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前置胎盤でダウン症の確率は上がる?低置胎盤との関係も臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

妊婦健診の超音波検査で「胎盤の位置が低い」「前置胎盤かもしれない」と言われ、赤ちゃんにダウン症候群などの病気があるのではと心配になる方は少なくありません。先に結論をお伝えすると、前置胎盤や低置胎盤そのものでダウン症候群の確率が上がるという根拠は、確認されていません。前置胎盤は胎盤ができた「位置」の話で、ダウン症候群は赤ちゃんの「染色体の数」の話です。ダウン症候群の確率を左右するのは、主にお母さんの年齢です。この記事では、2つの関係について分かっていること・分かっていないことを、出典を示しながら整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🩺 前置胎盤・出生前診断
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤前置胎盤・低置胎盤とダウン症候群の関係について、研究で分かっていること
  • ➤前置胎盤・低置胎盤とは何か、胎盤の位置が低いと言われたら気をつけること
  • ➤「高齢出産」が前置胎盤とダウン症候群の両方に関係する理由
  • ➤年齢別のダウン症候群の確率(出生時の頻度)
  • ➤前置胎盤でもNIPTを受けられる理由と、当院のNIPTで調べられる範囲

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 前置胎盤だとダウン症の確率は上がりますか?

前置胎盤そのものでダウン症候群の確率が上がるという根拠は、確認されていません。前置胎盤は胎盤ができた位置、ダウン症候群は赤ちゃんの染色体の数が原因で、起こる仕組みが別です。確率を左右するのはお母さんの年齢で、出生時の頻度は35歳で約350人に1人、40歳で約86人に1人です。

🔍 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。前置胎盤をきっかけにダウン症候群が心配になった方にも、知っておいていただきたいことがあります。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題だと報告されています。こうした問題を伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

📍 Q. 低置胎盤とダウン症に関係はありますか?

低置胎盤でダウン症候群の確率が上がるという根拠も、確認されていません。低置胎盤は、胎盤の端が子宮の出口から2cm以内にある状態で、妊娠中期に指摘されても約90%はお産までに解消します。

🩸 Q. 前置胎盤でもNIPTは受けられますか?

受けられます。NIPTはお母さんの腕から採血するだけの検査で、子宮や胎盤に触れないため、胎盤の位置に関係なく受けられます。当院では妊娠9週から受けられます(妊娠6〜8週は臨床研究)。陽性のときは、確定検査で確かめます。

🌱 Q. 自閉症や発達障害は、NIPTでわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。自閉症そのものを診断する検査ではなく、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。

ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。採血だけなので、前置胎盤・低置胎盤と言われた方も胎盤の位置に関係なく受けられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

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まだ決めていない方は:料金と含まれるものを見る | NIPTのプランを見る | オンラインNIPT

結論:前置胎盤とダウン症に直接の因果関係を示す根拠はありません

【結論】 前置胎盤や低置胎盤と診断されても、そのことでダウン症候群(21トリソミー)の確率が上がるという根拠は、確認されていません。前置胎盤は「胎盤が子宮のどこにできたか」という位置の話、ダウン症候群は「赤ちゃんの21番染色体が3本ある」という染色体の数の話で、起こる仕組みが別です。

「前置胎盤と言われてから、赤ちゃんに障害があるのではと不安で眠れない」「調べるほど怖い情報ばかり目に入る」。妊娠中に思いがけない診断を受ければ、赤ちゃんのことが心配になるのは自然なことです。ここでは、原因の違いと、研究で分かっていることを順に説明します。

🔬 原因の違い

前置胎盤:胎盤ができた位置によるものです。帝王切開の既往、体外受精などの生殖補助医療による妊娠、喫煙などでなりやすいことが知られています。

ダウン症候群:卵子や精子ができるときに21番染色体がうまく分かれず、受精卵の21番染色体が3本になることで起こります。

共通点:どちらも、お母さんの年齢が上がると増えます。ただし、増え方の大きさはまったく違います(くわしくは「高齢出産という共通のリスク要因」の章で説明します)。

研究で分かっていること・分かっていないこと

前置胎盤と、赤ちゃんの生まれつきの病気との関係を調べた研究はあります。8つの研究をまとめた2023年の解析では、前置胎盤の妊娠では、赤ちゃんの生まれつきの病気(体のつくりの異常など全体)がやや多いという結果でした(オッズ比1.81)[1]。フィンランドの全国データを使った研究でも同じ傾向が報告されています(体のつくりの異常と染色体の病気を合わせた数字で、調整後のオッズ比1.55)[1][2]。

