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元気で健康な赤ちゃんを抱き上げることを夢見る妊婦さんの多くは、赤ちゃんの健康を確かめるために妊娠初期以降に出生前診断を受けています。
羊水検査は出生前診断の中でも最も精度が高く、ダウン症候群などの染色体異常症の有無を調べる目的で実施されています。
検査結果次第で中絶を決断する妊婦さんも多く、とてもデリケートな検査といえます。
この記事では、羊水検査と中絶の関係性を御説明した後、羊水検査を受検する前に知っておきたい3つの知識を詳しくご紹介していきます。
羊水検査と中絶の関係性とは?
妊婦さんが人工妊娠中絶をする理由はさまざまですが、羊水検査と中絶は深い関係にあります。まずは、羊水検査がどのような存在なのかをご説明しながら、人工妊娠中絶との関係性に触れていきます。
羊水検査は染色体異常の有無を確定させる
妊娠中に受ける検査の中でもポピュラーな羊水検査は、赤ちゃんの健康、そして命を脅かすこともある染色体異常によって引き起こる疾患を検査することができます。
その検査精度は限りなく100%に近く、”確定的検査”とも呼ばれています。
羊水検査は、羊水に含まれる細胞の培養を行って染色体異常の有無を判定するものですが、細胞の培養が想定よりも少ないために結果が出ないケース、正常な細胞と異常な細胞が混合して検査結果が出ないケースも稀にあります。
“確定的”とはいっても、検査には限界があることを知っておきましょう。
出生前診断の最後の検査に選ばれる
出生前診断は、羊水検査を含めて以下のような検査が実施されています。
出生前診断 | 検査時期 |
---|---|
胎児超音波検査 ※非確定的検査 |
妊娠9週以降 |
母体血清マーカー検査 クアトロテスト ※非確定的検査 |
妊娠16週〜18週頃 |
NIPT ※非確定的検査 |
妊娠10週以降 |
絨毛検査 ※確定的検査 |
妊娠9週〜11週頃 |
羊水検査 ※確定的検査 |
妊娠14週〜妊娠27週まで |
胎児超音波検査などの非確定的検査は、染色体異常症を持っているかどうかの確率を算出するスクリーニング検査であり、非確定的検査だけでは染色体異常症の有無を確定させることはできません。
そのため、基本的には胎児超音波検査などを受けて陽性反応が出た場合に、最終確認として羊水検査や絨毛検査を受けるという流れができています。
赤ちゃんがダウン症候群などを持っているかどうかが分かる検査であるため、中絶の最終判断という目的で受検する妊婦さんも少なくありません。
しかし、染色体異常症があることを事前に知ることができるため、障がいを持った子どもを育てる環境づくりを早めにスタートできるという利点のある検査であることを忘れてはいけません。
人工妊娠中絶を選んだ妊婦の数
妊婦さんは誰しもが自ら望んで妊娠したとは限らず、赤ちゃんの顔を見ずに人工妊娠中絶をしてしまうケースもあります。
女性が人工妊娠中絶を選んでしまう原因は以下のようなものが挙げられます。
- 相手が出産に同意をしなかった
- 結婚する前の出産を避けたかった
- 経済的な余裕がない
- 母体が妊娠に耐えられない
- 性的暴行による妊娠
- 配偶者が特定できない
- 配偶者に問題がある
- 将来的キャリアにおいて問題が生じる
- 子どもを迎える精神的な準備ができていない
- 母親が年齢的に未熟である
- 育児にかけられる時間がない
ほとんどの女性は「赤ちゃんを大切に育てていきたい」と願いますが、置かれている環境の問題、自身の体力の問題、そして配偶者の問題によって妊娠を諦めなければならない人もいます。
実際に、染色体異常症を持つ可能性が高い陽性を言い渡された後に中絶を選択した妊婦さんは多く見受けられています。厚生労働省による2019年の調査結果では、陽性と言い渡された妊婦さんの9割以上となる161,741人が中絶を選択したと報告されています。
やむを得ない理由もありますが、「経済的に余裕がなかった」「相手が同意しなかった」という理由などは妊娠自体を避けることも可能です。
新たな生命を授かるという妊娠を軽視せず、先を見据えた行動を心掛けることが必要となります。
羊水検査の結果次第で中絶を決められる現状
人工妊娠中絶をするかどうかを、羊水検査の結果次第で決める妊婦さんは少なくありません。
陰性だった場合は安心して出産に向けた準備を進めることができますが、陽性だった場合は大きなショックを受けてしまうでしょう。
羊水検査を受ける前から陽性が出たら中絶しようと決めている妊婦さんもいますが、結果が出てから考えを改める妊婦さんもいます。
染色体異常症の種類や症状によっては、成人を迎えて幸せな生活をおくる人もたくさんいるため、「羊水検査で陽性だったから中絶する」という考えをお持ちの方は、結果を得てから十分に考えられる時間をつくり、納得できる正しい選択をしましょう。
