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NIPT検査(新型出生前診断)はいつからいつまで受けられる?気になる年代別の受検割合とは

NIPT検査を検討するうえで、NIPT検査はいつからいつまで受けられるのか、どのタイミングで受ければ良いのか理解しておくことは非常に重要です。
NIPT(新型出生前診断)とは、母体から採血した血液を用いて、胎児の染色体異常を調べる検査です。厚生労働省によると、NIPTは20代で約8%、30代で約60%、40代で約30%の割合で受検しています。

この記事では、NIPT検査は何時から何時まで受けられるのか、NIPTを受ける適切なタイミングや、年代別の受検割合について詳しく解説します。

(参考)厚生労働省 NIPT受検者のアンケート調査の結果について

www.mhlw.go.jp/content/11908000/000754902.pdf

NIPTの受検はいつからいつまで?

NIPTを検討するうえで、いつ頃から受けられるのか、いつまでに受けるべきなのか気になる方も多いでしょう。ここからは、NIPTが受検できるようになる妊娠週数や、検査が推奨されている期間を紹介します。

NIPTは妊娠10週目以降(ミネルバクリニックでは妊娠6週目以降)から受検できる

いつからいつまで

NIPTは、妊娠10週目以降から受けることが可能です。中には、ミネルバクリニックのように妊娠6週目以降から検査が可能な医療機関もあります。これは、胎児のDNAが妊娠4週から母体の血液中に循環し、検出され始めるためです。NIPTの正確性を担保しつつ一番一番早い時期に検査できるのが、理論的には「胎児の性別を正確に判定可能となる」妊娠6週からと言われています。
もし妊娠週数が10週0日といった推奨時期にぴったり合う場合は、遺伝カウンセラー(日本では遺伝カウンセリングは医師または看護師でないと提供できません)や専門医に相談してみることをおすすめします。

NIPTは、妊娠11週頃からの母体血清マーカーコンバインド検査といった非確定検査よりも1週ほど早い時期に受けることができます。従来の非確定検査よりも、胎児の染色体異常を高い精度で判定できることもメリットです。

NIPTはいつまでに受検したら良い?

NIPTはいつまでに受けなければならないといった期限はありませんが、確定検査を受ける可能性も踏まえて時期を決めることが望ましいでしょう。

NIPTで陽性判定だった場合には、確定検査を検討する必要があります。
羊水検査なら妊娠15〜18週目頃、絨毛検査なら妊娠11〜14週目頃が適した期間です。

NIPTの検査結果は、医療機関によって多少差はありますが、一般的に1〜2週間程度かかります。そのため、NIPTの受検が遅れると、陽性だった場合には確定検査を検討するまで短い期間しかなくて焦ってしまったり、検査に適切な時期を過ぎてしまったりする可能性が考えられます。
確定検査は高い精度で染色体異常が判定できますが、先述したように流産リスクを伴います。また、お腹に針を刺すことで出血や感染症などのリスクも少なからずあるため、十分に理解して判断する期間が必要です。

NIPTでわかること

では、NIPT検査を実施することでどのようなことがわかるのでしょうか。
実は、NIPTで検査できる染色体異常は機関によって異なります。NIPTには「認証施設」「非認証施設」がありますが、それぞれ取り扱っている検査の対象が異なりますので注意してください。

NIPT認証施設では「基本検査」のみ

認証施設とは、出生前検査認証制度等運営委員会に認証されている医療機関です。
認証施設として登録されるためには、NIPTのことを把握している専門家(臨床遺伝専門医遺伝カウンセラーなど)が常駐していること、検査に必要な設備が整っていることなどさまざまな条件をクリアする必要があります。

認証施設で調べられる染色体異常は13トリソミーダウン症)、18トリソミー、13トリソミーの3つです。この3つは基本検査と呼ばれています。認証施設では、この3つのトリソミーしか調べることはできません。
また、NIPTを受けるために検査前、検査当日、検査後と合計3回医療機関へ通う必要があります。「遺伝カウンセリング」を受けるためです。NIPTを受けられるようになる妊娠10週の頃は、妊婦さんはつわりの最中の方も多いでしょう。自宅から遠方だと、負担となってしまう可能性もあります。できるだけ通いやすい場所で受けることをおすすめします。

NIPT非認証施設では「基本検査」に加えて…

非認証施設とは、出生前検査認証制度等運営委員会に認証されていない医療機関です。
認証されていないからといって、違法ということはありません。また検査精度は認証施設と同等ですのでご安心ください。
非認証施設は、認証施設よりもコストが安いという点、多くの染色体異常を調べられるという点は大きなメリットでしょう。医療機関によりますが、13トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミーのみならず、全染色体の検査ができたり、微小欠失、性別も取り扱っています。認証施設では調べたい病気が対象となっていなかったとしても、非認証施設であれば調べられる、というケースもあるでしょう。

