この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

エナメル質形成不全には、遺伝によるものと、遺伝以外の原因によるものがあります。前歯だけ・一部の歯だけに出るものの多くは遺伝子1つで決まるものではないと考えられていますが、乳歯も永久歯もすべての歯にエナメル質の異常がある、家族に同じ歯の人がいる、という場合は、遺伝性の「エナメル質形成不全症」のことがあります。「歯みがきが足りない」「妊娠中の過ごし方のせい」と言われ続けてきた方も、原因の遺伝子がわかれば、その回り道を終わりにできます。このページでは、遺伝するかどうかの見分け方と、42遺伝子を調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. エナメル質形成不全は遺伝する?この検査で何がわかる?
すべての歯に異常がある遺伝性のエナメル質形成不全症は遺伝します。この検査は、その原因となる遺伝子と、象牙質・骨・腎臓などほかの病気を伴う型の遺伝子、あわせて42遺伝子をまとめて調べます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよい?
乳歯も永久歯もすべての歯のエナメル質が薄い・柔らかい・色が違う方、ご家族に同じ歯の人がいる方、歯以外の症状(腎臓・目・骨・皮膚など)もある方です。前歯だけ・6歳臼歯と前歯だけ(MIH)のものは、まず歯科での診断が先です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなる?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、歯の治療計画や腎臓などの見張り、ご家族やお子さんへの確率まで具体的に考えられます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. エナメル質形成不全は遺伝する?原因は「遺伝によるもの」と「遺伝以外」に分かれます
エナメル質形成不全は、遺伝するものとしないものがあります。すべての歯に同じようにエナメル質の異常が出る「エナメル質形成不全症」は遺伝性の病気で、一部の歯だけに出るものの多くは、単一の遺伝子だけでは説明できず、環境要因や遺伝的要因などが関わると考えられています。どちらなのかによって、ご家族への影響も、遺伝子検査が役に立つかどうかも変わります。
エナメル質形成不全とエナメル質形成不全症の違い
エナメル質は、歯のいちばん外側をおおう硬い層です。歯が作られる時期に、このエナメル質がうまく作られなかった状態を、広く「エナメル質形成不全」と呼びます。その中で、遺伝子の変化が原因で、乳歯と永久歯の多くの歯にエナメル質の異常が出る病気が「エナメル質形成不全症」(英語でamelogenesis imperfecta)です[1]。
エナメル質形成不全症は、エナメル質だけに異常が出る型と、体のほかの場所にも症状が出る症候群の一部として起こる型があります[1]。どれくらいの人がなるかは調べた地域で大きく違い、北スウェーデンの約700人に1人から、米国の約1万4,000人に1人まで報告されています[1]。
前歯だけ・1本だけ・6歳臼歯と前歯(MIH)は、多くが遺伝以外の原因
6歳臼歯(最初に生える永久歯の奥歯)と前歯に、境目のはっきりした白・黄・茶色の斑が出るものは、MIH(大臼歯切歯低石灰化)と呼ばれます。欧州小児歯科学会の指針(2022年)によると、MIHは世界の子どもの12.9〜14.2%にみられ、原因はひとつではなく、全身の病気や遺伝・エピジェネティクスの要因などが重なって起こると考えられています[3]。
日本では、日本小児歯科学会が全国の歯科医療機関に協力を求めて行った調査(2015年10月〜2016年2月、7〜9歳の4,496人)で、MIHは19.8%の子どもにみられました。この研究でも、MIHのはっきりした原因はまだわかっていないとされています[4]。乳歯の外傷や虫歯の影響で、その下から生えてくる永久歯1本だけにエナメル質の異常が出ることもあります。こうした一部の歯だけのエナメル質形成不全は、多くの場合、まず歯科・小児歯科での診断と治療が先になります。
遺伝性を疑うのはどんなとき(見分け方)
遺伝性のエナメル質形成不全症は、歯ができた時期に関係なく、すべての歯、またはほぼすべての歯に同じような異常が出るのが特徴です[1]。見分けるときによく比べられるのは、歯が作られる時期にフッ素をとりすぎたことによる「歯のフッ素症」です[1]。最終的な判断は歯科医師の診察で行いますが、次の表が目安になります。
🔍 遺伝性のエナメル質形成不全症と、遺伝以外のエナメル質形成不全の見分け方(目安)
※目安です。家族に同じ歯の人がいなくても、潜性(劣性)遺伝や新しく起きた遺伝子の変化による場合があります。見分け方は文献[1][3]をもとに作成。
エナメル質形成不全は「母親のせい」ではありません
「妊娠中の過ごし方が悪かったのでは」と自分を責めるお母さんは少なくありませんが、エナメル質形成不全は母親のせいではありません。MIHの原因はまだはっきりしておらず、ひとつの要因で起こるものではないと考えられています[3][4]。
遺伝性のエナメル質形成不全症の場合も、原因の遺伝子の変化は、お父さん・お母さんのどちらからも受け継がれることがあり、ご両親のどちらも持っていない変化が新しく起きることもあります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。原因がわかることは、責める相手を探すためではなく、これからの選択肢を増やすためのものです。
2. エナメル質形成不全症の症状と型
