達障害や知的障害を伴うことが多いものが含まれていることも事実です。医学的・倫理的な観点から、出生前診断の対象となる疾患は、基本的には「社会的に自立して生活することに支障が出るレベルの重篤な疾患」に限定されています。
NIPTの精度と的中率
NIPTは非常に高い精度を持つ検査ですが、100%ではありません。特に以下の点を理解しておく必要があります。
- •
偽陽性:陽性と出たが、実際は異常がなかったケース
- •
偽陰性:陰性と出たが、実際は異常があったケース
- •
検査対象外:NIPTでは調べられない疾患も多数あります
⚠️ 重要:NIPTで「陰性」が出ても、自閉症や発達障害など、出生前診断ではわからない障害もあります。出生前診断ですべてがわかるわけではないことを、あらかじめご理解ください。
5. 障害のあるお子さんを持つご家族の体験談
【はじめに】 ここからは、障害のあるお子さんを持つご家族のリアルな声をご紹介します。出生前診断を受けるかどうかの判断材料として、さまざまなケースを知っておくことは大切です。
Case 1:Aさん(元小学校教諭)
出産後も仕事を続けるつもりでしたが、生まれたお子さんに先天異常があったため、「母親なら仕事を辞めて子どもの世話をすべき」と考え、後ろ髪ひかれながら退職しました。
数年後、夫が精神疾患を発症して仕事を継続できなくなりました。障害のある子どもの送り迎えやリハビリ、通院の付き添いがあり昼間は働けず、深夜にコンビニで短時間働いています。
「出生前診断を受けようと思ったこともなかったですが、知っていたら受けたかった」とおっしゃっています。
Case 2:Bさんご夫婦(公務員)
第2子に先天異常があり、2歳になるまでに4回の心臓手術を余儀なくされました。免疫系の異常もあり、風邪から肺炎を起こして入退院を繰り返しています。
お互いの職場は理解があり休みは取れますが、第2子につきっきりになると2歳しか離れていない第1子がぐずぐず言うなど、なかなかうまくいきません。どちらかが仕事を辞めると経済的に大きく変わってしまうため、励まし合いながら頑張っています。
第3子を懐妊した時、素直に喜べなかったお二人は、話し合いの末、出生前診断を受けることにしました。
Case 3:Cさん(正規雇用)
第2子の時には出生前診断を受けましたが、検査対象外の先天異常があり、鼻から胃にチューブを通して栄養を摂っています。
チューブが入っている子供は預かれないと、住んでいる自治体の保育所からはどこからも断られてしまいました。育児休暇は延長しても2年間。この間にチューブが外れなければ、仕事を辞めないといけません。
Cさんは「出生前診断を受けても意味がなかったとは考えていない」とおっしゃっています。
Case 4:Fさん(第1子が植物状態)
第1子の出産時に臍帯が首に絡まり、仮死状態で生まれました。その後、植物状態です。生まれたお子さんは可愛くて仕方なく、何の反応もなくても語りかけていることはわかっているはず、と毎日話しかけています。
第2子を妊娠した時、第2子がダウン症候群だと育てられないという恐怖心が強くて、妊娠したことを喜べませんでした。出生前診断で調べられる全項目を検査し、陰性で落ち着いて妊娠期間を過ごすことができました。
「出生前診断がなければ第2子を持つ勇気がなかったかもしれません」
💡 出生前診断が「次の一歩」を後押しすることも
出生前診断は時として、ご夫婦の背中を押して第2子、第3子を持てるようにできることがあります。少子化が進む現代において、これは見過ごせない側面です。
6. 出生前診断への想い|臨床遺伝専門医の原体験
【この章について】 なぜ私が出生前診断に携わるようになったのか。その原点となった、ある筋ジストロフィー患者との出会いについてお話しします。
※この章は院長の個人的な想いを綴っています。検査の具体的な情報をお急ぎの方はSection 7へお進みください。
私が昔担当していた筋ジストロフィーの患者さん(出会った時、彼は成人していました)は、いつも私にこう言っていました。
「僕はどうしてこんな風にうまれないといけなかったの?」
彼はずっと私に哲学的難問を問いかけ続けています。今も、私の頭の中で。
彼は人工呼吸器をつけていましたが、挿管チューブのカフを緩めにするのが好きだったので、しゃべれたんです。最初、しゃべる人工呼吸器付きの患者に、私は腰を抜かすくらいビックリしました。
彼と出会わなかったら、私は遺伝専門医になっても出生前診断に関わっていなかったかもしれません。
「うまれてこなければよかった。死にたい。殺して。」
彼は私にそう言いました。
父が出て行ったのも、妹が挫折したのも、全部自分の病気のせいだと感じていたからでしょう。
そして、母親が「自分のせいで子供が病気になった」と病的遺伝子を受け継いでしまったことを後悔していることも、彼は知っていました。
