この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ミオトニアとは、力を入れて縮んだ筋肉が、すぐにはゆるまない症状のことです。手を強く握ったあとに指がすぐ開かない、動き始めの足がこわばる、といった形で気づかれます。ミオトニアは、筋肉がしだいに弱くなる筋強直性ジストロフィーでも起こりますが、筋肉が壊れていかない「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」という別の病気でも起こります。どちらなのかで、その後の見通しも、ご家族への影響も大きく変わります。原因の遺伝子がわかれば、診断までの回り道を終わらせ、気をつけたい薬や麻酔、ご家族の検査まで、次の一手を具体的に考えられるようになります。このページでは、ミオトニアの意味、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の症状・原因・遺伝のしかたと、10の遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. ミオトニアとは?この検査で何がわかりますか?
ミオトニアは、縮んだ筋肉がすぐにゆるまない症状です。この検査では、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の原因となるCLCN1・SCN4Aを中心とした10の遺伝子をまとめて調べ、先天性ミオトニア(トムゼン病・ベッカー型)や先天性パラミオトニアなどの型を見分ける手がかりにします。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
手を握ったあとに開きにくい、寒いとこわばる、筋電図でミオトニー放電があると言われた方や、ご家族に同じ症状の方がいる方です。筋強直性ジストロフィーの原因(リピートの伸長)はこの検査では調べられないため、検査の選び方も遺伝カウンセリングでご説明します。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です(至急オプション55,000円で約7日短縮)。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、どの検体でもオンライン診療で受けられます(血液は全国の提携医療機関で採血)。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。型がわかると、気をつけたい麻酔薬や、寒さ・食べ物の注意、お子さんに受け継がれる確率が具体的になります。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ミオトニアとは:縮んだ筋肉がすぐにゆるまない症状
ミオトニアとは、筋肉が縮んだあと、力を抜いてもすぐにはゆるまず、こわばりが残る症状です。日本語では「筋強直(きんきょうちょく)」と呼ばれ、英語の myotonia を「ミオトニア」「ミオトニー」と書き分けているだけで、意味は同じです。このページでは、症状を指すときは「ミオトニア」、国の指定難病の病名に合わせるときは「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」と書きます。
どんなふうに気づくか:把握ミオトニアと叩打ミオトニア
いちばん多いのは、「手を強く握ったあと、指がすぐに開かない」という形です。握手のあとに指をすぐに伸ばせない、といった場面で気づかれます[1]。医師が診察で確かめる方法として、手を強く握ってから開いてもらう「把握(はあく)ミオトニア」と、診察用のハンマーで筋肉を軽くたたくと、その筋肉が縮んだまましばらくゆるまない「叩打(こうだ)ミオトニア」がよく知られています[1]。
このほか、強く閉じたまぶたがすぐに開かない、という形で現れることもあります[1]。症状は、外眼筋・顔の筋肉・舌の筋肉を含む、全身の骨格筋に起こりえます(小児慢性特定疾病情報センターの解説による。2026年10月時点で確認)。
💡 用語解説:ミオトニー放電(ミオトニア放電)
筋肉に細い針を刺して電気の流れを記録する「針筋電図」の検査で、ミオトニアのある筋肉では、勝手に繰り返す特徴的な電気の波がみられます。これを「ミオトニー放電」と呼びます[1]。以前は診断の中心でしたが、今は遺伝子検査が広く使えるようになり、診断を確かめる役割は遺伝子検査に移りつつあります[1]。
ミオトニアが起こる病気:筋強直性ジストロフィーとの違い
ミオトニアが起こる代表的な病気は、筋強直性ジストロフィーと、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の2つです。両者は名前が似ていますが、別の病気です。筋強直性ジストロフィーは、ミオトニアに加えて筋力が少しずつ落ち、白内障・不整脈・ホルモンの病気など、筋肉以外の臓器にも症状が出る病気です[1][2]。これに対して非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、筋肉の細胞が壊れていく変化(ジストロフィー変化)を伴わず、こわばりが主な症状です[2]。
