目次
胎児ドック(胎児スクリーニング)は受けるべき?
受ける人の割合や費用を臨床遺伝専門医が解説
📍 クイックナビゲーション
Q. 胎児ドック(胎児スクリーニング)は受けるべきですか?
A. 「形態異常を知りたい」「リスクなしで赤ちゃんの状態を確認したい」方には受けることをお勧めします。
胎児ドックは超音波機器を用いて胎児を総合的に診断する非確定的検査です。流産リスクがなく、当日に結果がわかります。NIPTと併用することで染色体と形態の両面からチェック可能です。
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胎児ドックを受けるべき人 → 形態異常を知りたい・高齢出産・過去に異常があった方 -
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受ける人の割合 → 全妊婦の7.2%、高齢妊婦の25.1%(約4人に1人) -
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中期胎児ドック → 妊娠18~20週が最も推奨される時期(臓器形成完了後) -
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費用相場 → 1回あたり2~5万円(自費診療・保険適用外) -
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NIPTとの併用 → 染色体異常+形態異常の両面をカバーし検出率95%以上
「胎児ドックを受けるべきか、それとも受けなくてもいいのか」
出生前診断を検討する際、多くの方がこの選択に悩みます。NIPTだけで十分なのか、超音波によるスクリーニングも併用すべきなのか。
今回は、臨床遺伝専門医の立場から、胎児ドックを受けるべきか迷った時の判断基準、受ける人の割合、中期胎児ドックの重要性、そして検査のメリット・デメリットについて徹底解説します。
1. 胎児ドック(胎児スクリーニング)とは
【結論】 胎児ドックとは、高性能な超音波機器を用いて胎児の疾患の有無を調べる非確定的検査です。通常の妊婦健診とは異なり、専門医が30分以上かけて全身を精密にチェックします。
胎児ドックは「胎児初期精密検査」「胎児形態異常スクリーニング」「胎児スクリーニング」「ベビードック」などとも呼ばれます。母体や胎児への侵襲(ダメージ)がない安全な検査ですが、確定診断のためには羊水検査などが必要です。
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検査方法:高性能超音波(エコー)による非侵襲的検査
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検査時間:30分~1時間程度(通常の妊婦健診は5~10分)
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結果:当日にわかる(検査中に医師から説明)
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リスク:流産リスクなし(完全に安全な検査)
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検査位置づけ:非確定的検査(スクリーニング)
胎児ドックと通常の妊婦健診エコーの違い
「普通の妊婦健診でもエコーをするのに、なぜ胎児ドックが必要なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。両者には大きな違いがあります。
| 項目 | 通常の妊婦健診エコー | 胎児ドック |
|---|---|---|
| 検査時間 | 5~10分 | 30分~1時間 |
| 主な目的 | 発育・生存の確認 | 疾患の有無を詳細にチェック |
| 使用機器 | 一般的な超音波機器 | 高性能超音波機器 |
| チェック項目 | 心拍、大きさ、羊水量 | 脳・心臓・内臓・手足など全身 |
| 費用 | 保険適用(公費補助あり) | 自費(2~5万円) |
2. 胎児ドックは受けるべきか?判断基準を専門医が解説
【結論】 胎児ドックを受けるべきかは個々の状況や価値観によりますが、「形態異常を知りたい」「NIPTではわからない疾患もチェックしたい」と考える方には強く推奨されます。
「胎児ドックを受けるべきか」迷っている方のために、受けることをお勧めする方と受けなくても良い方の特徴を整理しました。
✅ 胎児ドックを受けるべき方
- ✓
形態異常(身体の構造)を知りたい方
- ✓
高齢出産(35歳以上)の方
- ✓
夫婦のいずれかが染色体異常の保因者
- ✓
前回の妊娠で赤ちゃんに異常があった
- ✓
NIPTと併用してより包括的に検査したい
- ✓
病気があるなら生まれる前に準備したい
△ 受けなくても良い方
- −
どんな結果でも妊娠を継続すると決めている
- −
検査結果を知ることで不安が増す方
- −
費用面で負担が大きい方
- −
かかりつけ医との信頼関係で十分と感じる方
以下のチェック項目に3つ以上当てはまる方は、胎児ドックを受けることをお勧めします。
- □ NIPTでは分からない「形態異常」を知りたい
- □ 高齢出産(35歳以上)である
- □ 夫婦のいずれかが染色体異常の保因者である
- □ 前回の妊娠・出産で赤ちゃんに異常が見つかった
- □ 家族に遺伝性疾患の方がいる
- □ 赤ちゃんに病気があるなら生まれる前に準備をしてあげたい
- □ 流産リスクのない検査で安心したい
🩺 院長コラム【「受けるべきか」より「知った後どうするか」】
「胎児ドックを受けるべきですか?」というご質問をよくいただきます。私の答えは「受けるかどうかより、結果が出た後にどう行動するかを考えておくことが大切」です。
胎児ドックは非確定的検査です。「異常の可能性がある」と言われた場合、確定検査(羊水検査など)に進むのか、そのまま経過観察するのか。事前にご夫婦で話し合っておくことで、いざという時に落ち着いて判断できます。
