目次
- 1 TAM(一過性骨髄異常増殖症)とは?ダウン症と白血病の関係をNIPT・出生前診断の専門医が解説
TAM(一過性骨髄異常増殖症)とは?
ダウン症と白血病の関係をNIPT・出生前診断の専門医が解説
Q. TAM(一過性骨髄異常増殖症)とはどんな病気ですか?
A. ダウン症新生児の5~10%に発症する前白血病状態です。
TAMはダウン症候群(21トリソミー)に特異的な血液疾患で、血液中に異常な芽球が過剰に増加します。約80%は自然治癒しますが、約20%が後に白血病(ML-DS)へと進展するリスクがあります。
-
➤
TAMの定義 → ダウン症・21トリソミーモザイク症に特異的な前白血病状態 -
➤
発症メカニズム → 21トリソミー+GATA1遺伝子変異の組み合わせで発症 -
➤
予後 → 約80%は自然治癒、約20%が白血病に進展(治療成績は良好) -
➤
ミネルバクリニックの強み → 臨床遺伝専門医による一貫したサポート体制と高精度な検査技術
👩⚕️ 院長コラム|不安を抱えている方へ
「ダウン症の子どもは白血病になりやすい」と聞いて、不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。確かにダウン症児は白血病リスクが高いのは事実ですが、「リスクが高い」という言葉だけが一人歩きして、必要以上の不安を抱えてしまう方も少なくありません。TAMについて正しく理解し、適切な医学的管理を受けることで、多くのお子さんが健康に成長されています。この記事では、TAMの全体像を専門医の立場からお伝えします。
1. TAM(一過性骨髄異常増殖症)とは
【結論】 TAM(一過性骨髄異常増殖症)は、ダウン症(21トリソミー)または21トリソミーモザイク症の新生児期にのみ見られる前白血病状態です。血液中に異常な芽球が増加しますが、約80%は自然治癒する「一過性」の疾患です。
「TAMと診断されるかもしれない」「ダウン症の子どもの白血病リスクが心配」そんな不安を抱えてこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。まずは深呼吸をして、一緒にこの疾患について理解を深めていきましょう。
TAM(Transient Abnormal Myelopoiesis:一過性骨髄異常増殖症)は、以前は「一過性白血病(transient leukemia)」や「一過性骨髄増殖性疾患(TMD)」とも呼ばれていました。白血病と非常に似た所見を示しますが、多くの場合は「一過性」で自然に改善することが大きな特徴です。
📚 医学用語解説|芽球(がきゅう)とは?
芽球とは、血液細胞の未熟な前駆細胞のことです。通常は骨髄内に存在し、成熟して赤血球・白血球・血小板などになります。TAMでは、これらの芽球が異常に増殖し、末梢血中に出現します。血液検査では芽球は白血球としてカウントされるため、白血球数の増加として表れます。
-
•
正式名称:Transient Abnormal Myelopoiesis(一過性骨髄異常増殖症)
-
•
発症頻度:ダウン症新生児の約5~10%に発症
-
•
特異性:ダウン症・21トリソミーモザイク症に特異的(それ以外では発症しない)
-
•
発症時期:新生児期(生後3か月以内)
-
•
日本での推定患者数:年間約100人程度
TAMの2つの分類
興味深いことに、2019年にBlood誌に発表された前向き研究では、ダウン症新生児の98%に循環芽球(1〜77%の範囲)が検出されたと報告されています。また、約29%にGATA1遺伝子変異が検出され、臨床症状がなくても「無症候性TAM」として白血病リスクがあることが明らかになっています。
| TAMの分類 | 特徴 | 白血病進展リスク |
|---|---|---|
| 臨床的TAM | 白血球増加、肝脾腫、皮膚発疹などの症状を伴う | 約20% |
| 無症候性TAM | 症状はないがGATA1遺伝子変異を持つ | リスクあり(研究継続中) |
⚠️ TAMの重要ポイント
- •
約80%は自然治癒する
- •
約20%は重篤な合併症で早期死亡のリスク
- •
自然治癒後も約20%が後に白血病(ML-DS)に進展
2. TAMの発症メカニズム|GATA1遺伝子変異の役割
【結論】 TAMの発症には2つの遺伝的要因が必要です。①21番染色体トリソミー(ダウン症)と②GATA1遺伝子の体細胞変異の組み合わせで発症します。親御さんの行動や遺伝とは無関係で、胎児期に偶発的に起こります。
「私のせいでこうなったのでは」と自分を責めてしまう方もいらっしゃいますが、決してそうではありません。TAMは胎児期に偶発的に起こる遺伝子変異であり、親御さんに責任はないのです。
TAM発症に必要な2つの遺伝的要因
① 21番染色体トリソミー
ダウン症の原因となる21番染色体が1本余分にある状態。造血幹細胞の増殖・分化に関わる遺伝子(RUNX1、ERG、ETS2など)の発現量が増加し、巨核球系細胞の異常増殖が促進されます。
② GATA1遺伝子の体細胞変異
GATA1は赤血球や巨核球(血小板の前駆細胞)の発生・分化を制御する転写因子。TAM患者ではN末端側に変異が生じ、短縮型タンパク質(GATA1s)が産生されます。
📚 医学用語解説|体細胞変異とは?
