出生前診断を受ける割合|30・40代妊婦は出生前診断を受けるべきか?

出生前診断とはお腹の中の赤ちゃんのダウン症エドワーズ症候群18トリソミー)といった染色体疾患や先天異常を確率を調べる検査のことです。妊婦健診のエコー検査で胎児のうなじのむくみ(NT)をみることも出生前診断の一つです。 母体が高齢になればなるほど、赤ちゃんが疾患を持つ可能性が高くなるため、出産年齢が上昇する昨今において、その需要が高まっています。とはいえ、ときには望まない結果を得てしまう検査。どれくらいの数の妊婦さんが受検されているのか気になる方の多いのではないでしょうか。 この記事では出生前診断の件数と、出生前診断を受ける前に知っておいた方がいいことをご紹介していきます。

出生前診断の種類

出生前診断には以下のようなものがあります。

それぞれの内容、方法についてはこちらのページをご参照ください。

出生前診断を受ける妊婦さんは増えている

出生前診断を受ける人の数は、結論からいうと増えてきています。特に、全体に対して新型出生前診断(NIPT)の割合が高まってきています。それはどうしてなのでしょうか。

羊水検査数のピークは2014年だった

羊水検査は母体血清マーカー検査、超音波検査、新型出生前診断で赤ちゃんの染色体異常が疑われたときにその診断を確定させるための確定検査です。お腹に針を刺し、採取した羊水から赤ちゃんのDNAを調べます。妊娠15~18週に受けられる検査です。

羊水検査は2014年の2万700件をピークに下降し、2018年には1万5000件にまで減少しました。

日本国内の羊水検査数の年次推移(1998年~2018年)

それでは出生前診断の検査数は減ったということなのでしょうか。そうではく、羊水検査よりも早い時期に受けられ、流産などの身体的リスクのないNIPTが2013年に導入されたからだと考えられます。

NIPT(新型出生前診断)の検査数は?

NIPT(新型出生前診断)は母体の血液中に含まれる胎児のDNAを調べる検査です。2013年に導入されてから、母体や胎児に負担のかからない検査として検査件数が増えています。 厚生労働省の資料によるとNIPT(新型出生前診断)の認可施設での検査数は2019年では約1万2000件です。無認可施設での実施数はこれと同数であるとNIPTコンソーシアムは推計しており、それを採用すると、日本で行われているNIPTは約2万4000件となります。

出生前診断を受ける人の割合は増えている

羊水検査ピーク時の2014年の2万7000件と2018年の1万5000件の差異は5700件。
NIPTの2019年の実施数は2万4000件なので、NIPTを受けた人の何割かがその後羊水検査も受けることを考えても、出生前診断そのものを受ける人の数は増えていると言っていいでしょう。

40代の高齢出産のリスクにNIPTで備えたい

NIPTを実施しているミネルバクリニックにいらっしゃる妊婦さんの年齢別割合を見てみましょう。

年代年齢割合(%)
20代21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳5
30代前半30歳、31歳、32歳、33歳、34歳30
30代後半35歳、36歳、37歳、38歳、39歳50
40代40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳15

一番割合が多いのは30代後半ですが、40代で妊娠する方がそもそもたくさんはいらっしゃらないため、15%というのも注目すべき数字です。

35歳以上の妊娠にはダウン症候群21トリソミー)のリスクが上がり、40代ではその可能性がさらに高くなります。

なぜ出生前診断を受ける人の割合が増えているのか?

20代、30代前半でも出生前診断を受ける人は増えています。

「ライフスタイルを変えたくない」「障害のあるお子さんを育てる自信がない」「妊娠期間が不安でたまらない」という理由からです。

出生前診断は未来の扉。一度しか生きられない人生。その大切な人生設計のために行ったほうがよいと考えます。

出生前診断とファイナンシャルプランニング

人生においてリスクヘッジは誰もがするものです。夜、家に帰るときになるべく明るい道を選ぶこともリスクヘッジの一つです。
リスクヘッジの手法はたくさんあり、一度もそんなことをしたことがないという人はきっといないでしょう。
こちらの記事では、大学卒の女性が妊娠で離職した場合、生涯年収の損失は2億円ということをまとめています。

ミネルバクリニックには多くの外国人の方も検査を受けに来られ、英語で海外のNIPTの状況や、出生前診断に対する考え方をお伺いしています。彼女たちからは「駄目ならすぐあきらめて次」というドライな印象を受けます。
それが良いことなのか悪いことなのかは、さまざまな意見があるでしょう。「出生前診断は生命の選別につながる」というネガティブなイメージが強調されてきましたが、本当にそうでしょうか?
出生前診断は「家族の未来を創造する」ための検査ではないかと感じています。