当院では検査前の遺伝カウンセリングで、様々なシナリオについて一緒に考える時間を設けています。
3. 胎児ドックを受ける人の割合
【結論】 全体の妊婦さんの約7.2%、高齢妊婦さんでは約25.1%(約4人に1人)が出生前診断を受けています。NIPTの普及とともに、流産リスクのないスクリーニング検査を選択する割合は増加傾向にあります。
「みんな受けているの?」と気になる方も多いでしょう。佐々木らの報告(日本周産期・新生児医学会雑誌 2019年)による出生前診断受診数(延べ人数)のデータをご紹介します。
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全妊婦における出生前診断受診率:7.2%
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高齢妊婦(35歳以上)における受診率:25.1%(約4人に1人)
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傾向:年々増加傾向(NIPT普及により加速)
年齢別・検査別の受診傾向
| 年齢層 | 出生前診断受診率 | 主に選ばれる検査 |
|---|---|---|
| 20代 | 約3~5% | 胎児ドック、コンバインド検査 |
| 30代前半 | 約5~10% | 胎児ドック、NIPT |
| 35歳以上 | 約25% | NIPT+胎児ドック併用が増加 |
| 40歳以上 | 約30~40% | NIPT+胎児ドック、羊水検査 |
以前は確定的検査である羊水検査が増加傾向にありましたが、2013年のNIPT導入以降、より安全な非確定的検査(NIPTや胎児ドック)を選ぶ方が増えています。特にNIPTと胎児ドックを併用することで、染色体異常と形態異常の両面からチェックできるため、この組み合わせを選ぶ方が増加しています。
胎児ドックを受けるべきか迷っていませんか?
ネットで調べるほど不安になることも。
臨床遺伝専門医と直接お話しすることで、正確な情報と安心を得られます。
※オンライン診療も対応可能です
4. 中期胎児ドック|最も重要な検査時期
【結論】 妊娠中期(18~20週)の胎児ドックが最も推奨される時期です。この時期は臓器の形成が完了し、羊水量も適量なため、全身の形態を最も詳しく観察できます。
胎児ドックは妊娠週数によって3つの時期に分けられます。それぞれの時期でわかることが異なりますが、特に中期胎児ドック(胎児スクリーニング中期)は最も多くの情報を得られる重要な検査です。
-
①
臓器形成が完了:心臓・脳・肺・消化器など全身の構造を詳細に観察可能
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②
羊水量が適量:超音波の伝わりが良く、鮮明な画像が得られる
-
③
胎児の大きさが最適:小さすぎず大きすぎず、全体像を把握しやすい
-
④
対応可能な時間的余裕:異常が見つかった場合の選択肢が残されている
時期別:胎児ドックでわかること
| 検査時期 | 妊娠週数 | 主なチェック項目 | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| 初期胎児ドック | 10~13週 | NT(首の後ろのむくみ)、鼻骨の有無、心臓の血流 → 染色体異常の可能性をスクリーニング |
○ |
| 中期胎児ドック ※最も推奨 |
18~20週 | 脳、心臓、肺、消化器、腎臓、手足の指、口唇口蓋裂など全身 → 形態異常を最も詳しくチェック可能 |
◎ |
| 後期胎児ドック | 28~31週 | 発育の遅れ、羊水量、胎盤の位置、晩期に現れる異常 → 分娩に向けた最終確認 |
○ |
中期胎児ドックでわかる主な疾患
❤️ 心臓の異常
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心室中隔欠損
- •
心房中隔欠損
- •
ファロー四徴症
- •
大血管転位
🧠 脳・神経系の異常
- •
無脳症
- •
水頭症
- •
二分脊椎
- •
脳室拡大
🫁 消化器・腎臓の異常
- •
十二指腸閉鎖
- •
腹壁破裂
- •
腎無形成
- •
水腎症
👶 顔・四肢の異常
- •
口唇口蓋裂
- •
四肢短縮
- •
多指症・合指症
- •
内反足
5. 胎児ドックの費用相場|時期別の目安
【結論】 胎児ドックの費用は1回あたり約2~5万円が相場です。保険適用外(自費診療)となります。中期胎児スクリーニングの費用は特に注目される検査で、3~5万円程度が目安です。
時期別の費用目安
| 検査時期 | 妊娠週数 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 初期胎児ドック | 10~13週 | 2~4万円 | NT計測、染色体異常スクリーニング |
| 中期胎児ドック | 18~20週 | 3~5万円 | 最も詳細な検査、全身チェック |
| 後期胎児ドック | 28~31週 | 2~4万円 | 発育確認、分娩前の最終チェック |
| 3回セット | 初期~後期 | 8~12万円 | セット割引がある施設も |
他の出生前診断との費用比較
| 検査名 | 費用相場 | 検査の種類 | 流産リスク |
|---|---|---|---|
| 胎児ドック | 2~5万円 | 非確定的検査 | なし |
| NIPT | 10~20万円 | 非確定的検査 | なし |
| コンバインド検査 | 2~4万円 | 非確定的検査 | なし |
| 羊水検査 | 10~20万円 | 確定的検査 | 約0.1~0.3% |
| 絨毛検査 | 10~20万円 | 確定的検査 | 約1% |
⚠️ 注意:胎児ドックで陽性となった場合、確定診断のために羊水検査(約10~20万円)が必要になる場合があります。検査前に総費用も含めて検討することをお勧めします。
6. NIPTと胎児ドック併用の意義
【結論】 「NIPTを受けたから胎児ドックは不要?」と聞かれることがありますが、答えは「併用がベスト」です。NIPTは「染色体」、胎児ドックは「形態」を見る検査であり、お互いの弱点を補完できます。