エナメル質形成不全症では、歯が小さく見える、色が違う(白く濁る・黄色・茶色)、表面に小さなくぼみや溝がある、すり減りやすい、欠けやすい、虫歯になりやすい、といった症状が出ます。乳歯と永久歯の両方に起こります。かみ合わせの異常など、ほかの歯の問題を伴うこともあります。
歯の色(茶色・黄色・白濁)とかたさ:3つの型
エナメル質形成不全症は、エナメル質のどこに異常があるかで、大きく3つの型に分けられます。米国国立医学図書館の解説では、形成不全型はエナメル質が薄い、成熟不全型はエナメル質がもろい、石灰化不全型はエナメル質が柔らかい、と説明されています。これに、歯の根の形の異常(タウロドント)を伴う型を加えた分類もあります[2]。型によって、関係する遺伝子もある程度しぼられます。
🦷 エナメル質形成不全症のおもな型と、代表的な遺伝子
※型と遺伝子の組み合わせは文献[2]の表による。同じ遺伝子でも、人によって見え方が違うことがあります。
フランスの専門施設を中心とした研究(エナメル質形成不全症の115人の発端者)では、エナメル質だけに異常が出る型で多く見つかった遺伝子は、MMP20とFAM83Hでした。原因として知られている遺伝子は、70を超えています[2]。
歯以外の症状を伴う型(腎臓・目・神経・骨・皮膚・免疫)
エナメル質形成不全症の一部は、歯以外の病気の一部として起こります。歯の症状をきっかけに原因の遺伝子がわかると、ほかの臓器の見張りを早く始められることがあり、ここがこの検査のいちばん大きな意味のひとつです。
⚠️ 歯以外の症状を伴うおもな型
※病気と症状は文献[2][5][6]とMedlinePlus Genetics・PanelAppによる。症状の出方には個人差があります。
たとえばFAM20A遺伝子によるエナメル質腎症候群では、腎臓の石灰化は子どものうちは症状がないことが多く、調べなければ見つからないことがあると報告されています。報告した研究者は、腎臓の専門医に紹介し、子どものころから大人まで腎臓の石灰化と腎臓の働きを定期的に確かめることで、腎不全になる前に予防的な治療を始められる可能性があるとしています[5]。
象牙質形成不全症との違い
象牙質形成不全症は、エナメル質の内側にある象牙質がうまく作られない病気です。歯が青みがかった灰色や黄褐色で透けて見え、すり減ったり欠けたりしやすいのが特徴で、DSPP遺伝子の変化で起こり、常染色体顕性(優性)遺伝です。骨形成不全症に伴って起こる型もあります。エナメル質形成不全症と見た目が似ることがあるため、この検査ではDSPPや骨形成不全症の遺伝子も一緒に調べます。
3. 遺伝のしかたと、兄弟・子どもへの確率
エナメル質形成不全症は、常染色体顕性(優性)遺伝・常染色体潜性(劣性)遺伝・X連鎖遺伝のいずれでも起こり、原因の遺伝子によって、ご家族やお子さんに遺伝する確率が変わります[2]。だからこそ、確率を考えるには、まず原因の遺伝子を知ることが出発点になります。
常染色体顕性(優性)遺伝:FAM83H・ENAM・AMTNなど
常染色体顕性(優性)遺伝では、2本ある遺伝子の片方に変化があれば症状が出ます。親が同じ変化をもっている場合、お子さんに受け継がれる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。性別には関係しません。
ご両親のどちらも変化をもっていない場合(新しく起きた変化)でも、次のお子さんの確率はゼロとは言えません。親の卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性があるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
常染色体潜性(劣性)遺伝:MMP20・KLK4・FAM20A・WDR72など
常染色体潜性(劣性)遺伝では、2本ある遺伝子の両方に変化があると症状が出ます。片方だけに変化をもつ人は「保因者」と呼ばれ、ふつうは症状がありません。ご両親がともに保因者の場合、きょうだい1人ごとに、症状が出る確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1です。親や祖父母に同じ歯の人がいなくても起こるのは、このためです。
なお、表皮水疱症の遺伝子(COL17A1・LAMA3・LAMB3)のように、両方に変化があると皮膚の病気になり、片方だけの変化でもエナメル質の異常が出ることがある遺伝子もあります。
X連鎖遺伝:AMELX(男の子と女の子で見え方が違う)
AMELX遺伝子はX染色体にあり、X連鎖遺伝のしかたをとります。X染色体が1本の男性は症状が重く出やすく、2本ある女性では、エナメル質に縦のすじ状の模様が出ることがあります。これは、女性の細胞ごとに2本のX染色体のどちらが働くかが違うためです[1]。
同じ変化をもつ女性から生まれるお子さんは、性別にかかわらず2分の1の確率で変化を受け継ぎます。父親がもつ場合、娘さんは全員受け継ぎ、息子さんには受け継がれません(父から息子へは伝わりません)。
4. エナメル質形成不全の遺伝子検査は、どんな人が受けるとよいか
乳歯も永久歯もすべての歯にエナメル質の異常がある方、ご家族に同じ歯の人がいる方、歯以外の症状もある方に向く検査です。見た目だけでは遺伝によるものかどうか判断できないことがあるので、迷ったら遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
受けるとよい人
- ●乳歯・永久歯のすべて、またはほぼすべての歯のエナメル質が、薄い・柔らかい・もろい・色が違う方
- ●ご両親・きょうだい・お子さんなど、ご家族に同じような歯の方がいる方
- ●歯の症状に加えて、腎臓の石灰化・見え方の変化・難聴・てんかん・骨折しやすい・皮膚の水ぶくれなど、歯以外の症状もある方
- ●歯科で遺伝性のエナメル質形成不全症や象牙質形成不全症を疑われた方
