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NIPT陽性でも産んだ|羊水検査でダウン症確定後の決断

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

NIPTで「陽性」と言われた瞬間、頭が真っ白になった。そのあと羊水検査を受け、ダウン症候群(21トリソミー)と確定。それでも「産む」と決めたご家族がいます。この記事は、そのご家族の体験談です。先にお伝えしておくと、NIPTの陽性は確定ではなく、羊水検査や絨毛検査で確かめてから考えるものです。そして、確定したあとの道も一つではありません。産む選択も、産まない選択も、どちらも尊重されるものです。陽性だったら何を確かめ、どんな選択肢があり、どこに相談できるのかを、臨床遺伝専門医の立場から順にまとめます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧬 NIPT陽性・羊水検査・体験談
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤NIPT陽性の意味と「確定診断」との違い(陽性が実際に当たっている確率)
  • ➤陽性だったら選べる道(確定検査・産む・産まない・相談先)
  • ➤羊水検査でダウン症が確定するまでの流れ(受ける時期・結果までの日数・流産リスク)
  • ➤「産む」という決断に至るまでの夫婦の葛藤
  • ➤ダウン症の赤ちゃんとの現在の生活と、使える支援

⏱️ 30秒でわかる要約

🧭 Q. NIPTで陽性だったら、まず何をすればいいですか?

まず確定検査(絨毛検査・羊水検査)で、本当にそうかを確かめます。NIPTはスクリーニング検査で、陽性は確定ではありません。21トリソミー陽性が実際に当たっていた割合は、一般の妊婦さんを対象にした研究で約81%、日本のハイリスクの妊婦さんの集計で約97%でした。確かめる前に結論を出さないことが大切です。

🔎 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。この記事はダウン症候群と確定したご家族の体験談ですが、出生前検査で調べられる病気はほかにもあります。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

💉 Q. 羊水検査はいつ受けて、結果は何日でわかりますか?

羊水検査は妊娠15週以降、絨毛検査は妊娠11〜13週ごろに行います。当院では確定検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。近年の大規模な解析では、検査による流産の上乗せはほとんど見られていません。

🌱 Q. ダウン症の子を育てる自信がないと感じるのは、おかしいことですか?

おかしくありません。日本の集計では、21トリソミーと確定した方の多くが妊娠を続けない選択をしており、妊娠を続けた方は少数です。産む選択も産まない選択も、どちらも尊重されます。当院では、陽性のあとの遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられます。

\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /

これからNIPTを受ける方、次の妊娠で検査を考えている方へ。当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

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【結論】NIPT陽性=中絶ではありません

まず最初にお伝えしたいことがあります。NIPT陽性は「確定」ではありません。NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に含まれる胎盤由来のDNAの断片を調べるスクリーニング検査で、陽性という結果は「可能性が高い」ことを示すものです[1]。

💡 結論

NIPTはスクリーニング検査です。確定診断は、羊水検査・絨毛検査という確定検査で行います。陽性と分かった時点で、妊娠を続けるかどうかを決める必要はありません。

そして、確定診断が出たあとも、選択は一つではありません。実際に「産む」と決めたご家族がいます。一方で、妊娠を続けない選択をするご家族もいます。どちらも、赤ちゃんとご家族のこれからを考えた末の決断です。この記事では、当院でNIPTを受けたご家族の経過を、個人が特定されない形でご紹介します(年齢・妊娠週数・お住まいの地域などは記載していません)。

なお、ミネルバクリニックは分娩と人工妊娠中絶を行っていません。当院が担うのは、NIPT、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング、確定検査(絨毛検査・羊水検査)までです。出産や、妊娠を続けない場合の手術は、それぞれに対応する医療機関で受けていただくことになります。確定検査を受けずに決めてしまうことの危険は「NIPT陽性で羊水検査なしの中絶は危険?」で解説しています。

NIPT陽性とは何を意味するのか

NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、母体血中にある赤ちゃん由来(正確には胎盤由来)のDNAを解析する検査です。21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーなどの可能性を調べます。

⚠️ NIPTは確定診断ではありません

陽性は「可能性が高い」という意味であり、100%確定ではありません。

陽性が実際に当たっている確率(陽性的中率)