なお、ミオトニアに似た「筋肉がつる」「ぴくぴくする」症状は、ミオトニア以外の病気でも起こります。小児慢性特定疾病情報センターは、見分けるべき病気として、筋強直性ジストロフィーのほか、シュワルツ・ヤンペル症候群、アイザックス症候群(ニューロミオトニア)、ポンペ病を挙げています(2026年10月時点で確認)。このページの検査には、シュワルツ・ヤンペル症候群やニューロミオトニアの原因遺伝子も含まれています(第6章)。
2. 非ジストロフィー性ミオトニー症候群とは:3つの型
非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、筋肉の細胞膜にある「イオンチャネル」というタンパク質の遺伝子の変化で起こる病気で、主な原因はCLCN1遺伝子とSCN4A遺伝子の2つです[2]。筋肉の病気のうち、イオンチャネルの異常で起こるものを「チャネロパチー(イオンチャネル病)」と呼び、この病気はその代表です。原因の遺伝子と症状の出方から、主に次の3つの型に分けられます。疾患としての詳しい解説は非ジストロフィー性ミオトニア(NDM)の疾患概念のページにまとめています。
🧬 非ジストロフィー性ミオトニー症候群の主な型
※遺伝のしかたと特徴は文献[1][2]・OMIMによる。
どれくらいの人がなる病気か
先天性ミオトニアの有病率は、世界全体で人口10万人あたり約1人と推定されています。ただし地域差があり、北スカンジナビアでは1万人あたり約1人という推定もあります[1]。イングランドで遺伝子検査により確かめられた患者さんを数えた研究では、少なく見積もった有病率は人口10万人あたり、先天性ミオトニアが0.52人、先天性パラミオトニアが0.17人、ナトリウムチャネルミオトニアが0.06人でした[3]。日本については、難病情報センターが「我が国で確認されている患者さんの数はまだまだ少なく、正確な数はわかっていません」としています(情報更新:令和7年11月、2026年10月時点で確認)。軽い方は病院にかからず、診断されないままの方もいると考えられます。
先天性ミオトニア(トムゼン病・ベッカー型):CLCN1遺伝子
CLCN1遺伝子は、筋肉の細胞膜で塩化物イオン(クロールイオン)を通す通り道を作る遺伝子です。この通り道は、筋肉の興奮を調節し、安静時の電気的な状態を安定させる役割をもっていて、働きが大きく落ちるとこわばりが起こります[1]。同じCLCN1遺伝子の変化でも、親から子へ1本で伝わる「トムゼン病」(常染色体顕性)と、両親から1本ずつ受け継いで発症する「ベッカー型」(常染色体潜性)の2つがあります[1]。
GeneReviewsによると、トムゼン病は乳児期から幼児期に、ベッカー型はそれよりやや遅く発症することが多いものの、どちらも20〜40代になってから気づかれることもあります。筋肉が発達して見える(筋肥大)ことが多く、動きを繰り返すうちにこわばりが和らぐ「ウォームアップ現象」が特徴です。ベッカー型では、しばらく休んだあとに動き始めたとき、一時的に力が入りにくくなる発作がみられることがあります[1]。英国で300人以上を対象に、遺伝子検査で確かめられた家系を調べた研究では、ベッカー型が約70%、トムゼン病が約30%でした[1]。
先天性パラミオトニア:SCN4A遺伝子
SCN4A遺伝子は、骨格筋でナトリウムイオンを通す通り道(Nav1.4)を作る遺伝子です。先天性パラミオトニアでは、寒さにさらされると強いこわばりが起こり、そのあと本当に力が入らなくなる脱力が続くことがあります。また、ふつうのミオトニアとは逆に、動きを繰り返すほどこわばりが強くなります。「逆説的(パラドキシカル)なミオトニア」と呼ばれる、この型の大きな特徴です[1][2]。SCN4A遺伝子は、高カリウム性・低カリウム性周期性四肢麻痺の原因にもなり、症状が重なることがあります。SCN4Aに関係する病気はSCN4A関連筋チャネル病の総論で詳しく解説しています。
ナトリウムチャネルミオトニア:カリウムで悪化する型
同じSCN4A遺伝子の変化で起こる型のうち、カリウムを多くとったあとにこわばりが強くなるものを、ナトリウムチャネルミオトニア(カリウム惹起性ミオトニアとも呼ばれます)といいます。GeneReviewsは、SCN4Aによるミオトニアは症状だけでは先天性ミオトニアと見分けにくいことがあり、カリウムをとると悪化することが見分ける手がかりになるとしています。また、まぶたを強く閉じたあと開きにくい症状は、この型でより多いとされています[1]。症状だけでは型が決めにくいことが、遺伝子検査で原因を確かめる理由のひとつです。
3. 症状・原因・寿命と治療:ミオトニアと付き合う
非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、一般に命にかかわる病気ではありません。ただし、こわばりは生活のいろいろな場面に影響し、薬や生活の工夫で和らげることができます。難病情報センターは「一般には、生命の危険が及ぶような病気ではありません」とし、こわばりは思春期に強く、中年以降は軽くなる傾向があると説明しています(情報更新:令和7年11月、2026年10月時点で確認)。
症状:こわばり・痛み・寒さ
いちばん多い症状は筋肉のこわばりで、ひどい筋肉痛や、筋肉がつったような感じを訴える方もいます。寒さや、カリウムを多く含む食べ物のあとに症状が出やすい型があります(難病情報センターによる)。非ジストロフィー性ミオトニー症候群の95人を前向きに調べた研究でも、こわばりは全体でいちばん目立つ症状で、66.7〜100%の方にみられました[4]。一般に進行しないとされる一方で、筋力低下や筋肉のやせがみられる方も少なくなく、幼いころからの強いこわばりで関節が固くなったり、背骨が曲がったりすることもあります(小児慢性特定疾病情報センターによる)。
