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魚鱗癬の遺伝子検査(44遺伝子)|先天性魚鱗癬・道化師様魚鱗癬・尋常性魚鱗癬の原因と遺伝する確率

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

魚鱗癬の遺伝子検査(44遺伝子)|先天性魚鱗癬・道化師様魚鱗癬・尋常性魚鱗癬の原因と遺伝する確率

魚鱗癬(ぎょりんせん)とは、皮膚のいちばん外側の角質がうまく作られず、皮膚が乾いて厚くなり、魚のうろこのようにはがれる病気の総称です。生まれつきの魚鱗癬の多くは、皮膚のバリアを作る遺伝子の変化が原因で、尋常性魚鱗癬のように軽いものから、先天性魚鱗癬や道化師様魚鱗癬のように生まれたときから重いものまで、型によって見通しも遺伝のしかたも大きく違います。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかった原因は、ご本人の皮膚以外の合併症への備えにも、ご家族やこれからのお子さんのことを考えるときにも、ずっと使える情報になります。このページでは、魚鱗癬の種類と原因、遺伝する確率、44遺伝子を一度に調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 魚鱗癬の遺伝子検査で何がわかりますか?

魚鱗癬の原因になる44遺伝子をまとめて調べ、どの遺伝子の変化による魚鱗癬か(型)を確かめます。尋常性魚鱗癬・X連鎖性魚鱗癬・先天性魚鱗癬(道化師様魚鱗癬・葉状魚鱗癬など)・表皮融解性魚鱗癬のほか、ネザートン症候群やシェーグレン・ラルソン症候群など皮膚以外の症状を伴う魚鱗癬も対象です。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

生まれたときに膜のような皮膚(コロジオン児)だった方、先天性魚鱗癬と言われた方、ご家族に魚鱗癬の方がいてご自身やお子さんに遺伝する確率を知りたい方、次の妊娠を考えている方です。

🧬 Q. 費用・結果までの日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、ご家族の検査や、次の妊娠での羊水検査・絨毛検査(院内)を計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

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検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 魚鱗癬とは?先天性魚鱗癬・尋常性魚鱗癬など種類と原因の遺伝子

魚鱗癬は、皮膚のバリアを作るしくみに関わる遺伝子の変化で、角質が厚くたまってうろこのようにはがれる病気のグループです。どの遺伝子に変化があるかで型が決まり、重さ・皮膚以外の症状・遺伝のしかたが大きく違います[1]。型の名前と分け方は、2009年にフランスのソレーズで開かれた国際会議で整理されました[2]。大きくは、皮膚だけに症状が出る魚鱗癬と、皮膚以外の臓器にも症状が出る魚鱗癬(症候性の魚鱗癬)に分けられます。

魚鱗癬の種類と、それぞれの原因遺伝子・遺伝のしかた

よく知られている型と、主な原因遺伝子をまとめます。同じ「魚鱗癬」でも、型によって遺伝のしかたが違うことがわかります。

🧬 魚鱗癬の主な種類(型)

型 特徴 主な原因遺伝子 遺伝のしかた
尋常性魚鱗癬 最も多い型で、頻度は最大で100人に1人とされる。比較的軽く、乾燥やすねのうろこが目立つ FLG 半顕性(変化が1つで軽く、2つで重くなりやすい)
X連鎖性魚鱗癬 2番目に多い型で、男の子2,000人に1人とされる。主に男性に出る STS X連鎖潜性(劣性)
先天性魚鱗癬(常染色体潜性先天性魚鱗癬) 生まれたときから症状がある。最も重い道化師様魚鱗癬、葉状魚鱗癬、先天性魚鱗癬様紅皮症を含む TGM1・ABCA12・ALOX12B・ALOXE3・NIPAL4・CYP4F22 など 常染色体潜性(劣性)
表皮融解性魚鱗癬 ケラチンの病気。皮膚がもろく、水ぶくれ(水疱)ができやすい KRT1・KRT10(表在性の型はKRT2) 多くは常染色体顕性(優性)。潜性のこともある
症候性の魚鱗癬 ネザートン症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、KID症候群、レフサム病など。皮膚以外の症状を伴う SPINK5・ALDH3A2・GJB2・PHYH など 多くは常染色体潜性(KID症候群は顕性)

