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「アメリカでは、出生前診断は全妊婦が受けるべきとされているの?」。米国産婦人科学会(ACOG)は2020年に出生前の染色体検査の指針を改め、年齢やリスクに関係なく、すべての妊婦さんに検査を「提示する」よう勧めました。ここで大切なのは、「全員が受けるべき」ではなく「全員が選べるようにする」という点です。受けるかどうかは、説明を受けたうえで妊婦さん本人が決めます。この記事では、ACOGの指針(Practice Bulletin No. 226)の原文にもとづいて、推奨の中身と、日本で検査を考えるときのポイントを臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🇺🇸 Q. 米国産婦人科学会は「出生前診断は全妊婦が受けるべき」と言っているの?
いいえ。ACOGの指針は、年齢やリスクに関係なく、すべての妊婦さんにスクリーニング検査(NIPTなど)と確定検査(羊水検査・絨毛検査)の選択肢を説明し、提示するよう勧めています。同時に、受けることも受けないことも本人の権利だと明記しています。
🧪 Q. ACOGはNIPTをどう評価しているの?
NIPT(cfDNA検査)は、よくある染色体の数の異常に対して最も感度・特異度の高いスクリーニング検査とされています。ただし確定検査と同じではなく、陽性なら確定検査で確かめる必要があります。
🏥 Q. 日本で年齢に関係なく受けられる?
当院のNIPTは年齢制限なく、妊娠9週から受けられます(妊娠6〜8週は臨床研究として)。臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受けたうえで受けるかどうかを決められ、陽性なら確定検査まで院内で受けられます。
\ 年齢に関係なく、知ったうえで選べるNIPTを /
臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | NIPTのプランを見る
ACOGの推奨は「全妊婦が受けるべき」ではなく「全妊婦に選択肢を」
米国産婦人科学会(ACOG)は、2020年8月12日にオンラインで公開した指針「Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities(胎児の染色体異常のスクリーニング)」(Practice Bulletin No. 226、Obstetrics & Gynecology誌2020年10月号に掲載)で、出生前の染色体検査についての考え方を示しました[1]。この指針はそれまでのPractice Bulletin No. 163に代わるもので、米国母体胎児医学会(SMFM)も作成に加わっています[1]。
指針の中心は、スクリーニング検査(母体血清マーカー検査やNIPTなど)と確定検査(絨毛検査・羊水検査)の選択肢を、年齢やもともとのリスクに関係なく、すべての妊婦さんに説明し、提示することです[1]。指針は、かつては母体年齢などからリスクが高いと考えられた人にだけ検査が提示されていたことにも触れたうえで、いまは全員に提示するという立場をとっています[1]。
⚠️ 「受けるべき」と「提示すべき」は違います
ACOGの指針は、すべての妊婦さんに、出生前のスクリーニング検査と確定検査を受ける権利も、受けない権利もあると明記しています[1]。勧めているのは「全員に検査を受けさせること」ではなく、「全員が説明を受けたうえで、受けるかどうかを自分で選べるようにすること」です。
日付の食い違いについて
このページの以前の版では、指針の日付を「2020年8月17日」「2020年9月23日」と書いていました。ACOGの指針の書誌情報で確かめると、オンライン公開は2020年8月12日、雑誌への掲載は2020年10月号です[1]。9月の日付は、指針を紹介したニュース記事の日付でした。
日本の出生前検査との違い
日本では、日本医学会の出生前検査認証制度のもとで、認証施設のNIPTはダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの3つを対象とし、妊娠9〜10週以降に行うとされています[3]。米国の指針と日本の制度は前提が違うため、そのまま比べることはできませんが、「検査について知り、受けるかどうかを自分で選ぶ」という考え方は共通しています。認証施設と当院のような認証外の施設で調べられる範囲の違いは、NIPTどこまでわかる?認証・非認証の違いと検査範囲で解説しています。
関連記事:染色体の数的異常(異数性)とは
出生前検査の課題:NIPTはスクリーニング検査
NIPTは、お母さんの血液に浮かんでいるDNAの断片(セルフリーDNA、cfDNA)を調べ、赤ちゃんに特定の染色体の異常がある可能性を推定する検査です。採血だけで行うため、検査そのものによる流産の心配はありません。
ACOGの指針は、cfDNA検査をよくある胎児の染色体の数の異常に対して、最も感度・特異度の高いスクリーニング検査と位置づけています[1]。一方で、cfDNA検査は確定検査と同じではないことも明記しています[1]。スクリーニング検査には偽陽性(病気がないのに陽性)と偽陰性(病気があるのに陰性)がありうるため、陽性なら確定検査で確かめます。当院では、確定検査まで院内で受けられます。精度の数字の読み方はNIPT精度は本当に高い?的中率と限界をご覧ください。
クアトロテスト(母体血清マーカー検査)とNIPTの違い
ACOGの指針では、スクリーニング検査として、母体血清マーカー検査(日本でいうクアトロテストなど。超音波でのNT計測と組み合わせることもあります)とcfDNA検査(NIPT)の両方が選択肢に挙げられています[1]。どちらも「可能性」を調べる検査で、診断はつきません。そのうえでACOGは、よくある染色体の数の異常に対してはcfDNA検査が最も感度・特異度が高いとしています[1]。クアトロテストについてはクアトロテストを受けるべきか、検査の流れの歴史はcfDNA以前の出生前スクリーニングで解説しています。
📋 ACOGの指針に出てくる検査の種類
| 検査の種類 | 何がわかるか | 流産のリスク |