原因:筋肉の「電気のスイッチ」の不具合
筋肉は、神経からの電気の合図で縮み、合図が止まるとゆるみます。この電気の状態を細胞膜の上で調節しているのが、塩化物イオンやナトリウムイオンを通すイオンチャネルです。GeneReviewsによると、CLCN1が作る塩化物イオンの通り道は、筋肉の興奮を調節し、安静時の電気的な状態を安定させる役割をもっています。この通り道の働きが4割以下に落ちると、筋肉の細胞の中の細い管(T管)にたまったカリウムで細胞膜の電気的な状態が崩れ、合図がなくても筋肉が勝手に興奮をくり返すようになり、縮んだ状態が長く続きます[1]。これが「ゆるまない」症状の正体です。先天性パラミオトニアとナトリウムチャネルミオトニアは、ナトリウムイオンの通り道を作るSCN4A遺伝子の変化で起こります[2]。
寿命と経過
非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、一般に生命の危険が及ぶような病気ではないとされています(難病情報センターによる)。筋強直性ジストロフィーのように、筋肉以外の臓器に症状が広がる病気ではない点も大きな違いです[1]。ただし、乳児期にこわばりが強いと、呼吸や飲み込みがうまくいかないことがあると報告されています(小児慢性特定疾病情報センターによる)。症状は大人になっても続くことが多いため、長い目で見た生活の工夫が大切です。
治療:こわばりを和らげる薬
今のところ、原因そのものを治す治療はなく、こわばりを和らげる薬と生活の工夫が中心です。こわばりを和らげる薬として最も確かめられているのはメキシレチン(もともと不整脈の薬)です[1]。非ジストロフィー性ミオトニー症候群の59人を対象にした国際的なランダム化比較試験(二重盲検・クロスオーバー)では、メキシレチンは偽薬に比べて、ご本人が毎日記録するこわばりの強さを有意に軽くしました。副作用では消化器の症状が最も多くみられました[5]。GeneReviewsは、ほかにもラモトリギン・フェニトイン・カルバマゼピンなどが使われることがあるとしています[1]。ラモトリギン(もともとてんかんの薬)も、26人を対象にした二重盲検ランダム化試験で、こわばりの指標を改善したと報告されています[6]。日本では、難病情報センターが「保険適応にはなっていませんがメキシレチンという不整脈でも使用される薬や、そのほかにてんかんに使われる薬などが有効であることが知られています」と説明しています(情報更新:令和7年11月、2026年10月時点で確認)。薬にはそれぞれ注意すべき副作用があるため、使うかどうか・どの薬にするかは、脳神経内科の主治医とご相談ください。
気をつけたいこと:麻酔・寒さ・食べ物
型がわかると、ふだんの生活や手術のときに気をつけることが具体的になります。これが、症状のある方が遺伝子検査で原因を確かめるいちばんの意味です。
- ●手術・麻酔:GeneReviewsは、麻酔のときに使う「脱分極性筋弛緩薬」(スキサメトニウム)は避けるべきとし、非脱分極性の筋弛緩薬はふつうに働くとしています[1]。手術の前にスキサメトニウムを注射したあと、命にかかわる筋肉のけいれんと換気の難しさが起きた例も報告されています[1]。難病情報センターも、手術のときは麻酔科と連携して対策をとることが大切としています。手術や出産の予定があるときは、病名を前もって伝えてください。
- ●薬:高い量のアドレナリンやβ刺激薬(ぜんそくの薬など)でこわばりが悪くなることがまれにあり、β遮断薬のプロプラノロールで悪化した報告もあるため、注意して使うよう勧められています[1]。
- ●寒さ:寒さでこわばりが強くなることがあり、とくに先天性パラミオトニアではっきりしています[1]。冬場や冷房の効いた場所では、体を冷やさない工夫が役立ちます。
- ●食べ物:SCN4Aによる型では、カリウムをとると症状が悪くなることがあります[1]。どこまで控えるかは型と症状で変わるので、主治医とご相談ください。
- ●妊娠・出産:GeneReviewsは、薬・筋肉注射・寒さによる筋肉のけいれんを減らすため、出産の計画を前もって立てておくことを勧めています[1]。
4. 遺伝のしかた:型によってお子さんへの伝わり方が違う
非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、型によって遺伝のしかたが違います。トムゼン病・先天性パラミオトニア・ナトリウムチャネルミオトニアは常染色体顕性(優性)遺伝、ベッカー型は常染色体潜性(劣性)遺伝です[1]。どちらの遺伝のしかたかで、お子さんやきょうだいへの確率が大きく変わるため、型を遺伝子で確かめることに意味があります。
常染色体顕性(優性)遺伝の型:お子さんへは2分の1
常染色体顕性(優性)遺伝では、対になった2本の遺伝子のうち1本に原因の変化があれば発症しうるため、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です[1]。性別には関係しません。上のお子さんが受け継いだかどうかで、下のお子さんの確率が変わることもありません。
GeneReviewsは、顕性遺伝の先天性ミオトニアの原因となる変化について、症状の重さに幅があり(表現度の違い)、変化を持っていても症状が出ない人がいる(不完全浸透)ことがあるとしています[1]。
⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
同じ遺伝子の変化を持っていても、症状の重さは人によって違うことがあり、変化を持っていても症状がほとんど出ない方もいます[1]。親御さんが「少し手がこわばるくらい」で病気と気づいていなくても、受け継いだお子さんの症状が同じ程度になるとは限りません。だからこそ、ご家族の誰かが診断されたときは、症状の有無だけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。
常染色体潜性(劣性)遺伝のベッカー型:きょうだいは4分の1
常染色体潜性(劣性)遺伝のベッカー型は、両親から1本ずつ、合わせて2本のCLCN1遺伝子に変化があるときに発症します。ご両親はそれぞれ1本ずつ変化をもつ「保因者」で、ご両親のあいだのお子さん1人ごとに、発症する確率は4分の1です[1]。
ベッカー型の方ご本人のお子さんは、パートナーが保因者でなければ、ふつうは発症しない保因者になります。難病情報センターは、ベッカー型の方のお子さんには、まれにごく軽い症状が出ることがある程度としています(2026年10月時点で確認)。パートナーが同じCLCN1の保因者かどうかで、お子さんの確率は変わります。
保因者かどうかを調べる:保因者検査
当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)には、CLCN1遺伝子が含まれています(2026年10月時点で、女性版・男性版の遺伝子一覧で確認)。ご家族にベッカー型の方がいて、ご自身やパートナーが保因者かどうかを妊娠の前に知りたい方は、遺伝子ブライダルチェックもご検討ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。
5. どんな人がこの検査を受けるとよいか
ミオトニアの症状があって原因を確かめたい方、ご家族に非ジストロフィー性ミオトニー症候群の方がいる方、結婚や妊娠を考えていて遺伝のことが気になる方に向く検査です。見た目や症状だけでは型を決めにくい病気なので、迷ったら遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
症状があり、原因を確かめたい方
- ●手を強く握ったあとに開きにくい、まぶたを強く閉じたあと開きにくい方
- ●動き始めの手足がこわばる方
- ●寒いとこわばりが強くなる、カリウムの多い食べ物のあとに悪くなる方
- ●動かすうちに楽になる、または反対に動かすほど悪くなる方
- ●針筋電図で「ミオトニー放電」があると言われた方
- ●筋強直性ジストロフィーの検査で原因が見つからなかった方
症状のある方にとって、遺伝子検査には「診断までの回り道を終わらせる」という意味があります。欧州の患者団体による国際調査(Rare Barometer)では、41か国の6,507人(1,675の希少疾患)の回答から、診断がつくまでにかかった期間は平均4.7年でした[7]。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、遺伝子検査を受けても全員に原因が見つかるわけではありません。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)でも、全エクソーム解析を終えた5,136家系のうち、診断が確定したのは2,247家系(43.8%)でした[8]。陰性だった場合も、次の選択肢を一緒に考えます。
また、病名がつくと、受けるべき検査、気をつけたい薬や麻酔、使える制度が決まります。全エクソーム・全ゲノム検査の研究をまとめた米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の系統的レビューでは、条件を満たした167件の研究で、もっとも多く報告された成果は、診療方針や、子どもを持つことについての意思決定の変化でした[9]。このページの検査は対象をしぼったパネル検査ですが、「原因がわかると次の一手が決まる」という点は同じです。
ご家族に非ジストロフィー性ミオトニー症候群の方がいる方
顕性遺伝の型では、ご家族に同じ症状の方がいても、ご本人は「少しこわばるだけ」と気づいていないことがあります。反対に、ご家族の型がわかっていれば、ご自身が同じ変化を持っているかを確かめられます。あなたの1回の検査が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分の状態を知る手がかりになります。BRCA遺伝子の検査を受けた人の研究では、検査の前に「家族のため」を大事な理由に挙げた人は約25%で、遺伝カウンセリングのあと、こうした家族や社会のための理由は有意に増えました[10]。
結婚・妊娠を考えている方
結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。非ジストロフィー性ミオトニー症候群のご本人も、ご家族にこの病気の方がいる方も、ご自身が原因の変化を持っているか、どの型かを妊娠の前に知っておくと、お子さんへの確率を具体的に考えられ、選べることが増えます。ご家族の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんを調べる出生前検査も可能とされています[1](第8章)。