ただし、この結果の読み方には注意が必要です。研究ごとの結果のばらつきが大きく、結果に影響するほかの要因を十分に取り除けていない研究が多いと、解析した研究者自身が述べています[1]。また、ダウン症候群だけを取り出して調べた結果は示されていません[1]。つまり、「前置胎盤だとダウン症候群が増える」ことを示した研究は見当たらず、関係ははっきりしていない、というのが現時点での正確な言い方です。

一方、ダウン症候群の確率がお母さんの年齢とともに上がることは、大規模な登録データで確かめられています[3]。赤ちゃんの染色体が気になるときは、胎盤の位置ではなく、年齢と出生前検査で考えることになります。

エコーで見える「ダウン症のサイン」とは

超音波検査でダウン症候群の可能性を考えるきっかけになるのは、首の後ろのむくみ(NT)など、赤ちゃん自身にみられる所見です。胎盤の位置(前置胎盤・低置胎盤)は、それとは別のものです。胎盤の位置が低いと言われたことは、赤ちゃんの体に何かが見つかったという意味ではありません。エコーの所見についてはダウン症はエコーでわかる?わかる時期と特徴で解説しています。

なぜ先生はエコーを長く見たの?

前置胎盤や低置胎盤では、胎盤の端と子宮の出口との距離を超音波で測り、その結果をもとにお産の方法を考えます[4]。時間をかけて画面を見ていたのは、胎盤の位置を正確に確かめるためです。

💡 用語解説:前置胎盤(ぜんちたいばん)とは

胎盤が子宮の出口(内子宮口)にかかっている状態のことです。ふつう胎盤は子宮の上のほうや横の壁にできますが、前置胎盤では下のほうにでき、赤ちゃんの通り道をふさぎます。お産のときに出血しやすいため、多くは帝王切開でのお産になります。

前置胎盤とは|原因・症状・リスク

【結論】 前置胎盤は、およそ200回の妊娠に1回(1,000妊娠あたり約5)にみられます[5]。帝王切開の既往、体外受精などの生殖補助医療による妊娠、喫煙などでなりやすいことが分かっています[4][6]。痛みのない出血が特徴で、多くは妊婦健診の超音波検査で見つかります。

前置胎盤がいつわかるかというと、多くは妊娠中期(20週前後)の超音波検査です。このとき胎盤が低い位置にあれば、妊娠32週ごろにもう一度確かめ、まだ低い場合は36週ごろにも確かめて、お産の方法を決めます[4]。

そもそも、なぜ前置胎盤になるの?

胎盤は、受精卵が着床した場所にできます。くわしい仕組みはまだ十分に分かっていませんが、帝王切開などで子宮の内側に傷あとがある場合や、胎盤が広い範囲に広がる場合に、胎盤が子宮の出口の近くまで及びやすいと考えられています。

このように、前置胎盤は「子宮のどこに胎盤ができたか」によるものです。赤ちゃんの染色体の数が変わるダウン症候群とは、起こる仕組みが別です。前置胎盤になったことで、ご自分を責める必要はありません。

前置胎盤の分類

📋 前置胎盤・低置胎盤の分類

分類 胎盤の位置 分娩方法
全前置胎盤 子宮の出口を完全に覆う 帝王切開
部分前置胎盤 子宮の出口の一部を覆う 帝王切開
辺縁前置胎盤 胎盤の端が子宮の出口に届いている 状況により判断
低置胎盤 出口を覆っていないが、胎盤の端が出口から2cm以内にある 状況により判断

英国の産婦人科学会の指針では、胎盤が子宮の出口を覆うものを前置胎盤、覆わないが胎盤の端が出口から2cm以内にあるものを低置胎盤と呼んでいます[4]。日本では、覆い方によって全・部分・辺縁に分けて呼ぶこともあります。

前置胎盤になりやすい人の特徴

🔴 研究で確かめられている主な要因

・帝王切開の既往:回数が多いほど、なりやすくなります[4]
・体外受精などの生殖補助医療による妊娠:なりやすさが約2.7〜3.7倍と報告されています[4]
・喫煙:オッズ比1.42[4]
・高齢出産・出産の回数が多い・流産や中絶の既往[6]

年齢の影響は、1歳上がるごとにオッズ比1.08と大きくはなく、出産の回数の影響かもしれないとも述べられています[4]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【心配事は、2つに分けて考える】