体細胞変異(ソマチック変異)とは、受精後に体の細胞で後天的に生じる遺伝子変異のことです。親から子へ遺伝する生殖細胞変異とは異なり、特定の細胞集団にのみ存在します。TAMのGATA1変異は胎児期に偶発的に生じるため、次のお子さんに遺伝することはありません。
胎児肝臓造血とTAMの起源
TAMの発症メカニズムで重要なのは、この疾患が胎児肝臓の造血幹細胞に起源するという点です。胎児期の造血は主に肝臓で行われており、この環境下でGATA1遺伝子に後天的な変異が生じます。
-
①
胎児期の肝臓で造血が行われる
-
②
造血幹細胞にGATA1遺伝子の体細胞変異が生じる
-
③
21トリソミーの環境下でTAM芽球が異常増殖
-
④
出生後、骨髄造血に移行すると多くは自然消失
💡 TAMが自然治癒する理由
TAM芽球は胎児肝臓の微小環境で増殖を支持されています。出生後、造血の主座が肝臓から骨髄へ移行すると、これらの芽球は増殖に適した環境を失い、多くの場合は自然に消失します。これがTAMが「一過性」である理由です。
3. TAMの症状と診断基準
【結論】 TAMの症状は無症状から重症まで個人差が大きいのが特徴です。主な症状は白血球増加、肝脾腫、皮膚症状、黄疸、体腔液貯留などですが、約10~38%は無症状で血液検査異常のみで発見されます。
TAMの症状は個人差が大きく、すべてのお子さんに全ての症状が出るわけではありません。無症状の場合から生命を脅かす重症例まで様々です。
TAMの主な症状
血液所見
- •
白血球増加(通常28,000~40,000/μL)
- •
約1/6で100,000/μL以上の高度増加
- •
末梢血中に芽球の出現
臓器症状
- •
肝腫大(50%以上の症例)
- •
脾腫大
- •
黄疸(13~63%)
皮膚・体腔液
- •
紫斑や水疱膿疱性発疹(約5%)
- •
腹水(8~21%)
- •
胸水・心嚢液(10~23%)
TAMの診断方法
TAMの診断は、臨床所見と血液検査、遺伝学的検査によって行われます。ダウン症の新生児で末梢血中に芽球増加が認められた場合、まずTAMが強く疑われます。
| 検査項目 | 目的と特徴 |
|---|---|
| 血液塗抹標本検査 | 芽球の存在と形態を確認。TAM芽球は巨核芽球系の特徴を示す。 |
| 全血球計算(CBC) | 白血球数、血小板数などを評価。TAM患者の20~30%で白血球数10万/μL以上。 |
| フローサイトメトリー | 芽球の表面マーカーを解析。TAM芽球はCD41、CD61陽性など巨核芽球系マーカーを発現。 |
| GATA1遺伝子変異検査 | 診断確定に有用。TAM芽球にはほぼ全例でGATA1変異が検出される。 |
TAMの診断には骨髄検査は通常必要ありません。TAMは胎児肝臓造血に由来するため、末梢血中の芽球割合が骨髄よりも高いことが特徴的です。
診断に必要な3要素:
-
①
ダウン症(全身または体細胞モザイク)の確認
-
②
末梢血中芽球の確認
-
③
GATA1変異の検出
TAMの診断基準の違い
TAMの診断基準は研究グループによって若干異なります。
-
•
小児腫瘍グループ(COG):生後90日未満のダウン症児の血液・臓器内での非赤芽球系芽球の存在 -
•
BFM研究グループ:生後3か月以内の乳児の末梢血または骨髄中に5%以上の骨髄芽球 -
•
オックスフォード研究:10%以上の芽球をTAM診断の閾値とし、症状のないGATA1変異陽性例を「無症候性TAM」と分類 -
•
世界保健機関(WHO):特定の芽球割合は指定せず