※頻度・原因遺伝子・遺伝のしかたは文献[1]による。

先天性魚鱗癬(常染色体潜性先天性魚鱗癬)の頻度は、ドイツとスペインの研究で人口10万人あたり1.6〜1.7人と、ほぼ同じ値が報告されています。原因として最も多いのはTGM1遺伝子で全体の約3分の1、ALOX12BとALOXE3の2つのリポキシゲナーゼ遺伝子が合わせて17%(ALOX12Bが12%、ALOXE3が5%)とされています[1]。最も重い道化師様魚鱗癬(ハーレクイン魚鱗癬)は、ABCA12遺伝子の変化で起こります[1][5]。

生まれたときの症状(コロジオン児)と、大人になってから出る魚鱗癬との違い

先天性魚鱗癬の赤ちゃんの多くは、全身がつやのある膜(コロジオン膜)に包まれた「コロジオン児」として生まれます。TGM1遺伝子の変化による先天性魚鱗癬では、80〜90%がコロジオン児として生まれるとされています[1]。膜は生後数週のうちにはがれ、その後に葉状魚鱗癬や先天性魚鱗癬様紅皮症などの症状がはっきりしてきます。コロジオン児の段階では、将来どの型になるかを見た目だけで決めることはできません。型を知る手がかりになるのが、遺伝子検査です。

一方、大人になってから魚鱗癬のような皮膚の変化が出てきた場合は、ほかの病気や薬がきっかけになっている「後天性」の魚鱗癬のことがあります。後天性の魚鱗癬は、生まれつきの遺伝子の変化を調べるこの検査の対象ではありません。まず皮膚科で原因を調べてもらうことをおすすめします。

魚鱗癬は日本に何人?指定難病・小児慢性特定疾病(2026年10月時点)

先天性魚鱗癬は、指定難病160に指定されています。難病情報センターによると、日本の患者さんは約200人です(情報更新:2023年11月)。指定難病の「先天性魚鱗癬」には、表皮融解性魚鱗癬、常染色体潜性先天性魚鱗癬(道化師様魚鱗癬・先天性魚鱗癬様紅皮症・葉状魚鱗癬)、ネザートン症候群、シェーグレン・ラルソン症候群、KID症候群、ドルフマン・シャナリン症候群、多発性スルファターゼ欠損症、Conradi-Hünermann-Happle症候群などが含まれる、あるいは深く関連する病名として挙げられています。病名がこの一覧にあっても、医療費助成の対象にならないことがあるとされています。一覧には、尋常性魚鱗癬は挙がっていません。

小児慢性特定疾病でも、皮膚疾患群に先天性魚鱗癬(シェーグレン・ラルソン症候群や、KID症候群・ドルフマン・シャナリン症候群などの魚鱗癬症候群を含む)が載っています。レフサム病は、先天性代謝異常の疾患群に載っています。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。制度を使うときも、遺伝子検査で型がはっきりしていることが手がかりになります。

2. 魚鱗癬の原因は親から?遺伝する確率を遺伝のしかた別に

生まれつきの魚鱗癬の多くは遺伝子の変化が原因で、親から受け継がれることがあります。ただし、遺伝する確率は型(遺伝のしかた)によってまったく違い、「親のせい」という単純な話ではありません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。ここでは、ご両親・きょうだい・お子さんへの確率を、遺伝のしかたごとにご説明します。

常染色体潜性(劣性)遺伝:先天性魚鱗癬の多く。きょうだいは4分の1

道化師様魚鱗癬・葉状魚鱗癬などの先天性魚鱗癬や、多くの症候性の魚鱗癬は、潜性遺伝(劣性遺伝)です[1]。対になった遺伝子の両方に変化があると発症し、片方だけに変化がある人は症状のない「保因者」です。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です。上のお子さんが発症したかどうかで、下のお子さんの確率は変わりません。

ご両親は症状がないので、お子さんが生まれるまで保因者だと気づかないのが普通です。ご両親がともに保因者で、きょうだいに常染色体潜性遺伝の魚鱗癬の方がいる場合、同じ病気を発症していないきょうだいが保因者である確率は3分の2です。きょうだいが将来、結婚や妊娠を考えるときには、ご自身とパートナーが保因者かどうかを知ることが手がかりになります。

常染色体顕性(優性)遺伝:表皮融解性魚鱗癬など。お子さんへは2分の1

表皮融解性魚鱗癬、KID症候群、ロリクリン角皮症などは、多くが常染色体顕性(優性)遺伝です[1]。対になった遺伝子の片方に変化があれば発症しうるので、親から子へ伝わる確率は、お子さん1人ごとに2分の1です。性別には関係しません。ご家族に同じ病気の方がいなくても、ご本人の代で新しく起きた変化(de novo)で発症することもあります。その場合でも、ご本人のお子さんには2分の1の確率で伝わります。

