目次
NIPTで「10番染色体トリソミー」陽性と言われたら|出生前診断の専門医が解説【偽陽性体験談】
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出生前診断の基礎知識 → 10番染色体トリソミーとは?21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミーとの違い、染色体異常が起こる確率と母体年齢の関係を解説。 -
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無認可施設のトラブル実録 → 説明なしに陽性結果を渡され、中絶を勧められた患者様の実体験。なぜ「偽陽性」の可能性を調べずに中絶してはいけないのか。 -
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胎盤性モザイク(CPM)の正体 → NIPTで希少トリソミーが陽性と出た場合、その多くは赤ちゃんではなく胎盤だけの異常。羊水検査で確定診断を受ける重要性。 -
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ミネルバの技術力(COATE法) → FDA認可済・臨床試験で検証された次世代NIPTと、産科・婦人科・小児科との連携体制、父親由来の新生突然変異(デノボ)リスクへの対策。 -
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衝撃の結末 → 羊水検査の結果、赤ちゃんはどうだったのか。無事出産された患者様からの感動の手紙を公開。
📑 目次
1. 10番染色体トリソミーとは?【出生前診断の基礎知識】
NIPTで「10番染色体トリソミー陽性」と言われて、インターネットで検索してこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。まずは、出生前診断と染色体異常の基礎知識を確認しましょう。
染色体異常の基本を理解しましょう。
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染色体とは:
人間の体には22対の常染色体と1対の性染色体があり、合計46本の染色体を持っています。この染色体にはDNAが含まれ、私たちの体を作るための遺伝情報が格納されています。 -
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トリソミーとは:
本来2本であるべき染色体が3本になる状態を「トリソミー」と呼びます。常染色体に起こる場合は「常染色体トリソミー」といいます。3本になることで遺伝情報のバランスが崩れ、発達や成長に影響を及ぼす病気の原因となります。 -
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代表的なトリソミー:
21トリソミー(ダウン症候群):最も頻度が高く、出生児約700人に1人の確率で発生。知的障害、心臓疾患、消化器系の合併症などを伴うことがありますが、適切な医療・支援により多くの方が社会生活を送っています。
18トリソミー:出生児約3,000~6,000人に1人の確率。心臓や消化器、腎臓などの重い合併症を伴い、多くの場合、生後1年以内に亡くなります。
13トリソミー:出生児約10,000人に1人の確率。重度の心臓疾患や脳の発達異常を伴い、予後は厳しいことが多いです。
10番染色体トリソミーは「希少トリソミー」―偽陽性の可能性が高い理由
21番・18番・13番以外の染色体がトリソミーになることを「希少トリソミー」と呼びます。10番染色体トリソミーもその一つです。
重要なポイント:希少トリソミーの多くは、妊娠初期に自然流産となります。つまり、妊娠が継続している時点でNIPTで「10番トリソミー陽性」と出た場合、それは赤ちゃん自身ではなく「胎盤だけに異常がある(=偽陽性)」可能性が高いのです。この現象を「胎盤性モザイク(CPM)」といいます[1]。
📊 NIPTの検査精度について
NIPTは母体の血液中に流れる胎盤由来のDNA(cfDNA)を調べる検査です。21トリソミーの検出感度は99%以上と報告されていますが[2]、陽性的中率(陽性と出た人のうち本当に異常がある確率)は母体年齢や検査項目により大きく異なります。特に希少トリソミーでは偽陽性の確率が高くなります。
🔬 確定診断の重要性
NIPTは「スクリーニング検査」であり、確定診断ではありません。陽性結果が出た場合は、必ず羊水検査や絨毛検査で確認する必要があります[3]。羊水検査の精度は99.9%以上であり、胎児の染色体異常を正確に調べることができます。
母体年齢と染色体異常の発生確率
染色体異常の発生確率は母体年齢とともに上昇します。例えば、21トリソミー(ダウン症候群)の発生確率は以下のように報告されています[8]。
| 母体年齢 | 21トリソミーの発生確率 | 全染色体異常の発生確率 |
|---|---|---|
| 25歳 | 約1/1,250 | 約1/476 |
| 30歳 | 約1/952 | 約1/385 |
| 35歳 | 約1/385 | 約1/192 |
| 40歳 | 約1/106 | 約1/66 |
| 45歳 | 約1/30 | 約1/21 |
このように、年齢が上がるにつれて染色体異常のリスクは上昇しますが、どの年齢でも出生前診断を受けるかどうかは、妊婦さんとパートナーの自主的な判断に委ねられています。検査を受ける・受けないの選択は、ご本人の希望が尊重されるべきです[2]。
2. 「早く中絶しないと」他院で陽性宣告された朝
ゴールデンウィークの早朝6時、ミネルバクリニックの代表電話が鳴りました。電話の主は、都内在住の妊婦Aさん。涙声で、混乱の極みにありました。
彼女は近くの無認可クリニックでNIPT(新型出生前診断)を受け、「10番染色体トリソミー陽性」という結果を通知されたばかりでした。しかし、そこには医師からの説明も、遺伝カウンセリングもありませんでした。ただ紙切れ一枚と、「珍しい異常だから、早く中絶しないと母体が危ない」という無責任な言葉だけが投げかけられたのです。