|---|---|---|
| 母体血清マーカー検査(クアトロテストなど) | 染色体の数の異常などの可能性(確率) | 採血だけなのでなし |
| NIPT(cfDNA検査) | 染色体の数の異常などの可能性(陽性・陰性) | 採血だけなのでなし |
| 確定検査(絨毛検査・羊水検査) | 赤ちゃん側の細胞で染色体を直接調べて診断する | 針を刺すため、わずかにある |
ACOG Practice Bulletin No. 226[1]の分類をもとに作成。超音波検査(胎児超音波スクリーニング)も、形の異常の手がかりとして組み合わせて使われます。
「出生前診断のリスク」が気になる方は、スクリーニング検査と確定検査を分けて考えると整理しやすくなります。NIPTやクアトロテストは採血だけですが、羊水検査・絨毛検査は針を刺すため、わずかながら流産などのリスクがあります。詳しくは羊水検査のリスクは?流産・感染の確率をご覧ください。
結果ごとのACOGの勧告:陽性・陰性・結果が出ないとき
ACOGの指針は、検査を受けたあとの対応についても、結果ごとに勧告しています[1]。
🧭 結果ごとのACOGの勧告
| 結果 | ACOGの勧告 |
|---|---|
| 陽性 | 遺伝カウンセリングと詳しい超音波検査を受け、確定検査を受ける機会を設ける |
| 陰性 | 対象の染色体の異常の可能性は大きく下がるが、赤ちゃんに病気がないことを保証するものではないと伝える |
| 結果が出ない(検査の失敗) | 染色体の数の異常のリスクが高いことと関連するため、改めて遺伝カウンセリングを行い、詳しい超音波検査と確定検査を提示する |
出典:ACOG Practice Bulletin No. 226[1](当院での日本語訳)。
陽性のときに遺伝カウンセリングを重視しているのは、結果の意味を正しく理解したうえで次の一歩を選ぶためです。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとは、NIPTを臨床遺伝専門医のいる施設で受ける意味はNIPTを受けるなら臨床遺伝専門医のいる施設がいい理由で解説しています。
なお、論文や他院では、赤ちゃん由来のDNA(胎児分画)が足りずに結果が出ない場合も「判定保留(No-Call)」に含めることが多くあります。当院では、胎児分画がスタンダード・プレミアム・ダイヤモンドプランで3%、インペリアル・双子マックスプランで3.5%に届かないときは「再検査(再採血)」としており、これを判定保留とは呼びません。当院のNIPTの判定保留は0%です。詳しくはNIPTの判定保留とはをご覧ください。
\ 陽性なら確定検査まで院内で受けられるNIPTを /
陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料。羊水検査・絨毛検査も院内で行っています。
NIPT陽性だったら? | 羊水検査互助会(カトレア会)
微小欠失(22q11.2欠失症候群)のスクリーニングは学会で意見が分かれる
NIPTでは、染色体の数の異常のほかに、染色体のごく一部が欠けている「微小欠失」を調べる検査もあります。微小欠失のスクリーニングについては、米国の学会のあいだでも考え方が分かれています。
🏛️ 米国の学会ごとの考え方
ACMGの「条件付き」は、ほかの病気に比べて根拠となる研究の数が少ないことを踏まえた評価です。
22q11.2欠失症候群は、知的発達への影響は軽めでも、心臓・免疫・精神面の合併症が多いことが知られている病気です。学会によって判断が分かれるのは、調べる意味がないからではなく、陽性的中率や検証のデータがまだ十分でないことをどう評価するかの違いです。当院の微小欠失・重複の陽性的中率は、染色体の数の異常より低めで、項目によって60〜70%程度です。陽性なら確定検査で確かめます。詳しくはNIPTによる22q11.2欠失症候群検査を受ける前に知っておきたい5つのポイントとNIPT微小欠失の陽性的中率をご覧ください。
日本で受けるには:年齢制限のない当院のNIPT
ACOGが年齢やリスクに関係なく、すべての妊婦さんに検査の選択肢を示すよう勧めているように、当院のNIPTも年齢制限なく受けられます。受けるかどうかは、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで検査の意味と限界を確かめてから決められます。
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。週数が早いほど赤ちゃん由来のDNAが少なく、再検査になることがあります。10週を過ぎても、16週でも受けられますが、陽性だったときの確定検査や、その後を考える時間を確保するためにも、早めに受けることをおすすめしています。結果は基本10〜14日でお返しし、陰性の結果はマイページでお知らせします(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。
陽性のときの備え
2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査とも院内で行っています。結果は、主要な項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどでお返しします。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。
NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。羊水検査互助会(カトレア会)は1回のNIPTにつき8,000円で、陽性のときの確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。安心検査結果保障制度は1回6,000円で、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します。遠方の方は、Zoomでのカウンセリングと全国110か所の提携施設での採血を組み合わせたオンラインNIPTもご利用いただけます。
🩺 院長コラム【「受けるかどうか」を自分で決めるための情報を】