陽性という結果が実際に当たっている割合を、陽性的中率といいます。米国などで行われた約1万6千人の研究(平均年齢30.7歳)では、21トリソミーの陽性的中率は80.9%でした[2]。陽性と出た方のおよそ5人に1人は、赤ちゃんがダウン症候群ではなかったことになります。日本でハイリスクの妊婦さんを対象に行われた集計(30,613件)では、確定検査を受けた方のうち実際に当たっていた割合は、21トリソミーで96.5%(289人中279人)、18トリソミーで82.8%、13トリソミーで63.6%でした[3]。

陽性的中率は、お母さんの年齢が若いほど、また病気の頻度が低いほど下がります。どの数字にも共通しているのは、陽性のまま、確かめずに決めてはいけないという点です。そのため、陽性の場合は出生前の確定診断である羊水検査・絨毛検査に進みます[1]。

陽性判定を受けた直後は、気持ちが追いつかないものです。まずは、次に何をするのかを確かめてください。具体的な流れや確率は「NIPT陽性だったらどうする?専門医が解説する次のステップ」で詳しく整理しています。

NIPT・羊水検査が陽性だったら ― 確定検査・産む・産まない・相談先

「陽性だったら、どうすればいいのか」。この問いに、決まった正解はありません。ここでは、陽性のあとに取りうる道を、どれかを勧めることなく並べます。

🧭 陽性のあとの選択肢

選択肢 内容 知っておきたいこと
確定検査で確かめる 絨毛検査(妊娠11〜13週ごろ)か羊水検査(妊娠15週以降)で、赤ちゃん由来の細胞の染色体を直接調べます[4]。 NIPTが陽性でも、確定検査で陰性のことがあります。当院でNIPTを受けた方は院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
妊娠を続けて産む 出産する施設、生まれてすぐに必要になる検査や治療、使える支援を、生まれる前から調べて準備します。 合併症の有無と程度は一人ひとり違い、生まれる前にすべてが分かるわけではありません。当院は分娩を行っていないため、出産は分娩施設で行います。
妊娠を続けない 日本で人工妊娠中絶ができるのは、妊娠22週未満(21週6日まで)です。 手術は母体保護法指定医のいる医療機関で受けます(当院では行っていません)。期限と方法は「NIPT陽性時の中絶はいつまで?」で解説しています。
相談する 決める前にも、決めたあとにも、話せる相手を持つことができます。 当院の陽性後の遺伝カウンセリング(何度でも無料)、主治医、お住まいの自治体の保健センター、ダウン症候群のご家族の会など。

日本で認定施設が行ったNIPT 86,813件(2013年4月〜2020年3月)の集計では、21トリソミー陽性だった943人から偽陽性と追跡できなかった方を除いた885人のうち、妊娠を続けない選択をした方が774人(87.5%)、子宮内で赤ちゃんが亡くなった方が81人、妊娠を続けた方が30人でした[5]。妊娠を続けた方は少数ですが、確かにいます。この数字は全体の割合であって、ご夫婦にとってどちらが正しいかを決めるものではありません。国内外の数字の内訳は「NIPT陽性後の中絶率は約9割」にまとめています。

産むと決めた方にも、産まないと決めた方にも、あとから気持ちが揺れることがあります。妊娠を続けない選択をした方の気持ちについては「ダウン症とわかり中絶しました。後悔の理由と専門医の視点」で取り上げています。

羊水検査でダウン症が確定

ここからは、ご家族の体験談です。NIPTで陽性と伝えられたあと、このご家族は羊水検査を受けました。羊水検査では、羊水に浮かんでいる赤ちゃん由来の細胞を直接調べます。ここで初めて「確定診断」となり、結果は21トリソミー(ダウン症候群)でした。