1点注意していただきたいのが、非認証施設ではNIPTの専門家がいない可能性があるという点です。認証施設では検査の実施前後に必ず「遺伝カウンセリング」というものを実施しています。これは、患者さんがしっかりとNIPTについて理解したうえで検査を受けること、仮に結果が陽性だったとしてもその後のアフターケアを受けて冷静に判断できるようにすることが目的となっています。
しかし非認証施設には、この遺伝カウンセリングを実施できる専門家が不在のケースもあります。NIPTで陽性となった場合、その後は結果を確定させるため「確定検査」を受けることが一般的ですが、非認証施設では確定検査を受けることが出来ないケースがほとんどです。
もし、陽性となった場合どのようなアフターケアが受けられるのか、非認証施設でNIPTを受ける方は必ず確認して決めましょう。

NIPTをおすすめする理由

NIPT(新型出生前診断)は、母体や胎児へのリスクが少なく、他の非確定検査よりも高い精度で染色体異常を調べることが可能です。また、他の検査に比べて、より早期からの検査も可能です。早期から検査可能なNIPTで染色体異常が陰性であれば、確定検査を避ける選択も可能でしょう。陽性が分かった場合は、ご家族と確定検査の可否や今後について話し合う時間を設けることができます。

このように出産前にNIPTを受け、胎児の染色体異常を調べることで、出産に向けて万全の準備を整えられるメリットがあります。

また、NIPTによる出生前診断が母体や胎児へのリスクが少ない理由は、陰性なら「確定検査」を避ける選択が可能であるためです。
確定検査とは、羊水検査や絨毛検査と呼ばれ、お腹に針を刺して行う検査です。流産リスクは、羊水検査が約0.2〜0.3%、絨毛検査が約1%と言われています。わずかな数値ではありますが、流産の可能性を少しでも回避するために検査を避けたいという方は多いでしょう。

胎児に染色体異常が起こる可能性は、母親の出産年齢が上がるほど高くなる傾向にあります。しかし、20代で出産する場合でも染色体異常は起こるため「若いから大丈夫」ということはありません。NIPTで胎児の染色体異常を調べることで、出産やその後の育児に向けて心身を備えられるため、年代にかかわらず検討していただきたい検査です。

NIPTでわかることや受検の必要性については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

NIPTの全染色体検査でわかること、その必要性とは?

NIPTを受検できないケースはあるの?

NIPTの受検を希望する妊婦さんのうち、受検ができないケース・正確な結果が出ないケースがあります。下記の条件に当てはまる方は注意が必要です。

NIPTの受検ができない 正確な結果が出ない可能性がある
・トリソミー患者の方
異数性が見られる方
・胎児が三つ子よりも多い場合
がん患者の方
・自己免疫疾患のある方
・過去1年間で輸血をした方
・幹細胞治療 / 免疫療法 / 臓器移植を受けた方

上記に当てはまる方は、母体血液中のDNA検出パターンに影響を及ぼす可能性があることなどから、判定不能になるケースがあります。また、このほか二卵性(双子)の場合は検査によってはNIPTの受検ができないケースもあります。
NIPTは精度の高い非確定検査ですが、母体の疾患などの状態によっては希望しても受けられないことも留意しておきましょう。正確な結果を得られるかどうか不安のある方は、クリニックで医師のカウンセリングを受けてから判断するのも選択肢の1つです。

NIPTの受診率について

NIPTの受診率について

NIPTは、アメリカやイギリスなどの海外で多く行われており、日本でも受検する方が増えています。ここからは、海外と日本のNIPT受診率について詳しくみていきましょう。

海外の受診率

2010年と2011年の欧米における調査によると、出生前診断(主に初期コンバインド検査)の実施率は次のようになっています。

  • デンマーク:90%以上
  • イギリス:60%
  • フランス:84%
  • オランダ:26%

初期コンバインド検査とは、エコー検査と妊婦さんの採血を用いて行う血清マーカー検査を組み合わせて行う検査です。海外では出生前診断として妊婦検診に広く取り入れられており、NIPTが普及した現在でも行われています。

NIPTは、デニス・ロー(香港中文大学化学病理学教授)によって発明され、2011年にアメリカのシーケノム社が開発した「MaterniT21」によって、普及していきました。
現在もアメリカ・イギリス・ドイツ・オランダ、その他多くの国々で拡大傾向にあります。

