NIPTの全染色体検査でわかること|メリットとデメリット

NIPTの全染色体検査は、通常の基本検査が21トリソミー18トリソミー13トリソミーを検査するのに対して、1~22番のすべての常染色体とXY染色体性染色体)を検査することを言います。
ここでは、全染色体検査で気を付けないといけないことと、全染色体検査をすることのメリットをお伝えしましょう。

NIPTで全染色体検査のメリット1.普通のNIPT検査ではわからない赤ちゃんの異常を知ることができる

実は、一番多く妊娠されるトリソミーは16番なんですが、16番染色体のトリソミーはほとんどが流産死産となります。こうした赤ちゃんを検出できることは大きなメリットです。

赤ちゃんと先天異常

2006年の間に、ヨーロッパの11か国の生後1年以内の赤ちゃん、
妊娠20Wまでの胎児死亡・性染色体異常による
妊娠中絶のデータから、染色体異常の頻度とタイプを分類したものです。
10,323症例のデータをまとめています。
これをみると、29%、つまり3割は通常のトリソミー検査(13・18・21)ではわからない染色体異常だということになります。
こうした4割を検出可能であることがNIPTの全染色体検査の最大のメリットでしょう。

出生前の染色体異常の割合

Rare chromosome abnormalities,prevalence and prenatal diagnosis rates from  population-based congenital anomaly

registers in Europe. Eur J Hum Genet.2012 May;20(5):521-6

NIPTで全染色体検査のメリット2.全部を検査することでより幅広い安心が得られる

NIPTを10週で受けることはより大きな安心を妊婦さんに与えることが研究報告されています。
関連記事:NIPTのメリット12|10週目のNIPTは妊娠初期の女性を安心させる

基本検査しかしなかった場合は、「あとの染色体はどうなんだろう???」と気になりますが、NIPTの場合、陰性は99.9%陰性なので高い精度で「異状なし」となり、より安心できるという患者さんたちのお声を頂いております。

NIPTで全染色体検査のデメリット1.エビデンスに乏しく陽性的中率などのデータがありません

NIPTで全染色体検査をして実際に陽性となっても、どれくらい当たっているのかなどと言ったデータがありません。ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医として全国一多い症例数を陽性後のフォローアップもしておりますので、そうした経験則からご説明いたしておりますが、そういうこともしていないクリニックで陽性になった場合、妊婦さんたちはお困りになるのではないでしょうか?

NIPTで全染色体検査のデメリット2.きちんと検査内容を説明できる専門家がほとんどいない

関連記事:珍しいトリソミー|別の無認可施設でNIPTを受けて陽性、実は偽陽性

実際にまったく説明もない状態で検査を受けてお困りになった方のお話を記載しておりますので、関連記事を是非ご覧ください。
この患者さんがミネルバクリニックに来なければ、お子さんがお生まれになっていないことを考えると、新型出生前診断NIPTが血液検査だけで簡便であるがゆえにいかに危険な検査かということがお分かりいただけると思います。

 

NIPTの全染色体検査でわかること

常染色体のトリソミーは染色体に含まれる遺伝子が多ければ多いほど,また重要な遺伝子が含まれる数が多いほど重症になる傾向にあります.

染色体の番号は基本的には染色体のサイズが大きい方から順番に振られているのですが(21番と22番は大きさと番号が逆転しています),染色体のサイズと遺伝子の量・重要性は正確に連動せず,常染色体で一番遺伝子の数が少ないのは一番小さい21番染色体の337個ですが,2番目に少ないのは18番の400個,3番目が13番の496個となっているのです.これに対して,21番と染色体のサイズの近い22番は遺伝子数701個,また,20番は710個となっています.このように,遺伝子数が少ない13・18・21の3種類の染色体は完全なトリソミーでも生存への悪影響が比較的小さく,出生時まで生存できる可能性がある程度あるのですが,これ以外の出生例が稀なのは生存への悪影響が大きすぎるからと考えられています.

1から6という大きい染色体では部分トリソミー除いてモザイクも含めて致死で,1トリソミーに至っては着床できません.

出生可能な常染色体トリソミーものでも,流産・死産で出生前に淘汰されることも多く,一番軽い21トリソミーでも7~8割は出生前に淘汰されるとされています.

1トリソミー        致死(出生報告なし)

2トリソミー        致死(出生報告なし)

3トリソミー        致死(出生報告なし)

4トリソミー        致死(出生報告なし)

5トリソミー        致死(出生報告なし)

6トリソミー        致死(出生報告なし)

7トリソミー        モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

8トリソミー        ごく稀に出生例あり

9トリソミー        ごく稀に出生例あり

10トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

11トリソミー      致死(出生報告なし)

12トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

13トリソミー      パトウ症候群

14トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

15トリソミー      致死(出生報告なし)

16トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

17トリソミー      致死(出生報告なし)

18トリソミー      エドワーズ症候群(18トリソミー)

19トリソミー      致死(出生報告なし)

20トリソミー      モザイクでのみごく稀に出生例あり(完全型は致死)

21トリソミー      ダウン症候群(21トリソミー)

22トリソミー      ごく稀に出生例あり

 

 従って,NIPTで全染色体をする必要性に乏しいのではないか,ということで世界のガイドラインでは「やらない」ということになっています.

 しかし,選択肢としてあったほうがいい,というお声も多く頂戴しておりましたことから,当院ではベリナタ社との契約を契機に全染色体検査を選択肢として2018年8月より提示できる体制にすることにしました.
そして、2020年7月より、別の検査会社と契約し、全染色体を700万塩基対の大きさでその増減をスキャンできるカリオセブンも追加しました。

代表的な常染色体トリソミー

Trisomy 21 (Down syndrome)

21番染色体のコピー数が多いことで起こり,ダウン症候群(21トリソミー)とも呼ばれます.

遺伝子の問題で起こる知的障害としては最も多いのがダウン症(21トリソミー)です.ダウン症候群(21トリソミー)の患者さんは,さまざまな程度の知的障害を抱え,平均IQは50です.
また,ダウン症候群(21トリソミー)の中には先天性心疾患などの臓器障害を抱えるお子さんもいて,外科的または医学的に治療が必要となったりします.
また,なかには視覚障害・聴覚障害が見られることもあり,大きくなってから認知機能障害が認められることもあります.

Trisomy 18 (Edwards syndrome)

18番染色体のコピー数が多いことで起こり,エドワーズ症候群(18トリソミー)と呼ばれます.
ほとんどが脳・心臓その他に先天的欠損を複数抱えています.子宮内での発育不全も一般的で,多くは流産や死産となります.
生きて生まれても1歳未満で亡くなることが多いです.生存している子供たちは知的障害・発育障害という問題に直面します.

risomy 13 (Patau syndrome)

 
13番目の染色体のコピー数が多いことで起こり,パトウ症候群とも呼ばれます.
ほとんどの子供たちは脳やその他の臓器に先天的欠損を抱えます.多くは流産や死産となり,生きて生まれても1年未満で亡くなることが多いです.