① NIPTで陽性スクリーニング検査
▶
② 羊水検査確定検査
▶
③ ダウン症候群と確定21トリソミー
▶
④ 産むと決める夫婦で話し合いを重ねて

羊水検査の体験談でよく聞かれること:時期・痛み・結果・流産リスク

羊水検査は妊娠15週以降に、超音波で赤ちゃんと胎盤の位置を確かめながら、お腹から細い針を刺して羊水を採る検査です。絨毛検査はそれより早く、妊娠11〜13週ごろに行えます[4]。NIPTを早い週数で受けて陽性だった場合は、羊水検査ができる週数まで待つ時間が生じます。待つことが難しいときは、より早く受けられる絨毛検査という方法があります。

痛みの感じ方には個人差があります。針の太さや痛みについては「羊水検査の痛みと針の太さ」で説明しています。検査による流産を心配される方は多いのですが、近年の大規模な解析では、検査を受けたことによる流産の上乗せは絨毛検査で0.29%、羊水検査で−0.36%と推定され、どちらも、検査を受けなかった妊婦さんと統計的な差がありませんでした[6]。

当院では2025年6月から産婦人科を併設し、絨毛検査・羊水検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。当院のNIPTでは、2つの互助会(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円。どちらも消費税の対象外)に全員が加入します。このうちカトレア会から、陽性のときの確定検査の費用が補助されます(補助の上限はありません)。

💡 用語解説:Gバンド法とマイクロアレイ検査(CMA)

Gバンド法は、染色体を染め分けて顕微鏡で見る方法で、21トリソミーのような染色体の数の異常を確定できます。マイクロアレイ検査(CMA)は、Gバンド法では見えない細かな欠失・重複を調べる方法です。どちらを行うかは、NIPTの結果や超音波検査の所見をふまえて決めます。

確定診断を受けたあと、ご家族は大きな葛藤に直面しました。

「育てる自信がない」「産むか迷う」のは親として当然の感情です

確定診断を受けたあと、「ダウン症の子を育てる自信がありません」「上の子への影響を考えると産むか迷います」と感じるのは、赤ちゃんと家族のこれからを真剣に考えているからです。先に示したとおり、日本では、確定後に妊娠を続けない選択をする方が多数を占めています[5]。「産めないかもしれない」と考える自分を責める必要はありません。

「産む・産まない」どちらの決断も、赤ちゃんとご家族の未来を考えた結果です。どちらかが正しく、どちらかが間違っているということはありません。当院では、陽性のあとの遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられます。

夫婦の葛藤と「産む」という決断

確定診断が出たあと、いちばん苦しかったのは「医学」そのものよりも、家族の未来をどう描くかという問いでした。赤ちゃんの将来、仕事、きょうだい、周囲の理解。このご夫婦の場合、とくにご主人が、現実の重さを一度に背負う感覚になったといいます。

👫 夫婦それぞれの気持ち

母親:「この子を守りたい」
父親:「守りたいからこそ怖い」

奥さまは「どんな子であっても、私たちの大切な赤ちゃん」と伝え続けました。ご主人は、最初は言葉にできない不安を抱えながらも、話し合いを重ねる中で少しずつ気持ちを整理していきました。話し合いの中で役に立ったのは、次の3つでした。

📝 話し合いで役に立った3つのこと

したこと 内容
情報と感情を分ける 「正しい情報」と「感情」を分けて整理する
一度に全部決めない 将来を“全部”決めようとせず、まず産前〜産後早期の支援を確認する
助けを借りると決める 夫婦で「助けを借りる」ことを合意する

このご夫婦は「二人で力を合わせて育てよう」と決め、出産に向けた準備を始めました。これは、このご夫婦が出した答えです。同じ状況で別の答えを出すご夫婦もいます。意見が分かれたときの話し合いの進め方は「出生前診断で夫婦の意見が割れたら|後悔しない話し合いの進め方」をご覧ください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【夫婦で揺れるのは、自然なこと】

「意見が割れたら、どちらが正しいのか」と悩む方がいます。けれども多くの場合、これは正しさで決まることではないと考えています。大切なのは、二人とも、同じ赤ちゃんと家族のことを考えているという共通点を見失わないことです。

沈黙や強い口調の奥には、たいてい言葉になっていない不安があります。その不安を言葉にして、事実と気持ちを分けて考えられるようにすることが、遺伝カウンセリングの役割だと考えています。