- ●ご自身やご家族がエナメル質形成不全症で、これから結婚・妊娠を考えていて、お子さんへの影響を知っておきたい方
あなたの1回の検査結果は、ご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりにもなります。原因がわかれば、ご家族は同じ場所だけを調べることで、同じ変化をもっているかを確かめられます。
受けなくてよい場合・別の検査が向く場合
6歳臼歯と前歯だけ(MIH)、前歯だけ、1本だけといった一部の歯のエナメル質形成不全は、多くが遺伝子1つで決まるものではないと考えられており[3][4]、まず歯科・小児歯科での診断と治療が先です。また、症状によっては、このページの検査より別の検査のほうが向いていることがあります。
症状から、どのパネルを選ぶか
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※外胚葉異形成症パネルとはDLX3・ORAI1・PEX1・ROGDIの4遺伝子が、部分性無歯症パネルとはLTBP3の1遺伝子が重なっています。どちらのパネルにも、ENAM・AMELX・FAM83H・MMP20は入っていません。どの検査が合うかは、遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
5. 調べる42遺伝子と、それぞれでわかる病気
この検査では、エナメル質形成不全症の原因となる遺伝子に加えて、見た目が似ている象牙質形成不全症や、歯の症状を伴う骨・皮膚・腎臓・目・神経・免疫の病気の遺伝子、あわせて42遺伝子をまとめて調べます。遺伝子を1つずつ順番に調べるのではなく、一度に調べられるのが遺伝子パネル検査です。
🧬 エナメル質形成不全症パネルで調べる42遺伝子と、関係する病気
※遺伝子・型・遺伝のしかたは文献[2][5][6]と、米国国立医学図書館のMedlinePlus Genetics、英国Genomics EnglandのPanelAppによる。同じ遺伝子でも、変化の種類によって病名や遺伝のしかたが違うことがあります。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、42遺伝子の中の、病気の原因となる小さな変化(1つの文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子の一部や全体がなくなる・増える変化です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること
- ●遺伝子の小さな変化:42遺伝子のたんぱく質を作る部分と、そのつなぎ目の近くを読み、病気の原因となる変化がないかを調べます。
- ●欠失・重複:遺伝子1つ全体、または続いた2つ以上の部分(エクソン)がなくなる・増える変化を調べます。見つかった変化は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●読み取りの確かさ:調べる場所の99%以上を、同じ場所を20回以上読む深さで調べます(読む回数が多いほど、読み違いが起こりにくくなります)。
わからないこと(検査の限界)
- ●調べていない遺伝子:エナメル質形成不全症の原因遺伝子は70を超えて知られており[2]、この検査の42遺伝子以外が原因のこともあります。
- ●見つけにくい変化:染色体の一部が入れ替わる変化(転座・逆位)、同じ配列がくり返し伸びる変化、遺伝子の働きを調節する場所や、遺伝子の中のつなぎ目から遠い部分の変化は、この検査では見つかりません。1つのエクソンだけの欠失・重複も、ふだんは見つかりません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態を見つけることは、この検査の目的に入っていません。
- ●似た配列による読み違い:よく似た配列がほかの場所にある遺伝子では、まれに正確に判定しにくいことがあります。
陰性でも否定はできません。意義がまだわからない変化(VUS)もあります
原因が見つからなくても、遺伝性のエナメル質形成不全症ではないとは言い切れません。専門施設が大きな遺伝子パネル(500を超える遺伝子)で調べた研究でも、原因がわかったのは60%でした[2]。また、病気の原因かどうかまだ判断できない「意義がまだわからない変化(VUS)」が見つかることがあります。VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。調べた目的とは別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
7. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかると、病名の確定や、歯の治療計画、型によっては腎臓・目・骨などの経過観察の方針を考える手がかりになります。わかったあとにできることを、立場ごとにまとめます。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。
ご本人:歯の治療計画と、型ごとの見張り
一度できあがったエナメル質を作り直すことはできないため、治療は歯を守り、見た目とかむ働きを保つことが中心です。乳歯の時期には奥歯に既製の金属冠を使うことがあり、成長してからは接着性の詰め物や被せ物などが使われます[1]。型がわかると、エナメル質が薄いのか、柔らかいのかなど、歯科で治療法を選ぶときの手がかりが増えます。治療は歯科・小児歯科の主治医とご相談ください(当院では歯の治療は行っていません)。
症候群性の型とわかった場合は、歯以外の見張りが必要になります。たとえばFAM20Aなら腎臓の石灰化と腎臓の働き[5]、CNNM4なら目、PEX1・PEX6なら聴力[6]、骨形成不全症の遺伝子なら骨、というように、それぞれの専門の医療機関で定期的に確かめていきます。
