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NIPTの偽陽性はなぜ起きるのか

出生前診断には「偽陽性」という間違った結果が出る場合もあります。なぜ精度の高いはずのNIPTでこのようなことが起きるのでしょうか。

NIPTの偽陽性の意味するところは、NIPTでは陽性だけど、羊水検査などの確定診断検査をしたところ、正常だったということです。これには染色体異常のないお子さんを中絶してしまうという大きな問題があります。

今回は「偽陽性」がどのようなケースで起きてしまうのか、NIPTの検査結果の見方や精度とともに解説します。

NIPTの陽性判定は100%正しいわけではない

NIPTは他の出生前診断と比較しても早い時期から検査可能で、かつ高い精度を誇ることから、この検査で陽性判定が出たことでおなかにいる赤ちゃんに染色体異常が見つかったと断定してしまう方も少なくありません。
ですが、NIPTを受検したお母さんの年齢によっても陽性的中率に差異があります。44歳のお母さんの陽性的中率が概ね90%程度なのに対し、25歳のお母さんの陽性的中率は最も高い21トリソミーで約80%、最も低い13トリソミーで約17%と、大きく差があることがわかります。(*)

また、NIPTを受検する時期が早すぎて胎児のDNAが十分に採取できなかったり、お母さんの体に発現した悪性新生物のDNAを採取してしまったりと、様々な理由でNIPTの偽陽性は起こり得ます。NIPTが現在非確定検査として分類されていることを知り、この陽性結果だけで決断を急ぐことは避けましょう。

偽陽性とは

偽陽性とは、本当は陰性にもかかわらず、陽性と結果が出てしまう場合をいいます。
非確定的検査であるNIPTで陽性の検査結果が出ると、結果を確定するために羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を受けることが一般的です。

NIPTでは陽性だったのに、確定的検査では陰性の結果が出るとNIPTの結果が「偽陽性」であったことが判明します。
NIPTの陰性的中率は99.9%と高いですが、陽性的中率は50%〜90%(*1)とかなり差があるため、偽陽性となる可能性があります。
*1 参照:厚生労働省 | NIPT: noninvasive prenatal testing

偽陽性の原因とは?

他の非確定的検査に比べて、精度の高いNIPTですが、なぜ陽性的中率には50%〜90%と幅があり「偽陽性」となる可能性があるのでしょうか。
ここでは偽陽性となる原因にはどのようなものがあるのか解説していきます。

限局性胎盤モザイク

モザイクとは、正常と異常(トリソミー)が起源を同じにして混在することをいいます。
限局性胎盤モザイク(CPM)は、胎盤と胎児が異なる染色体を持っており、
赤ちゃんは正常で、胎盤だけにモザイクがある状態です。
限局性胎盤モザイクは、妊婦の1〜2%にしか見られないまれなものであるため、発生する確率はかなり低いです。胎盤性モザイクが起こる原因は以下のようなことが考えられます。

・胎盤細胞株の突然変異
・もともと胚盤胞全体でモザイクがあったが、細胞分裂の過程で、胎児だけ突然変異で異常が修正された

Vanishing Twin

「Vanshing Twin(バニシングツイン)」とは、双子以上の多胎妊娠の赤ちゃんが、かなり早い段階で成長が止まってしまい、単胎妊娠となることをいいます。
胎児はお腹の中に吸収され、消えたように見えます。妊娠初期に亡くなった場合は、自然排出を待つため、特に処置をしたり、治療をしたりはしないことが多いです。
バニシングツインの起こる原因はわかりませんが、染色体異常が原因で起こることもあります。
多くは妊娠6〜8週のかなり早い時期に起きることがほとんどです。

早い時期に起こった場合、母体と残された赤ちゃんへの影響はほとんどありません。妊娠8週以降に起こる場合は、ある程度の大きさに赤ちゃんが成長しているため、吸収されないことがあります。

バニシングツインの場合、残された赤ちゃんに以下のようなリスクが生じる可能性があります。

・脳性麻痺など先天性異常のリスク
・子宮内発育制限
・超低出生体重児

バニシングツインが起こった母体であってもNIPTを受けることは可能です。
しかし、二卵性双生児で胎児のDNAが残っていた場合、偽陽性と結果が出る可能性があります。

