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掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)の遺伝子検査|36遺伝子で原因と遺伝のしかた、長島型や心臓・食道がんを伴う型を調べる

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

掌蹠角化症の遺伝子検査|36遺伝子で原因と遺伝のしかたを調べる

掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)は、手のひらと足の裏の皮膚が厚く硬くなる病気の総称です。生まれつきの遺伝子の変化で起こる遺伝性の型が多く、日本人では長島型が知られています。型によっては、皮膚だけでなく心臓・耳・歯ぐき・食道などに気をつける必要があり、原因の遺伝子がわかると、何をいつ見張ればよいかが決まります。このページでは、36の遺伝子を一度に調べる掌蹠角化症の遺伝子検査でわかること、遺伝のしかた、結果のあとにできることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 掌蹠角化症の遺伝子検査で何がわかりますか?

手のひら・足の裏が厚くなる原因となる36の遺伝子を一度に調べ、どの型の掌蹠角化症かを確かめます。長島型(SERPINB7)や、心臓・難聴・歯周炎・食道がんなどを伴う型も対象です。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

子どものころから手足の皮膚が厚い方、ご家族に同じ症状の方がいる方、縮毛・難聴・歯ぐきの病気・爪の厚みなど皮膚以外の症状もある方、結婚や妊娠を前に遺伝のしかたを知りたい方です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、見張る合併症・ご家族の検査・お子さんへの確率が具体的になります。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

\ 型がわかれば、見張ることが決まります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

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1. 掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)とは|手のひら・足の裏の皮膚が厚くなる病気

掌蹠角化症は、手のひら(掌)と足の裏(蹠)の皮膚の角質が厚く硬くなる病気をまとめた呼び名です。英語の palmoplantar keratoderma の頭文字をとってPPKとも呼ばれます。生まれつきの遺伝子の変化で起こる遺伝性の型と、ほかの病気や生活の影響で大人になってから出てくる後天性のものがあり、このページの検査が調べるのは遺伝性の型です。

遺伝性の掌蹠角化症には多くの型があり、2020年の総説では、原因の遺伝子が次々に見つかり、遺伝子パネル検査が診断の確定に役立つとまとめられています[1]。同じ「手足の皮膚が厚い」という症状でも、原因の遺伝子によって、遺伝のしかたも、皮膚以外で気をつけることもまったく違います。

3つの型:びまん性・線状(限局性)・点状

掌蹠角化症は、厚くなった皮膚の広がり方で、びまん性・線状(限局性)・点状の3つに分けられます[1]。

  • ●びまん性:手のひら・足の裏の全体が均一に厚くなる型です。顕微鏡で見ると皮膚の細胞がこわれる像がみられる「表皮融解性」と、それがない「非表皮融解性」に分かれます。びまん性掌蹠角化症の代表はKRT9遺伝子による表皮融解性の型で、日本人に多い長島型(SERPINB7遺伝子)は非表皮融解性の型です[1]。
  • ●線状(限局性):指の付け根や足の裏の体重がかかる場所など、こすれる・圧がかかるところが帯状やたこのように厚くなる型です。DSG1やDSPの変化による線状掌蹠角化症がこれに当たります[1][9][10]。
  • ●点状:小さな粒のような角化が、手のひら・足の裏に散らばる型です。デンマークの研究では、この点状の型が最も多く、原因の多くはAAGAB遺伝子でした[2]。

遺伝性と後天性の違い|うつる?水虫・掌蹠膿疱症との違い

遺伝子の変化で起こる遺伝性の掌蹠角化症は、人から人へうつる病気ではありません。子どものころから症状があることや、ご家族に同じ症状の方がいることが、遺伝性を考える手がかりになります。一方、大人になってから出てきた場合は、ほかの皮膚の病気などによる後天性の可能性も考えます。

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿をもった小さなぶつぶつ(膿疱)をくり返す別の病気で、原因も治療も異なります。また、厚くなった皮膚には白癬(水虫)や細菌の感染が重なることがあり、2020年の総説は、こうした合併した感染や汗の多さ(多汗)を治療することが症状を楽にすると述べています[1]。「水虫と言われて薬を塗っても、厚い皮膚が治らない」という場合は、皮膚の厚さそのものの原因を考えるきっかけになります。

掌蹠角化症は何人に1人?