4. TAMの治療法|リスク層別化に基づくアプローチ
【結論】 TAMの治療は早期死亡リスクに基づいて決定されます。高リスク患者には低用量シタラビン療法が推奨され、低リスク患者は経過観察のみで良好な転帰が得られます。
すべてのTAM患者に治療が必要なわけではありません。リスク評価に基づいた適切な治療方針の選択が重要です。
リスク層別化による治療方針
| リスク群 | 診断時の主な所見 | 症例の割合 | 生存率(概算) |
|---|---|---|---|
| 低リスク | 肝腫大なし・生命に関わる症状なし | 約38% | 92% ± 8% |
| 中リスク | 肝腫大あり(重篤な症状はなし) | 約40% | 77% ± 12% |
| 高リスク | 肝腫大と生命に関わる重篤な症状 | 約21% | 51% ± 19% |
高リスクTAMの治療:低用量シタラビン療法
高リスクTAM(早期死亡リスクが高い患者)には、低用量シタラビン治療が推奨されています。交換輸血、白血球除去療法、支持療法のみと比較して、低用量シタラビンは高い有効性と生存率の改善を示しています。
📚 医学用語解説|シタラビンとは?
シタラビン(Ara-C)は、白血病治療に用いられる抗がん剤の一種です。DNA合成を阻害することで、異常に増殖する芽球の増殖を抑えます。TAMでは通常の白血病治療よりもはるかに少ない用量で効果を発揮します。
投与法:シタラビン 0.4〜1.5 mg/kg/日を1日1〜2回、4〜12日間投与。または皮下シタラビン 10 mg/m²/回を12時間ごと(0.33 mg/kg/回相当)。
モニタリング:治療中は血球数が回復するまで入院管理が推奨されます。
副作用:低用量にもかかわらず、ダウン症児の約1/3で重度の好中球減少症、約1/4で重度の血小板減少症が生じることがあります。
TMD Prevention 2007研究では、高リスク特徴を持つ43人の患者に低用量シタラビン(1.5 mg/kg/日 × 7日間)を投与したところ、早期死亡率が歴史的対照群の33%から12%へと大幅に減少したことが報告されています。
低リスクTAMの管理:経過観察
低リスクTAM(早期死亡の高リスク特徴がない患者)は優れた転帰を示し、治療は不要で経過観察のみが推奨されます。
📊 COG A2971研究の結果
低リスク特徴を持つ108人の小児のうち106人が中央値36日(範囲:2~126日)で自然に芽球が消失しました。未治療小児の3年全生存率は84%と良好でした。
⚠️ TAM寛解後の「予防的治療」について:TAM寛解後に白血病発症予防を目的とした化学療法が試みられましたが、その後のML-DS発症率を低下させる効果は認められませんでした。大規模研究では、TAM寛解後のシタラビン追加投与群と無治療観察群でML-DS発症率に差がなく(19% vs 22%、P=0.88)、予防的介入の有効性は否定されています。
5. ダウン症と白血病の関係|TAMからML-DSへの進展
【結論】 ダウン症児は一般集団と比較して白血病リスクが約10~20倍高く、特に急性巨核芽球性白血病(AMKL)のリスクは約500倍です。TAMが自然治癒した後も約20%が4歳までにML-DSを発症しますが、治療成績は良好です。
ダウン症児における白血病リスク
ダウン症児は一般集団と比較して白血病の発症リスクが約10~20倍高いことが知られています。特に急性巨核芽球性白血病(AMKL)の発症リスクは約500倍と極めて高く、これがML-DS(ダウン症関連骨髄性白血病)と呼ばれています。
📚 医学用語解説|ML-DSとは?
