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NIPTで判定保留とはどういうことでしょうか?

NIPTで判定保留とはどういうことなのでしょうか?再検査や羊水検査はした方がいいの?という質問にお答えいたします。
NIPTは母体の採血で胎児の先天せ疾患のうち、染色体疾患の可能性を知ることができる検査です。外来で簡便に施行できることから人気が高まっていますが、遺伝カウンセリングなしにNIPTを行っている無認可施設が殆どで、説明されることなく理解せずに受けると落とし穴がいろいろありますのでご注意ください。
今回はそういう落とし穴(ピットフォール)のうち、判定保留をとり上げます。

NIPTで判定保留とは?

判定保留とは、文字通り判定が保留になるもので、結果が出ないということを意味します。
NIPTのプロバイダ(検査会社、医療機関)は、その検査の感度と特異性の高さについて声高に語っていますが、検査で結果が得られないno callの頻度についての情報はあまり提供されていません。 それにもかかわらず、少なくない割合の女性がNIPTで結果が得られないと聞いたことがあります。 日本では判定保留と表現しているようです。
この割合は、1%から10%以上の間なようです。
最も一般的に使用されている検査会社には、ウェブサイトで判定保留の率を提供しているところもあります。
たとえばイルミナのVeriSeqv2は1.2%ですが、NIFTY(BGI)は2.8%の判定保留率と報告しています。
他の一般的なNIPT検査会社は、決定的な結果が得られない(判定保留)可能性についてのみ言及しているか(Panorama:ナテラ)、またはこの可能性について全く言及していません(Harmony:ロシュ)。

なぜNIPT検査が判定保留になるのですか?

NIPTの判定保留には2つのタイプがあります。
真の判定保留は、NIPTにおいて検査結果が出せない技術的なミスがある場合に起こります。
血液の採取、ラベルの取り付け、輸送などの管理上の問題である場合と、DNA抽出、増幅、配列決定など過程における技術的な問題がある場合に起こります。
しかし、ほとんどの大量検査環境では、このような技術的なミスは最小限に抑えられており、判定保留のうちのごく少数を占めるにすぎません。
より重要なのは、検査室での検査が完璧に行われた場合の「検査の失敗」です。 すなわち検査結果が陽性か陰性かを区別できないのには、生物学的な理由があります。 これは検査失敗というよりは、「結論の出せない結果」(inconclusive results)(判定保留)と呼ばれます。

NIPTで判定保留、つまり検査の結論が出せない理由を詳しく解説します。

NIPTが判定保留になる最大の原因

母体血に占める胎児のDNA割合(胎児分画)が少ないとNIPTで判定保留につながりやすくなります
関連記事:胎児分画(胎児DNA割合)
NIPTで検査結果が不確定(判定保留)になあるための最も重要な要素は、母体血における胎児DNA割合(胎児分画)が低いことです。 母体の血流に浮遊する胎盤DNAの割合は、妊娠中に変化します。 母体の血液中の平均セルフリー胎児DNA分画(cffDNA)は約10%であるのですが、この割合は妊婦さんにより、また時期により大きく異なります。 多くのNIPT検査では、信頼性の高い検査を保証するために最低4%の胎児分画が必要とされています
妊婦さんの約2-4%では、cffDNAの割合:胎児分画(胎児DNA割合)が4%よりも低いことがわかっています。胎児分画の測定値は、NIPTの会社間で異なりますので、低胎児分画の発生率が異なる可能性があることに注意する必要でしょう。
ミネルバクリニックでは第2世代・第3世代の検査会社で胎児分画(胎児DNA割合)が記載されてきますが、大体は第3世代の方が高く出ています。
また、4%のルールは、やや恣意的に決定されていて、NIPTの検査のアプローチの違いにより、より低い胎児分率で信頼性の高い結果を得ることができる検査会社もあります。ミネルバクリニックが提供している第2世代の検査カリオセブンとデノボでは、2%から4%の胎児分画(胎児DNA割合)で精度の高い検査が可能です。

胎児分画(胎児DNA割合)は胎盤の大きさに正比例

胎児分画(胎児DNA割合)は胎盤の大きさに正比例し、胎盤は妊娠中に成長するので、妊娠の進行中に胎児分画(胎児DNA割合)は徐々に増加していきます。 胎児分画(胎児DNA割合)が足らないために判定保留になったのであれば、数週間後に再検査すると、通常は決定的な結果が得られます。