掌蹠角化症全体の正確な頻度は、わかっていません。型ごとの数字として、日本人に多い長島型掌蹠角化症は、2013年の研究で日本人の約1万人に1.2人と推定されています(中国の人では約1万人に3.1人)[3]。デンマークで掌蹠角化症の76家族を調べた研究では、遺伝子検査で83%(63家族)に原因が見つかりました[2]。調べた集団や方法によって数字は変わるため、目安として受け取ってください。

2. 日本人に多い長島型掌蹠角化症(SERPINB7)|水に浸すと白くなる

長島型掌蹠角化症は、SERPINB7遺伝子の変化で起こる、日本人や中国の人に多い型です。手のひら・足の裏が赤みを帯びて厚くなり、水にぬれると10分ほどで白くふやけたように見えるのが特徴です[3]。2013年に日本の研究グループが原因の遺伝子を突き止めました。

この研究によると、角化は比較的軽く、年齢とともに進んでいくことは少ないとされています。一方で、厚くなった部分は手の甲・足の甲、手首の内側、足首、アキレス腱のあたりまで広がることがあり、手のひら・足の裏の汗が多い(多汗)方が多いことも報告されています[3]。

原因と遺伝のしかた(潜性遺伝・日本人に多い共通の変化)

長島型は常染色体潜性(劣性)遺伝で、両親から1つずつ、合わせて2つのSERPINB7の変化を受け継いだときに発症します。両親は変化を1つだけもつ「保因者」で、ふつう症状はありません。

2013年の研究では、調べた患者さん13人の全員が、c.796C>Tという同じ変化を少なくとも1つもっていました。この変化は、日本人の対照者89人のうち2人にも1つずつ見つかっています。アジア以外の806人では見つかっていません[3]。このように、ある集団で昔に起きた同じ変化が受け継がれて広がることを創始者効果といいます。調べた人数が少ないため、日本人の保因者の正確な割合は、この研究だけでは決められません。

長島型は治る?汗・水虫(白癬)との関係

長島型は、比較的軽く進みにくい型とされていますが[3]、遺伝子の変化そのものをなくす治療はありません。治療は、厚い角質をやわらげる塗り薬・保湿剤や、汗・合併した感染の治療など、症状をやわらげるものになります[1]。治療は皮膚科で受けていただきます。

長島型だとわかることには、「水虫」「乾燥」「手湿疹」と言われ続けてきた症状に名前がつき、ご家族のことや、お子さんへの確率を具体的に考えられるようになる、という意味があります。

長島型は、夫婦の保因者検査(拡大版)では調べられない

長島型の原因であるSERPINB7遺伝子は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・1009遺伝子、男性版714遺伝子・911遺伝子)のどれにも含まれていません(2026年10月、各ページの遺伝子一覧で確認)。日本人に多い型でありながら、ブライダルチェックとして受ける保因者検査では調べられない、ということです。

ご家族に長島型の方がいて、ご自身が保因者かどうか、パートナーとの組み合わせでお子さんに発症する可能性があるかを知りたい場合は、このパネル検査で調べることができます。一方、同じ掌蹠角化症の原因遺伝子のうち、女性版787遺伝子・男性版714遺伝子・女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子のすべてに含まれているものもあります(下の表)。

🧬 掌蹠角化症の原因遺伝子と、当院の拡大版保因者スクリーニング

遺伝子(病気) 保因者スクリーニングに含まれるか
CTSC(パピヨン・ルフェーブル症候群)、TAT(チロシン血症II型)、SNAP29、WNT10A、GJB2、GJB6、CRYL1 女性版787・1009、男性版714・911のすべてに含まれる
KRT14 女性版1009・男性版911に含まれる
MBTPS2 女性版1009に含まれる
SERPINB7(長島型)、SLURP1(メレダ病)、JUP(ナクソス病)、DSP、VPS33B、KRT1、KRT9 など どれにも含まれない

