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妊娠中、赤ちゃんの健康が気になる妊婦が任意で受けることができるのが「出生前診断」です。
このなかで非確定的検査としてクアトロテスト(母体血清マーカー検査)と呼ばれる検査があるのをご存じでしょうか?
今回は、クワトロテストの検査方法やNIPTとの違いについて解説します。H2: クワトロテスト(母体血清マーカー検査)とは
クワトロテストは、出生前に特定の先天性疾患が起きる確率を予測するための検査です。出生前の検査には、「確定的検査」と「非確定的検査」があり、クワトロテストは非確定的検査に分類されます。この検査は妊娠15~21週の間で受けられ、対象疾患はダウン症候群(21トリソミー)、エドワード症候群(18トリソミー)、開放性神経管奇形(開放性二分脊椎・無脳症)の3つです。
NIPTとの違い
非確定的検査の「クワトロテスト」と「NIPT」を比較すると、妊婦の血液を使用した検査という共通点がありますが、検査精度や検査できる先天性疾患の種類など、以下の様な違いがあります。
クワトロテスト | NIPT | |
---|---|---|
検査方法 | 血液検査 | 血液検査 |
検査できる先天性疾患 |
ダウン症候群(21トリソミー) 18トリソミー 開放性神経管奇形 |
99.6% |
検査精度(検出精度) | 80%前後 | 90%前後 |
検査が受けられる時期 | 妊娠15週から17週頃まで | 妊娠週数10週0日以降 |
クアトロテストの検査方法
クアトロテストでは妊婦から少量の血液を採取し、妊娠中に胎児や胎盤で作られる血液中の4種類のタンパク質(AFP、hCG、uE3、Inhibin A)などを測定します。
これら成分の値は、妊娠が進むにつれて増減しますが、胎児が検査の対象疾患を発症していることによって増減することもあります。
対象疾患の確率は、4種類の成分と妊婦の年齢のほか、妊娠週数や家族歴、体重、糖尿病の有無、日本人の基準値などを加味して算出されます。
妊婦の年齢が高くなるほど、ダウン症候群やエドワーズ症候群など染色体異常の赤ちゃんが生まれるリスクが高まり、クアトロテストの検査結果の確率が高くなるのです。
クワトロテストで見つかる疾患
クワトロテスト検査対象となるのは以下の疾患です。
- ● ダウン症候群(21トリソミー)
- ● エドワーズ症候群(18トリソミー)
- ● 開放性神経管奇形
ダウン症候群やエドワーズ症候群は染色体異常により起こる疾患です。
開放性神経管奇形は妊娠初期に形成される赤ちゃんの神経管が正常に形成されないことにより起こります。
ダウン症候群(21トリソミー)
ダウン症候群は、21番目の染色体が3本になることで引き起こされる染色体異常です。
ダウン症候群の子どもには、発育・精神発達の遅れ、つりあがった目や低い鼻、低身長などの特徴がみられます。
病気にかかりやすい傾向にあり、心臓や内臓の疾患を合併する可能性も高いです。
ダウン症候群の子どもの約半数には出生時から心臓の異常がみられ、約5%の子どもには消化管の異常がみられることもわかっています。
残念ながら、ダウン症候群には根本的な治療法はありません。
しかし、合併症として起こる心臓病などは手術によって治療できます。
エドワーズ症候群(18トリソミー)
エドワーズ症候群は、18番目の染色体が3本になることで引き起こされる染色体異常です。
発症の割合は6,000人に1人。自然流産になることが多く、男女比は1:3となっています。
エドワーズ症候群の傾向として、出生前の胎児の段階で胎動が微弱であったり、羊水が多くなったりすることが挙げられます。
また、出生後は小頭症や後頭部突出、出生時の低身長、知的障害などが症状として現れるのが特徴です。
エドワーズ症候群にも根本的な治療法はありません。
患児の半数以上が生後1週間以内に亡くなっており、生後1年まで生存する患児の割合は10%未満です。
また、生存した場合も発達の遅延や機能障害が起こるため、本人や家族に対する支援が重要となります。
開放性神経管奇形
開放性神経管奇形は、妊娠初期に形成されるはずの赤ちゃんの神経管が正しく形成されないことで、赤ちゃんの脳や脊髄に障害が起きている状態です。開放性二分脊椎と無脳症はこれに該当します。
開放性二分脊椎が起きるのは、脊椎が正常に形成されないことが原因です。脳やそのほかの臓器に合併奇形が起こることも珍しくなく、二分脊椎と合わせて新生児のうちに手術を行う必要があります。
無脳症は、頭蓋骨が正常に形成されないために脳が発達しない疾患です。1,000人に1人の割合で起こるとされ、根本的な治療法はありません。
出生後は生命維持装置などを使用して緩和療法を行います。
クアトロテストの精度・確率
クアトロテストは母体の血液を採取して行うスクリーニング検査です。そのため、この検査だけでは確定診断ができません。
クワトロテストでは、妊婦一人ひとりの確立が「1/500」のように報告します。この1/500とは、「同じ結果を得た妊婦さんが500人いたとすると、そのうち1人が対象疾患の赤ちゃんを妊娠している」と解釈します。
対象の疾患に基準となる確率が定められており、基準の確立と対象となる妊婦の確率を比較し、基準値よりも高い数値であれば陽性、低ければ陰性と判断します。
ただし、この検査は確定診断ではなく、あくまでもスクリーニング検査です。万が一陽性の結果が出た場合でも、さらに詳しい検査をしなければ陽性であるとは断定できません。
クアトロテストで「スクリーニング陽性」と診断された場合
クアトロテストで陽性であった場合は、「スクリーニング陽性」と診断されます。
このスクリーニング陽性とは、「赤ちゃんが対象疾患である確率は基準値よりも高いが、必ずその疾患にかかっているということではない」という意味です。
反対に、スクーリング陰性の場合も、「赤ちゃんが対象疾患である確率は基準値よりも低いが、赤ちゃんが必ずその疾患にかかっていないということではない」と解釈します。
検査の結果が陽性になると不安になってしまいますが、クワトロテストの結果のみをみて対象疾患だと断定するのは早計です。心配な方は、担当医や専門医に相談したうえで確定的検査を受けましょう。
まとめ
出生前診断の一つ、クアトロテスト(母体血清マーカー検査)は、ダウン症候群やエドワーズ症候群、開放性神経管奇形の可能性を調べることができる非確定的検査です。
NIPTとは検査方法や対象疾患が異なるため、検査方法やリスクなどを検討したうえで、医師や家族と相談して検査を受けるかどうかを決断しましょう。