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遺伝性疾患保因者スクリーニングパネルとNIPTを同時に受けたご夫婦1

第1子が重い遺伝病だったため、次のお子さんを持つことを積極的に考えていない中妊娠。どの病院も次のお子さんの時どうすべきか教えてくれない。ネットで調べて遺伝専門医がいるミネルバクリニックにお越しになり、遺伝性疾患保因者スクリーニング検査とNIPTを併用しました。

次の子供が心配なんです。

このご夫婦は、高齢でもありましたのでNIPTは受けたいということでしたが。
1番目のお子さんが、病気を引き起こすタイプの遺伝子変異(病的変異)により、常染色体劣性遺伝性疾患にかかっていて
知的障害はほとんどないのですが、自分ではあまり動けない疾患なんですよね。
初めてのお子さんが重度な障害を持って生まれたので、第2子を積極的に考えたことはなかったそうです。
そして、年月は経ち。
突然の妊娠。

大変戸惑ったようです。

お子さんをみてくれる病院でも次のお子さんのリスクについて話をしたりは全くなかったそうです。
不安になり、地元の普段みてもらっている病院と、時折通院している東京の有名なセンター病院の両方に相談しましたが、まったくどうしたらいいのか、すぱっとした答えが返ってきません。

どうしたらいいのかな?
産んでも大丈夫なのかな?
とりあえず、NIPTは受けよう。

そう思って。
でも。
ちゃんと第2子のリスクを知りたい。

そう思って、大学病院の遺伝診療部を受診しました。

しかし。何の解決にもならなかったそうです。

なぜかというと、Aさんの悩みは単なる高齢妊娠でNIPTを受けたいという事ではなく、そもそも第1子は常染色体劣性遺伝の疾患だと言われているので、両親ともに異常を持っていたらまた1/4の確率で病気のお子さんがうまれるのです。

1/4と言う確率を高いとみるか低いとみるかは人それぞれでしょうが、実際に病気のお子さんが生れたAさんご夫婦にとっては高すぎる数字です。

お子さんは筋肉に力が入りにくいため、人工呼吸器こそ必要ありませんが、移動などはすべて介助が必要です。段々と体が大きくなる中、親も年を取っていくため、介助するのも大変になってきます。
お子さんが愛しいことに変わりはないのですが、もう一人同じ病気のお子さんが生れるとなると、「生活が成り立たない」と考えるのも無理はないでしょう。

産んでいいのか?
産んでも大丈夫なのか?

常染色体劣性遺伝性疾患なので、このご夫婦が両方保因しているならば、先ほども言いましたが、再発率は25%となります。

あきらめたほうがいいのかな。
どの医師もちゃんとこたえてくれないし。
中絶しようか。

いや。ちゃんと調べてからあきらめたい。

そして、Aさんはネットで必死で検索して臨床遺伝専門医が運営しているミネルバクリニックを見つけました。

「NIPTを地元の病院で受ける予約をしたのですが、上の子供が〇×という病気なので、次の子供がどうなるのかを誰もちゃんと話をしてくれません。また病気の子供が生まれたらと思うと心配で仕方がないので、そのままあきらめたほうがいいのかなとか思ってしまっています。先生のところならそういう相談にも乗ってくれるんですか?」

電話の向こうでAさんはそういう内容を切々と訴えていました。

第1子の疾患を述べ、うちで検査できるかといわれたので、「できる検査所を世界中から探してお出ししますので」お越しください、とお伝えしました。

Aさん一家が受けた遺伝子検査

そして。Aさん一家はNIPTと遺伝性疾患保因者スクリーニングパネル検査をして、疾患のあるお子さんの遺伝子検査は東京の国立Sセンターで行っていたのですが、念のためお子さんの検査も行いました。(これに関しては高額になりすぎるのでミネルバクリニックの負担で行いました)

NIPT異常なし。

保因者スクリーニング検査では、ご両親の片方は病的変異を持っていませんでした。
どうやら、第1子の精子または卵子(生殖にかかわる細胞を配偶子といいます)ができるときに突然変異(新生突然変異)を起こしたようなんです。
そして、その対立遺伝子(父母ワンセットでもらうので同じ遺伝子は2つで1組。反対側の遺伝子のことを対立遺伝子といいます。)に大変たまたま書き換えが起こってしまい、病的遺伝子になってしまったため、お子さんが病気になってしまった。

この場合、新生突然変異でないのだとしたら、病的変異のない配偶者の性腺(精子や卵子を作る臓器を言います)にモザイクといって病的な細胞と正常細胞とが混ざって存在する現象があるのかもしれませんが、性腺モザイクの存在を突き止めることは出来ません。精巣や卵巣を取り出して性腺モザイクがあるかないか検査することになり、精巣や卵巣をうしなってまでそんな検査する人いませんから、性腺モザイクの証拠をつかむことはできないと言って過言ではありません。

いずれにせよ、新生突然変異もしくは性腺モザイクなので、双方が病的遺伝子を保有しているご夫婦なら再現性は25%ですが
そうではないため、再発率は限りなくゼロに近づくことになります。

こうして、このご夫婦はミネルバクリニックで検査を受けて、ご自身たちの遺伝学的リスクをちゃんと調べて理解したうえで
第2子を迎える決意をしました。

無事にうまれた、という連絡ももらいました。

ミネルバクリニックでは、大学病院で対応するのが困難な症例を、遺伝専門医として受け入れる日本でただ一つのクリニックです。
そして、そういうクリニックを運営できるように、英語力を生かして世界中の検査会社と提携し、やり取りできるようにお勉強してきました。

これからも、たくさんの方々のお役に立てるよう、日々精進したいと思います。

遺伝の問題は家族計画の問題です。

少子高齢化のこの時代に、こうしたご夫婦がお子さんをあきらめず、自信をもって迎えられるようにサポートすることで
日本国の少子化解決の一助として貢献したく存じます。

余談

余談ですが、この症例では国立Sセンターの遺伝子検査のアノテーション(結果の解釈)がはなはだしく間違っていて、お子さんに病的変異が1つしかないので、どうして病気のお子さんになったのか分からない、という事になっていました。
アメリカで検査を受けたら同じ変異でもちゃんと解釈がされていて、わたしのほうでもどちらが正しいのか調べましたが、国立Sセンターの検査結果が間違ってました。
Sセンターはこれに関して開き直りのような発言をしたため、患者さんの一生を左右する遺伝子検査を提供する医療機関として何をかんがえているのか、と猛抗議しました。

Aさん一家のその後

無事に出産して、2番めのお子さんもすくすく大きくなっています。
新しい生命を迎え、いつくしみあって生きていく。

かけがえのない 「あなた」 と。

ミネルバクリニックはそんな皆様を豊富な専門知識の臨床遺伝専門医が力強くサポートいたします。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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