※2026年10月に、当院の各保因者スクリーニングのページの遺伝子一覧で確認。妊娠中の方がNIPTと同じ日に受けられるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」は、女性787遺伝子・男性714遺伝子が対象です(単独では受けられません)。

3. 心臓・耳・歯ぐき・食道がん|皮膚以外の病気を伴う掌蹠角化症(症候群型)

掌蹠角化症の一部は、心臓・耳・歯ぐき・爪・目・食道など、皮膚以外の病気を伴う「症候群型」です。原因の遺伝子がわかると、どの臓器を、いつから見張ればよいかが決まります。皮膚の症状だけでは、どの型かを見分けられないことが少なくありません。

心臓:ナクソス病(JUP)・カルバハル症候群(DSP)

ナクソス病は、JUP遺伝子の変化による常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で、掌蹠角化症・縮れた髪(縮毛)に、不整脈原性右室心筋症(ARVC)を伴います[1]。カルバハル症候群は、DSP遺伝子の潜性の変化で、拡張型心筋症・縮毛・角化を伴うことが報告されています[8]。JUPとDSPは、細胞どうしをつなぐデスモソームという構造の部品で、皮膚と心筋の両方で強い力がかかる場所を支えています。

2020年の総説は、線状の掌蹠角化症や掌蹠角化症に縮毛を伴う方には、心臓の検査を行うべきとしています[1]。心臓の症状が先に出ている方や、心臓を中心に調べたい方には、不整脈原性右室心筋症(ARVC)の遺伝子検査(DSP・JUPも含む46遺伝子)が向いています。

耳:難聴を伴う型(GJB2・GJB6など)

GJB2遺伝子の顕性の変化は、難聴を伴う掌蹠角化症(フォーヴィンケル症候群、バート・パンフリー症候群など)の主な原因で、まれにGJB6遺伝子も原因になります[1]。GJB2の変化によるKID症候群は、角膜の炎症(角膜炎)・重い感音難聴・皮膚の赤みを伴う角化を特徴とする、常染色体顕性(優性)遺伝の病気です[7]。GJB2・GJB4・GJB6は、細胞どうしで小さな物質をやりとりするギャップ結合の部品(コネキシン)をつくる遺伝子です。難聴が中心の方は、遺伝性難聴の遺伝子パネル検査も選択肢になります。

歯ぐき・毛・爪・汗:パピヨン・ルフェーブル症候群、先天性爪甲肥厚症、外胚葉の病気

パピヨン・ルフェーブル症候群は、CTSC遺伝子の変化による常染色体潜性(劣性)遺伝の病気で、重い歯周炎のために乳歯も永久歯も早く抜けてしまうことが特徴です[6]。掌蹠角化症は多くの場合3歳までに出てきます[6]。原因がわかれば、早くから歯科で管理する理由がはっきりします。

先天性爪甲肥厚症(せんてんせいそうこうひこうしょう)は、KRT6A・KRT6B・KRT6C・KRT16・KRT17のいずれかの変化で起こる常染色体顕性(優性)遺伝の病気で、足の爪の肥厚、足の裏の角化と強い痛みが中心です。約30%は新しく起きた変化によるもので、約50%に手のひら・足の裏の多汗がみられます[5]。

毛・歯・爪・汗腺は、皮膚と同じく外胚葉からできるため、掌蹠角化症と一緒に異常が出ることがあります。GJB6の変化によるクラウストン症候群(有汗性外胚葉形成不全)は、常染色体顕性(優性)遺伝で、手のひら・足の裏が厚くなる方が多いとされています[12]。WNT10Aは、歯・爪・皮膚に異常が出る歯爪皮膚異形成症の原因です[1]。

がん・目・代謝:食道がんを伴う型(RHBDF2)、皮膚がん(SMARCAD1・RSPO1)、チロシン血症II型(TAT)

RHBDF2遺伝子の変化による「食道がんを伴う胼胝(tylosis)」は、常染色体顕性(優性)遺伝で、英国のある大きな家系では65歳までに食道がんになる危険が95%と計算されています[4]。この報告では、手足の角化はふつう7〜8歳ごろまでに現れ、その家系では20代前半から年1回の上部消化管内視鏡による見張りが勧められています。ただし、これは1つの家系での数字と方針で、すべての方に同じ数字が当てはまるわけではありません[4]。食道の見張りは、消化器の専門の医療機関で受けていただきます。当院のがん診療専門外来でも、がんに関するご相談をお受けしています。