\ 陽性のあと、確定検査まで同じ院内で受けたい方へ /

当院でNIPTを受けた方は、陽性のときの確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。陽性のあとの遺伝カウンセリングは何度でも無料です。

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ダウン症の赤ちゃんを迎えた現在の生活

出産は無事に終わりました。赤ちゃんが生まれた瞬間、ご夫婦の目から涙があふれたそうです。不安がなくなったわけではありません。それでも「この子が生まれてきてくれた」ことが、確かな実感として胸に残ったといいます。

🌱 いまの生活を支えているもの

支えになっていること 内容
小さな成長が、大きな喜びになる 首がすわる、笑う、手を伸ばす。ひとつひとつを大切に感じる日々だそうです。
支援は「特別」ではなく「生活の道具」 地域の支援センター、専門の医師、リハビリ、家族会など、使える支援を少しずつ重ねています。
「相談できる場所」が心の支えになる 困ったときに話せる相手がいることが、気持ちの支えになっているといいます。

産んだあとの生活について、分かっていること

ひと組のご家族の経過だけで、全体を語ることはできません。ダウン症候群では、心臓や消化管の病気、甲状腺の病気、聞こえや見え方の障害などを伴うことがあり、合併症の有無と程度は一人ひとり違います。通院や療育に時間がかかる時期もあります。寿命は延びており、オーストラリアの調査では平均寿命が58.6歳と報告されています[7]。

ご家族の受け止め方を調べた米国の調査(2,044人の親が回答)では、99%が「子どもを愛している」、97%が「子どもを誇りに思う」、79%が「人生の見方が前向きになった」と答えました。一方で、5%は「子どものことを恥ずかしく思う」、4%は「産んだことを後悔している」と答えています[8]。この調査はダウン症候群の家族会の名簿をもとに行われたもので、すべてのご家族の気持ちを表しているとは限りません。

ダウン症候群は、ひとことで語れるものではありません。合併症の有無、支援の環境、ご家族の状況によって、生活の形は違います。だからこそ、「この先を一人で決め切らない」ことが大切です。学校や仕事、利用できる制度は「ダウン症の子は将来どうなる?日本の教育や就労・支援の現実」にまとめています。

検査の正しい理解:不安を減らすために

結果を聞いたときの衝撃が大きいほど、その結果が何を意味するのかが見えにくくなります。ここでは、混乱しやすい点を整理します。

💡 用語解説:スクリーニング検査と確定診断

スクリーニング検査(NIPT)は、可能性を調べる検査です。確定診断(羊水検査・絨毛検査)は、赤ちゃん由来の細胞を直接調べて診断する検査です。

NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。感度・特異度と陽性的中率の考え方は「NIPT(新型出生前診断)の精度・確率は?」で解説しています。

確定検査の位置づけは、羊水検査・絨毛検査(出生前の確定診断)で詳しく説明しています。

⚠️ 大切な注意

どの検査にも得意・不得意があり、結果の意味づけには前提があります。結果だけで結論を急がず、次に何を確かめ、どこに相談するかまで含めて考えてください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【正確性は、心の安全を守るために】

陽性という結果を受け取った方に必要なのは、情報だけではないと考えています。確定検査で確かめる前に結論を出さないこと。確定したあとは、産む場合と産まない場合のそれぞれで、何がいつまでにできるのかを知ること。そのうえで、ご夫婦が自分たちの答えを出すことです。

検査の正確さは、ご家族があとから「あのとき確かめておけばよかった」と思わずにすむためにあると考えています。臨床遺伝専門医が運営するクリニックとして、結果を伝えるところで終わらせず、確定検査までを院内で担っているのは、そのためです。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

ここまで、ダウン症候群と確定したご家族の体験談をお伝えしてきました。これからNIPTを受ける方や、次の妊娠で検査を考えている方に、もう一つ知っておいていただきたいことがあります。出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと報告されています[9]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[9][10]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

ダウン症候群を調べる意味がない、ということではありません。ダウン症候群だけでは、調べる範囲として足りないかもしれない、ということです。出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。

