NIPTで全染色体検査

keyword: 染色体異常 微細欠失微小欠失) ダウン症候群 新生児 障害 全染色体 NIPT 新型出生前診断 非侵襲的出生前診断

 

赤ちゃんと先天異常

2006年の間に、ヨーロッパの11か国の生後1年以内の赤ちゃん、
妊娠20Wまでの胎児死亡・性染色体異常による
妊娠中絶のデータから、染色体異常の頻度とタイプを分類したものです。
10,323症例のデータをまとめています。
これをみると、39%、つまり4割は通常のトリソミー検査(13・18・21)ではわからない異常だということになります。

出生前の染色体異常の割合

Rare chromosome abnormalities,prevalence and prenatal diagnosis rates from  population-based congenital anomaly

registers in Europe. Eur J Hum Genet.2012 May;20(5):521-6

 

全染色体検査

染色体の異常はなぜ起こるの??

 

まず,染色体の異常がなぜ起こるかというと,細胞分裂の時,生殖細胞(精子卵子)を作るのは通常の分裂とは違い減数分裂と言って,22本の常染色体と1本の性染色体のセットからなる2セットの染色体が1セットずつに分かれるというという特殊な分裂方法を取ります.

このとき,交叉したり分離したりするのですが,それがうまくいかないと疾患を引き起こします.これらは大きく二つに分類されます.

一つは染色体の部分的な異常で,通常,交叉の失敗によって引き起こされることが多いです.部分トリソミー(重複),部分モノソミー欠失),転座などが挙げられます.

二つ目は異数体(数的異常)と呼ばれる,染色体の不足あるいは過剰による異常です.不完全な染色体の分離によって引き起こされることが多いとされています.

通常,染色体は2本で対をなしている(ダイソミーといいます)が,これが1本になるのが「モノソミー」,3本になるのが「トリソミー」です.

染色体にはくびれがあって,そこを境に短腕(p)と長腕(q)にわけられます.例えば5番染色体の片方の短腕が欠失することを5pモノソミーといい,5p-(ごピーマイナス)と表記いたします.

染色体の数や形態の異常を伴わない遺伝子の異常による病気は遺伝子疾患に,原因の明らかでない先天奇形症候群は奇形症候群に分類されます.

 

全染色体検査でわかる常染色トリソミーとは?

トリソミーはほとんどの場合一方的に女性の年齢の高さと正の相関をします.卵子は女性が胎生期から存在し,細胞分裂もせず,生まれ変わったりもしない大変特殊な細胞です.

われわれの細胞は一つ当たり一日5万から50万か所のDNA損傷を受けておりますが,DNA修復酵素があるため,たいていは問題になりません.しかし,DNA修復酵素が100万回に一回程度でエラーを起こします.このため,DNA損傷はどの細胞でも蓄積されていくのですが,通常の細胞は時間経過とともに死んで生まれ変わる為,これが大きく問題になる事はありません.しかし,卵子DNAの損傷が積み重なっていく一方である為,女性の年齢とだけ正の相関をすると言われています.

ある常染色体トリソミーとなると,その染色体にある遺伝子が1.5倍になるため,読み込まれるタンパク量も通常の1.5倍になって様々な影響を及ぼすと考えられます.理論的にはどの常染色体にもトリソミーは起こるのですが,常染色体の完全なトリソミーは13番染色体,18番染色体,21番染色体の3種類以外はごくまれにしか存在しません.この理由は,他の常染色体には遺伝情報が多いため,トリソミーによる変化が致死的となり着床しない,または早期に流産するためとされています.

 

常染色体トリソミー染色体に含まれる遺伝子が多ければ多いほど,また重要な遺伝子が含まれる数が多いほど重症になる傾向にあります.

染色体の番号は基本的には染色体のサイズが大きい方から順番に振られているのですが(21番と22番は大きさと番号が逆転しています),染色体のサイズと遺伝子の量・重要性は正確に連動せず,常染色体で一番遺伝子の数が少ないのは一番小さい21番染色体の337個ですが,2番目に少ないのは18番の400個,3番目が13番の496個となっているのです.これに対して,21番と染色体のサイズの近い22番は遺伝子数701個,また,20番は710個となっています.このように,遺伝子数が少ない13・18・21の3種類の染色体は完全なトリソミーでも生存への悪影響が比較的小さく,出生時まで生存できる可能性がある程度あるのですが,これ以外の出生例が稀なのは生存への悪影響が大きすぎるからと考えられています.

1から6という大きい染色体では部分トリソミー除いてモザイクも含めて致死で,1トリソミーに至っては着床できません.

出生可能な常染色体トリソミーものでも,流産・死産で出生前に淘汰されることも多く,一番軽い21トリソミーでも7~8割は出生前に淘汰されるとされています.

 

 

1トリソミー        致死(出生報告なし)

2トリソミー        致死(出生報告なし)

3トリソミー        致死(出生報告なし)

4トリソミー        致死(出生報告なし)

5トリソミー        致死(出生報告なし)

6トリソミー        致死(出生報告なし)

7トリソミー        モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

8トリソミー        ごく稀に出生例あり

9トリソミー        ごく稀に出生例あり

10トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

11トリソミー      致死(出生報告なし)

12トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

13トリソミー      パトウ症候群

14トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

15トリソミー      致死(出生報告なし)

16トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

17トリソミー      致死(出生報告なし)

18トリソミー      エドワーズ症候群

19トリソミー      致死(出生報告なし)

20トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

21トリソミー      ダウン症候群

22トリソミー      ごく稀に出生例あり

 

 従って,NIPTで全染色体をする必要性に乏しいのではないか,ということで世界のガイドラインでは「やらない」ということになっています.

 しかし,選択肢としてあったほうがいい,というお声も多く頂戴しておりましたことから,今回,当院ではベリナタ社との契約を契機に全染色体検査を選択肢として提示できる体制にすることにしました.

代表的な常染色体トリソミー

Trisomy 21 (Down syndrome)

21番染色体のコピー数が多いことで起こり,ダウン症候群とも呼ばれます.

遺伝子の問題で起こる知的障害としては最も多いのがダウン症です.ダウン症候群の患者さんは,さまざまな程度の知的障害を抱え,平均IQは50です.
また,ダウン症候群の中には先天性心疾患などの臓器障害を抱えるお子さんもいて,外科的または医学的に治療が必要となったりします.
また,なかには視覚障害・聴覚障害が見られることもあり,大きくなってから認知機能障害が認められることもあります.

Trisomy 18 (Edwards syndrome)

18番染色体のコピー数が多いことで起こり,エドワーズ症候群と呼ばれます.
ほとんどが脳・心臓その他に先天的欠損を複数抱えています.子宮内での発育不全も一般的で,多くは流産や死産となります.
生きて生まれても1歳未満で亡くなることが多いです.生存している子供たちは知的障害・発育障害という問題に直面します.

risomy 13 (Patau syndrome)

 
13番目の染色体のコピー数が多いことで起こり,パトウ症候群とも呼ばれます.
ほとんどの子供たちは脳やその他の臓器に先天的欠損を抱えます.多くは流産や死産となり,生きて生まれても1年未満で亡くなることが多いです.