X連鎖(伴性遺伝):X連鎖性魚鱗癬。お母さんが保因者だと男の子に2分の1

X連鎖性魚鱗癬は、X染色体にあるSTS遺伝子(ステロイドスルファターゼを作る遺伝子)の変化で起こる、X連鎖遺伝の魚鱗癬です。患者さんの多くでは、STS遺伝子の一部または全部が欠けています[1]。お母さんが保因者の場合、男の子は2分の1の確率で発症し、女の子は2分の1の確率で保因者になります。発症した男性のお子さんでは、娘さんは全員が保因者になり、息子さんには伝わりません。

X連鎖性魚鱗癬の男の子を出産したお母さん(保因者)は、出産のときに困ったことがあったと話すことが多く、帝王切開や鉗子分娩になった例が報告されています[1]。赤ちゃんの胎盤でステロイドスルファターゼが働かないことが関係すると考えられています。前のお子さんでX連鎖性魚鱗癬がわかっている方は、次の妊娠のときに産科の主治医へ伝えておくと、備えにつながります。保因者かどうかは、女性版1009遺伝子の保因者検査でも調べられます(第6章)。

STS遺伝子の欠失が大きく、まわりの遺伝子まで欠けている場合は、Xp22.31微小欠失症候群として、皮膚以外の症状を伴うことがあります。欠けている範囲を詳しく知るには、マイクロアレイ染色体検査が向いています(第3章・第5章)。

尋常性魚鱗癬(FLG)とアトピー性皮膚炎の違いと関係

尋常性魚鱗癬は、皮膚の保湿に関わるフィラグリンというたんぱく質を作るFLG遺伝子の働きを失う変化で起こります[3]。遺伝のしかたは半顕性で、変化が1つでも症状が出ることがあり、2つあると重くなりやすいとされています[1]。

魚鱗癬とアトピー性皮膚炎は別の病気ですが、つながりもあります。FLG遺伝子の働きを失う変化は、アトピー性皮膚炎になりやすい大きな要因であることが報告されています[4]。そのため、尋常性魚鱗癬の方がアトピー性皮膚炎を合わせ持つこともあります。かゆみや湿疹が強いときは、魚鱗癬だけでなくアトピー性皮膚炎の治療も皮膚科でご相談ください。

3. 魚鱗癬の遺伝子検査を受けるとよい人

生まれつきの魚鱗癬で型(原因の遺伝子)をはっきりさせたい方、ご家族に魚鱗癬の方がいる方、次のお子さんのことを考えている方に向く検査です。見た目や家族歴だけでは型を決められないことが多く、遺伝子検査で原因を確かめてはじめて、次の計画が立てられます。

受けるとよい場面

  • ●コロジオン児として生まれた、または先天性魚鱗癬・先天性魚鱗癬様紅皮症・葉状魚鱗癬と言われた方(将来の型と見通しを知る手がかりになります)
  • ●魚鱗癬に、髪・目・耳・神経・肝臓・発達など皮膚以外の症状を伴う方(症候性の魚鱗癬かどうかを確かめます)
  • ●皮膚がもろく水ぶくれができやすい魚鱗癬の方(表皮融解性魚鱗癬かどうかを確かめます)
  • ●ご家族に魚鱗癬の方がいて、ご自身が受け継いでいるか、保因者かを知りたい方
  • ●お子さんが魚鱗癬と診断され、原因と、次のお子さんで同じことが起こる確率を知りたいご両親
  • ●原因がわからないまま何年も通院している方

ドイツとフランスの研究者による2020年のレビューでは、こうした遺伝子のパネル検査で、魚鱗癬の約80〜90%で原因の遺伝子の変化が見つかるとされています[1]。見つかる割合は、調べる人の集まりや検査の方法によって変わります。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません(第5章)。

