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染色体とは|出生前診断で目にする専門用語の意味を正しく知ろう

2013年にNIPT(新型出生前診断)が日本で始まってから高齢で妊娠するご夫婦やカップルが数多く検査を受けてきました。それだけ生まれてくる赤ちゃんに染色体の異常があるかどうか気になっている証だと思います。

今でもNIPTを含む出生前診断を受けようか迷っていてスマートフォンやパソコンで色々とお調べになっている女性もたくさんいるでしょう。

しかし、「染色体やDNAって何だっけ?」と疑問に思うことはありませんか?学生時代に習ったけどとっくに忘れてしまっている方が多いかもしれません。普段生活していたら染色体やDNAなんて触れることもありませんから忘れてしまって当然です。

そこで今回の記事で染色体やDNAについて基本的な部分を詳しく解説をします。NIPT(新型出生前診断)にも関わってくるゲノム解析についても解説しますので最後までご覧ください。

染色体とは

人間の体はたくさんの細胞が集まってできています。その数は約60兆個もあります。染色体とは細胞の核に含まれている組織です。核とは細胞の脳のような存在です。遺伝情報がつまったDNAが太く折り畳まれたもので、親から子どもへ受け継ぐ遺伝情報を含んでいます。

「常染色体」と「性染色体」の二つに分かれており、父親から受け継ぐものと、母親から受け継ぐもので一組のペアになっています。ヒト(人間)は46本の染色体を持っており、44本(22対)は常染色体、2本(1対)は性染色体です。

常染色体

46本あるヒト(人間)の染色体のうち44本(22対)が常染色体です。

常染色体は長いものから順番に数字を振り当てています。しかし、21番目の染色体は22番目よりも短かったことがわかりましたが、そのままになっています。常染色体に異常があると先天性疾患として何かしらの病気を持った赤ちゃんに生まれてきます。知られているのが21番目の染色体が3本あるダウン症候群(21トリソミー)です。通常2本である染色体が3本あることによって疾患を持ってしまいます。

性染色体

性染色体は23番目の染色体で常染色体とは役割が違います。性別に関わる役目を持っており、X染色体と、Y染色体の2種類があります。通常XXだと女性、XYだと男性です。

母親はX染色体しか持っていません。そのため赤ちゃんは母親からX染色体を受け継ぎ、父親からX染色体かY染色体を引き継ぎます。X染色体を引き継げば女の子に、Y染色体を引き継ぐと男の子になります。引き継ぎは精子が卵子に合体して受精卵になった瞬間に終わるのでその後に性別が変わることはありません。

生物種によって染色体の数は違う

染色体の数は生物種によって変わってきます。生物種とは植物を含むすべての生き物のことです。染色体はすべての生物の細胞にあり、種を引き継ぐための遺伝情報を備えています。ヒトも含めて生物が何本の染色体を持っているのか一部になりますけど表にしてみました。

生物種 染色体の数
ライ麦 14本
タマネギ 16本
稲(イネ) 24本
ミミズ 32本
猫(ネコ) 38本
ヒト(人間) 46本
チンパンジー 48本
牛(ウシ) 60本
馬(ウマ) 64本
犬(イヌ) 78本

染色体異常とは

DNAと人体

染色体異常は親が子どもに染色体を繋いでいくときに、通常ならば1本ずつ受け取るはずの染色体がどちらかから2本受け取って3本になってしまったり、遺伝子情報が突然変異を起こしてしまったりして起きる異常です。数が増減するタイプ(数の異常)と形状が変わるタイプ(構造異常)に分かれます。

通常は父と母から1本ずつ染色体を受け取るのですが、何かしらの理由によって片方から2本受け取ってしまう異常をトリソミーといいます。この異常は妊娠年齢が高くなると起きやすいと言われています。ただ、近年は母親の年齢だけではなく父親の年齢が高くなると生じやすいという報告も出ている症状です。1本目から23本目すべての染色体に起きる可能性があります。

起きる可能性が一番高いのが21トリソミー(ダウン症候群)です、その後が18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)です。

もう一つが染色体の形が変化する構造の異常です。異常の種類に、相互転座、ロバートソン型転座、それに逆位があります。2つの染色体間で一部が互いに入れ替わっているのを相互転座といいます。ロバートソン型転座とは、二つの染色体の端にある動原体型染色体の動原体部分で切れて、結合している状態です。ただし、短い部分には遺伝子がないので失っても問題ありません。

構造の異常は、父母のいずれかが保因者の場合、子どもに遺伝する可能性があります。保因者とは症状は出ていないけど染色体の構造異常を持つ人です。もし、ご両親のどちらかが保因者だった場合、遺伝カウンセリングを受けてください。構造異常の染色体を持つ受精卵があると流産の可能性があるからです。妊娠初期に起きる流産のほとんどが染色体異常によるものです。