⚠ 丸投げの恐怖
「説明なし」「専門医不在」。多くの無認可施設では、採血だけを行い、結果が出たら「あとは自分で調べて」と突き放されるケースが後を絶ちません。Aさんも、陽性の意味すら分からず放置されました。
⚠ 誤った医学的助言
「週数が進むとリスクだから急いで中絶を」という言葉は、正確な診断を経ていない段階では極めて危険なアドバイスです。羊水検査で確定させる前に命の選別を迫ることは、医療倫理に反します。
⚠ データの囲い込み
Aさんは、産婦人科でもらったエコー写真(NT計測)まで検査クリニックに取り上げられ、返却してもらえなかったそうです。検査結果の原本も渡されず、翻訳版のみ。これではセカンドオピニオンすら受けられません。
3. なぜ偽陽性が起こる?胎盤性モザイク(CPM)の仕組み
「とにかく一度来てください」
私は電話でそう伝え、祝日で休診だったクリニックを開けて彼女を待ちました。泣きじゃくるAさんに、私は臨床遺伝専門医としてこう伝えました。
「落ち着いてください。その陽性、おそらく偽陽性ですよ」
13番、18番、21番以外の「希少トリソミー(今回の10番など)」がNIPTで検出された場合、その多くは赤ちゃん自身ではなく、胎盤のみに染色体異常があるケースです。これを「胎盤性モザイク(CPM:Confined Placental Mosaicism)」と呼びます。
NIPTで偽陽性が起こる最大の原因です。日本産婦人科医会も詳しく解説しています[1]。
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NIPTの仕組みの限界:
NIPTは、母体の血液中に流れている「胎盤(絨毛)由来のDNA」を調べています。赤ちゃん自身のDNAを見ているわけではありません。 -
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胎盤と胎児の不一致:
受精卵が分裂する過程で、胎盤になる細胞だけにエラー(トリソミー)が起き、赤ちゃんになる細胞は正常に分裂することがあります。この場合、NIPTでは「陽性」と出ますが、お腹の赤ちゃんは完全に正常(偽陽性)です。絨毛検査(CVS)で染色体異常のモザイクを認めた場合には、羊水検査での再評価が必要です[1]。 -
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「トリソミーレスキュー」という現象:
減数分裂時に発生したトリソミーの受精卵が、細胞分裂を繰り返す中で余剰の染色体を排除し、正常核型化することがあります。その結果、胎盤はトリソミーのまま、胎児は正常核型となるCPMが起こります[1]。 -
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10番トリソミーの特徴:
もし本当に全身が10番トリソミーであれば、妊娠初期に流産していることがほとんどです。妊娠が継続していてエコーで大きな異常が見られない場合、胎盤性モザイクの可能性が極めて高いと推測できます。
私は2時間かけて彼女と話し、説得しました。「赤ちゃんを守れるのはお母さんだけです。不確かな情報で中絶してはいけません。落ち着いて羊水検査を受けましょう。それで白黒はっきりしますから」と。
4. ミネルバクリニックの「ダイヤモンドプラン」
Aさんのようなトラブルを防ぐため、ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医が、世界中から厳選した検査を提供しています。中でも最上位の「ダイヤモンドプラン」は、第3世代NIPT(スーパーNIPT)をさらに進化させた、次世代の技術を用いています。
FDA認可済「COATE法」の導入
米国の大手遺伝子検査会社が開発し、FDA(米国食品医薬品局)の認可を取得したCOATE法(SNP法×ターゲット法)を採用しています。当院導入前に実施した臨床試験において、従来法では検出が難しかった「微細欠失症候群」の陽性的中率が、70%台から99.9%以上へと向上することが確認されました。
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基本トリソミー+α:
13番・18番・21トリソミーに加え、流産リスクに関わる15番・16番・22番トリソミーも測定可能です。 - •
微細欠失症候群:
12か所13疾患を網羅。積算リスクは1/1000と言われる頻度の高い疾患群です。心臓疾患や発達遅延、知的障害などの合併症を伴うことがあります。
父方リスク「新生突然変異(デノボ)」
ダイヤモンドプランでは、父親の加齢とともに精子に蓄積される遺伝子変異(56遺伝子)もスクリーニングします。父親の年齢が高くなるほど、精子に蓄積するde novo変異(新生突然変異)の数が増加することが報告されています[5][6]。これらは「症候性自閉症」(重度の知的障害や心臓疾患、成長障害を伴う自閉症)の大きな原因となります[7]。
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当院の実績:
対象56疾患の積算リスクは1/600ですが、当院の実績では約1/60人が陽性となっており、ダウン症候群と同等の頻度で注意が必要な疾患群です。
(図:父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)
5. ミネルバクリニックの「トリプルリスクヘッジ」
Aさんの事例から分かるように、NIPTは「受けて終わり」ではありません。「もし陽性だったらどうするか」という、検査後の重い現実に備える必要があります。当院では、患者様を絶対に一人にしないため、金銭・時間・精神の3方向から守る「トリプルリスクヘッジ」を構築しています。
① 金銭的リスクヘッジ(互助会)
検査時に「互助会」へご入会(会費8,000円・非課税)いただくことで、万が一陽性判定が出た場合の確定検査(羊水検査・絨毛検査)費用を、当院が全額負担します。金銭的な心配をせずに、必要な次のステップへ進める仕組みです。
② 時間的リスクヘッジ(院内完結)