この検査より別の検査が向いている場合
ミオトニアがはっきりしていて、筋肉以外の症状がないなら、まずこの検査です。一方で、次のような場合は、別の検査のほうが向いていることがあります。とくに、筋強直性ジストロフィーの原因(DMPK・CNBP遺伝子の繰り返し配列の伸長)は、このパネル検査では調べられません。白内障・不整脈・筋力低下などがあって筋強直性ジストロフィーが疑われるときは、その旨を遺伝カウンセリングでお知らせください。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
6. この検査で調べる10の遺伝子
この検査では、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の主な原因であるCLCN1とSCN4Aに加え、ミオトニアに似た症状を起こす病気の遺伝子を含む、合わせて10の遺伝子を一度に調べます。似た症状の病気を一緒に調べることで、「ミオトニアだと思っていたら別の病気だった」という場合にも原因にたどり着ける可能性が高まります。
🧬 調べる遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気
※病名と遺伝のしかたはOMIM(Phenotype-Gene Relationships)による。遺伝子名のリンク先は各遺伝子の解説ページ。※SCA6の主な原因はCACNA1A遺伝子のリピートの伸長で、この検査では調べられません。SCA6を調べるときはSCA6のリピート伸長検査を使います。
中心となるCLCN1とSCN4A
先天性ミオトニアの原因であるCLCN1遺伝子は、GeneReviewsによると、配列を読む解析で病気の原因となる変化の97%以上が見つかり、遺伝子の一部の欠失・重複は約1〜3%とされています[1]。先天性パラミオトニアとナトリウムチャネルミオトニアの原因であるSCN4A遺伝子とあわせて調べることで、非ジストロフィー性ミオトニー症候群の主な型をまとめて確かめられます。
似た症状の病気を見分けるための8遺伝子
残りの8遺伝子は、ミオトニアと区別が必要な病気や、ミオトニアと重なりやすい病気の原因となるものです。具体的には、ブロディ病(ATP2A1)、リップリング筋病(CAV3。CAV3はカベオリンの一種を作る遺伝子です)、ニューロミオトニアを伴う病気(HINT1)、ミオキミアを伴う反復発作性運動失調症1型(KCNA1)、シュワルツ・ヤンペル症候群(HSPG2)、周期性四肢麻痺(CACNA1S・SCN4A)などです。小児慢性特定疾病情報センターが見分けるべき病気として挙げるシュワルツ・ヤンペル症候群とニューロミオトニア(第1章)の遺伝子も、この中に含まれています。
CAV3やKCNE3のように、心臓のリズムや心筋の病気と関係する遺伝子も含まれます。こうした遺伝子に原因の変化が見つかった場合は、心臓の検査が必要かどうかも含めてご説明します。
当院のNIPTとの関係:対象遺伝子のうちCACNA1Aは、当院のNIPTインペリアルプランの対象遺伝子に含まれています(赤ちゃんに新しく起きた変化を調べるもの)。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。一方、ミオトニアの主な原因であるCLCN1とSCN4Aは、当院のNIPTの対象遺伝子には含まれていません。ご家族の変化がわかっている場合の赤ちゃんの検査は、羊水検査・絨毛検査で行います(第8章)。
7. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、10の遺伝子の中の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複の一部です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●調べる範囲:遺伝子のうちタンパク質の設計図になる部分(エクソン)と、そのつなぎ目の近くを、次世代シーケンサー(NGS)で読みます。対象の99%以上を20回以上くり返し読める精度で調べます。読み取りが不十分な部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
- ●欠失・重複:遺伝子1つ分の欠失・重複(血液・頬の粘膜の検体)と、となり合う2つ以上のエクソンの欠失・重複(血液の検体のみ)を調べられます。1つのエクソンだけの欠失・重複は、見つかることもありますが、ふだんは検出の対象外です。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●調べられない変化:染色体の一部の入れ替わり(転座・逆位)、配列の繰り返しの伸長(筋強直性ジストロフィーやSCA6の原因など)、遺伝子の働きを調節する部分の多く、エクソンから20塩基より離れたイントロンの奥の変化は調べられません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけることは、この検査の目的に入っていません。
