目次
ダウン症の人の現在の平均寿命
かつては平均寿命が短いと言われていたダウン症ですが、医学の進歩によって合併症の治療ができるようになり、長生きする人が増えています。現在の平均寿命は約60歳と言われており、50年前は10歳前後だった頃よりも寿命は伸びました。
アメリカ合衆国でも、1950年には26歳だった平均余命が、2010年には53歳になったという報告や、ダウン症のある人の100人のうち約12人が70歳まで生きられるとようになってきたという報告もされるほどです。中には結婚して暮らしている人も出ています。
年齢層別死亡原因
ダウン症の人たちの寿命にどれぐらい合併症の影響があるのかみてみましょう。
0~1歳
約70%が先天性奇形で亡くなります。ついて多いのが肺炎で約20%を占めています。次に他の感染症や心疾患により亡くなります。
1~4歳
先天性奇形で亡くなる割合は減りますが、代わりの死亡原因として登場するのが白血病です。死亡原因の約10%を占めるようになります。
5~19歳
先天性奇形で亡くなる率がぐっと減り、代わりに白血病が死亡原因の3割を占めるようになります。
20歳以降
脳血管疾患により亡くなる方が約半数を占めるようになります。
ダウン症に老人がいない?その理由は
また、ダウン症の人は老化が始まる年齢が早いと言われています。早ければ30代になるとすでにアルツハイマーを発症する人もほどです。
ダウン症のある人は、「アミロイド前駆体タンパク遺伝子」という遺伝子が通常よりも多く存在しています。そのため脳の中のアミロイドタンパクが増加してアルツハイマー病と同じような変化を脳内に生じさせているのではないかと言われています。
現在、ヨーロッパの製薬会社などが開発した薬を使って、主に認知機能の低下に対する臨床試験が行われています。日本でも、アリセプト(ドネペジル塩酸塩)などを使用した治験が始まっているようです。
ダウン症の人たちの死因
今や平均寿命は60歳ともいわれるダウン症の人たちですが、上記にあげた心疾患・呼吸器感染症・白血病などの合併症によって亡くなります。また脳の機能が低下するアルツハイマーを発症すると、物忘れから始まり、症状が進行すると体の動きにも影響が出ます。手足を動かすことができなくなり、循環器・呼吸器疾患が起こり誤嚥性肺炎になって亡くなることもあります。
ダウン症の最高年齢は?
2019年、イギリスのロビン・スミスさんは英国のダウン症患者の最高齢となる78歳の誕生日を迎えました。>
1941年に生まれた当時は、12歳までしか生きられないと言われていたそうです。当時はダウン症の人たちのとても平均寿命は短く、成人を迎えられないとされていました。
スミスさんは長寿の秘訣を「なるべくアクティブに過ごすこと」と語っています。
治療はもちろんのこと、ダウン症の人たちが充実した生活を送ることが彼らの健康管理の上で一つの鍵となっているのかもしれません。
〔参照記事〕
ダウン症の人の結婚
先述したように結婚している方もいますが、ほとんどの方は生涯独身で過ごしています。一方、兄弟にダウン症がいる健常者の場合77.9%が結婚し、71.4%が子供を持っていることがわかっています。このことを見るとダウン症への偏見はかなり少なくなっていると考えられます。
ただ、ダウン症の人には子供を産めなかったり、産んだとしてもダウン症が遺伝する可能性が高かったりするので結婚へのハードルはかなり高いといえます。両親のどちらかがダウン症である場合、妊娠する子供の50%はダウン症になるというほど高い確率です。
また、ダウン症患者の多くは生殖能力がありません。ダウン症の女性のうち約30%は生殖能力がないと推定されており、ダウン症の男性に生殖能力があるのは基本的にモザイク型の場合のみです。
結婚25周年を迎えたダウン症夫婦
イギリス東部に住むマリアンヌ・ピリングさん(48歳)とトミー・ピリングさん(62歳)は、2020年で結婚25周年を迎えたダウン症者同士の夫婦です。トミーさんはこの数年認知症を患っていますが、家族のサポートを受けながら幸せな生活をおくっているそうです。
ダウン症者の最高年齢・夫婦最長記録は世界中のダウン症の子どもを持つ親御さんに希望を与えると同時に、医学の進歩によってこれからもその平均寿命が伸び続けるのでは?と期待させてくれます。
ダウン症の人たちの寿命は短かった
1975年に発行された書籍には「ダウン症候群の赤ちゃんのうち約20~40%は生後数ヶ月、ないし数年以上いきながらえることはできない」と書かれていました。それくらいダウン症の子どもは長生きができなかったのです。
しかし原因はダウン症そのものではありません。ダウン症によって起きる心疾患や感染症といった合併症が原因でした。当時の医学では合併症の治療ができずに幼少時に重篤な状態に陥ってしまい亡くなってしまうケースが多かったからです。
ダウン症の原因は染色体異常
人間の体には46本23対の染色体が存在しています。その中の21番目の染色体の数が、通常よりも1本多くなってしまう症状がダウン症候群です。「21トリソミー」ともよばれます。
ダウン症の子どもが生まれる確率は1000人に1人、あるいは600~800人に1人とされており、確率は母体が高齢になるほど上がっていきます。