出生前診断を受ける前に知っておきたい3つの知識
羊水検査は赤ちゃんが健康体か、それとも何か疾患を患っているかが分かってしまうとても繊細な検査のため、検査を受ける前に頭に入れておきたい知識があります。
ここからは、出生前診断を受ける前に知っておきたい3つの知識をご紹介していきます。
人工妊娠中絶が可能な期間
出生前診断の結果を見た上で中絶を決めるという方は「本当にその中絶は正しいのか?」と一度冷静に考える必要があります。
人工妊娠中絶は、母体保護法に基づいて妊娠22週未満まで可能とされています。
母体保護法では、以下のような条件を満たした妊婦さんにのみ医師から人工妊娠中絶が認められます。
- 妊娠の継続や分娩をすることで、身体的理由、または経済的理由によって母親の健康を著しく害する恐れがある
- 暴行、または脅迫によって抵抗や拒絶ができない間に姦淫されて妊娠した
これらの条件は、配偶者が分からない場合、配偶者の意志が確認できない場合、妊娠後に配偶者が亡くなった場合に関しては母親の意志だけで足りるとされています。
また、日本では母体保護法に胎児条項はないとして、経済的な理由でも胎児が健康に異常を持っている場合に中絶が認められるケースがあります。
羊水検査の結果を見て中絶を考えたい場合は、中絶が認められる妊娠22週未満までに結果を知っておく必要があります。
羊水検査は検査結果に最大4週間程度かかることがあるため、余裕を持って妊娠17週以前に検査を受けておかなければ、結果が陽性だとしても中絶ができなくなることを理解しておきましょう。
まずは安全なNIPTを受検しておく
羊水検査は、妊婦さんのお腹に穿刺針を刺して子宮から羊水を採取する侵襲的な検査が行われます。
羊水検査によって流産や早産などで赤ちゃんを亡くしてしまう可能性があります。その確率は1,000人に1人〜3人くらいとされており、検査を受ける前に必ず把握しておく必要があります。
まずはリスクがない出生前診断を受けるのが一般的であり、その検査におすすめされるのが新型出生前診断と呼ばれる「NIPT」です。
NIPTは妊娠初期となる妊娠10週0日目から実施されており、検査は母体から採血を行うというとてもシンプルなものです。
血液検査によって妊婦さんは胎児の染色体異常の有無を知ることになり、陽性だった場合は高確率で何らかの染色体異常症を患っているとされます。
NIPTで陰性だった場合は健康な赤ちゃんである可能性が非常に高くなるため、「早く安心したい」という妊婦さんが妊娠10週目になったらすぐにNIPTを受けるケースも珍しくありません。
NIPTの結果が陽性だった場合は羊水検査を受けて確かめるという流れが一般的です。そのため、人工妊娠中絶を考えている場合でも羊水検査の結果を受けてから決断するという選択肢ができます。
遺伝カウンセリングの重要性
人工妊娠中絶をするかどうかは母親と父親に委ねられますが、染色体異常症に関して先入観があったり、間違った知識を持っていたりすることもあります。
遺伝カウンセリングは染色体異常と遺伝子疾患、そしてそれに伴う合併症などに対する正しい知識を得られる場でもあり、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの言葉によって心が動く妊婦さんもいます。
医師やカウンセラーが中絶の有無に直接助言することはありませんが、正しい知識を得た上で妊娠を継続するか中断するか決めることはとても大事です。
出生前診断を受ける際は、染色体異常と遺伝子疾患を知り尽くしたプロフェッショナルである臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーが在籍する医療施設を選ぶことをおすすめします。
まとめ
羊水検査は出生前診断の中でも、ダウン症候群などの有無がはっきり分かる確定的検査に分類されています。
結果に応じた育児環境づくりを早い段階から進められるという利点がある検査ですが、染色体異常があると診断されたことで中絶を選んでしまう妊婦さんがたくさんいるのが現状です。
「羊水検査の結果で決めた妊娠中断が本当に正しい選択肢だったのか?」
その答えは当事者にしか分かりませんが、遺伝カウンセリングを経て納得できる選択ができたという妊婦さんはたくさんいます。
東京の「ミネルバクリニック」は、大学病院レベルの臨床遺伝専門医が在籍する遺伝子専門のクリニックであり、遺伝カウンセリング体制も整っております。
たくさんの悩める妊婦さんを診てきた医師とスタッフが、ひとりひとりに丁寧に寄り添い全力でサポートいたします。
羊水検査を受ける前にNIPTを受けたいという妊婦さんは、是非この機会に「ミネルバクリニック」までお気軽にお問い合わせください。