NIPTの全染色体検査でわかること、その必要性とは?

全染色体検査とは

NIPTは母体の採血で赤ちゃんの染色体異常があるかどうか知ることができる出生前検査ですが、NIPTの全染色体検査は、通常の基本検査が21トリソミー18トリソミー13トリソミーを検査するのに対して、細胞の中に含まれる1~22番のすべての常染色体とXY染色体性染色体)をすべて検査する、つまり全部の染色体のトリソミーモノソミーといった数の異常があるかどうか調べることを言います。
ここでは、全染色体検査で気を付けないといけないことと、全染色体検査をすることのメリットをお伝えしましょう。

NIPTの全染色体検査でわかること

NIPTの全染色体検査では、普通のNIPT検査ではわからない染色体番号の染色体のトリソミー、モノソミーといった数の異常(染色体疾患)を知ることができます。染色体は遺伝情報そのものですので、遺伝情報の増減がお子さんに病気をもたらします。
実は、一番多く妊娠されるトリソミーは16番なのです。16番染色体のトリソミーはほとんどが流産死産となりますが、稀にモザイクで生まれる赤ちゃんがいますので、こうした異常を検出できることはメリットとなります。また、第9番染色体のトリソミーも意外と多くて、ミネルバクリニックの患者さんには実際に9番トリソミーを出産なさって2日で死亡した例があります。生まれてからなくなると、たった2日であってもご両親は大変な思いをしますので、そういう「長期生存が見込めない」お子さんを早く見つけることはご夫婦のケアにとって大変有意義ではないかと考えています。9番染色体トリソミー出産経験のある患者さんは、そのときは認定施設でNIPTを受けたため、13トリソミー(パトウ症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)の3つの基本検査しか受けることができなかったのですが、当然、そういう経験をしてお辛かったため、NIPTで全染色体検査をすることを次回妊娠では選びました。その時から「次はミネルバクリニックに行こう」と決めていたそうです。

赤ちゃんと先天異常

下のグラフは2006年の間に、ヨーロッパの11か国の生後1年以内の赤ちゃんの死亡と妊娠20週までの胎児死亡、染色体異常(染色体疾患)による妊娠中絶を集計したデータから、染色体異常(数的異常)の頻度とタイプを分類したもので、症例数は10,323例と大きなものです。大きな症例数を歩めているということは一般的な傾向をこれでつかめるということを意味しています。
これをみると、29%、つまり3割は通常のトリソミー検査(13・18・21)ではわからない染色体異常だということになります。
こうした3割すべてトリソミーなどのを検出可能であることがNIPTの全染色体検査の最大のメリットでしょう。陽性になった場合は基本検査と同じく、確定的検査羊水検査絨毛検査)が必要になります。

出生前の染色体異常の割合

Rare chromosome abnormalities,prevalence and prenatal diagnosis rates from  population-based congenital anomaly

registers in Europe. Eur J Hum Genet.2012 May;20(5):521-6

NIPTの全染色体検査の必要性

NIPTの全染色体検査は、全部の染色体の数の異常が検査できるため、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーしか検査しなかった場合、「後の染色体は大丈夫なのかな?」とやっり不安な思いで過ごす妊婦さんたちもいたのですが、そういうん妊婦さんたちには「陰性は殆ど100%に近い(99.98~99.99%)陰性」というNIPTの全染色体検査は全部の染色体の本数に関して幅広い安心が得られる、という点が人気で必要性があると考えていただいております。
NIPTを10週で受けることはより大きな安心を妊婦さんに与えることが研究報告されています。
関連記事:NIPTのメリット12|10週目のNIPTは妊娠初期の女性を安心させる

NIPTで全染色体検査をすることのデメリット

1.エビデンスに乏しく陽性的中率などのデータがありません

NIPTで全染色体検査をして実際に陽性となっても、どれくらい当たっているのかなどと言ったデータがありません。ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医として全国一多い症例数を陽性後のフォローアップもしておりますので、そうした経験則からご説明いたしておりますが、そういうこともしていないクリニックで陽性になった場合、妊婦さんたちはお困りになるのではないでしょうか?
関連記事:珍しいトリソミー|別の無認可施設でNIPTを受けて陽性、実は偽陽性
こちらには、他施設で実際にまったく説明もない状態で検査を受けてお困りになった方のお話を記載しておりますので、関連記事を是非ご覧ください。
この患者さんがミネルバクリニックに来なければ、お子さんがお生まれになっていないことを考えると、新型出生前診断NIPTが血液検査だけで簡便であるがゆえにいかに危険な検査かということがお分かりいただけると思います。

13・18・21番染色体以外のトリソミーの出生可能性

常染色体のトリソミーは染色体に含まれる遺伝子が多ければ多いほど,また重要な遺伝子が含まれる数が多いほど重症になる傾向にあります.

染色体の番号は基本的には染色体のサイズが大きい方から順番に番号が付けられていますが、21番と22番だけは大きさと番号が逆転しています。
しかし実は染色体のサイズと遺伝子の量・重要性は正確に連動せず,常染色体で一番遺伝子の数が少ないのは一番小さい21番染色体の337個ですが,2番目に少ないのは18番の400個,3番目が13番の496個となっているのです.これに対して,21番と染色体のサイズの近い22番は遺伝子数701個,また,20番は710個となっています.このように,遺伝子数が少ない13・18・21の3種類の染色体は完全なトリソミーでも生存への悪影響が比較的小さく,出生時まで生存できる可能性がある程度あるのですが,これ以外の出生例が稀なのは生存への悪影響が大きすぎるからと考えられています.

1から6という大きい染色体では部分トリソミー除いてモザイクも含めて致死で,1トリソミーに至っては着床できません.

出生可能な常染色体トリソミーものでも,流産・死産で出生前に淘汰されることも多く,一番軽い21トリソミーでも7~8割は出生前に淘汰されるとされています.

1トリソミー        致死(出生報告なし)
2トリソミー        致死(出生報告なし)
3トリソミー        致死(出生報告なし)
4トリソミー        致死(出生報告なし)
5トリソミー        致死(出生報告なし)
6トリソミー        致死(出生報告なし)
7トリソミー        モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)
8トリソミー        ごく稀に出生例あり
9トリソミー        ごく稀に出生例あり
10トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)
11トリソミー      致死(出生報告なし)
12トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)
13トリソミー      パトウ症候群
14トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)
15トリソミー      致死(出生報告なし)
16トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)
17トリソミー      致死(出生報告なし)
18トリソミー      エドワーズ症候群(18トリソミー)
19トリソミー      致死(出生報告なし)
20トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)
21トリソミー      ダウン症候群(21トリソミー)
22トリソミー      ごく稀に出生例あり

従って,NIPTで全染色体をする必要性に乏しいのではないか,ということで世界のガイドラインでは「やらない」ということになっています.
しかし、「稀である」ということと、「必要ない」ということは違うのではないかと、特に上述の第9番染色体トリソミーで生まれたお子さんを生後2日目でなくした患者さんの話を聞いてからは思うようになりました。
2020年7月より、全染色体の数的な異常だけではなく、内部の構造を700万塩基対の大きさでその増減をスキャンできるカリオセブンも追加しました。
また、代表的な微細欠失症候群の検査も可能になっていて、根本的な治療法のないお子さんの染色体異常を幅広く出生前に検査できるようになっています。
やはり皆さん考えるのは、人生に賭けは少ないほうがいい、わかるものならリスクはなるだけ減らしたいということではないでしょうか。
必要性というのは個々のご夫婦が決めることだとわたしは考えています。