症状のないご家族・保因者とわかった方
潜性遺伝の型で、ご自身が保因者とわかった場合、ふつうはご自身の歯に症状はありません。お子さんで同じ病気が起こるかどうかは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかで決まります。ご家族の原因の変化がわかっていれば、パートナーの方は、その遺伝子を調べることで確かめられます。
子どもを持つときの選択肢
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。羊水検査・絨毛検査は院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
このパネルの遺伝子のうち、骨形成不全症の原因遺伝子であるCOL1A1とCOL1A2は、当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランで、IFITM5はインペリアルプランで、赤ちゃんに新しく起きた変化を調べる対象に入っています。NIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。そのほかの39遺伝子は、NIPTの対象には入っていません。
結婚や妊娠の前に、カップルで保因者かどうかを調べる拡大版保因者スクリーニングもあります。ただし、女性版787遺伝子の一覧で確かめた範囲では、エナメル質だけに異常が出る潜性遺伝の型の遺伝子(MMP20・KLK4・FAM20A・WDR72・SLC24A4など)は対象に入っていません。このパネルの遺伝子で一覧に入っていたのは、ROGDI・PEX1・PEX6・LAMA3・LAMB3・COL17A1・ALPL・CRTAP・P3H1・PPIB・FKBP10・SERPINF1・BMP1でした。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります。何も検査をせずに産むことも、そのまま選べる大切な選択肢です。
ご家族の検査
ご本人で原因の変化がわかれば、ご両親・きょうだい・お子さんなどのご家族は、その変化だけをピンポイントで調べることで、同じ変化をもっているかを確かめられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで、遺伝カウンセリングを受けてから行います。
当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、歯科・腎臓・目などどこで何を確かめるか、ご家族の検査、妊娠のときの選択肢を一緒に考えます。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。
陰性・VUSだったとき
原因が見つからなかった場合も、歯の症状に合わせた治療はそのまま進められます。歯以外の症状が広い場合は、全エクソーム検査など、より広く調べる検査を考えます。VUSが見つかった場合は、研究が進んでのちに意味がはっきりすることもあるため、結果の扱いを一緒に考えます。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
エナメル質形成不全症そのものは、確認した指定難病の一覧には見当たりませんでした。一方、このパネルで調べる遺伝子が関係する病気には、指定難病に含まれるものがあります。
厚生労働省の指定難病の一覧では、表皮水疱症(36)、低ホスファターゼ症(172)、ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く。234)、ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(238)、骨形成不全症(274)が指定難病になっています(2026年10月に確認)。医療費の助成を受けるには、それぞれの認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センターやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。原因の遺伝子がわかっていることは、診断を確かめる手がかりになります。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で採れ、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でお受けできます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質の検体を確実に採るためです。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【「誰のせい」ではなく「次に何ができるか」を】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
エナメル質形成不全で検索すると、「母親のせい」という言葉が並びます。けれども、遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。歯の見た目は毎日目に入るものだからこそ、原因がわからないまま自分を責め続けるのは、とてもつらいことだと思います。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、歯の治療の計画も、腎臓や目の見張りも、ご家族やこれから生まれるお子さんのことも、具体的に考えられるようになります。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. エナメル質形成不全は母親のせいですか?