「前置胎盤」と聞くと、赤ちゃんに何かあるのではと心配になる方が多いと思います。けれども、前置胎盤は胎盤の位置の話で、赤ちゃんの染色体とは別の話です。臨床遺伝専門医としてお伝えしたいのは、心配事を2つに分けて考える、ということです。

前置胎盤の経過やお産の方法は、分娩先の産科の先生が超音波で確かめながら判断します。赤ちゃんの染色体が気になるときは、NIPTなどの出生前検査で確かめることができます。2つを混ぜて考えると不安が大きくなりやすいので、それぞれに合った方法で一つずつ確かめていくのがよいと考えています。

低置胎盤とは|前置胎盤との違い

【結論】 低置胎盤は、胎盤が子宮の出口を覆ってはいないものの、胎盤の端が出口から2cm以内にある状態です[4]。妊娠中期に指摘されても、子宮が大きくなるにつれて胎盤と出口の距離が離れ、約90%はお産までに解消します[4]。

💡 用語解説:低置胎盤(ていちたいばん)とは

胎盤が子宮の出口を覆ってはいないものの、出口の近く(2cm以内)にある状態です。健診では「胎盤の位置が低い」「胎盤が低い」と説明されることがあり、「低位胎盤」と呼ばれることもあります。

低置胎盤とダウン症の関係

低置胎盤でダウン症候群の確率が上がるという根拠も、確認されていません。低置胎盤は前置胎盤と同じく胎盤の位置の話で、赤ちゃんの染色体の数とは仕組みが別です。先に紹介した研究[1]も前置胎盤を対象にしたもので、低置胎盤だけを取り出してダウン症候群との関係を調べた研究は見当たりません。ダウン症候群の確率は、胎盤の位置ではなく、お母さんの年齢で考えます。

📊 前置胎盤と低置胎盤の比較

比較項目 前置胎盤 低置胎盤
胎盤の位置 子宮の出口を覆う 出口を覆わないが、出口から2cm以内
その後の経過 妊娠中期に指摘された場合、多くはお産までに解消する。お産の時期まで続くこともある 妊娠中期に指摘された場合、多くはお産までに解消する
分娩方法 帝王切開 状況により判断
ダウン症との関係 確率が上がるという根拠は確認されていない 確率が上がるという根拠は確認されていない

妊娠中期に胎盤が低い位置にあると言われた場合、約90%はお産までに解消すると報告されています[4]。

胎盤の位置が低いと言われたら気をつけること

英国の産婦人科学会の指針では、次のように示されています[4]。

💡 胎盤の位置が低いと言われたときのポイント

・出血(少量でも)、お腹の張り、痛みがあったら、すぐに分娩先の医療機関に連絡して受診する
・妊娠32週ごろの超音波検査で、胎盤の位置をもう一度確かめる
・まだ低い場合は36週ごろにも確かめ、お産の方法を決める

安静の程度、仕事、運動、性交渉などの生活上の注意は、胎盤の位置や出血の有無によって変わります。当院は分娩を行っていません。前置胎盤・低置胎盤の経過の見方と生活上の注意は、分娩先の産科の先生の指示に従ってください。

高齢出産という共通のリスク要因

【結論】 前置胎盤とダウン症候群には、「お母さんの年齢が高いほど増える」という共通点があります。そのため、前置胎盤と言われた方の中に、年齢からみてダウン症候群の確率が高めの方が含まれることはあります。これは「前置胎盤がダウン症候群を引き起こす」という意味ではありません。

⚠️ 高齢出産と、それぞれの確率

・前置胎盤:年齢が1歳上がるごとに、なりやすさがわずかに増えます(オッズ比1.08)。出産の回数の影響かもしれないともされています[4]
・ダウン症候群:出生時の頻度は、30歳で約940人に1人、35歳で約350人に1人、40歳で約86人に1人です[3]
・増え方の違い:年齢による増え方は、ダウン症候群のほうがずっと大きくなります

高齢出産と前置胎盤・ダウン症候群の確率の関係(イメージ)

35歳以上での妊娠(いわゆる高齢出産)では、前置胎盤もダウン症候群も確率が上がります。けれども、これは「前置胎盤→ダウン症候群」という因果関係ではなく、年齢という共通の背景が、それぞれに別々に影響しているということです。

ダウン症候群の多くは、卵子ができるときの細胞分裂(減数分裂)で21番染色体がうまく分かれないことで起こります。これはお母さんの年齢とともに起こりやすくなるもので、妊娠中の生活や行動が原因で起こるものではありません。

年齢別ダウン症の確率(目安)

