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中絶後は不妊になる?手術の妊娠への影響とリスクを臨床遺伝専門医が解説

中絶後は不妊になる?手術の妊娠への影響とリスクを臨床遺伝専門医が解説

中絶後は不妊になる?手術の妊娠への影響とリスクを臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

「過去に中絶手術を受けたから、もう赤ちゃんは授かれないのではないか」と、一人で怯えていませんか?自責の念からネットのネガティブな情報ばかりを集めてしまい、不安に押しつぶされそうになっている女性は非常に多くいらっしゃいます。今回は、臨床遺伝専門医・産婦人科医としての見地から、医学的根拠に基づいた真実をお伝えします。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10分
🏥 妊娠・中絶・不妊
臨床遺伝専門医監修

Q. 過去に中絶をしたせいで、不妊症になりますか?

A. いいえ、現代の適切な医療環境下での手術であれば、その後の妊娠率を下げることはほぼありません。
世界保健機関(WHO)や北欧の大規模データでも、安全な中絶が直接的な不妊の原因になることは極めてまれであると証明されています。ご自身を過度に責める必要はありません。

  • 事実 → 安全な手術1回で妊娠しにくくなるエビデンスはない
  • 噂の理由 → 昔の古い手術法によるダメージや、不衛生な環境での感染症が原因
  • 注意点 → 複数回繰り返すことのリスクと、確実な避妊の大切
  • これからのケア → 次の妊娠の不安を取り除くNIPTなどの選択肢

結論:安全な中絶手術が「不妊」の直接的な原因になることはほぼありません

私はこれまで、過去の中絶経験による罪悪感から「妊娠できないのではないか」と涙を流す女性を数多く診てきました。しかし、医学的な結論から申し上げますと、合併症を伴わない適切な環境での人工妊娠中絶が、その後の妊娠率を下げることはほぼありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【自分を責め続ける必要はありません】

「あの時の行いのせいでバチが当たったんだ」
なかなか妊娠しない時に、そう思い詰めてしまうお気持ちは痛いほど分かります。しかし、それは医学的に間違った思い込みです。

当時のあなたは、様々な事情の中で悩み抜き、一番苦しい決断を下したはずです。その決断が、あなたの未来の赤ちゃんとの出会いを閉ざすようなことはありません。どうか、心に重い石を抱えたままにしないでください。

フィンランドで行われた約5万7000人を対象とした大規模なレジストリ研究では、過去に中絶経験がある女性が不妊治療を受ける割合はわずか1.95%であり、経験のない女性(5.14%)よりもむしろ低いという結果が出ています。これは、中絶という処置そのものが続発性不妊(一度妊娠した後に妊娠できなくなる状態)の原因にはならないことを、強力に裏付けるデータです。

もちろん「いかなる状況でもリスクが完全にゼロ」というわけではありませんが、基本的には「妊娠する能力」が失われるわけではないという事実を、まずは知って安心してください。

なぜ「中絶=不妊・妊娠しにくい」という噂が広まっているの?

では、なぜこれほどまでに「中絶すると不妊になる」という恐ろしい噂が社会に根付いているのでしょうか。それには、過去の医療背景と世界の現状という2つの明確な理由があります。

🚨 注意:アッシャーマン症候群とは

過去の日本で主流だった「掻爬(そうは)術」は、金属製の器具で子宮内膜を強く掻き出す方法でした。この際、子宮内膜の深い層(基底層)まで傷つけてしまうと、子宮の壁同士がくっついてしまう「子宮腔の癒着」が起こります。これをアッシャーマン症候群と呼びます。これが物理的に受精卵の着床を妨げ、深刻な不妊の原因となっていました。これが噂の最大の元凶です。

もう一つの理由は、世界的に問題視されている「不安全な中絶(Unsafe Abortion)」のデータが混同されていることです。医療インフラが整っていない国で不衛生な器具を用いたりすることで、細菌が感染し、骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こして卵管が完全に塞がってしまうケースが後を絶ちません。

しかし、現代の日本の衛生的なクリニックで行われる手術において、術後感染によってPIDに至る確率は極めて低く、過度に怯える必要はありません。

現代の安全な中絶アプローチと、知っておくべき合併症リスク

噂の元となった危険な処置を避けるため、世界保健機関(WHO)は現在、以下のより安全な方法を強く推奨しています。良心的な婦人科クリニックでは、こうした身体に優しい術式が採用されています。

  • 薬物流産(経口中絶薬):お薬の力で排出を促します。器具を子宮内に入れないため、子宮内膜を傷つけるリスクがなく、将来の妊娠への影響が最も少ないとされています。
  • 真空吸引法(MVA/EVA):細い管を入れて陰圧で吸い出す方法です。昔の掻爬術に比べて、子宮へのダメージを最小限に抑えることが可能です。

複数回の手術が与える「用量依存的」な影響

1回の手術であれば影響はほぼありませんが、専門医として誠実にお伝えしなければならない事実もあります。それは、「外科的手術」を3回以上など複数回繰り返すと、将来の妊娠において早産(妊娠28週未満での極早産)や子宮頸管無力症のリスクが統計的に有意に上昇するということです。

これは、手術のたびに子宮の入り口(子宮頸管)を無理に広げることで、筋肉や組織に微小なダメージが蓄積してしまうためです。だからこそ、次に述べる「術後の避妊」があなた自身の身体を守るために極めて重要になります。