受けなくてよい場合・別の検査が向いている場合

比べる相手は検査の種類です。次の場合は、この検査より別の方法のほうが向いていることがあります。

  • ●軽度の尋常性魚鱗癬で、皮膚科で診断がついている:ご本人の治療のためだけなら、遺伝子検査が必要ないこともあります。ご家族のこと・お子さんのことを考えたいときは、検査に意味があります。
  • ●大人になってから出てきた魚鱗癬(後天性):まず皮膚科で、ほかの病気や薬が原因でないかを調べます。
  • ●皮膚以外の症状が多く、魚鱗癬の病気にしぼれない:全エクソーム検査で、もっと広く調べるほうが向くことがあります。
  • ●X連鎖性魚鱗癬で、知的障害・発達の遅れなど皮膚以外の症状がある:STSのまわりの大きな欠失を調べるため、マイクロアレイ染色体検査が向いています。

症状から、どのパネル検査を選ぶか

皮膚の遺伝の病気には、症状が似ていて、調べる遺伝子が一部重なるものがあります。いちばん目立つ症状で選ぶのが基本です。

🔍 症状に合わせた検査の選び方

いちばん目立つ症状 向いている検査
全身の皮膚が乾いて厚く、うろこのようにはがれる このページの魚鱗癬パネル(44遺伝子)
手のひら・足の裏が厚く硬いことが中心 掌蹠角化症の遺伝子パネル検査(KRT1・KRT9・LOR・GJB2・TGM5などは両方に含まれます)
少しの力で皮膚がはがれる・水ぶくれが中心 表皮水疱症の遺伝子パネル検査
日光でひどく日焼けする(光線過敏) 色素性乾皮症の遺伝子パネル検査、コケイン症候群の遺伝子パネル検査
汗が少ない・髪や歯や爪の異常が中心 外胚葉異形成症の遺伝子パネル検査
魚鱗癬に、目(網膜)・神経・難聴の症状を伴う このページの魚鱗癬パネル(レフサム病のPHYH・PEX7を含む)。ほかの症状が中心ならペルオキシソーム障害のパネル検査

※どの検査がよいか迷うときは、遺伝カウンセリングで症状とご家族の情報をうかがってから決めます。

\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

保因者検査(拡大版保因者スクリーニング) | どの検査がよいか迷う方へ

4. 魚鱗癬遺伝子検査で調べる44遺伝子と、わかる病気

この検査では、魚鱗癬に関わる44の遺伝子を一度に調べます。皮膚だけの魚鱗癬の遺伝子に加えて、皮膚以外の症状を伴う魚鱗癬(症候性の魚鱗癬)の遺伝子も含まれています。どの遺伝子に変化が見つかるかで、病名と、気をつける合併症、ご家族への確率が決まります。