もし、流産せずに生まれてきたとしても、染色体異常症の赤ちゃんになります。すると、トリソミーも含めて以下の症状が複数出てきます。

  • ・体格が小さい、頭の大きさが小さい
  • ・運動の発達が遅い、なかなか歩けない
  • ・言葉が話せない、知的な理解が幼い
  • ・顔つきに特徴がある(例:目が離れている、あごが小さい、耳の位置が低い、眉毛が濃いなど)
  • ・体の組織の形が通常と異なる(例:心臓に穴が開いている、指が短い、骨の変形があるなど)
  • ・てんかん発作がなかなかとまらない
  • ・発達障害、自閉症の特徴がある
  • ・筋肉の力が弱い、体がぐにゃぐにゃしている

他にも様々な症状があるため治療や社会的なサポートが必要です。

DNAとは

ヒトのDNA構造を3Dレンダリング

DNAは、生命の設計図と呼ばれるほど生物の細胞づくりに欠かせない物質です。デオキシリボ核酸の略称で、遺伝子情報を乗せたものです。太さは髪の毛の約4万分の1と細く、長さは約1.8mです。このDNAが各器官をつくり細胞に遺伝情報を伝えるという重要な役割を担っています。

DNAは父親由来、母親由来でそれぞれ32億の「塩基対」が備わっています。塩基とはDNAを構成する主要な成分です。以下の4種類があり、遺伝に関する情報を両親から赤ちゃんへと伝えています。

  • アデニン(A)
  • チミン(T)
  • グアニン(G)
  • シトシン(C)

染色体の中にあるDNAはタンパク質が持つ遺伝情報の部分だけ糸状になってほどけており、ほどけた部分は遺伝情報は「メッセンジャーRNA(mRNA)」という物質へと移されます。この一連の流れが「転写」です。「転写」は「遺伝子」が持つ遺伝情報を細胞に届けるための最初の準備段階です。「mRNA」が持っている情報を基にしてタンパク質が作られています。DNAは「どのような部位に対して」「どのようなタンパク質を」「どのようなタイミングで形成するか」といったさまざまな命令をコントロールする役割があり、タンパク質の設計図とも呼ばれているのです。

受精卵は、最初はひとつの細胞ですが、胎児が育っていく間に細胞はどんどん分裂していきます。多くの臓器を構成する何百種類もの細胞に変化をしていき、体を作り上げていきます。たんぱく質は体を作るのに欠かせない物質です。そのたんぱく質を生み出す役割を担っているDNAは体にとって必要不可欠な存在といえます。

遺伝子とは

細胞構造の遺伝子からDNA、染色体まで。ゲノム配列

遺伝子とは、タンパク質の生成に関わる情報を持っているDNAのことです。DNAは二重のらせん構造になっており、その中には生物が持つすべての機能や活動をコントロールするための指示が含んでいます。ところが、暗号のように並んだ部分があり、それを遺伝子と呼んでいます。ただし、すべてのDNAの中に遺伝子が含まれているわけではありません。遺伝の機能を持っているものは、わずか3~5%です。

他の部分がどのような機能を持つのかははっきりしていません。

親から子どもへ顔の特徴や髪の色、体質など多くのことが受け継がれるのを遺伝といいます。受け継いでいくメカニズムとして欠かせない物質として遺伝子が存在しているのです。

ゲノムとは

ゲノムとは、1セットの染色体を構成する全てのDNA塩基配列、遺伝子を含めた遺伝情報のことです。NIPT(新型出生前診断)の解析もゲノムが深く関わっています。DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の塩基成分の組み合わせで遺伝情報が記憶されており、塩基成分が並んだセットが「ゲノム」となります。

人間はほとんど同じ「ヒトゲノム」の構成になっていますが、僅か0.1%程度違いがあります。この0.1%に含まれる塩基配列の違いによって、「顔の特徴が異なる」「身体能力が異なる」「性格が異なる」などの人間の多様性が生まれるのです。

新型出生前診断(NIPT)の仕組み

NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液を採取して血液中にある胎児のDNAの断片を分析することで赤ちゃんの特定の染色体の疾患を調べられるスクリーニング検査です。妊婦の血液には、胎児由来のDNAが約10%含まれていると言われています。だから妊婦さんの血液を分析すれば、胎児の染色体や遺伝子を調べられるのです。

NIPT(新型出生前診断)は、血液中にあるDNAの断片を集めて塩基配列をし、各々のDNA断片が何番染色体のどの部分なのかをきめていきます。その際にゲノムも構成します。

そして各染色体に由来するDNA断片量が正常と比べてどれくらい変化しているかをスクリーニングします。それによって精度が高くなっているのです。

まとめ

親子

ここまで染色体、DNA、ゲノムについて説明をしました。どの物資もヒトが細胞を分裂させて臓器や体を作っていく過程において欠かせない物質であることがおわかりいただけたかと思います。そして染色体が先天性疾患のあるなしに大きく影響をしていることや流産の原因にもなっているのもご理解いただけたでしょう。

NIPT(新型出生前診断)を受けると染色体やDNAは検査前の遺伝カウンセリングで必ず出てきますので覚えておいて損はありません。

東京にあるミネルバクリニックでは、遺伝子に関する専門家である臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを実施しています。出産経験もあり、先輩ママとして妊婦さんの悩みや不安に寄り添ってお話を聞いています。現在は、全国どこからでも受けられるオンライン診療を実施していますので気になることがあれば気兼ねなくお問い合わせください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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