ミネルバクリニックは2025年6月より産婦人科を併設し、確定検査(羊水・絨毛検査)を自院で行えるようになりました。産科・婦人科・小児科との連携体制を構築し、検査から確定診断までワンストップで対応。たらい回しや長い待ち時間を防ぎます。
③ 心理的リスクヘッジ(専門医サポート)
臨床遺伝専門医である院長が、検査前の遺伝カウンセリングから検査後のフォローまで一貫して担当します。陽性という衝撃的な結果に対面した時、事情を知らない医師に一から説明する苦痛はありません。いつでも私があなたの味方です。
💡 さらに安心の「結果保証制度」
胎児分画不足などで再検査が必要となった際、万が一流産などで検体の再提出ができなくなってしまった場合は、検査代金を全額返金いたします(2025年1月開始)。流産が多い時期だからこそ、患者様に損をさせないための配慮です。
6. 検査を受ける方へのご案内【アクセス・外来情報】
出生前診断を受けるかどうかは、妊婦さんとパートナーの希望が尊重されるべきものです[2]。当院では、検査を受けるかどうかお悩みの方にも、まずは遺伝カウンセリングで情報提供を行い、十分な理解のうえで判断していただけるよう支援しています。
🏥 外来のご案内
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対象:妊娠6週~(早期NIPTは臨床研究として実施)
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受診方法:完全予約制。24時間WEB予約可能
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パートナー同席:遺伝カウンセリングへのパートナー同席を推奨しています
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セカンドオピニオン:他院で陽性と言われた方の相談も受け付けています
📍 アクセス
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所在地:東京都港区北青山2-7-25 神宮外苑ビル1号館2階
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最寄駅:東京メトロ銀座線「外苑前駅」徒歩1分
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遠方の方:オンラインNIPTをご利用いただけます。全国どこからでも遺伝専門医のカウンセリングを受けられます。
医療機関との連携体制
当院は非認証施設ですが、臨床遺伝専門医が院長を務める遺伝子検査/NIPT専門クリニックとして、認定施設では実施されていない全染色体検査、微細欠失症候群検査、デノボ変異検査などを提供しています。確定診断後の治療や支援が必要な場合には、産科・婦人科・小児科などの専門機関へ紹介状を作成し、スムーズな連携を図ります。
7. 結末:羊水検査の結果と、届いた手紙
その後、Aさんは当院で羊水検査を受けられました。
結果は、私の予想通り「偽陽性(陰性)」でした。
赤ちゃんには10番染色体トリソミーの染色体異常はなく、健康そのものでした。あのまま無認可施設の言うことを信じて中絶していたら、この命は失われていたのです。
後日、無事に出産を終えたAさんから、写真付きのメールをいただきました。
「ゴールデンウィークに、陽性結果だけを渡されて、どこの病院もやっていなくて毎日泣いて過ごしていた中、先生だけが、初対面であるにもかかわらずわたしを見てくださいました。思い出すと今でも泣けてきます。
今度の赤ちゃんは上の息子と違い、あまり泣かない上によく寝て静かなので、返って心配です。どんな子でも愛せるのか、親としての責任を果たせるのか、心配事はきりがないです。それでも娘の顔を見ることができて有難く、中絶しなくて良かったと今は思えます。
てこずらせていただきましたがあなたに会えて、わたし、本当に良かったです。」
このメールを見て、私は「本当によかった!」と心から思いました。同時に、無責任な検査施設によって危機に晒される命がこれ以上増えてはならないと強く感じています。
よくある質問(FAQ)
🏥 臨床遺伝専門医へのご相談
他院の結果で眠れない夜を過ごしている方も、出生前診断を受けるかお悩みの方も、まずはご相談ください。
ミネルバクリニックは、あなたと赤ちゃんを守るための「知識」と「技術」を持っています。
参考文献
- [1] 日本産婦人科医会「胎盤性モザイク(confined placental mosaicism : CPM)について」[日本産婦人科医会]
- [2] 日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」[日本産科婦人科学会 PDF]
- [3] 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」(令和3年5月)[厚生労働省 PDF]
- [4] Grati FR. Chromosomal Mosaicism in Human Feto-Placental Development: Implications for Prenatal Diagnosis. J Clin Med. 2014. [PubMed]
- [5] Kong A, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012. [PubMed]
- [6] Nature「親の年齢が子の新しい遺伝学的変異に影響を及ぼす」[Nature Asia]
- [7] 理化学研究所「双極性障害(躁うつ病)にデノボ点変異が関与」[理化学研究所]
- [8] 日本産婦人科医会「染色体異常」[日本産婦人科医会]
- [9] American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Noninvasive prenatal screening for fetal chromosome abnormalities in a general-risk population. 2016. [ACMG]