SMARCAD1遺伝子の変化によるフーリエ症候群は顕性の病気で、約15%の方に皮膚の扁平上皮がんが起こりやすいと報告されています[11]。RSPO1遺伝子による型も、皮膚などの扁平上皮がんと関係します[1]。チロシン血症II型(TAT遺伝子)は、アミノ酸のチロシンを分解する酵素がはたらかない代謝の病気で、早くから目の症状が出たり、手のひらの角化が出たりします。2020年の総説では、患者さんの約半数に知的障害や神経の症状があるとされています[1]。

🩺 遺伝子がわかると見張ることが決まる主な型

気をつける臓器 関係する遺伝子(病気) わかったときに考えること
心臓 JUP(ナクソス病)、DSP(カルバハル症候群) 循環器で心臓の検査を受ける
耳・目 GJB2(KID症候群、難聴を伴う型)、GJB6 聴力の検査、KID症候群では角膜(目)の診察
歯ぐき CTSC(パピヨン・ルフェーブル症候群) 早くから歯科で歯周炎を管理する
爪・足の痛み KRT6A・KRT6B・KRT6C・KRT16・KRT17(先天性爪甲肥厚症) 足の負担を減らす工夫、爪・のう胞のケア
食道 RHBDF2(食道がんを伴う型) 消化器で内視鏡による見張り
皮膚がん SMARCAD1(フーリエ症候群)、RSPO1 皮膚科で定期的に診てもらう
目・発達・代謝 TAT(チロシン血症II型) 小児科・代謝の病気の専門医へ

※文献[1][4][5][6][7][8][11]による。当院は皮膚・心臓・歯科・消化器の治療は行っていないため、それぞれの専門の医療機関で受けていただきます。

4. 掌蹠角化症の遺伝子検査を受けるとよい人

子どものころから手のひら・足の裏が厚い方、ご家族に同じ症状の方がいる方、皮膚以外の症状もある方、結婚や妊娠を前に遺伝のしかたを知りたい方に向く検査です。「水虫」「乾燥」「手湿疹」と言われて治療を続けても変わらなかった方にとっては、長く続いた回り道を終わらせる手がかりになります。

  • ●子どものころから手のひら・足の裏の皮膚が厚く硬い、ひび割れや痛みがある
  • ●親・きょうだい・お子さんに同じ症状の方がいる
  • ●縮毛、難聴、歯ぐきの病気・歯が早く抜ける、爪が厚い、目の症状など、皮膚以外の症状もある
  • ●ご家族に食道がんや心臓の病気の方がいて、掌蹠角化症との関係が気になる
  • ●結婚・妊娠を前に、ご自身の型と遺伝のしかた、お子さんへの確率を知りたい

デンマークで掌蹠角化症の76家族を調べた研究では、遺伝子検査で83%の家族に原因が見つかり、著者らは正確な診断のための遺伝子検査の価値を強調しています[2]。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません(第6章)。

受けなくてもよい場合・別の検査が向いている場合

大人になってから急に手足の皮膚が厚くなった方は、ほかの皮膚の病気などによる後天性のものを先に考えるため、まず皮膚科での診察をおすすめします。また、皮膚以外の症状が中心の方や、症状が全身に広がっている方には、別の検査のほうが向いていることがあります。比べる相手は検査の種類で、症状に合わせて選びます。

症状から、どのパネルを選ぶか

🔍 症状に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
手のひら・足の裏の厚さが中心 このページの検査(掌蹠角化症36遺伝子)
生まれつき全身の皮膚がうろこ状、赤ちゃんのときから全身の皮膚の症状がある 魚鱗癬の遺伝子パネル検査(このページと10遺伝子が重なる。表皮融解性魚鱗癬など)
こすれると水ぶくれができる、皮膚がむけやすい 表皮水疱症の遺伝子パネル検査(KRT14・DSPが重なる)
毛・歯・汗・爪の異常が目立つ 外胚葉異形成症の遺伝子検査(98遺伝子。このページと19遺伝子が重なる)
不整脈・心筋症など心臓の症状が先にある 不整脈原性右室心筋症(ARVC)の遺伝子検査(DSP・JUPが重なる)
難聴が中心 遺伝性難聴の遺伝子パネル検査(GJB2・GJB6が重なる)
症状が多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)