研究によると、NIPTと詳細な超音波検査を併用することで、先天異常の総合的な検出率が95%以上に向上したという報告もあります(Syngelaki et al., 2019)。
🧬 NIPT(新型出生前診断)
- ◎
染色体異常の検出精度が非常に高い(99%以上)
- ◎
妊娠10週から早期にわかる
- ◎
ダウン症・18トリソミー・13トリソミーなど
- ×
形態異常(心臓の形など)はわからない
🔍 胎児ドック
- ◎
形態異常(身体の構造)が詳しくわかる
- ◎
染色体異常のない胎児の3%に見つかる構造異常を発見可能
- ◎
当日に結果がわかる
- ×
染色体異常の検出精度はNIPTより劣る(約70%)
💡 併用がベストな理由
NIPTで「染色体正常」と判定されても、形態異常がある可能性は残ります。実際、染色体異常のない赤ちゃんの約3%に何らかの形態異常が見られます。逆に、胎児ドックだけでは染色体異常を見逃す可能性があります。両方を組み合わせることで、より包括的なスクリーニングが可能になります。
7. 胎児ドックのメリット・デメリット
【結論】 胎児ドックの最大のメリットは「流産リスクがなく、早期に詳細な状態がわかる」こと。デメリットは「費用がかかること」や「確定診断ではないこと」です。
👍 メリット
- ✓
流産リスクがない:お腹の上からのエコー検査で完全に安全
- ✓
早期発見・早期対応:病気が分かれば分娩施設の変更など準備が可能
- ✓
当日に結果がわかる:検査中に医師から説明を受けられる
- ✓
形態異常を発見可能:NIPTではわからない構造の異常を確認
- ✓
赤ちゃんの様子が見える:3D/4Dエコーで表情や動きも確認
👎 デメリット
- ×
確定診断ではない:異常の「可能性」しかわからない
- ×
精度に限界がある:NIPTに比べるとダウン症の検出率は低い(約70%)
- ×
費用負担:全額自己負担(2~5万円/回)
- ×
胎児の位置による制限:見えにくい場合がある
- ×
心理的負担:異常の可能性を知ることへの不安
8. ミネルバクリニックのサポート体制
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医の専門性を活かした診療体制を整えています。胎児ドックの結果を踏まえた遺伝カウンセリングから、必要に応じた確定検査まで一貫してサポートいたします。
🏥 院内で確定検査まで対応
2025年6月より産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能に。転院の必要がなく、心理的負担を軽減できます。
💰 互助会で費用面も安心
互助会(8,000円)に加入いただくと、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を全額カバー。上限なしで安心です。
よくある質問(FAQ)
🏥 一人で悩まないでください
胎児ドックを受けるべきかどうか迷っていること、検査結果について心配なこと、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。
参考文献
- [1] Audibert F, et al. No. 348-Joint SOGC-CCMG Guideline: Update on Prenatal Screening for Fetal Aneuploidy, Fetal Anomalies, and Adverse Pregnancy Outcomes. J Obstet Gynaecol Can. 2017;39(9):805-817. [PubMed]
- [2] Syngelaki A, et al. Diagnosis of fetal non-chromosomal abnormalities on routine ultrasound examination at 11-13 weeks’ gestation. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):468-476. [PubMed]
- [3] International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology (ISUOG). ISUOG Practice Guidelines: ultrasound assessment of fetal biometry and growth. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;53(6):715-723. [ISUOG]
- [4] American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). Practice Bulletin No. 226: Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [ACOG]
- [5] Salomon LJ, et al. ISUOG Practice Guidelines: performance of first-trimester fetal ultrasound scan. Ultrasound Obstet Gynecol. 2013;41(1):102-113. [PubMed]
- [6] 佐々木愛子 他. 日本における出生前遺伝学的検査の動向:1998-2016年の集計結果報告. 日本周産期・新生児医学会雑誌. 2019;55(1):201-207.
- [7] 日本産科婦人科学会「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」[日本産科婦人科学会]
- [8] Gil MM, et al. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for fetal aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017;50(3):302-314. [PubMed]


