出生前診断を受ける割合は増えているのでしょうか?答えは “出生前診断を受ける割合は増えていない” です。理由はもともと出生前診断を受けている妊婦さんたちが100%だからです。

出生前診断を受ける割合|出生前診断を受ける割合は増えているのか?

出生前診断を受ける割合は100%

広義の出生前診断を受ける割合

出生前診断を受ける割合は増えているのでしょうか?答えは 出生前診断を受ける割合自体は増えていない です。理由はもともと出生前診断を受けている妊婦さんたちの割合は100%だからです。
皆さんは、出生前診断と言えば羊水検査やNIPT(新型出生前診断)を思い浮かべるでしょう。
しかし、出生前診断は ”妊娠中に実施される胎児の発育や異常の有無などを調べるすべての検査” を意味します。
通常の妊婦健診で行われる超音波検査も当然出生前診断に含まれるのです。
どうしてかというと、例えば妊娠12週あたりで行う超音波画像診断では、赤ちゃんの首の後ろのむくみをみたりして、ダウン症候群の疑いなどを検出しています。

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こうした超音波検査は必ず妊婦検診に含まれていて、受けない妊婦さんは皆無でしょうから、実は出生前診断を受ける妊婦さんの割合は100%に近いと言えます。
どうして 出生前診断を受ける妊婦さんの割合は100%に ”近い” という表現をしているかというと、中には出産の瞬間まで妊娠に全く気付かない、または様々な事情で妊婦健診を一切受けたことがない妊婦さんもほんの少しはいらっしゃるから出生前診断つまり出生前の妊婦検診を一度も受けていないという場合が若干想定されるからです。

妊婦検診で赤ちゃんの超音波所見から首の後ろのむくみなどを指摘されて、羊水検査などの詳細な検査に進むことを勧められる人もいるでしょう。そういう意味では妊婦検診そのものが赤ちゃんの異常をスクリーニングして検出し、次の検査につなげて確定診断していく、という出生前診断の一部をなしているといえるのです。

しかし、出生前診断とは、というと従来からそうした”広い”意味ではなく、胎児の先天的な異常があるかどうかを調べる羊水検査などの遺伝学的検査がイメージされてきました。このため、産婦人科では ”出生前診断” だという意識もなく超音波検査をして、『赤ちゃんの首の後ろがむくんでいるからダウン症候群の可能性がある』とか言って妊婦さんたちを大混乱させてきました。

ちなみに、
minerva-clinic.or.jp/nipt/nipt_terminology/nt/?preview_id=6125&preview_nonce=a2e9379aff&_thumbnail_id=10615&preview=true#NT-5
でも書きましたが、実はこの赤ちゃんの首の後ろのむくみ(NT)計測は、欧米では質を担保するために計測するための資格がもうけられています。NT計測も出生前診断に含まれるという確固たるお考えからです。

日本ではNT計測が出生前診断であるという概念を産婦人科医たちが欠いているため、これが日常診療に落とし込まれた結果、精度管理がありません。精度管理をするための資格制度がなく、結構腕に問題のある産婦人科医たちが妊婦さんたちを混乱させて羊水検査に駆り立てる、という状況がずっと続いています。大学の遺伝診療部に勤めていると、地域の産婦人科開業医たちが妊婦検診でNTが厚いと指摘してしまい、おろおろした妊婦さんたちが遺伝診療部に予約を取る(大学病院だと普通は遺伝カウンセリングを受けないと羊水検査が受けられないため)、しかし、大学の産婦人科で計測したら全然普通だった、でも妊婦さんはもうチョー不安になっているので やっぱ羊水検査したい って感じで羊水検査に突入する、ってパターンがよく繰り返されていました。
今ではNIPTがあり、NIPT陽性なら羊水検査、という感じでしょうから、こういうパターンもあまりなくなりつつあるかもしれません。

狭義の出生前診断を受ける割合

広義の出生前診断に対し、みなさまが ”出生前診断” という言葉で思い浮かべる 羊水検査、クワトロテストなどの母体血清マーカー、そしてNIPT(新型出生前診断)などは狭義の出生前診断と言えるでしょう。

しかし、上記を見ていただくとわかると思いますが、実は超音波所見なども出生前診断の一部をなしていて、異常を指摘されたら侵襲的・非侵襲的な出生前検査にすすむため、実際のところこれらに垣根はなく、出生前診断を受ける妊婦さんの割合は100%なのです。

海外の出生前診断を受ける割合

出生前診断を受ける割合は、デンマーク90%以上、イギリス60%、オランダ26%、フランス84%となっています。
このデーターは第1三半期初期に受ける日本ではコンバインド検査と呼ばれているものをさしています。
コンバインド検査とは妊娠l1~14週のNTと母体血清マーカーによる検査のことをさします。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4263059/

hal.archives-ouvertes.fr/hal-01493101/document

The choice
of these countries can also be justified by significant differences in screening uptake rates:
61% in England in 2010, 84% in France in the same year, and 26% in the Netherlands in 2009