珍い常染色体のトリソミーや染色体の構造異常

13番、18番、21番やX番、Y番染色体以外のトリソミーを珍しい常染色体のトリソミーといいます。
よくある常染色体異常以外のトリソミーは生存率が低いため、検査で検出できることは非常にまれです。
珍しい常染色体のトリソミーや染色体の構造異常があった場合、偽陽性となってしまうことがあります。

母体の腫瘍性疾患

母体にがんなどの腫瘍があったり、自己免疫疾患があったりする場合は、偽陽性の結果が出ることがあると言われています。
NIPTの検査に用いるcell free DNAが、腫瘍が壊れてたくさん出ることが原因とされています。
非常にまれですが、NIPTにより予期せず母体のがんなどが発見されたという報告もあります。

新型出生前診断NIPTの精度は?感度・特異度・的中率をチェック

NIPTの検査精度を表す言葉には、「感度・特異度・的中率」があります。まずはそれぞれの意味を確認していきましょう。

感度

感度とは、ある検査において「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」をいいます。
簡単にいうと病気の人を検出する力を感度といいます。

検査の種類 NIPT コンバインド検査 母体血清マーカー
感度 99% 83% 80%

NIPTが使われる様になる前はコンバインド検査や母体血清マーカーで検査を行っていましたが、NIPTの感度は他の検査を大きく上回る99%ということがわかっています。

特異度

特異度は、ある検査について「陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する確率をいいます。
つまり病気でない人を検出する力のことを指します。
NIPTにおける特異度は99.9%と、ほぼ100%であることがわかっています。(*1)

的中率

的中率には「陽性的中率」と「陰性的中率」の2種類あります。

●陽性的中率:陽性と判断された人の中で本当に陽性だった人の確率
●陰性的中率:陰性と判断された人の中で本当に陰性だった人の確率

どちらも検査の後、検査結果が正しかったのか判断する用語です。

新型出生前診断であるNIPTは、従来の出生前診断に比べると陽性的中率の高い検査です。
従来の母体血清マーカー、コンバインド検査の陽性的中率は9.1%であるのに対し、NIPTはその10倍の90.9%の的中率を誇ります。(1/100疾患率:40歳妊娠)

陽性的中率は母親の年齢の影響を大きく受け、母親の年齢が高くなるほど、陽性的中率も高くなります。
例えば、21トリソミー(ダウン症)の場合、母親の年齢が20代後半頃だと陽性的中率は49.8%ですが、38歳の場合、98.2%です。

なお、NIPTの陰性的中率は99.9%と非常に高く、陰性だった場合は特に心配はないと考えて良いでしょう。

参照:第1回 母体血を用いた出生前遺伝学的検査 (NIPT)の調査等に関するワーキンググループ資料 昭和大学医学部産婦人科学講座 関沢明彦

NIPT(新型出生前診断)の検査結果別:対応方法

出生前診断には、染色体異常の可能性がわかる「非確定的検査」と、染色体異常が確実にわかる「確定的検査」の2種類があります。NIPTは非確定的検査に分類されます。
NIPTの結果は、陽性、陰性、再検査(判定保留)の3種類で示されるため、それぞれの見方を解説していきます。

「陽性」の場合

NIPTで陽性の場合、胎児に染色体異常の可能性があります。先にお伝えした通り、NIPTは感度・特異度・的中率ともに非常に精度の高い検査ですが、非確定的検査です。結果が陽性でも必ず胎児が染色体異常をもつとは言い切れないため、確定検査を受けることがおすすめです。

「陰性」の場合

NIPTの陰性適中率は非常に高く、99.9%であることをお伝えしました。よって、陰性の場合は、胎児に染色体異常がある可能性は低いと考えて良いでしょう。稀に偽陰性が存在しますので、どのような時に偽陰性が起こるか気になる方は下記の記事をチェックしてみてください。

>>NIPT(新型出生前診断)陰性だったのにダウン症: 偽陰性はなぜ起こる?