※重なる遺伝子の数は、2026年10月に当院の各検査ページの遺伝子一覧と照らし合わせたもの。どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ あなたの1回の検査が、ご家族の手がかりになります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因の変化がわかれば、ご家族は同じ場所だけをピンポイントで調べられます。羊水検査・絨毛検査も院内で受けられます(2025年6月から産婦人科を併設)。

お問い合わせはこちら | 妊娠前の保因者検査(ブライダルチェック)

5. 調べる36遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、掌蹠角化症の原因として知られる36の遺伝子を一度に調べます。大きく分けると、皮膚の細胞の骨組みをつくるケラチン(I型ケラチン:KRT9・KRT14・KRT16・KRT17、II型ケラチン:KRT1・KRT6A・KRT6B・KRT6C)、細胞どうしをつなぐデスモソームの部品(DSG1・DSP・JUP・PKP1)、ギャップ結合の部品(GJB2・GJB4・GJB6)、そのほかの遺伝子です。

🧬 掌蹠角化症の遺伝子検査で調べる36遺伝子

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
AAGAB 点状掌蹠角化症 顕性(優性)
AQP5 ボスニア型の掌蹠角化症(白癬などの感染を合併しやすい) 顕性(優性)
CAST PLACK症候群 潜性(劣性)
COL14A1 点状掌蹠角化症(中国の家系で報告) 家系での報告が限られ、遺伝カウンセリングでご説明します
CRYL1 病気との関係を研究中の遺伝子 研究中
CTSC パピヨン・ルフェーブル症候群・ハイム・ムンク症候群(重い歯周炎を伴う) 潜性(劣性)
DSG1 線状掌蹠角化症1型 顕性(優性)
DSP 線状掌蹠角化症2型/カルバハル症候群(拡張型心筋症・縮毛・角化) 線状掌蹠角化症は顕性(優性)、カルバハル症候群は潜性(劣性)
ENPP1 コール病 顕性(優性)・潜性(劣性)の両方が報告
FAM83G 掌蹠角化症に白い爪・豊かな頭髪を伴う型 潜性(劣性)
GJB2 KID症候群、難聴を伴う掌蹠角化症(フォーヴィンケル症候群・バート・パンフリー症候群など) 顕性(優性)
GJB4 進行性対称性紅斑角皮症(EKVP) 主に顕性(優性)、まれに潜性(劣性)
GJB6 クラウストン症候群(有汗性外胚葉形成不全)、まれに難聴を伴う掌蹠角化症 顕性(優性)
JUP ナクソス病(不整脈原性右室心筋症・縮毛・掌蹠角化症) 潜性(劣性)
KRT1 表皮融解性掌蹠角化症の一部、線状掌蹠角化症3型 顕性(優性)
KRT14 ネーゲリ・フランチェスケッティ・ヤダソーン症候群/網状色素性皮膚症(掌蹠角化症を伴う) 顕性(優性)
KRT6A・KRT6B・KRT6C・KRT16・KRT17 先天性爪甲肥厚症(爪の肥厚・足の裏の角化と痛み) 顕性(優性)
KRT9 表皮融解性のびまん性掌蹠角化症 顕性(優性)
LOR ロリクリン角皮症 顕性(優性)
MBTPS2 オルムステッド症候群(X連鎖の型) X連鎖潜性(劣性)
PKP1 外胚葉異形成・皮膚脆弱症候群(皮膚がむけやすく、手のひら・足の裏が厚くなる) 報告例が少なく、遺伝カウンセリングでご説明します
POMP KLICK症候群 潜性(劣性)
RHBDF2 食道がんを伴う胼胝(tylosis) 顕性(優性)
RSPO1 皮膚の扁平上皮がん・性の分化の違いを伴う掌蹠角化症 潜性(劣性)
SERPINB7 長島型掌蹠角化症 潜性(劣性)
SLURP1 メレダ病 潜性(劣性)
SMARCAD1 フーリエ症候群(皮膚の扁平上皮がんに注意) 顕性(優性)
SNAP29 CEDNIK症候群 潜性(劣性)
TAT チロシン血症II型 潜性(劣性)
TRPV3 オルムステッド症候群 顕性(優性)・潜性(劣性)
VPS33B 角化・魚鱗癬・難聴を伴う型(ARKID) 潜性(劣性)
WNT10A 歯爪皮膚異形成症 潜性(劣性)