ML-DS(Myeloid Leukemia associated with Down Syndrome)は、ダウン症関連骨髄性白血病の略称です。TAMを経験したダウン症児の約20%が発症し、通常は4歳までに発症します。骨髄異形成症候群(MDS)の段階を経てAMKL(急性巨核芽球性白血病)へと進展することが多いです。
ML-DS発症の三段階モデル
TAMからML-DSへの進展機序として、「三段階モデル」が提唱されています。
-
第1段階
胎児期における21トリソミーによる造血攪乱(RUNX1、ERG等の過剰発現)
-
第2段階
GATA1変異クローンの出現 → TAM発症
-
第3段階
追加のドライバー変異の獲得(STAG2、RAD21、EZH2、EP300等)→ ML-DS発症
ML-DS発症のリスク因子
TAM患者がML-DSに進展するリスクを予測する因子として、以下が報告されています。
微小残存病変(MRD)の存在
TAM診断から3か月後にMRDが検出される小児では、ML-DS発症率が45~46% vs 13~16%と高い。
追加の染色体異常
TAM芽球中に21トリソミー以外の染色体異常(特に8トリソミーなど)がある場合、ML-DS進展リスクが上昇。
GATA1変異の特性
GATA1s発現レベルが低い変異タイプを持つ患者は、ML-DS進行リスクが高い(11人中10人がGATA1s低発現グループ)。
ML-DSの良好な治療成績
ダウン症児のML-DSは、化学療法に対する感受性が非常に高いことが大きな特徴です。通常の小児AMLでは予後不良とされる巨核芽球性白血病ですが、ML-DSに限っては治療成績が良好です。
適切な化学療法により、ML-DSの3年全生存率は約80%に達します。これは、ダウン症児の細胞がシタラビンなどの抗がん剤に対して高い感受性を持つこと、および減量した化学療法でも十分な効果が得られることに起因します。日本でも減量プロトコルで80%以上の治癒率が報告されています。
👩⚕️ 院長コラム|白血病リスクについて正しく理解してほしいこと
「ダウン症の子どもは白血病になりやすい」という情報だけを聞くと、大きな不安を感じる方も多いでしょう。しかし、知っていただきたいのは以下の3点です。
① TAMの約80%は自然治癒します。
② 白血病(ML-DS)に進展しても、約80%以上の治癒率が期待できます。
③ 定期的なフォローアップで早期発見・早期治療が可能です。
正確な情報を知ることで、漠然とした不安が具体的な対策へと変わります。
お子さんの白血病リスクが心配ですか?
個別の状況やリスクについては、記事を読むよりも
臨床遺伝専門医と直接お話しするのが最も確実な解決策です。
※オンライン診療も対応可能です
6. TAMの予後と長期フォローアップ
【結論】 TAMを発症した新生児の約80%は自然治癒しますが、約5~23%は重篤な合併症により早期死亡します。自然治癒後も4歳頃まで定期フォローアップが必要です。
TAMの短期予後に影響する要因
TAM関連死亡の主な原因は以下の通りです。
-
•
進行性肝不全(胆汁うっ滞、肝線維症、DIC、多臓器不全) -
•
心肺不全(心嚢液貯留、胸水に関連) -
•
胎児水腫 -
•
腎不全 -
•
感染症
⚠️ TAM早期死亡の高リスク因子
- •
白血球数 > 100,000/μL(高度白血球増加症)
- •
肝不全または生命を脅かす肝機能障害(ビリルビン正常上限の10倍以上、肝酵素正常上限の20倍以上)
- •
胎児水腫
- •
腹水、心嚢液貯留、胸水(心不全に起因しないもの)
- •
出血傾向またはDIC(播種性血管内凝固症候群)
長期フォローアップの重要性
TAMが自然治癒した後も、白血病発症リスクがあるため定期的なフォローアップが必要です。すべてのTAM既往児を4歳の誕生日まで3か月ごとにフォローアップすることが推奨されています。
| 期間 | 推奨フォローアップ頻度 | 検査内容 |
|---|---|---|
| TAM治癒後1年間 | 1~3か月ごと | 全血球計算(CBC)、白血球分画、肝機能検査 |
| 1~3歳 | 3~6か月ごと | 全血球計算(CBC)、白血球分画 |
| 3~5歳 | 6か月~1年ごと | 全血球計算(CBC)、白血球分画 |
血液検査で血球減少や芽球出現などの異常が見られた場合は、骨髄検査などの詳細な検査が必要になります。定期的なフォローアップにより、白血病への移行を早期に発見し、適切な治療につなげることが重要です。
7. 実症例から学ぶTAMの経過
TAMの経過は個人差が大きいため、実際の症例を通じて理解を深めましょう。
症例1:自然治癒した低リスクTAM
生後2日目の男児。出生時の染色体検査でダウン症と診断され、血液検査で白血球増加(芽球の存在)が認められました。肝臓の軽度腫大はありましたが、重篤な臓器障害はなく、低リスクTAMと判断され経過観察となりました。生後3週間で芽球は自然に減少し始め、2か月後には血液検査が正常化。現在4歳で、定期的なフォローアップを継続していますが、白血病の発症はなく健康に過ごしています。