染色体異常はダウン症の他にも18番目(18トリソミー)13番目の染色体(13トリソミー)で起こる可能性があり、いずれも妊娠中の出生前診断で検査することができます。
ダウン症の特徴・合併症について
人によって症状の軽重はありますが、ダウン症の人たちには共通して以下のような症状がみられます。
外見的特徴
ダウン症の人は外見に特徴を持っています。顔が丸く、鼻が低く、つり目がち、小さい耳、下向きの口角が、その特徴です。これは顔の骨の成長速度の影響を受けているといわれています。
発達の遅れ
脳の発達がゆっくりなため、運動神経や筋力、体の発達にも影響がでます。乳幼児期には首のすわりや一人歩きが遅いという症状がみられ、ミルクを飲んだり食事をしたりする際に時間がかかる傾向にあります。そのため身体は小柄になることが多いです。
また、運動能力が低いことの影響を受けて、言葉の発達にも後れをとります。親御さんはとても心配されると思いますが、ダウン症の子どもたちはゆっくりと成長するものだと受け止めることが重要でしょう。
性格
「天使の子」と呼ばれることもあるくらい穏やかで明るい性格の方が多いです。
しかし中には、自閉傾向のある発達障害がみられる場合もあります。特に青年期や成人後になると、これまでと比べて動作がゆっくりになったり、口数が減ったり、ひきこもりになってしまったりといった退行症状がみられることもあります。これは先天的な症状というよりは、環境の変化にうまく適応できないことで起こる適応障害の一種でないかといわれています。何か困っていることはないか、不安なことはないか、親身に耳を傾けて適切なサポートをする必要があります。
ダウン症の合併症・病態
ダウン症の人の平均寿命が伸びたといっても、障がいのない人たちと比べると短い傾向にあります。これは、ダウン症が引き起こす合併症が深刻なものであるからです。
以下がその合併症と病態です。
- ・心内膜欠損症
- ・心房中隔欠損症
- ・心室中隔欠損症
- ・呼吸器感染症
- ・白血病
- ・十二指腸閉鎖
- ・鎖肛
- ・糖尿病
- ・難聴
心疾患はダウン症の二大死亡原因のひとつとされています。 消化管形における合併症のリスクもあり、二大死因のもうひとつとして呼吸器感染症が挙げられます 白血病・十二指腸閉鎖・鎖肛などもダウン症の合併症にみられます。時間の経過とともに糖尿病・肥満といった障害が現れることもあります。
ダウン症の人の過ごし方
学童期の過ごし方
学童期のダウン症児の半分は特別支援学級へ通学します。特別支援学級では、さまざまな障がいを持つ子どもが集まり、それぞれの能力に応じた支援と教育をしています。
学習以外にも、トイレや着替えなどの日常生活における動作を学ぶことが可能です。また生徒の数が少ないため先生が生徒にじっくりと向き合えるのが特徴です。
ダウン症児の中には一般学級の学校へ通学することも珍しくありません。ただ、一般の子どもと一緒過ごすのが難しい場合もあるので周囲の協力は不可欠です。中には個別支援学級に所属することもあり、中学や高校は特別支援学級へと進学する場合もあります。親御さんに求められるのは子どもの能力に応じて進学する学校を選ぶことです。
成人期の過ごし方
ダウン症の方の寿命が伸びたことで考えなくてはいけないのが就職先です。現在は、大人になっても何らかのサポートや配慮があれば、地域で自立した生活を送れます。本人や家庭の状況によっては、ダウン症の人がグループホームで集団生活を送る場合もあります。ただし、ご両親と同居している方がほとんどです。ご両親がお亡くなりになると他の家族と同居したり、グループホームで生活をしたりしているのが実情です。
仕事は、企業の中には障がい者枠を設けているところもあるので雇用機会が広がりつつあります。ただし、環境面の変化によって強いストレスを抱えてしまうこともあるので本人に合った仕事を探すようにしましょう。
収入は一般に作業所の賃金は低くなっています。ダウン症の方は障害基礎年金が受給対象なので就労による賃金と併せて生活をしています。
まとめ
ダウン症(ダウン症候群・21トリソミー)の特徴や症状、染色体のタイプ、原因に至るまで紹介をしてきました。日本でも35歳以上で妊娠する女性が増えてきている今、ダウン症の子どもを妊娠する方は増えていくといっていいでしょう。
お腹の中の赤ちゃんがダウン症ではないかということは、妊婦健診の超音波検査で指摘されることがあり、中にはその後羊水検査を受けて診断を確定させることなく中絶を選んでしまう方もいらっしゃいます。
ダウン症に治療法はありませんが、妊娠の早い段階で赤ちゃんの染色体を調べることは可能です。ダウン症には合併症を伴うことが多いので、治療に関するお金や地域の子育て支援情報のことなど、事前に準備して赤ちゃんを迎えるためにとても大切なことです。 ミネルバクリニックでは、遺伝子の専門家である臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング、NIPT(新型出生前診断)をオンラインで実施しています。ご自宅いながらご相談を受け付けています。妊婦さんの悩みや不安に寄り添った対応を心がけています。お問い合わせお待ちしております。