網糸期 dictyate
網糸期 dictyateは、卵子形成における減数分裂第1期の段階での長期の休息段階である。
網糸期は、胎児期の後半に始まり、LHサージによって排卵直前に終了する。女性の胎児では出生前に卵母細胞の大部分が作られるが、これらの卵は思春期が始まって細胞が卵子形成を完了するまで、網糸期で停止したままとなる。
マウスでもヒトでも、高齢者の卵子のDNAには、若年者のDNAに比べて二本鎖切断がかなり多いことがわかっている。
加齢に伴うヒト卵胞予備軍の衰えの根本的なメカニズムは不明であるが、ATM(ataxia-telangiectasia mutated)が介在するDNA二本鎖切断(DSB)修復の障害が、マウスとヒトの卵母細胞の老化の原因であることが突き止められている(文献)。加齢に伴い、始原卵胞にDSBが蓄積することが明らかにされている。これと並行して、マウスとヒトの卵母細胞では、主要なDNA DSB修復遺伝子であるBRCA1、MRE11、Rad51、ATMの発現が減少するが、BRCA2は減少しない。Brca1欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、生殖能力が低下し、始原卵胞数が減少し、加齢とともに残存する卵胞でDSBが増加した。さらに、Brca1、MRE11、Rad51、ATMの発現を卵子特異的にノックダウンすると、DSBが増加し、生存率が低下したが、Brca1を過剰に発現させると、両パラメータが向上した。同様に、BRCA1遺伝子変異のある若い女性では、抗ミュラー管ホルモンの血清濃度から判断して、卵巣予備能が対照群に比べて低下していた。これらのデータは、DNA DSB修復効率が女性の卵子老化の重要な決定因子であることを示唆している。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号