範囲の違いは、費用を「調べられる病気の数」で割ると見えやすくなります。たとえば、三大トリソミーだけを調べる検査が仮に10万円なら、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患が対象で、数えられる病気だけで320、1つの病気あたり約1,700円になります(5Mbを超える構造異常は数に入れていません)。

🧮 1つの病気あたりで考えると

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子最大155遺伝子(202疾患) 320+α 約1,719円

※価格は、事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金はNIPTの費用・料金のページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(双子マックスは性染色体を調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは、実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

調べる病気の数が多いほど良い検査、ということではありません。範囲が広がれば、陽性になる場面や、確定検査を考える場面も増えます。微小欠失・重複は、染色体の数の異常に比べて陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)で、陽性なら必ず確定検査が必要です。だからこそ、どこまで調べるかは検査の前に決めます。当院では、90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。

当院のNIPTは、通常は妊娠9週から受けられます(妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます)。結果は基本的に10〜14日で出ます(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。双子の妊娠で受けられるのは、スタンダードプランと双子マックスプランです。

自閉症・発達障害・知的障害を心配される方も少なくありません。原因はさまざまで、多くは特定できませんが、一部は染色体や遺伝子の変化によるものです。当院のNIPTでは、その一部(スタンダードプランから調べられる22q11.2欠失症候群やアンジェルマン症候群、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランで調べるレット症候群など)を妊娠中に調べられます。ただし、自閉症そのものを診断する検査ではなく、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。詳しくは「自閉症はNIPTでわかりますか?」をご覧ください。

上のお子さんがダウン症候群だった方が次の妊娠で気になる確率と検査については、「第1子がダウン症候群だった方の次の妊娠」で解説しています。

🏥 陽性のあとも、確定検査まで同じ院内で

ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTは通常妊娠9週から受けられます。陽性の場合は、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。陽性のあとの遺伝カウンセリングは何度でも無料です。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでの遺伝カウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。まだ決めていない方は、まずプランと料金をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTの「陽性」は確定ですか?

確定ではありません。NIPTはスクリーニング検査です。21トリソミー陽性が実際に当たっていた割合は、一般の妊婦さんを対象にした研究で80.9%、日本のハイリスクの妊婦さんの集計で96.5%でした。確定診断は、羊水検査・絨毛検査などの出生前確定診断で行います。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。ダウン症候群は出生前検査で調べる代表的な病気ですが、調べられる病気はほかにもあります。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題だと報告されています。そうした行動の問題を伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。どこまで調べるかは、検査の前の遺伝カウンセリングで決めます。

Q3. NIPTや羊水検査が陽性だったら、どうすればいいですか?

NIPTが陽性なら、まず確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめます。羊水検査で確定したあとの道は、妊娠を続けて産む、妊娠を続けない、の2つで、どちらも尊重される選択です。日本で人工妊娠中絶ができるのは妊娠22週未満です。決める前にも決めたあとにも、遺伝カウンセリング、主治医、自治体の保健センターなどに相談できます。当院では、陽性のあとの遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられます。

Q4. 羊水検査で何がわかりますか?

赤ちゃん由来の細胞を直接調べ、染色体の数の異常などを確定診断します。Gバンド法では細かな欠失は見つけにくいため、必要に応じてマイクロアレイ検査(CMA)でより細かい変化を調べます。

Q5. 羊水検査はいつ受けられますか?結果は何日でわかりますか?

羊水検査は妊娠15週以降、絨毛検査は妊娠11〜13週ごろに行います。当院では院内で行い、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。近年の大規模な解析では、検査による流産の上乗せは、検査を受けなかった妊婦さんと統計的な差がありませんでした。

Q6. 羊水検査+CMA(マイクロアレイ)は誰でも受けられますか?

状況によって判断します。超音波検査で赤ちゃんの体のつくりに気になる所見がある場合や、NIPTで微小欠失・重複が陽性だった場合などに検討されます。ご本人の背景や所見をふまえて、医師と相談して決めることが大切です。

Q7. 確定診断が出たあと、何から考えればいいですか?