【結論】 ダウン症候群の赤ちゃんが生まれる頻度は、お母さんの年齢とともに上がります。出生時の頻度は、30歳で約940人に1人、35歳で約350人に1人、40歳で約86人に1人です[3]。前置胎盤や低置胎盤の有無でこの数字が変わるという根拠はありません。

🧬 母体年齢別ダウン症の確率(出生時の頻度)

出産時の年齢 ダウン症の確率(出生時) 割合
25歳 約1,340人に1人 約0.07%
30歳 約940人に1人 約0.11%
35歳 約350人に1人 約0.28%
40歳 約86人に1人 約1.16%

出典:Morrisら(J Med Screen, 2002)の計算式による値[3]。出生前検査や人工妊娠中絶の影響を除いた「出生時」の頻度です。

40歳の「約86人に1人」は、裏返すと「約98.8%のお子さんはダウン症候群ではない」ということです。年齢による確率は、同じ年齢の方を大勢集めたときの平均で、大多数のお子さんには当てはまらない数字です。お一人おひとりの赤ちゃんがどうかは、この数字からは分かりません。

また、上の表は出生時の頻度です。ダウン症候群のある赤ちゃんの妊娠は、途中で流産や死産になることが多く、35歳では妊娠10〜12週ごろから出産までに約32%が自然に失われると推定されています[7]。そのため、NIPTを受ける妊娠初期の時点の頻度は、出生時の頻度より高くなります。

年齢ごとの妊娠のくわしい話は、35歳の妊娠と障害の確率・NIPT、40歳の妊娠のダウン症・自閉症の確率とNIPTで解説しています。

前置胎盤でもNIPT検査は受けられる?

【結論】 受けられます。NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの腕から採血するだけの検査で、子宮や胎盤に触れません。胎盤の位置に関係なく受けられます。

💡 用語解説:NIPT(新型出生前診断)とは

お母さんの血液に含まれる、赤ちゃん(正確には胎盤)由来のDNAの断片を調べ、染色体の変化の可能性をみる検査です。採血だけなので、検査が原因で流産することはありません。結果は「可能性」を示すもので(非確定検査)、陽性のときは確定検査で確かめます。

当院では妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果が出るまでは基本10〜14日です(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。

NIPTと羊水検査の比較

📊 NIPTと羊水検査の比較

比較項目 NIPT 羊水検査
検査方法 腕からの採血のみ お腹に細い針を刺して羊水を採る
検査による流産 採血のみで、検査が原因の流産はない 流産の上乗せはほとんど見られない(検査を受けなかった人との差は−0.36%で、統計的な差なし)[8]
胎盤の位置との関係 関係なく受けられる 超音波で胎盤の位置を確かめ、針を刺す場所を選んで行う
検査時期 当院では妊娠9週から(妊娠6〜8週は臨床研究) 妊娠15〜18週ごろ
検査の位置づけ 非確定検査(スクリーニング検査) 確定検査
ダウン症候群の検出 検出率99.7%・偽陽性率0.04%(35の研究のまとめ)[9] 赤ちゃんの染色体を直接調べて、診断を確定する

✅ 前置胎盤と言われた方がNIPTを受けるときのポイント

・子宮・胎盤に触れない:採血のみなので、胎盤の位置に関係なく受けられます
・早い時期から受けられる:当院では妊娠9週から(妊娠6〜8週は臨床研究)
・陰性なら確定検査を受けずに済むことが多い:ただし、まれですが偽陰性の可能性はあります
・心配事を分けて考えられる:胎盤の位置は産科で、赤ちゃんの染色体は出生前検査で確かめられます

NIPTは検出率の高い検査ですが、陽性でも赤ちゃんに病気があると決まったわけではありません。陽性のときは、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で確かめてから考えます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。精度の考え方はNIPTの精度・確率(感度・特異度と陽性的中率)で、陽性のあとの流れはNIPT陽性後のフォローと院内での確定検査で解説しています。

前置胎盤と言われた方が羊水検査を受けられるかどうかは、検査を行う医師が、超音波で胎盤の位置と針を通す場所を確かめて判断します。「前置胎盤だから受けられない」と決まっているわけではありません。

胎盤の位置を指摘されるのは、妊娠20週前後が多くなります。妊娠中期でもNIPTは受けられますが、結果が出るまで10〜14日、陽性のときは確定検査(主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほど)と、時間がかかります。受ける週数ごとのスケジュールは妊娠16週のNIPTと22週までのスケジュールで説明しています。