症例2:重症TAMによるNICU死亡例
妊娠30週を過ぎて胎児の腎臓異常が指摘され、帝王切開で出産。染色体検査でダウン症と診断されました。出生後、血小板減少が認められ精査の結果、高リスクTAMと判明。急速に肝機能障害が進行し、腹水・胸水が貯留、呼吸状態も悪化しました。シタラビンによる治療を開始しましたが、状態は改善せず、生後3週間でNICUにて永眠されました。
症例3:TAMから白血病(MDS)へ移行した例
生後5日目の女児。出生時の血液検査でTAMと診断されましたが、症状は軽度で自然治癒しました。定期的なフォローアップを継続していました。1歳4か月時の血液検査で血球減少と芽球出現を認め、骨髄検査の結果、骨髄異形成症候群(MDS)への移行が確認されました。化学療法を開始し、現在は寛解状態を維持しています。このケースは、TAMが自然治癒しても定期フォローアップが重要であることを示しています。
8. 出生前診断とTAM|NIPTでわかること
【結論】 NIPT(新型出生前診断)でダウン症(21トリソミー)の高精度スクリーニングが可能です。TAM自体を出生前に診断することは困難ですが、ダウン症が判明した場合は、TAMを含めた合併症のリスクについて事前に知ることができます。
NIPTでわかること・わからないこと
NIPT(新型出生前診断)は、母体血液中に漂う胎児由来のDNA(セルフリーDNA)を分析することで、ダウン症(21トリソミー)を含む染色体異常の可能性を調べる検査です。
✓ NIPTでわかること
- •
ダウン症(21トリソミー)の可能性
- •
18トリソミー、13トリソミーの可能性
- •
性染色体異常の可能性
✗ NIPTでわからないこと
- •
TAMを発症するかどうか
- •
GATA1遺伝子変異の有無
- •
将来白血病になるかどうか
-
✓
採血だけで検査可能(流産リスクなし)
-
✓
妊娠9週から受検可能(当院では妊娠6週から臨床研究として早期NIPTに対応)
-
✓
ダウン症の検出率99%以上の高い精度
-
✓
偽陽性率が低い(従来のスクリーニング検査より大幅に低減)
⚠️ 重要なお知らせ:NIPTはスクリーニング検査(非確定検査)です。陽性の場合は必ず羊水検査などの確定検査を受けていただく必要があります。
NIPTでダウン症が判明した場合に知っておくべきこと
NIPTや羊水検査でダウン症が確定した場合、TAMを含めた合併症のリスクについて理解しておくことが重要です。
-
•
TAMの発症頻度:ダウン症新生児の5~10% -
•
自然治癒の可能性:約80% -
•
白血病への移行リスク:約20%(治療成績は良好) -
•
長期フォローアップの必要性:4歳頃まで
9. ミネルバクリニックのサポート体制
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が遺伝子検査のために開業した、専門性を活かした診療体制を整えています。ダウン症を含む染色体異常の検査から、陽性時のフォローまで一貫してサポートいたします。
🏥 院内で確定検査まで完結
2025年6月より産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能に。転院の必要がなく、心理的負担を軽減できます。
💰 互助会で費用の心配なく
互助会(8,000円)に加入いただくと、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を全額カバー。上限なしで安心です。
よくある質問(FAQ)
🏥 一人で悩まないでください
TAMやダウン症について心配なこと、検査を受けるかどうか迷っていること、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。
👩⚕️ 院長コラム|ピアサポートと医療情報のバランスについて
ダウン症のお子さんを持つご家族にとって、同じ経験を持つ方々との交流(ピアサポート)は大きな支えになります。日常生活のコツや精神的なサポートを得られることは、何物にも代えがたい価値があります。
しかし、TAMのような医学的に複雑な合併症については、ピアサポートだけでは限界があることも事実です。私が臨床現場で感じるのは、ピアサポートに参加される方は比較的軽症のお子さんを持つご家族が多いということです。TAMで重症化したお子さんを持つご家族は、NICUでの付き添いや治療に追われ、そのような活動に参加する余裕がないことが多いのです。
理想的なのは、医療者からの専門的サポートとピアサポートの両方をバランスよく受けることです。医学的な判断は専門医に、日常生活での工夫や精神的なサポートはピアグループに、というように役割分担をすることで、より充実したサポート体制が構築できます。
まとめ
TAM(一過性骨髄異常増殖症)は、ダウン症新生児の約5~10%に発症する前白血病状態です。21番染色体トリソミーとGATA1遺伝子変異の組み合わせにより発症し、血液中に異常な芽球が増加します。