「うまれてこなければよかった、なぜ自分は生まれてこないといけなかったのか?何もいいことないのに。」
彼の言葉は重たくて、今よりずっと若かった私は、何一つまともな言葉を返せませんでした。
小児科の先生たちは、成人した後を診ないので、こんなこと言われたりしないですよね。産婦人科なんて赤ちゃんが母胎内にいるときだけ。なのにどうして出生前診断は小児科と産婦人科で何もかも決めようとするのか——遺伝専門医なのに出生前診断の世界では小児科でも産婦人科でもない私は、透明人間でした。
しかし、この筋ジストロフィーの彼の慟哭は、遺伝専門医としての私に今でもたくさんの重い課題を投げかけ続けています。
どんな命も地球より重い。それは重い事実です。
だけど、知ってほしいんです。
生まれる権利を主張する障がい者の方もいるけれど、生まれてきたくなかったという彼のような人もいるんだってことを。
彼の壊れてしまった幸せだった家庭を見て、私は思いました。
ファミリーという単位で幸せの総和を大きくしたい、と。
数年後、NIPTでその疾患が診断できるようになったとき、もしも彼が胎児だったらきっと私にこういうと思います。
「いいよ、先生。ぼく、また生まれても大変だから。
それより今度は健康な体でもっと楽しんで人生送れる機会を頂戴。」
私は、生半可な思いで出生前検査を提供しているわけではありません。
7. NIPTと医療費控除|知っておきたい費用の話
【結論】 NIPTの費用は原則として医療費控除の対象外です。ただし、陽性判定後に羊水検査・中絶手術へ進んだ場合は、一連の流れが「治療」とみなされ、遡ってNIPTの費用も控除申請が可能になります。
Q. NIPTの検査費用は医療費控除の対象になりますか?
A. 基本的には「予防・検診」扱いのため対象外です。
ただし、NIPTで陽性となり、その後羊水検査や人工妊娠中絶へ進んだ場合は、一連の流れが「治療」とみなされるため、遡ってNIPTの費用も医療費控除の申請が可能になります。
NIPTで陽性 → 羊水検査(確定診断) → 人工妊娠中絶
この一連の流れが「治療」とみなされるため、最初に受けたNIPTの費用も含めて、遡って医療費控除の申請が可能になります。
8. ミネルバクリニックの費用サポート|互助会制度で安心
【結論】 当院の互助会制度(8,000円)に加入いただくと、万が一NIPTで陽性だった場合の羊水検査費用を上限を設けず全額補助。費用の不安を軽減し、経済的な理由で検査を諦めない環境をご提供します。
🏥 2025年6月〜産婦人科併設
当院に産婦人科を開設し、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で実施できる体制に。
NIPT陽性時も転院不要。一貫したケアを受けられます。
出生前診断の必要性に関するよくある質問(FAQ)
まとめ|出生前診断は「人生のリスクヘッジ」
この記事では、出生前診断の必要性をライフプランの視点から考えてきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- ✓
出産離職による生涯賃金損失は約2億円。NIPTは「浪費」ではなく「リスクヘッジ」
- ✓
出生前診断で心の準備・環境整備・医療体制の確保が可能に
- ✓
ただし、すべての障害がわかるわけではないことも理解が必要
- ✓
ミネルバの互助会制度なら、NIPT陽性時の羊水検査費用を上限を設けず全額補助
- ✓
臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで、検査前後の不安もサポート
出生前診断を受けるかどうか迷っている方、高額な検査費用のことで不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。費用の不安も、検査の不安も、一緒に解決していきましょう。
🏥 ネットの情報に疲れたら、専門医の話を聞きに来ませんか?
あなたと赤ちゃんを守るための準備を、一緒に始めましょう。
一人で抱え込まないでください。
📚 関連コラム
NIPTに関連するコラム記事も多数ご用意しています。出生前診断の検査方法や検査の流れ、医療費控除の詳細など、詳しい情報はNIPTコラム一覧をご覧ください。
参考文献
- [1] ニッセイ基礎研究所「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計」[ニッセイ基礎研究所]
- [2] 国税庁「母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用」[国税庁公式サイト]
- [3] 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」[厚生労働省公式サイト]