自閉症・発達障害・知的障害の原因も、NIPTで一部わかる

赤ちゃんの染色体が気になり始めると、ダウン症候群だけでなく、自閉症や発達障害のことも心配になる方がいます。こうした状態の原因はさまざまで、多くは特定できませんが、一部は染色体や遺伝子の変化によるものです。知的障害の遺伝的な原因で最も多いのはダウン症候群で、原因の分からない発達の遅れ・知的障害・自閉スペクトラム症のある方の約15〜20%では、染色体の微細な欠失・重複が見つかると報告されています[10]。当院のNIPTでは、その一部を妊娠中に調べられます。アンジェルマン症候群・プラダー・ウィリー症候群・22q11.2欠失症候群はすべてのプラン(スタンダードプランから)、レット症候群・コルネリア・デ・ランゲ症候群・CHARGE症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプラン、フェラン・マクダーミッド症候群・ピット・ホプキンス症候群・16p11.2欠失・重複はインペリアルプランの対象です。ただし、NIPTは自閉症そのものを診断する検査ではありません。陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えず、脆弱X症候群のようにNIPTでは調べられない原因もあり、症状の出方も予測できません。微小欠失・重複は陽性的中率が数の異常より低め(項目によって60〜70%程度)なので、陽性のときは必ず確定検査で確かめます。くわしくは自閉症はNIPTでわかりますか?と高齢出産と自閉症の確率をご覧ください。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

前置胎盤をきっかけに赤ちゃんの染色体が気になり、「ダウン症候群かどうかだけ分かればよい」と考える方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわります。まれな遺伝性の病気のお子さんを育てるご家族の研究をまとめた報告では、ダウン症候群のご家族と比べて、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族のほうが、子育てのストレスが高いという結果でした[11]。ストレスの大きさにいちばん関係していたのは、知的障害の程度ではなく、攻撃的な行動・自傷・睡眠の問題といった「行動の問題」です[11]。

他人への攻撃的な行動はアンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群で、自傷はコルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群で多いことが分かっています[12]。当院のNIPTでは、スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群はすべてのプラン(スタンダードプランから)、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプラン、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで調べられます。三大トリソミー(21・18・13トリソミー)だけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生にかかわるかもしれない検査です。検査を選ぶ物差しが費用だけでよいのか、申し込む前に考えてみてください。物差しの1つとして、検査の費用を、調べられる病気の数で割ってみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、調べる病気は3つなので、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。数えられる病気だけで320になり、同じように割ると1つの病気あたりは約1,700円です。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

ただし、調べる病気の数が多いほどよい検査、ということではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。だから、検査の前の遺伝カウンセリングでプランを選びます。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

当院では、陽性のときの確定検査(羊水検査・絨毛検査)も院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性のときの遺伝カウンセリングは、何度でも無料です。

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ミネルバクリニックのサポート体制

ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が常駐するクリニックです。前置胎盤・低置胎盤と言われて赤ちゃんの染色体が気になっている方に向けて、当院のNIPTの体制を、事実だけまとめます。

🏥 当院のNIPTの体制

項目 内容
調べられる範囲 スタンダードプラン(13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患)から、インペリアルプラン(全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、単一遺伝子は最大155遺伝子・202疾患)まで、5つのプランがあります。プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・双子マックスプランの内容は各ページをご覧ください
確定検査 2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます
遺伝カウンセリング 90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。陽性のときの遺伝カウンセリングは何度でも無料です
互助会 羊水検査互助会(カトレア会):会費8,000円。陽性のときの確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)
安心検査結果保障制度:6,000円。再検査が必要になったのに流産して再検査ができず、結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します
どちらもNIPTを受ける方全員にご加入いただく制度で、消費税の対象外です
来院が難しい方 オンラインNIPT:Zoomで臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受け、全国110か所の提携施設で採血します(採血料は施設ごとに別にかかります)

検査料金には、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング、4Dエコー、性別判定が含まれます。金額は変わることがあるため、NIPTの費用・料金のページでご確認ください。

なお、当院は分娩を行っていません。前置胎盤・低置胎盤の経過観察とお産は、分娩先の産科で受けてください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「何を知りたいか」から検査を選ぶ】

胎盤の位置を指摘されたことをきっかけに、赤ちゃんの染色体について初めて考える方もいます。そのとき大切なのは、「何を知りたいのか」を先に決めることだと考えています。ダウン症候群の確率は年齢でおおよそ分かりますが、それは同じ年齢の方を大勢集めたときの平均で、目の前の赤ちゃんがどうかは分かりません。

出生前検査は、知りたいことの範囲によって、選ぶ検査が変わります。そして、スクリーニング検査で陽性になったときは、確定検査で確かめてから考えることが欠かせません。検査の前に範囲と限界を知り、結果が出たあとの道筋まで見通しておくことが、納得のいく選択につながると考えています。

🏥 胎盤の位置の心配と、赤ちゃんの染色体の心配を、分けて確かめるために

ミネルバクリニックでは、90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。陽性のときは、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでの遺伝カウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。

まだ決めていない方は、料金と含まれるものから確かめてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 前置胎盤だとダウン症の確率は上がりますか?