-
✓
TAMはダウン症・21トリソミーモザイク症に特異的な疾患で、新生児期に発症
-
✓
約80%は自然治癒するが、約20%は重篤な合併症で早期死亡、約20%が後に白血病(ML-DS)に進展
-
✓
治療方針はリスク層別化に基づき、高リスク患者には低用量シタラビン療法が有効
-
✓
低リスク患者は経過観察のみで良好な転帰が得られる
-
✓
TAM治癒後も4歳頃まで定期フォローアップを継続し、白血病への移行を監視することが重要
-
✓
ML-DSは化学療法に高感受性で、約80%の治癒率が期待できる
TAMは適切な医学的管理により、多くの患者さんで良好な転帰が期待できる疾患です。ダウン症のお子さんをお持ちの方は、新生児期の血液検査の重要性を理解し、定期的なフォローアップを継続することで、お子さんの健康を守ることができます。
TAMや白血病リスクについてご不安な点があれば、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングをご利用ください。正確な医学情報と心理的サポートにより、ご家族の不安を軽減し、適切な医療判断をサポートいたします。
参考文献
- [1] Roberts I, et al. GATA1-mutant clones are frequent and often unsuspected in babies with Down syndrome: identification of a population at risk of leukemia. Blood. 2013;122(24):3908-3917. [PubMed]
- [2] Gamis AS, et al. Natural history of transient myeloproliferative disorder clinically diagnosed in Down syndrome neonates: a report from the Children’s Oncology Group Study A2971. Blood. 2011;118(26):6752-6759. [PubMed]
- [3] Klusmann JH, et al. Treatment and prognostic impact of transient leukemia in neonates with Down syndrome. Blood. 2008;111(6):2991-2998. [PubMed]
- [4] Yoshida K, et al. The landscape of somatic mutations in Down syndrome-related myeloid disorders. Nat Genet. 2013;45(11):1293-1299. [PubMed]
- [5] Taub JW, et al. Improved outcomes for myeloid leukemia of Down syndrome: a report from the Children’s Oncology Group AAML0431 trial. Blood. 2017;129(25):3304-3313. [PubMed]
- [6] Bhatnagar N, et al. Transient Abnormal Myelopoiesis and AML in Down Syndrome: an Update. Curr Hematol Malig Rep. 2016;11(5):333-341. [PubMed]
- [7] Flasinski M, et al. Low-dose cytarabine to prevent myeloid leukemia in children with Down syndrome: TMD Prevention 2007 study. Blood Adv. 2018;2(13):1532-1540. [PubMed]
- [8] Massey GV, et al. A prospective study of the natural history of transient leukemia (TL) in neonates with Down syndrome (DS): Children’s Oncology Group (COG) study POG-9481. Blood. 2006;107(12):4606-4613. [PubMed]
- [9] Hitzler JK, Zipursky A. Origins of leukaemia in children with Down syndrome. Nat Rev Cancer. 2005;5(1):11-20. [PubMed]
- [10] National Institutes of Health – Genetics Home Reference. Trisomy 21. [MedlinePlus]