🧬 調べる44遺伝子と、関係する病気

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
ABCA12 道化師様魚鱗癬(ARCI4B)・葉状魚鱗癬(ARCI4A) 常染色体潜性(劣性)
ABHD5 チャナリン・ドーフマン症候群(中性脂肪蓄積症) 常染色体潜性(劣性)
ALDH3A2 シェーグレン・ラルソン症候群 常染色体潜性(劣性)
ALOX12B 先天性魚鱗癬(ARCI2) 常染色体潜性(劣性)
ALOXE3 先天性魚鱗癬(ARCI3) 常染色体潜性(劣性)
AP1S1 MEDNIK症候群 常染色体潜性(劣性)
ARSE(現在の名前:ARSL) X連鎖劣性点状軟骨異形成症1型(CDPX1) X連鎖潜性(劣性)
CASP14 先天性魚鱗癬(ARCI12) 常染色体潜性(劣性)
CERS3 先天性魚鱗癬(ARCI9) 常染色体潜性(劣性)
CLDN1 魚鱗癬・白血球空胞・脱毛・硬化性胆管炎症候群(NISCH症候群) 常染色体潜性(劣性)
CRYL1 病気との関係を研究中の遺伝子 研究中
CYP4F22 先天性魚鱗癬(ARCI5) 常染色体潜性(劣性)
EBP X連鎖優性点状軟骨異形成症(CDPX2)・MEND症候群 X連鎖(CDPX2は顕性)
ELOVL4 脊髄小脳失調症34型(紅斑角皮症を伴う)・黄斑の病気(スタルガルト病3型) 病型によって異なる
ERCC2 毛髪硫黄欠乏症(光線過敏型)・色素性乾皮症D群 常染色体潜性(劣性)
ERCC3 毛髪硫黄欠乏症(光線過敏型)・色素性乾皮症B群 常染色体潜性(劣性)
FLG 尋常性魚鱗癬(アトピー性皮膚炎のなりやすさにも関係) 半顕性
GJA1 紅斑角皮症(EKVP3)・眼歯指異形成症(ODDD)・掌蹠角化症と先天性脱毛症 主に常染色体顕性(優性)
GJB2 KID症候群・ヴォーウィンケル症候群・難聴 KID症候群は顕性(難聴は主に潜性)
GJB3 紅斑角皮症(EKVP1)・難聴 主に常染色体顕性(優性)
GJB4 紅斑角皮症(EKVP2) 主に常染色体顕性(優性)
GJB6 KID症候群・難聴(GJB2との組み合わせ) KID症候群は顕性
GTF2H5 毛髪硫黄欠乏症3型(光線過敏型) 常染色体潜性(劣性)
KRT1 表皮融解性魚鱗癬 多くは常染色体顕性(優性)
KRT10 表皮融解性魚鱗癬・先天性網状魚鱗癬様紅皮症 多くは常染色体顕性(優性)。潜性もある
KRT2 表在性表皮融解性魚鱗癬(ジーメンス水疱性魚鱗癬) 常染色体顕性(優性)
KRT9 表皮融解性掌蹠角化症 常染色体顕性(優性)
LIPN 先天性魚鱗癬(ARCI8) 常染色体潜性(劣性)
LOR ロリクリン角皮症(魚鱗癬を伴うヴォーウィンケル症候群) 常染色体顕性(優性)
MPLKIP 毛髪硫黄欠乏症4型(光線過敏のない型) 常染色体潜性(劣性)
NIPAL4 先天性魚鱗癬(ARCI6) 常染色体潜性(劣性)
PEX7 レフサム病(一部)・近位肢節型点状軟骨異形成症1型 常染色体潜性(劣性)
PHYH レフサム病(9割以上の原因) 常染色体潜性(劣性)
PNPLA1 先天性魚鱗癬(ARCI10) 常染色体潜性(劣性)
POMP KLICK症候群(魚鱗癬を伴う線状角化症)・プロテアソーム関連自己炎症症候群2型 病型によって異なる
SLC27A4 魚鱗癬早産症候群 常染色体潜性(劣性)
SNAP29 CEDNIK症候群 常染色体潜性(劣性)
SPINK5 ネザートン症候群 常染色体潜性(劣性)
ST14 魚鱗癬・乏毛症候群(ARCI11) 常染色体潜性(劣性)
STS X連鎖性魚鱗癬 X連鎖潜性(劣性)
SUMF1 多発性スルファターゼ欠損症 常染色体潜性(劣性)
TGM1 葉状魚鱗癬などの先天性魚鱗癬(ARCI1) 常染色体潜性(劣性)
TGM5 肢端皮膚剥脱症候群(peeling skin syndrome 2) 常染色体潜性(劣性)
VPS33B ARC症候群(関節拘縮・腎尿細管障害・胆汁うっ滞) 常染色体潜性(劣性)

※ARCIは常染色体潜性先天性魚鱗癬の略で、数字は型の番号です。病名と遺伝のしかたは文献[1]、遺伝子の解説資料、当院の疾患・遺伝子ページによります。同じ遺伝子でも、変化の種類によって別の病気になることがあります。

ERCC2とERCC3は、DNAの傷を直すしくみに関わる遺伝子で、変化の種類によって、魚鱗癬と髪のもろさを伴う毛髪硫黄欠乏症のほか、色素性乾皮症の原因にもなります。光に当たると強く日焼けするなどの症状があるときは、色素性乾皮症の遺伝子パネル検査もあわせて考えます。

5. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、44遺伝子の小さな変化(1つの塩基の変化や小さな挿入・欠失)と、遺伝子の一部または全部が欠けたり重複したりする変化です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●欠失・重複の見つけ方:遺伝子が丸ごと欠けた変化は、血液と頬の内側の粘膜の検体で調べられます。2つ以上のエクソン(遺伝子の中の区画)にわたる欠失・重複は血液の検体でだけ調べられ、エクソン1つだけの欠失・重複はふつう見つけられません。X連鎖性魚鱗癬(STS遺伝子の欠失)を調べたいときは、血液での検査をおすすめします。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
  • ●欠失の範囲:STS遺伝子のまわりの大きな欠失(Xp22.31微小欠失)の範囲を詳しく知るには、マイクロアレイ染色体検査が向いています。
  • ●調べられない変化:染色体の転座・逆位、繰り返し配列の伸長、遺伝子の働きを調節する領域や、エクソンから20塩基より離れたイントロンの奥の変化は、この検査では見つけられません。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは、この検査の目的に入っていません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:44遺伝子以外の遺伝子や、今の技術では見つけにくい変化が原因のこともあります。原因が見つからなくても、魚鱗癬ではないという意味にはなりません。

6. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子がわかると、病名(型)が決まり、見張る合併症、使える制度、ご家族の検査、次のお子さんへの備えまで、具体的な次の一手が決まります。わかったあとに何ができるかを、立場ごとにご説明します。当院は皮膚の治療を行っていないため、治療やスキンケアは皮膚科・専門の医療機関で受けていただきます。

ご本人:型と見通し、見張る合併症

型がわかると、皮膚以外に何に気をつければよいかが決まります。たとえば、シェーグレン・ラルソン症候群では神経(手足のつっぱり)と発達、KID症候群では目(角膜)と耳(難聴)、チャナリン・ドーフマン症候群では肝臓、ARC症候群では腎臓・肝臓と関節に注意が必要です[1]。難聴が関わる型(GJB2・GJB6など)では、難聴の遺伝子パネル検査のページも参考になります。

病名がわかると、治療が決まる型もあります。レフサム病では、フィタン酸を多く含む乳製品や、ウシ・ヒツジ・ヤギなどの肉や脂肪を厳しく制限する食事療法が治療の基本で、フィタン酸が下がると魚鱗癬・感覚の麻痺・ふらつきなどの症状は改善するとされています(小児慢性特定疾病情報センターの解説、2026年10月時点で確認)。魚鱗癬の症状だけを見ていてはわからない治療の手がかりが、遺伝子検査で見つかることがあります。

最も重い道化師様魚鱗癬では、英国などの45人を調べた研究で、25人(56%)が生存し、亡くなった方の多くは生後3か月までの間でした。飲み薬のレチノイドを使った赤ちゃんでは83%が生存しており、早い時期にレチノイドを始めることが生存の改善につながる可能性が示されています[5]。ただし、これは治療を比べた試験ではなく、経過を振り返った研究の結果です。

飲み薬のレチノイドを使う方と、妊娠の計画

重い魚鱗癬では、飲み薬のレチノイド(日本ではエトレチナート)が使われることがあります。エトレチナートには、赤ちゃんの形に影響する作用(催奇形性)があります。添付文書(2024年1月改訂)では、妊娠する可能性のある女性は飲んでいる間と、やめてから少なくとも2年間、男性は飲んでいる間と、やめてから少なくとも6か月間は避妊すること、飲んでいる間とやめてから少なくとも2年間は献血をしないことが求められています。結婚や妊娠を考えている方は、薬をやめる時期を含めて、早めに主治医とご相談ください。

症状のないご家族・保因者だった方:パートナーの検査と、お子さんへの確率

潜性遺伝の型で保因者とわかった方は、多くの場合、ご自身にその病気の症状は出ません。お子さんが発症する可能性を考えるには、パートナーも同じ遺伝子の保因者かどうかが重要です。そのため、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを調べることが、次の一歩になります。

当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)には、このパネルの44遺伝子のうち、先天性魚鱗癬の主な原因であるTGM1・ABCA12・ALOX12B・ALOXE3・NIPAL4・CYP4F22などの23遺伝子が入っています。X連鎖性魚鱗癬のSTS遺伝子は、女性版1009遺伝子に入っています(2026年10月時点で各ページの遺伝子一覧を確認)。男性の保因者検査は男性版714遺伝子・男性版911遺伝子で、X染色体の遺伝子は含みません。調べたい遺伝子が入っているかは、各ページの遺伝子一覧でご確認ください。

妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子。単独では受けられません)もあります。

次のお子さんを考えるとき:道化師様魚鱗癬はエコーでわかる?

道化師様魚鱗癬は、エコー(超音波検査)で見つかることもありますが、特徴が見えてくるのは多くが妊娠後期で、それより前のエコーでは異常が見えないことがあります。2023年の症例報告と文献のまとめでは、特徴のある所見は妊娠後期に集中していて、報告では妊娠27〜34週ごろに見つかっていました。報告された症例では、妊娠13週と24週ごろのエコーは正常で、30週ごろに所見が出てきています[6]。エコーで異常がないことは、道化師様魚鱗癬ではないという保証になりません。

一方、原因の遺伝子(ABCA12など)がわかれば、羊水などを使って赤ちゃんの遺伝子を調べる方法で、早い時期に確かめることができるようになりました[6]。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決めることができません。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