※病気と遺伝のしかたは、文献[1][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13]と米国国立医学図書館の遺伝情報(MedlinePlus Genetics)による。同じ遺伝子でも、変化の種類によって別の病気になることがあります。

💡 用語解説:顕性(優性)遺伝と潜性(劣性)遺伝

常染色体顕性(優性)遺伝は、2本ある遺伝子のうち1本に変化があれば発症しうる遺伝のしかたです。常染色体潜性(劣性)遺伝は、2本とも変化があるときに発症し、1本だけの人は症状のない「保因者」になります。「優性・劣性」は病気の重さや優劣を表す言葉ではないため、今は「顕性・潜性」と呼びます。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、36の遺伝子の配列の小さな変化(1文字の置き換わり、小さな欠失・挿入)です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べていない遺伝子:この36遺伝子以外が原因の掌蹠角化症は見つけられません。まだ見つかっていない原因の遺伝子もあると考えられています。
  • ●見つけにくい変化:遺伝子の働きを調節する場所(プロモーター)や、遺伝子の中の読まない部分の奥深く(エクソンから20塩基より離れた場所)の変化、染色体の入れ替わり(転座・逆位)、同じ配列がくり返し伸びる変化は、この検査では調べられません。1つのエクソンだけの小さな欠失・重複も、ふつうは見つかりません。
  • ●よく似た配列:遺伝子によっては、よく似た配列(偽遺伝子など)があり、変化の判定が難しくなることがあります。判定が難しい部分は、別の方法(サンガー法)でもう一度確かめます。
  • ●モザイク:体の一部の細胞だけにある変化(モザイク)や、がんなどで後から起きた変化を見つけるための検査ではありません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、掌蹠角化症ではないとは言えません。後天性のものの可能性も含めて考えます。
検査の精度(専門的な説明)を開く

対象の領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読み取る精度で調べます(≥99% at 20x)。同じ場所を何回も読むほど、読み間違いによる誤判定が減ります。調べるのは遺伝子のたんぱく質をつくる部分(エクソン)と、その境目です。

7. 結果が出たあと(陽性・陰性・VUS)

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

陽性(原因の変化が見つかった)とき

どの型の掌蹠角化症かがわかり、遺伝のしかたと、皮膚以外で気をつけることがはっきりします。具体的にできることは、次の第8章にまとめました。

陰性(原因が見つからなかった)とき

この36遺伝子では原因が見つからなかった、という意味で、掌蹠角化症ではないという意味ではありません(第6章)。症状が広い場合は、全エクソーム検査など、範囲の広い検査を考えます。

意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき

VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気に関わる変化(二次的所見)の扱いについては、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

8. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の変化がわかると、ご本人の治療と見張り、ご家族の検査、次のお子さんのことまで、具体的に考えられるようになります。わかるだけで終わらせず、次の一手につなげることが、この検査を受ける意味です。

① ご本人(症状がある方)

  • ●治療の選び方:治療は、角質を削る処置や角質をやわらげる薬(保湿剤に混ぜて使うことが多い)から始めることが多く、内服のレチノイドが効く方もいます。ただし、表皮融解性の型(KRT9など)では皮膚が弱くなって痛みが出やすいため、レチノイドは使いにくいとされています[1]。型によって合う治療が違うので、結果を皮膚科の主治医に伝えてください。
  • ●皮膚以外の見張り:心臓(JUP・DSP)、聴力・目(GJB2)、歯ぐき(CTSC)、食道(RHBDF2)、皮膚がん(SMARCAD1・RSPO1)、目と代謝(TAT)など、第3章の表のとおり、型に合わせて専門の医療機関で見張ります。
  • ●日々のケア:先天性爪甲肥厚症では、歩く・立つ時間を減らす、通気性やクッション性のある靴を選ぶ、角質を削りすぎない、高温多湿を避ける、といった工夫が勧められています[5]。