前置胎盤そのものでダウン症候群の確率が上がるという根拠は、確認されていません。前置胎盤は胎盤ができた位置、ダウン症候群は赤ちゃんの染色体の数が原因で、起こる仕組みが別です。前置胎盤の妊娠では赤ちゃんの生まれつきの病気全体がやや多いという報告はありますが、研究ごとのばらつきが大きく、ダウン症候群だけを調べた結果は示されていません。ダウン症候群の確率を左右するのは、主にお母さんの年齢です。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言い切れません。ご家族の子育ての負担にいちばん関係するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題だと報告されています。こうした問題を伴いやすいスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTでは、この3つはスタンダードプランから調べられます。どこまで調べるかは、検査の前の遺伝カウンセリングで決められます。

Q3. 低置胎盤とダウン症に関係はありますか?

低置胎盤でダウン症候群の確率が上がるという根拠も、確認されていません。低置胎盤は、胎盤が子宮の出口を覆ってはいないものの、胎盤の端が出口から2cm以内にある状態で、胎盤の位置の話です。ダウン症候群の確率は、胎盤の位置ではなく、お母さんの年齢によって変わります。

Q4. 胎盤の位置が低いと言われたら、何に気をつければよいですか?

出血(少量でも)、お腹の張り、痛みがあったら、すぐに分娩先の医療機関に連絡して受診してください。妊娠中期に胎盤の位置が低いと言われても、約90%はお産までに解消すると報告されているため、妊娠32週ごろ(まだ低ければ36週ごろ)の超音波検査でもう一度確かめます。安静や仕事などの生活上の注意は、分娩先の産科の先生の指示に従ってください。

Q5. 前置胎盤でもNIPT検査は受けられますか?

受けられます。NIPTはお母さんの腕から採血するだけの検査で、子宮や胎盤に触れないため、胎盤の位置に関係なく受けられます。当院では妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPTは可能性を調べる検査なので、陽性のときは確定検査で確かめます。

Q6. 35歳・40歳でダウン症の確率はどのくらいですか?

出生時の頻度は、35歳で約350人に1人(約0.28%)、40歳で約86人に1人(約1.16%)です。前置胎盤や低置胎盤の有無でこの数字が変わるという根拠はありません。妊娠の途中で流産や死産になることがあるため、NIPTを受ける妊娠初期の頻度は、出生時より高くなります。

Q7. 前置胎盤で羊水検査はできますか?

羊水検査は、超音波で胎盤と赤ちゃんの位置を確かめ、針を刺す場所を選んで行います。前置胎盤の方が受けられるかどうかは、検査を行う医師が超音波で確かめて判断します。まずNIPTで可能性を調べ、陽性のときに確定検査を受ける、という順に進める方法があります。

Q8. 前置胎盤や低置胎盤は治りますか?

妊娠中期に胎盤の位置が低いと言われた場合、子宮が大きくなるにつれて胎盤と子宮の出口の距離が離れ、約90%はお産までに解消すると報告されています。妊娠32週ごろの超音波検査で確かめ、お産の時期まで前置胎盤が続く場合は帝王切開になります。

Q9. 前置胎盤で赤ちゃんに障害が出ることはありますか?

前置胎盤が赤ちゃんの染色体を変えることはありません。前置胎盤の妊娠では赤ちゃんの生まれつきの病気全体がやや多いという報告がありますが、研究ごとのばらつきが大きく、はっきりした結論は出ていません。お産の時期と方法は、胎盤の位置と出血の状況をみて、分娩先の産科の先生が判断します。

Q10. 遠方ですが検査を受けられますか?

オンラインNIPTを利用できます。Zoomで臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受け、全国110か所の提携施設で採血します(採血料は施設ごとに別にかかります)。前置胎盤で長い移動が心配な方も、お住まいの地域で採血できます。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。前置胎盤・低置胎盤の管理については、分娩先の産科の主治医にご確認ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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