ACOGの指針でいちばん大切だと考えているのは、「すべての妊婦さんに選択肢を示す」と「受けることも受けないことも本人の権利」という2つが、セットで書かれていることです。検査を勧めることと、検査を押しつけることは違います。
年齢が若いから関係ない、と最初から選択肢を知らないままでいることも、知ったうえで受けないと決めることとは別のことです。臨床遺伝専門医として、検査の意味と限界を知ったうえで、ご本人とご家族が納得して選べるように情報を届けることが役割だと考えています。
🏥 年齢に関係なく、知ったうえで選べるNIPT
ダウン症候群のほかに、子育ての負担につながりやすい病気まで調べられることも知っておいてください。当院のNIPTは年齢制限がなく、プランによって微小欠失や単一遺伝子の変化まで調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。
まだ決めていない方は:NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | 出生前診断の種類一覧
よくある質問(FAQ)
Q1. 米国産婦人科学会(ACOG)は、出生前診断を全妊婦が受けるべきと言っているのですか?
いいえ。ACOGの指針(Practice Bulletin No. 226、2020年)は、年齢やリスクに関係なく、すべての妊婦さんにスクリーニング検査と確定検査の選択肢を説明し、提示するよう勧めています。同時に、受けることも受けないことも本人の権利だと明記しています。受けるかどうかは、説明を受けたうえで本人が決めます。
Q2. なぜ年齢に関係なく検査の選択肢を示すのですか?
かつては母体年齢などからリスクが高いと考えられた人にだけ検査が提示されていましたが、ACOGの指針は、いまはすべての妊婦さんに提示するという立場をとっています。年齢が若くても染色体の数の異常は起こりうるため、全員が知ったうえで選べるようにするという考え方です。当院のNIPTも年齢制限なく受けられます。
Q3. NIPTとクアトロテスト(母体血清マーカー検査)の違いは何ですか?
どちらも採血で行うスクリーニング検査で、診断はつきません。ACOGの指針では両方が選択肢に挙げられていますが、よくある染色体の数の異常に対しては、NIPT(cfDNA検査)が最も感度・特異度の高いスクリーニング検査とされています。陽性なら、どちらも確定検査で確かめます。
Q4. NIPTで陰性なら、赤ちゃんに病気はないと考えてよいですか?
ACOGの指針は、陰性の結果は対象の染色体の異常の可能性を大きく下げるものの、赤ちゃんに病気がないことを保証するものではないとしています。偽陰性はまれですが可能性はあります。また、検査の対象に入っていない病気については何もわかりません。
Q5. NIPTで微小欠失を調べることについて、米国の学会はどう考えていますか?
ACOG(SMFMと共同)の指針は、臨床的な検証が済んでいないとして、NIPTでの微小欠失のスクリーニングを勧めていません。一方、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、22q11.2欠失症候群のNIPTをすべての妊婦さんに提示することを条件付きで推奨しています。どちらの立場でも、陽性なら確定検査で確かめることが前提です。
Q6. ダウン症候群のほかにも、調べておいたほうがよい病気はありますか?
ダウン症候群を調べることは大切です。そのうえで、ダウン症候群のほかにも、子育ての負担につながりやすい病気まで調べられることを知っておいてください。たとえば22q11.2欠失症候群は、知的発達への影響は軽めでも、心臓・免疫・精神面の合併症が多い病気です。当院ではプランによって微小欠失や単一遺伝子の変化まで調べられ、何を調べるかは臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで選べます。
Q7. NIPTは妊娠何週から受けられますか?
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。10週を過ぎても、16週でも受けられます。
Q8. 費用はいくらですか?
プランごとの料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。料金には臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。別途、互助会の会費(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円)と、検査結果の作成費用3,300円がかかります。
関連記事
参考文献
- [1] American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Obstetrics; Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [DOI 10.1097/AOG.0000000000004084] [PubMed 32804883]
- [2] Dungan JS, Klugman S, Darilek S, et al. Noninvasive prenatal screening (NIPS) for fetal chromosome abnormalities in a general-risk population: An evidence-based clinical guideline of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2023;25(2):100336. [DOI 10.1016/j.gim.2022.11.004]
- [3] 出生前検査認証制度等運営委員会. NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)について. [出生前検査認証制度等運営委員会]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。