魚鱗癬と結婚・子どもを持つことに悩む方へ

魚鱗癬は見た目にわかりやすい症状があるため、ご本人やご家族が、結婚や子どもを持つことに悩まれることがあります。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。魚鱗癬がお子さんに遺伝する確率は、型とご家族によってまったく違い、遺伝子検査で「わかること」があります。たとえば潜性遺伝の型なら、ご本人が発症していても、パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、お子さんが同じ型を発症する可能性は低くなります。顕性遺伝の型なら、お子さん1人ごとに2分の1です。

ご自身の原因、パートナーの保因者検査、お子さんへの確率がわかれば、出生前診断を受けるかどうかも含めて、知ったうえで選ぶことができます。知ったうえで選ぶことも、知らないでいることも、出生前診断を受けないでそのまま産むことも、どれも尊重される選択です。当院は、結婚前・妊娠前・妊娠中と、ライフステージごとに続けてご相談いただける体制を整えています。

魚鱗癬はNIPTでわかる?

このパネルの44遺伝子のうち、当院のNIPTで調べられるのはEBP遺伝子だけです。EBPは、X連鎖顕性の点状軟骨異形成症2型(CDPX2/コンラディ・ヒューネルマン・ハップル症候群)の原因遺伝子で、赤ちゃんで新しく起きた変化を調べるダイヤモンドプランとインペリアルプランの対象に入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性なら、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。

TGM1・ABCA12・STSなど、ほかの43遺伝子はNIPTの対象ではありません。ご家族で原因がわかっている魚鱗癬を妊娠中に確かめたいときは、羊水検査・絨毛検査で調べます。くわしくは魚鱗癬はNIPTでわかりますか?をご覧ください。

ご家族の検査と、当院でのその後

ご家族の中で原因の変化がわかっていると、ご両親・きょうだい・いとこなどは、その変化だけをピンポイントで調べて、受け継いでいるか、保因者かを確かめられます。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで行います。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。

7. 結果が出たあと(陰性・VUS・報告書)

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性のときの次の一歩は第6章のとおりです。

陰性だったとき

原因の変化が見つからなかった場合も、魚鱗癬ではないという意味にはなりません(第5章)。症状に合わせて、全エクソーム検査やマイクロアレイ染色体検査などの別の検査を考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断を確定したり、ご家族の発症リスクを判断したりする根拠にはしません。ただし、変化の意味を調べるために、ご家族の検査が役立つ場合があります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかったときの扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

結果の報告書

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

8. 魚鱗癬遺伝子検査の費用・結果までの日数・検体と流れ

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取お支払い後にキット
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査内容 魚鱗癬に関わる44遺伝子の塩基配列の解析と、欠失・重複の解析(どちらも料金に含まれます)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までが約7日短くなります):55,000円/VUSを報告しない(VUS除外):無料
検体 血液(EDTA採血管4ml×2本)、抽出したDNA、頬の内側の粘膜、唾液
オンライン診療 唾液・頬の内側の粘膜・血液のいずれもオンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「魚鱗癬」という名前の先にある、一人ひとりの型】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

魚鱗癬は、ひとつの名前でまとめて呼ばれていますが、その中身は、潜性遺伝の先天性魚鱗癬、顕性遺伝の表皮融解性魚鱗癬、X連鎖の魚鱗癬、皮膚以外の症状を伴う症候群まで、遺伝のしかたも見通しもまったく違う病気の集まりです。「魚鱗癬だから遺伝する」「軽いから子どもも軽い」と、名前や見た目だけで先のことを決めてしまわないでほしいと考えています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、ご本人の合併症への備えも、ご家族の検査も、次の妊娠の計画も、具体的に考えられるようになります。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 魚鱗癬の原因は親からの遺伝ですか?

生まれつきの魚鱗癬の多くは遺伝子の変化が原因で、親から受け継がれることがあります。ただし遺伝のしかたは型によって違い、先天性魚鱗癬の多くは常染色体潜性(劣性)遺伝、表皮融解性魚鱗癬の多くは常染色体顕性(優性)遺伝、X連鎖性魚鱗癬はX連鎖遺伝です。ご家族に同じ病気の方がいなくても、新しく起きた変化で発症することもあります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

Q2. 魚鱗癬は兄弟や次の子にも遺伝しますか?確率は?