胎児分画(胎児DNA割合)が平均よりも低い場合がある理由

BMIが高い

胎児分画(胎児DNA割合)が平均よりも低い場合がある理由は様々です。 私たちの体のすべての組織は、新陳代謝によりこわれて血液の流れの中にDNAの破片を流していますので、BMI(身長m/体重kg2)には負の相関関係があります。BMIが高い(通常35を超えることを指します)女性は、より多くの組織がDNA断片を排出しており、胎児分画(胎児DNA割合)が減少しています。このような理由からBMIが高い女性では胎児分画(胎児DNA割合)が低くなり、判定保留になることが多くなります。

その他

その他の理由は、多くの場合、胎盤自体が関係しています。
例えば一般的な胎盤よりも小さいサイズの胎盤を有している赤ちゃんだと、先ほど説明した通り、胎児分画(胎児DNA割合)は胎盤の大きさに正相関しますので、当然胎児分画(胎児DNA割合)は小さくなります。

NIPTが判定保留になる2番目の原因

NIPTが判定保留(決定的でない結果)の2番目に多い原因は、トリソミーの確率が陰性であるには高すぎるが、陽性であるには低すぎる、ということです。 この確率領域では、結果は曖昧にしか出せませんのでNIPTが判定保留となります。
検査値がこの曖昧な領域内にある場合、検査会社はトリソミー21(または13トリソミー、18、XまたはY)の有無について結論を出すことができない、つまりNIPTが判定保留と報告します。 値がこの「グレー」ゾーンに入る確率は検査の方法(アッセイ)に依存しており、検査会社によって異なります。不明瞭な検査結果は、統計的なばらつき(これは検査アッセイに依存する)の結果である場合もあれば、母体側の生物学的な原因による場合もあります。
トリソミーは胎盤のすべての細胞に存在するとは限りません。モザイクという正常とトリソミーが混在する上葉もあります。胎盤の一部の細胞だけがトリソミー21を持つ細胞を含み、残りの細胞が正常であれば、わずかにシグナルが上昇することになります。 このシグナルは、正常なトリソミーの場合には予測よりも低くなりますが、正常な場合には予測よりも高くなります。 このようなシグナルはしばしば不確定である。 サンプリングを繰り返しても問題は解決せず、結果は判定保留となります。
このような理由で、判定保留は異常な胎児の可能性が高くなるため、羊水検査で赤ちゃんの染色体の状況を確認することをお勧めいたします。

NIPTが判定保留になるその他の原因

NIPTに悪影響を及ぼして判定保留に帰結させるその他の生物学的原因は多数あります。

NIPTを受ける母体の癌や良性腫瘍

NIPTを受ける母体に癌や良性腫瘍があると、セルフリーDNA分析を混乱させ、異常な信号となります。これは、癌細胞もまた、母体の血流中にセルフリーDNAを放出するのと、癌の大部分は染色体の不均衡(染色体が増えたり減ったりしている)によって特徴付けられるためです。 循環する腫瘍DNAに存在する不均衡は、循環するセルフリー胎児DNAの分析を妨害します。 母体の癌は、2000人の妊婦さんに一人の割合で発生すると考えられています

NIPTを受ける母体の自己免疫疾患

NIPTを受ける母体の自己免疫疾患は、検査結果に影響します。

NIPTの判定保留の発生頻度

NIPT判定保留の発生頻度は割と多いものです。 この結果は医師と妊婦どちらがわにもジレンマを起こします。
NIPTの判定保留を再検査すると50%以上で陽性の結果がもたらされます。
NIPTを受けても判定保留になる可能性については、検査前のカウンセリングで必ず説明すべき内容でしょう。患者がNIPT検査会社を選択する際には、予想される検査不合格率を他のよく引用される指標(感度、特異度、PPVなど)よりも詳細に説明する必要があるでしょう。NIPT検査の判定保留は実際の感度の低下と関連していることも明確に説明すべきでしょう。
NIPTを受ける妊婦さんに対する最良のアドバイスは、最も低い技術的判定保留率に関連するNIPT検査会社を選択することかもしれません。

ミネルバクリニックで提供している検査会社の判定保留率

第2世代 1%未満
第3世代 現在のところ0%となっています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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