- ●対象外の遺伝子:この10遺伝子以外の原因は調べていません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。オプションで、VUSを報告から除くこともできます(無料)。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で見つけられない変化や、まだ知られていない原因が残る可能性があります。症状と針筋電図などの所見にもとづく診断と治療は、引き続き大切です。
8. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果の報告書の読み方はNIPT/遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
原因が見つかったとき:型がわかり、次の一手が決まる
非ジストロフィー性ミオトニー症候群の型が確かめられると、筋強直性ジストロフィーなどほかの病気と区別でき、薬の選び方、麻酔や寒さ・食べ物への注意など、第3章で紹介した生活の工夫を具体的に考えられるようになります。手術や出産の予定があるときに病名を伝えられることも、大切な意味のひとつです。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合(二次的所見)の扱いは、当院の二次的所見の開示方針に沿ってご相談します。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
顕性遺伝の型なら、ご両親・きょうだい・お子さんは、それぞれ2分の1の確率で同じ変化を持っている可能性があります。ベッカー型なら、きょうだいは4分の1の確率で発症し、ご両親は保因者です[1]。ご家族の変化がわかっていれば、ご家族はその変化だけを確かめる検査で、自分の状態を知ることができます。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
原因が見つからなかったとき
陰性の結果は、「非ジストロフィー性ミオトニー症候群ではない」という意味ではありません。症状や針筋電図の所見から診断されることもあります。症状によっては、筋強直性ジストロフィーのリピート伸長を調べる検査や、神経筋疾患遺伝子パネル検査・全エクソーム検査(WES)など、次の検査を考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、病気の原因かどうかまだ判断できない変化です。それだけで診断を決めたり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進むと、あとから「原因」または「原因ではない」と分類が変わることがあります。扱い方はVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いでも解説しています。
妊娠を考えている方:出生前診断の相談
ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。羊水検査・絨毛検査は、2025年6月から併設している産婦人科で、院内で受けていただけます。ただし、出生前診断を行うかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断します。GeneReviewsも、出生前に変化がわかっても、発症の年齢や重さ、症状の種類は予測できないとしています[1]。妊娠を考えている段階からご相談ください。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
PGT-Mとは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院には「海外でPGT-Mを受けたい」というお問い合わせが多く寄せられています。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因の遺伝子の確定、海外で使える英語の検査結果のご用意(検査の時にお申し出ください)、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠したあとの絨毛検査・羊水検査です。
欧州ヒト生殖学会(ESHRE)の指針は、PGT-Mの準備として、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること(可能な限り確かめておくことが勧められています)、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書(認定を受けた検査室から取り寄せることが勧められています)、③ご家族の検体、を挙げています[11]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で「変化をもつ染色体」を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は次のとおりです[11]。
- ●顕性遺伝の型(トムゼン病・先天性パラミオトニア・ナトリウムチャネルミオトニア):患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人
- ●潜性遺伝の型(ベッカー型):患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方