日本での受診率

ここでは「日本における出生前遺伝学的検査の動向1998-2016」(日本周産期・新生児医学会雑誌2018;54:101-107)において、1998年から2016年までを調査した、日本におけるNIPTを含む出生前診断の受検率を記載しています。

調査によると、2016年のNIPTを含む出生前診断の延べ件数は70,000件です。これは、2016年の日本の出生数97.7万件のうち、7.2%がNIPTを含む出生前診断を受検したことに相当します。高齢妊婦数で見ると、27.8万人中25.1%を占めたこともわかりました。

また、出生前診断を受検した延べ70,000件のうち、約13,000人の妊婦さんがNIPTを選択したことも明らかになっています。

日本におけるNIPTは、2013年4月より臨床研究として開始され、当初は35歳以上の妊婦さんが受検対象でした。しかし、出産年齢にかかわらず胎児の状態や出産に不安を持つ妊婦さんの意思も尊重する必要があるとして、2022年2月18日に日本医学会が年齢制限を設けない指針を公表しています。日本でNIPTを受けられる施設も拡大しており、受検者数は年々増加傾向です。

(参考)
佐々木愛子・左合治彦ら: 日本における出生前遺伝学的検査の動向 1998-2016, 日本周産期・新生児医学会雑誌2018;54:101-107

実際にNIPTを受けた年代別の割合と陽性率

実際にNIPTを受けた妊婦さんの年代や、年代別の割合について気になる方は多いのではないでしょうか。
ここからは、実際にNIPTを受けた妊婦さんの年代別の割合と陽性率を見ていきます。また、ミネルバクリニックで受検された方の割合も示していますので参考にしてみてください。

実際にNIPTを受けた年代別の割合

実際にNIPTを受けた年代別の割合について、厚生労働省の調査とミネルバクリニックで受検された妊婦さんの統計を例に見てみましょう。

厚生労働省の調査
年齢(対象人数1,188人) 割合
~20代(100人) 約8%
30代(766人) 約60%
40代(322人) 約30%

(参考:NIPT受検者のアンケート調査の結果について 受験者の年齢分布 2020年実施)

ミネルバクリニックでNIPTを受けた方の割合
年齢 割合
20代 5%
30代前半 30%
30代後半 50%
40代 15%

(2023年2月更新のデータを参照)

上記のデータを比較すると、NIPTを受ける割合が最も多いのは30代ということがわかります。ミネルバクリニック調べでは、30代の中でも30代前半より後半の方が多い割合です。
40代でNIPTを受検する割合は、30代よりも半分以下に減少しています。
しかし、40代に入ると出産される方が減ることを踏まえれば、NIPTの受検割合は少なくない数字といえるでしょう。また、20代でNIPTを受ける割合も僅かにあることがわかります。

(参考)
厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について
www.mhlw.go.jp/content/11908000/000754902.pdf
出生前診断を受ける割合|30代40代の妊婦はNIPTや羊水検査を受けるべきか?
minerva-clinic.or.jp/nipt/related-articles/rate-of-pregnant-women-take-prenatal-diagnosis/

NIPTの陽性率

厚生労働省の「NIPT受検者のアンケート調査の結果について」によると、NIPTの全体での陽性率は1.79%という結果がでています。この調査は、2013年4月から2019年3月までの6年間で行われ、平均年齢38.4歳、妊娠週数平均13.1週の妊婦さん72,526件のデータを基にした割合です。
年代別の陽性率は不明であるものの全体の陽性率が1.79%のため、72,526件のうち約1,298件が陽性であることがわかります。
なお、高齢出産を理由に受検した方の割合は90%以上です。調査実施期間はNIPTに35歳以上の年齢制限が設けられていたことが理由であると考えられます。

NIPTの陽性的中率は50〜90%とばらつきがあり、高齢になるほど的中率が上がる傾向です。そのため年齢が若い方ほど、陽性判定の場合でも確定検査で、NIPT陽性ではあるけれど胎児はトリソミーではない偽陽性とわかる可能性が高くなります。

参考:厚生労働省「NIPT受検者のアンケート調査の結果について」

まとめ

NIPT(新型出生前診断)は、母体や胎児へのリスクが少なく、他の非確定検査よりも高い精度で染色体異常を調べることが可能な検査です。いつまでに受けなければならないといった期限はありませんが、NIPTで染色体異常が陽性であれば、確定検査を検討する必要があります。
そのため、NIPTを受けるタイミングは、妊娠10週目以降にできるだけ早く受検することがおすすめです。早期の受検で、ご家族と確定検査の可否や今後について話し合う時間を設けることができます。妊娠・出産への不安を減らして万全な出産準備を整えるためにも、NIPTの受検を検討してみるとよいでしょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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