術後の生理再開と、確実な避妊の大切さ

「手術をした後、生理がなかなか来ないから不妊になったのでは?」と心配される声もよく聞きます。通常、術後1ヶ月から1ヶ月半ほどで生理は再開します。遅れている場合は、ホルモンバランスの乱れや強いストレスが原因であることが多いため、まずはリラックスすることが大切です。

ここで絶対に知っておいていただきたいのは、「術後の次の生理が来る前に、すでに排卵が再開していることが多い」ということです。つまり、生理が来ていなくても性交渉をすればすぐに妊娠する可能性があります。しかし、子宮が完全に回復する前に妊娠することは、母体への負担が非常に大きいです。

身体への物理的なダメージを蓄積させないためにも、低用量ピルの内服や、ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)の挿入など、女性自身が主体となってコントロールできる確実な避妊方法を婦人科で相談することを強くお勧めします。

過去を責めないで。これからの妊娠に向けてできることとNIPTの選択肢

「妊娠できないのは過去のバチが当たったからだ」というような、自責の念や強いストレスそのものが、排卵障害やホルモンバランスを崩す原因(心因性の不妊)になり得ます。どうか、過去の自分を許し、これからの心と体の健康に目を向けてあげてください。もし1年以上(年齢によっては半年)妊娠しない場合は、過去の手術とは無関係な一般的な不妊の原因が隠れているかもしれないので、怖がらずに専門医を頼ってください。

そして、また新しい命を授かった時、「過去の手術のせいで赤ちゃんに何か異常があったらどうしよう」と不安に思うかもしれません。そんな時は、お母さんの血液だけでお腹の赤ちゃんの染色体異常や遺伝子変異を調べるNIPT(新型出生前診断)が一つの安心材料になります。

当院は非認証施設ではありますが、臨床遺伝専門医がお一人1.5時間の枠を確保してカウンセリングから判定、その後のケアまで一貫して行う極めて稀有な体制を敷いています。最新のCOATE法を用いたダイヤモンドプランでは、ダウン症などの染色体異常だけでなく、父親の加齢などに起因する56種類の単一遺伝子疾患(重度の合併症を伴う症候性自閉症の原因を含む)まで、陽性的中率>99.9%という高い精度でスクリーニングすることが可能です。

(父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)

万が一、陽性の結果が出た場合でも見捨てることは決してありません。NIPTのアフターサポートとして、何度でも遺伝カウンセリングを受けていただけます(費用は初期費用に含まれます)。また、互助会制度(8,000円)により、確定診断となる羊水検査の費用は全額補助される体制を整え、金銭的・心理的なリスクヘッジを徹底しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【ネットの情報に疲れたら、顔を上げてみてください】

夜中に一人でスマホをスクロールし、「中絶 不妊」「妊娠できない 過去」と検索し続けるのは、今日で終わりにしませんか。医学的な真実は、あなたの味方です。

私たち臨床遺伝専門医は、単に検査結果の数値をお伝えするだけの存在ではありません。過去の傷跡も、未来への不安もすべて受け止めた上で、「あなたにとっての最善の正解」を見つけるサポートをするためにいます。どうぞ、一人で抱え込まずにご相談くださいね。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中絶手術を受けると不妊症になりますか?

合併症のない安全な中絶手術が、その後の妊孕性(妊娠しやすさ)を直接的に低下させることは極めて稀です。大規模調査でも、中絶経験が不妊治療率を上げるという証拠は見つかっていません。

Q2. 昔の手術方法と今の方法は違うのですか?

異なります。昔主流だった掻爬(そうは)術は子宮内膜を傷つけて癒着を起こすリスクがありましたが、現在はより安全な真空吸引法や、物理的ダメージのない薬物流産が推奨されています。

Q3. 術後、生理はいつ頃再開しますか?

通常、術後1ヶ月〜1ヶ月半ほどで生理が再開します。ただし、生理が来る前にも排卵は起こるため、術後すぐの妊娠を避けるために確実な避妊が必要です。

Q4. 複数回の手術は妊娠に影響しますか?

外科的な中絶手術を3回以上繰り返した場合、子宮頸管へのダメージが蓄積し、将来の妊娠で早産や子宮頸管無力症のリスクが統計的に上昇すると報告されています。

Q5. 次の妊娠で胎児に異常が出たりしませんか?

過去の安全な中絶手術が原因で、次の赤ちゃんの染色体や遺伝子に異常が生じることは医学的にありません。もし不安な場合は、NIPT(新型出生前診断)などを通じて安心の材料を得る選択肢があります。

Q6. 妊娠を望んでいますが、不安で胸が苦しいです。

過去の経験を後悔するあまり、強いストレスを抱えること自体がホルモンバランスを崩す原因になります。あなたはもう十分に苦しみました。専門医に相談し、正しい知識で不安を和らげてください。

🏥 過去の不安を、未来の安心に変えるために

ご自身を責めず、まずは専門医にご相談ください。
私たちは正確な診断心のケアで、あなたの未来に寄り添います。

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参考文献

  • [1] World Health Organization (WHO). Abortion care guideline. [WHO]
  • [2] Mayo Clinic. Elective abortion: Does it affect subsequent pregnancies? [Mayo Clinic]
  • [3] American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). Medication Abortion Up to 70 Days of Gestation: Practice Bulletin, Number 225. [PubMed]
  • [4] Klemetti R, et al. Reproductive outcomes following induced abortion: a national register-based study. [BMJ Open]
  • [5] Asherman Syndrome overview and risks associated with surgical procedures. [NCBI Bookshelf]


プロフィール

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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