血縁者の協力が得られない場合について、指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げています[11]。ただし、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断を添えると、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。ベッカー型のような潜性遺伝の型では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります(パートナーの保因者検査)。また、海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。必要な準備は海外でPGT-Mを考えている方へ(受ける前に必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果)で詳しく解説しています。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[12]。
当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)」に関する指針(2026年9月改定。以前の名称は「…に関する見解」)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます(2026年10月時点で学会の公式ページで確認)。指針の「重篤」は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。成人に達する前に生存が危ぶまれるわけではないが、日常生活が著しく損なわれる状態が現れる疾患は、その病気の専門医の意見書などを追加で出す仕組みになっています。
どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国によって違います。日本では症例ごとに学会が審査し、審査が続いている申請も多くあります(学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中。2026年9月発表)。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。英国では、先天性ミオトニア(顕性・潜性)と先天性パラミオトニアは、PGT-Mを行ってよい病気として公的機関の一覧に載っています(2026年9月時点)。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[13]。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[14]。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、国の指定難病(告示番号114)です。難病情報センターのページ(情報更新:令和7年11月)では、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニー、ナトリウムチャネルミオトニーが、この病気の別名または含まれる病名として挙げられています。ただし、これらの病名であっても医療費助成の対象とならないこともあるため、主治医に相談するよう案内されています。また、小児慢性特定疾病情報センターにも「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」の対象疾病のページが掲載されています(2026年10月時点で確認)。
医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを受けたあと、検体を当院にお送りいただく流れで、ほとんどの場合は唾液か頬の内側の粘膜で検査できます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医・オンライン可
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検体の採取唾液・粘膜・血液
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に使える品質を保つため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはもご覧ください。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【「少しこわばるだけ」で終わらせないために】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
ミオトニアは、「手が少しこわばる」「寒いと動きにくい」くらいで、病気と思わずに過ごしている方も少なくない症状です。けれども、非ジストロフィー性ミオトニー症候群は、同じ遺伝子の変化でも症状の重さに幅がある病気です。そして、筋強直性ジストロフィーと見分けられるかどうかで、その後の見通しはまったく違います。「自分は軽いから」という印象だけで、ご自身の手術のときの備えや、お子さんのことを決めてしまわないでほしいと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、保因者検査から出生前診断まで、当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ミオトニアとは何ですか?