「再検査」(判定保留)の場合

妊婦さんの血液中に含まれる胎児のDNA量が少ない、薬中の薬が原因で検査できないことなどが原因で、再検査になることもあります。約0.4%と非常に低い確率のため、取り立てて想定する必要はありませんが、再検査の場合は医師と相談して今後の方針を決めることになります。

精度の高いNIPTでも「偽陽性」の可能性がある

NIPTは感度・特異度・的中率が高く、他の非確定的検査と比べると精度の高い出生前診断であることがわかりました。しかし、検査の精度は高くても偽陽性が出る可能性があり、結果は100%ではありません。

対策:NIPTは検査結果後の相談もできるクリニックで

NIPTの陽性的中率は100%ではありません。
だからこそ、検査を受ける前に不安や疑問点が解消でき、検査結果の疑問点が確認できることがとても大切です。
NIPTを受けるにあたり、カウンセリングで事前・事後で確認できるクリニックを選ぶことをおすすめします。

カウンセリングで疑問を解消できる

検査を受ける前は事前カウンセリングで検査についての説明や検査の結果わかることについて説明があります。
カウンセリングで十分に説明を受け、事前に自分で調べて知っている内容だけでなく望まない結果になった場合についても、パートナーとともに考えておく必要があるからです。
検査に関する説明を受け、検査の受検を決めるのは医療者ではなく、本人です。
事前に説明を十分に受け、疑問や不安なところを解消するため、カウンセリングが行われます。
検査に当たって「偽陽性」や「偽陰性」など聞き慣れない用語があるため、用語についてカウンセリングの際に質問してみるのもよいでしょう。

アフターフォローが丁寧

NIPT検査をしているクリニックでは、検査実施だけ行い、陽性となった場合もアフターフォローがないクリニックがあります。
陽性となった場合、不安な気持ちの中、自分で今後の確定的検査について調べることは難しいでしょう。
そのため、アフターフォローが整っている医療機関で受検されることをおすすめします。
NIPTで陽性と結果が出た場合、今後の流れや確定的検査を受けるに当たっての説明をしてくれるクリニックでは、確定的検査の前に疑問点を解消してくれます。
疑問点を解消してから検査に臨むことが大切です。

NIPTを受けるならミネルバクリニックへご相談ください

ミネルバクリニックでは、豊富な知識と経験を持った専門の医師がカウンセリングを行います。また、陽性判定が出た場合の相談も無料で行っています。

認定臨床遺伝専門医によるカウンセリングが受けられる

ミネルバクリニックでは認定臨床遺伝専門医によるカウンセリングを行っています。
遺伝相談は非常にセンシティブな分野で、さまざまな悩みを持っている方がいらっしゃいます。

ミネルバクリニックでは、検査結果をふまえて専門家の視点で情報を提供し選択を支援します。
正解・不正解がないからこそ、妊婦さん、パートナーにとっての最善の方法を一緒に考えましょう。
遺伝カウンセリングの役割は患者さん自身が検査について理解し、納得したうえで、自分たちで最善な方法を選択できる支援をすることです。

陽性後の相談は常に無料

検査の結果が陽性の場合、非常に不安が大きく今後の不安や疑問などたくさんあることでしょう。
ミネルバクリニックでは、検査結果が陽性の患者様は相談を追加費用一切なしで受けていただけます。

不安な気持ちを相談したいと感じた場合、ご来院が難しければ、電話やオンラインでの相談も受け付けております。
自宅で不安なことを相談したい、緊張してうまく相談ができないという方はオンラインでの相談をご利用ください。

まとめ

NIPTは他の確定的検査に比べて、精度の高い出生前診断です。ただし検査結果は100%ではなく、「偽陽性」である可能性が少なからずあります。
こうしたNIPT受検に関する不安を解消するためには事前にカウンセリングを受けることがとても大切です。

検査結果を正しく理解し、最善の選択ができるようにミネルバクリニックではサポート体制が整っています。
NIPTに関して不安に思うことがある方は、ぜひミネルバクリニックのカウンセリングをご利用ください。

院長アイコン

ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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