いいえ。6歳臼歯と前歯に出るエナメル質形成不全(MIH)の原因はまだはっきりわかっておらず、ひとつの原因ではなく、いくつもの要因が重なって起こると考えられています。また、遺伝性のエナメル質形成不全症の原因となる遺伝子の変化は、お父さん・お母さんのどちらからも受け継がれることがあり、新しく起きることもあります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
Q2. エナメル質形成不全は遺伝しますか?兄弟や子どもに遺伝する確率は?
前歯だけ・一部の歯だけのものの多くは、遺伝子1つで決まるものではないと考えられています。すべての歯にエナメル質の異常がある遺伝性のエナメル質形成不全症では、確率は遺伝のしかたで変わります。常染色体顕性(優性)遺伝ならお子さん1人ごとに2分の1、常染色体潜性(劣性)遺伝ならご両親がともに保因者のとき、きょうだい1人ごとに4分の1です。X連鎖の場合は、親の性別とお子さんの性別で変わります。
Q3. 前歯だけ・6歳臼歯だけのエナメル質形成不全でも、遺伝子検査を受けたほうがよいですか?
多くの場合、まず歯科での診断が先です。6歳臼歯と前歯に境目のはっきりした白・黄・茶色の斑が出るものはMIHと呼ばれ、日本の7〜9歳の調査では19.8%にみられました。一方、乳歯と永久歯のすべての歯に異常がある、ご家族に同じ歯の人がいる、歯以外の症状もある、といった場合は、遺伝性のエナメル質形成不全症を考えて、この検査が役に立ちます。
Q4. エナメル質形成不全と虫歯はどう見分けますか?
見分けるのは歯科医師の診察です。エナメル質形成不全は歯ができる時期にエナメル質がうまく作られなかった状態で、生えてきたときから色や形の変化があります。虫歯は、生えたあとに細菌によって歯が溶ける病気です。ただし、エナメル質が弱い歯は虫歯にもなりやすいため、両方が重なることもあります。
Q5. エナメル質形成不全は発達障害と関係がありますか?
このページで調べる遺伝子の中には、ROGDI遺伝子によるコールシュッター・テンツ症候群のように、てんかんや発達の退行とエナメル質の異常が一緒に起こる病気の遺伝子があります。一方で、エナメル質形成不全があること自体が発達障害の原因やしるしになることを示す根拠は、確認できませんでした。歯以外の症状が気になるときは、遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q6. 大人になってからでも検査できますか?
できます。生まれ持った遺伝子は一生変わらないので、年齢にかかわらず調べられます。被せ物の計画を立てたい方、ご自身のお子さんへの影響を知りたい方が、大人になってから検査を受けることもできます。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液と頬の粘膜ならオンライン診療でもお受けできます。
Q7. エナメル質形成不全は治りますか?
一度できあがったエナメル質を、元のように作り直すことはできません。そのため治療は、歯を守り、見た目とかむ働きを保つことが中心になります。乳歯の奥歯には既製の金属冠、成長してからは接着性の詰め物や被せ物などが使われます。どの治療をいつ行うかは、歯科・小児歯科の主治医と相談して決めます。
Q8. 検査で原因が見つからなかったら、どうなりますか?
原因が見つからなくても、遺伝性のエナメル質形成不全症ではないとは言い切れません。専門施設で大きな遺伝子パネルを使った研究でも、原因がわかったのは60%でした。歯の症状に合わせた治療は、原因がわからなくても進められます。症状が広い場合は全エクソーム検査など、次の選択肢を一緒に考えます。
🧬 一度の検査で、歯と体とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。エナメル質形成不全症の原因がわかれば、歯の治療の計画や、腎臓・目・骨などの見張りだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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