ミオトニアとは、筋肉が縮んだあと、力を抜いてもすぐにはゆるまず、こわばりが残る症状です。日本語では筋強直と呼ばれます。手を強く握ったあとに指がすぐ開かない(把握ミオトニア)、診察用のハンマーで筋肉をたたくと縮んだままになる(叩打ミオトニア)といった形で確かめられます。筋強直性ジストロフィーや、非ジストロフィー性ミオトニー症候群などで起こります。
Q2. ミオトニアとミオトニーは違うものですか?
同じものです。英語の myotonia を「ミオトニア」「ミオトニー」と書き分けているだけで、どちらも筋強直を指します。国の指定難病の病名は「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」です。
Q3. 非ジストロフィー性ミオトニー症候群の寿命は?
難病情報センターは、一般には生命の危険が及ぶような病気ではないとしています。こわばりは思春期に強く、中年以降は軽くなる傾向があるとされます。ただし、乳児期にこわばりが強いと呼吸や飲み込みに影響することがあり、手術の麻酔では注意が必要です。
Q4. ミオトニアの治療法は?
原因そのものを治す治療はなく、こわばりを和らげる薬と生活の工夫が中心です。メキシレチンは、59人を対象にしたランダム化比較試験で、偽薬に比べてこわばりを有意に軽くしました。ほかにラモトリギンなども使われます。寒さを避ける、型によってはカリウムの多い食べ物に注意するなどの工夫も役立ちます。薬の選び方は主治医とご相談ください。
Q5. 筋強直性ジストロフィーとの違いは?この検査で調べられますか?
筋強直性ジストロフィーは、こわばりに加えて筋力が少しずつ落ち、白内障や不整脈など筋肉以外の症状も出る病気です。原因はDMPK・CNBP遺伝子の繰り返し配列の伸長で、このパネル検査では調べられません。疑われるときは、別の方法の検査をご案内します。
Q6. 遺伝しますか?子どもに伝わる確率は?
型によって違います。トムゼン病・先天性パラミオトニア・ナトリウムチャネルミオトニアは常染色体顕性遺伝で、お子さん1人ごとに2分の1の確率で受け継がれます。ベッカー型は常染色体潜性遺伝で、ご両親とも保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。同じ変化でも症状の重さには幅があります。
Q7. 非ジストロフィー性ミオトニー症候群は指定難病ですか?
はい。国の指定難病(告示番号114)です。医療費の助成を受けるには、認定の条件を満たして申請する必要があります。小児慢性特定疾病情報センターにも対象疾病として掲載されています(2026年10月時点)。
Q8. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多いため、ご本人の検査の段階からご相談ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
🧬 一度の検査で、こわばりの原因とご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ミオトニアの原因の遺伝子がわかれば、ご自身の薬や麻酔への備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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