日本における出生前診断の件数

日本における侵襲的な出生前診断の件数

わが国におけるコンバインド検査の件数が報告されていないため、厚生労働省の資料から羊水検査数の年次推移をみてみましょう。
1998年には1万件くらいだった羊水検査は2014年の20700件をピークに2018年では15000件に減少しています。
これは、非侵襲的なNIPTが2013年に導入されたためと考えられます。
海外でもやはり、NIPTの導入により羊水検査は減少しているようです。

絨毛検査については報告がありません。

日本ではNIPTコンソーシアムが件数を報告していますが、厚生労働省の母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の調査等に関するワーキンググループ(第1回)の資料を見てみると、大体2019年推計で12000件程度です。
NIPTコンソーシアムでは無認可施設がこれと同じ件数を行っていると勝手に推測しているため、彼らの推計を採用すると、日本で行われているNIPTは約24000件となります。

日本における狭義の出生前診断の件数

15000+24000=33000 としてよいでしょう。

日本における狭義の出生前診断を受ける割合

2019年は日本では86万4000人が生まれています。
先ほどの数字から求めると、3.9%の方々が出生前診断を受けたということになります。
したがって、日本における狭義の出生前診断を受ける割合は約4%、つまり25人に一人となります。

NIPTを受ける割合

英国では2015年から2016年の間にNIPTは3175人の妊婦の出生前診断を受けた率が報告がなされています。英国ではいきなりNIPTは自費ですが、妊娠初期のスクリーニング検査は無料で全員受けられます。ダウン症候群リスクが1/150以上と判明した女性934人のうち、695人(74.4%)がNIPTを選択し、166人(17.8%)が侵襲的検査(羊水検査)を選択し、73人(7.8%)がそれ以上の検査を拒否しました。ダウン症候群リスクが1/151から1/1000の間にある女性2241人のうち、1799人(80.3%)がNIPTを選択しました。ダウン症の診断が確定した71例の妊娠のうち、NIPT後に診断が確定したのは13/42例(31%)、直接侵襲的検査後に診断が確定したのは2/29例(7%)で、結果として12例が出生しました。
全妊婦のNIPTを受ける割合は報告がありませんが妊娠初期スクリーニング検査で異常を指摘されたうちの8割がNIPTを受けているということになります。

出生前診断を受ける割合を年齢別に

ミネルバクリニックでは、大体
20代(21歳、22歳、23歳、24歳、25歳、26歳、27歳、28歳、29歳) 5%
30代前半(30歳、31歳、32歳、33歳、34歳) 30%
30代後半(35歳、36歳、37歳、38歳、39歳) 50%
40代(40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、45歳、46歳、47歳、48歳) 15%
となっています。
NIPTコンソーシアムの報告は35歳以上でないと出てこないため、自社データを出しました。
やはり40代はぐっとダウン症候群のリスクが上がりますので、出生前診断を受ける割合も増加する事は容易に想像されます。
30代後半(35歳以降)もこうした傾向がみられますが、より40代では顕著となるでしょう。
20代や30代前半でも全体からすると出生前診断を受ける割合は少ないとは思われますが、ご自分のライフスタイルを変えたくない、障害のあるお子さんを育てる理由がない、妊娠期間が不安でたまらない、という理由でお受けになられる方々が増えています。
出生前診断は未来の扉。一度しか生きられない人生。その大切な人生設計のために行ったほうがよいと考えます。

出生前診断とファイナンシャルプランニング

人生においてリスクヘッジは誰もがするものです。
夜、家に帰るのになるだけ明るい道を歩いて帰るのもリスクヘッジの一つです。
リスクヘッジの手法はたくさんあって、一度もリスクヘッジしたことのない人はいないといっても過言ではないでしょう。
NIPT関連記事|出生前診断の費用とファイナンシャルプランニング
こちらにまとめてみましたが、大学卒の女性が妊娠で離職した場合、生涯年収の損失は2億円です。
ミネルバクリニックにはたくさん外国人の方々も検査を受けに来られ、英語でいろんな海外のNIPTの状況や、出生前診断に対する考え方をお伺いしますが、『駄目ならすぐあきらめて次』という感じで結構ドライです。
それをいいことなのか悪いことなのかは、いろんな意見があるでしょう。
出生前診断は 生命の選択につながる とネガティブなイメージが強調されてきましたが、本当にそうでしょうか?
出生前診断は本当は 家族の未来を創造 するための検査ではないかと感じています。

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この記事の筆者:仲田洋美(医師)

仲田洋美(医師)

プロフィール

1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。

著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。

一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。

患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ3匹。

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