新型出生前診断(NIPT)を受ける前に知っておいてほしいこと

新型出生前診断(NIPT)は2913年に実施されて以来、年々検査数を伸ばしてきている検査です。従来の母体血清マーカー検査と同じく採血のみで結果がわかるため母体や胎児への負担がなく、検査精度が高いということが多くの妊婦さんから選ばれている理由だといえます。
しかし、その手軽さゆえ(もし赤ちゃんに染色体異常があったらと考えると、まったくお手軽なものではないはずなのですが……)検査についての詳しい説明はおろか、検査後の十分なフォローもなく、採血と検査結果を知らせるだけという、産婦人科でもなければ、遺伝専門医もいないクリニック・病院が多く存在します。
陰性が出たとしても、偽陰性の可能性もありますし、陽性の場合はいつどのような検査を受けるべきなのか専門医からのサポートが必要です。 新型出生前診断はお腹の中の赤ちゃんや、お母さん、ご家族の将来に関わる大切な検査で、ときに重大な決断を迫られます。その決断をサポートするのが遺伝専門医なのです。新型出生前診断は必ず遺伝専門医のいる施設で受けるようにしましょう。

ミニコラム①|海外の出生前診断を受ける割合

そのような重大な出生前診断を受けるべきか悩まれる方もいらっしゃるかと思います。このコラムでは海外の検査数や日本の超音波診断について私が常日頃考えていることをご紹介します。

皆さんの判断材料になれば幸いです。

コンバインド検査超音波検査+母体血清マーカー)の高い受検率

出生前診断を受ける割合は、デンマーク90%以上、イギリス60%、オランダ26%、フランス84%となっています。
このデーターは第1三半期初期に受ける、日本ではコンバインド検査と呼ばれているものをさしています。

コンバインド検査とは妊娠l1~14週のNT(超音波検査)と母体血清マーカーによる検査のことです。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4263059/

出生前診断を受ける割合:デンマーク、イギリス、オランダ、フランスの2005年~2011年の遷移

hal.archives-ouvertes.fr/hal-01493101/document

The choice
of these countries can also be justified by significant differences in screening uptake rates:
61% in England in 2010, 84% in France in the same year, and 26% in the Netherlands in 2009

出生前診断の受検率が高いイギリス

イギリスでは妊娠初期のスクリーニング検査は無料で受けることができます。

その中でダウン症候群(21トリソミー)リスクが1/150以上と判明した女性934人のうち、74.4%(695人)がNIPTを選択し、17.8%(166人)が侵襲的検査(羊水検査)を選択し、7.8%(73人)がそれ以上の検査を拒否しました。

ダウン症候群(21トリソミー)リスクが1/151から1/1000の間にある女性2241人のうち、80.3%(1799人)がNIPTを選択しました。

ダウン症(21トリソミー)の診断が確定した71例の妊娠のうち、NIPT後に診断が確定したのは31%(13/42例)、侵襲的検査後に診断が確定したのは7%(2/29例)で、結果として12例が出生しました。

全妊婦のNIPTを受ける割合は報告がありませんが、妊娠初期スクリーニング検査で異常を指摘されたうちの8割がNIPTを受けているということになり、2015年~2016年のNIPT受検人数は3175人と報告されています。

ミニコラム②|超音波検査について私が思うこと

妊婦検診の超音波所見からあかちゃんの首の後ろのむくみなどを指摘されて、羊水検査などの詳細な検査に進むことを勧められる人もいるでしょう。

そういう意味では妊婦検診そのものが赤ちゃんの異常をスクリーニングして検出し、次の検査につなげて確定診断していくという出生前診断の一部をなしているといえます。

しかし、出生前診断とはそうした”広い”意味ではなく、胎児の先天的な異常があるかどうかを調べる、羊水検査などの遺伝学的検査としてイメージされてきました。

そのため、産婦人科では ”出生前診断” だという意識もなく超音波検査をして「赤ちゃんの首の後ろがむくんでいるのでダウン症候群(21トリソミー)の可能性がある」と言って妊婦さんたちを大混乱させてきました。>

実はこの赤ちゃんの首の後ろのむくみ(NT)計測は、欧米では精度を担保するために、計測するための資格が設けられています。

NT計測も出生前診断に含まれるという確固たる考えからです。

日本ではNT計測が出生前診断であるという概念を産婦人科医たちが欠いているため、これが日常診療に落とし込まれた結果、精度管理がありません。

精度管理をするための資格制度がなく、腕に問題のある産婦人科医たちが妊婦さんたちを混乱させて羊水検査に駆り立てる、という状況がずっと続いています。

大学の遺伝診療部に勤めていると、地域の産婦人科開業医たちが妊婦検診でNTが厚いと指摘してしまい、おろおろした妊婦さんたちが遺伝診療部に予約を取られることがあります(大学病院だと通常は遺伝カウンセリングを受けないと羊水検査が受けられないため)。

しかし、大学の産婦人科で計測したら異常はなく、それでも妊婦さんはとても不安になっているので羊水検査を受けるということがよく繰り返されていました。

今ではNIPTがあり、陽性が出たら羊水検査へすすむという流れができているのでこのようなパターンもなくなりつつあるかもしれません。

 

関連記事

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

仲田洋美(医師)

プロフィール

1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。

著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。

一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。

患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ3匹。

さらに詳しいプロフィールはこちら