まず、結果の意味と、いつまでに何を決める必要があるのかを確かめます。次に、産む場合の産前〜産後早期の支援(医療・福祉・相談先)と、産まない場合の期限と方法を確認します。将来を一度に決め切る必要はありません。夫婦で話し合い、必要なら臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを利用してください。

Q8. ダウン症候群では、必ず合併症がありますか?

必ずではありません。心臓や消化管の病気などを伴うことがありますが、有無と程度は一人ひとり違い、生まれる前にすべてを知ることはできません。合併症の有無や支援の環境によって、生活の形は変わります。

Q9. 夫婦で意見が割れたとき、どうしたらいいですか?

意見が割れるのは珍しいことではありません。まず、二人とも同じ赤ちゃんと家族のことを考えているという共通点を確かめ、情報と感情を分けて話すことが助けになります。臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングなど、第三者を交えると、言葉にしづらい不安が見えやすくなります。

Q10. 陽性が確定した後、産む決断をする人はどれくらいいますか?

日本で認定施設が行ったNIPT(2013年4月〜2020年3月、86,813件)の集計では、21トリソミー陽性から偽陽性と追跡できなかった方を除いた885人のうち、妊娠を続けた方は30人(約3%)、妊娠を続けない選択をした方は774人(87.5%)、子宮内で赤ちゃんが亡くなった方は81人でした。これは全体の割合であり、ご夫婦にとってどちらが正しいかを決めるものではありません。

Q11. ダウン症の子を育てる自信がありません。どうしたらいいですか?

「自信がない」と感じるのは、赤ちゃんと家族のこれからを真剣に考えているからで、当然の感情です。一人で抱え込まず、遺伝カウンセリングなどで不安を言葉にしてみてください。地域の支援体制や、育てているご家族の体験談など、現実の情報を知ることで、気持ちが整理されることがあります。産む選択も産まない選択も、どちらも尊重されます。

関連記事

参考文献

  • [1] American College of Obstetricians and Gynecologists. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [DOI 10.1097/AOG.0000000000004084]
  • [2] Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. N Engl J Med. 2015;372(17):1589-1597. [DOI 10.1056/NEJMoa1407349]
  • [3] Samura O, Sekizawa A, Suzumori N, et al. Current status of non-invasive prenatal testing in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2017;43(8):1245-1255. [DOI 10.1111/jog.13373]
  • [4] American College of Obstetricians and Gynecologists. Practice Bulletin No. 162: Prenatal Diagnostic Testing for Genetic Disorders. Obstet Gynecol. 2016;127(5):e108-e122. [PubMed 27093089]
  • [5] 日本産科婦人科学会 倫理委員会 周産期委員会(周産期遺伝に関する小委員会). NIPT受検者のアンケート調査の結果について(NIPT陽性者の転帰・2020年10月現在). 厚生労働省 第4回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 参考資料3. [厚生労働省]
  • [6] Beta J, Zhang W, Geris S, Kostiv V, Akolekar R. Procedure-related risk of miscarriage following chorionic villus sampling and amniocentesis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):452-457. [DOI 10.1002/uog.20293]
  • [7] Glasson EJ, Sullivan SG, Hussain R, Petterson BA, Montgomery PD, Bittles AH. The changing survival profile of people with Down’s syndrome: implications for genetic counselling. Clin Genet. 2002;62(5):390-393. [DOI 10.1034/j.1399-0004.2002.620506.x]
  • [8] Skotko BG, Levine SP, Goldstein R. Having a son or daughter with Down syndrome: perspectives from mothers and fathers. Am J Med Genet A. 2011;155A(10):2335-2347. [DOI 10.1002/ajmg.a.34293]
  • [9] Fitzgerald J, Gallagher L. Parental stress and adjustment in the context of rare genetic syndromes: A scoping review. J Intellect Disabil. 2022;26(2):522-544. [DOI 10.1177/1744629521995378]
  • [10] Arron K, Oliver C, Moss J, Berg K, Burbidge C. The prevalence and phenomenology of self-injurious and aggressive behaviour in genetic syndromes. J Intellect Disabil Res. 2011;55(2):109-120. [DOI 10.1111/j.1365-2788.2010.01337.x]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。ご紹介した経過は、個人が特定されないよう細部を伏せています。検査や妊娠の継続については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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