型によって違います。常染色体潜性(劣性)遺伝の型でご両親がともに保因者なら、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。常染色体顕性(優性)遺伝の型なら、親から子へ2分の1です。X連鎖性魚鱗癬でお母さんが保因者なら、男の子は2分の1の確率で発症します。原因の遺伝子がわかると、ご家族ごとの確率を具体的に考えられます。

Q3. 道化師様魚鱗癬は妊娠中(エコー)でわかりますか?

エコーで見つかることもありますが、特徴が見えてくるのは多くが妊娠後期で、報告では妊娠27〜34週ごろに見つかっています。それより前のエコーでは異常が見えないことがあり、エコーで異常がないことは道化師様魚鱗癬ではないという保証になりません。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんの遺伝子を調べられます。

Q4. 魚鱗癬は治りますか?寿命は?

難病情報センターでは、先天性魚鱗癬に根治療法はなく、保湿剤などで症状をやわらげる治療が中心とされています。重い新生児の一部は新生児期や乳児期に亡くなることがある一方、多くは症状が生涯続くとされています。最も重い道化師様魚鱗癬では、45人を調べた研究で56%が生存していました。尋常性魚鱗癬など軽い型とは見通しが大きく違うので、型を知ることが大切です。

Q5. 魚鱗癬は結婚や妊娠に差し支えますか?

魚鱗癬がお子さんに遺伝する確率は、型とご家族によってまったく違います。遺伝子検査でご自身の原因がわかり、パートナーの保因者検査やお子さんへの確率がわかれば、出生前診断を受けるかどうかも含めて、知ったうえで選ぶことができます。飲み薬のレチノイド(エトレチナート)を使っている方は、やめたあとも一定の期間の避妊が必要なので、妊娠を考えるときは早めに主治医とご相談ください。

Q6. 魚鱗癬は指定難病ですか?

はい。先天性魚鱗癬は指定難病160で、日本の患者さんは約200人とされています(難病情報センター、2026年10月時点で確認)。表皮融解性魚鱗癬、道化師様魚鱗癬などの常染色体潜性先天性魚鱗癬、ネザートン症候群、シェーグレン・ラルソン症候群などが含まれる、あるいは深く関連する病名として挙げられています。病名が一覧にあっても医療費助成の対象にならないことがあるので、認定の条件をご確認ください。

Q7. 検査で原因が見つからなかったら?

原因が見つからなくても、魚鱗癬ではないという意味にはなりません。44遺伝子以外の遺伝子や、この検査では見つけにくい変化が原因のこともあります。症状に合わせて、全エクソーム検査やマイクロアレイ染色体検査などの別の検査を考えます。

Q8. 検体は唾液でも大丈夫ですか?オンラインで受けられますか?

はい。検体は血液・抽出したDNA・頬の内側の粘膜・唾液のいずれかで、オンライン診療でも受けられます。ただし、遺伝子の大きな欠失・重複の一部は血液の検体でしか調べられないため、X連鎖性魚鱗癬を調べたいときは血液をおすすめします。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

🧬 一度の検査で、ご自身とご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。魚鱗癬の原因の遺伝子がわかれば、ご本人の合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Fischer J, Bourrat E. Genetics of inherited ichthyoses and related diseases. Acta Derm Venereol. 2020;100:adv00096. [DOI: 10.2340/00015555-3432]
  • [2] Oji V, Tadini G, Akiyama M, et al. Revised nomenclature and classification of inherited ichthyoses: results of the First Ichthyosis Consensus Conference in Sorèze 2009. J Am Acad Dermatol. 2010;63(4):607-641. [DOI: 10.1016/j.jaad.2009.11.020]
  • [3] Smith FJ, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, et al. Loss-of-function mutations in the gene encoding filaggrin cause ichthyosis vulgaris. Nat Genet. 2006;38(3):337-342. [DOI: 10.1038/ng1743]
  • [4] Palmer CN, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, et al. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Genet. 2006;38(4):441-446. [DOI: 10.1038/ng1767]
  • [5] Rajpopat S, Moss C, Mellerio J, et al. Harlequin ichthyosis: a review of clinical and molecular findings in 45 cases. Arch Dermatol. 2011;147(6):681. [DOI: 10.1001/archdermatol.2011.9]
  • [6] Liu Z, Jing C. Two- and three-dimensional sonographic findings of harlequin ichthyosis: case report and literature review. An Bras Dermatol. 2023;98(6):806-813. [DOI: 10.1016/j.abd.2022.09.013]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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