② 症状のないご本人(家族歴で受けた方・保因者とわかった方)

潜性(劣性)遺伝の型で保因者とわかった方は、ふつうご自身に症状は出ません。お子さんへの影響を考えるときは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかが大切になります。第2章の表のとおり、遺伝子によっては拡大版保因者スクリーニングで調べられますが、長島型(SERPINB7)など含まれない遺伝子もあるため、その場合は同じ遺伝子を調べる方法を遺伝カウンセリングでご相談ください。顕性(優性)遺伝の型、たとえば食道がんを伴う型(RHBDF2)の変化をもっているとわかった場合は、症状が出る前から見張りを計画できます。

③ 子どもを持つときの選択肢

ご家族で原因の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんが同じ変化をもっているかを調べることができます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に考えるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。何も調べずに妊娠・出産することも、もちろんそのまま選べる選択肢です。どの選択も尊重します。

④ ご家族

原因の変化がわかると、ご両親・きょうだい・お子さん・いとこなどは、同じ場所だけをピンポイントで調べて、同じ変化をもっているかを確かめられます。とくに、心臓(JUP・DSP)や食道(RHBDF2)に関わる型では、ご家族が自分の状態を知ることが、早く見つける手がかりになります。症状のないご家族の検査は、ご本人の同意のうえで、遺伝カウンセリングを受けてから行います。

⑤ 当院でのその後

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、ご本人・ご家族が次に何をするかを一緒に考えます。遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)で、出生前診断のご相談は30分33,000円(税込)です。

9. 掌蹠角化症は遺伝する?遺伝する確率とご家族

遺伝性の掌蹠角化症がお子さんに遺伝する確率は、型の遺伝のしかたで決まります。顕性(優性)遺伝なら、お子さん1人ごとに2分の1。潜性(劣性)遺伝なら、ご夫婦がともに保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1です。どの型かは遺伝子検査ではじめてはっきりするため、「親が軽いから子どもも軽い」「家族にいないから大丈夫」とは言い切れません。

たとえば先天性爪甲肥厚症は顕性(優性)遺伝で、約30%は親から受け継いだのではなく新しく起きた変化によるとされています[5]。ご家族に同じ症状の方がいないことは、遺伝性ではないという意味にはなりません。X連鎖の型(MBTPS2)では、お母さんが保因者かどうかで、息子さん・娘さんへの影響が変わります。

見た目の症状のことで、結婚や妊娠に悩む方もいます。遺伝の確率は、病気の型とご家族ごとに違います。原因がわかれば、ご自身が変化をもっているか、パートナーの検査が必要か、お子さんへの確率はどれくらいか、そして妊娠したときにどんな選択肢があるかを、具体的に考えられるようになります。

10. 掌蹠角化症は難病指定?日本の制度(2026年10月時点)

2026年10月時点で当院が確認した範囲では、「掌蹠角化症」という病名は、指定難病の一覧にも、小児慢性特定疾病の皮膚疾患群(12疾病)にも載っていません。小児慢性特定疾病情報センターの皮膚疾患群には、先天性魚鱗癬・表皮水疱症・外胚葉形成不全などが含まれています。

原因の遺伝子がわかり、心臓の病気など別の病名がついた場合に、どの制度の対象になるかは病気ごとに違います。制度を使えるかどうかは、主治医や、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センター、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

11. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかで、唾液や頬の粘膜ならオンライン診療でもお受けできます。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 36遺伝子(第5章の表)
調べる変化 遺伝子の配列(塩基配列)と、小さな欠失・挿入(料金に含まれる)
検査費用 税込330,000円
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円/VUS除外(意義がまだわからない変化を報告に含めない):無料
検体 血液(EDTA採血管4mL×2本)、抽出したDNA、頬の内側の粘膜、唾液
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも受けられます(血液は全国の提携医療機関で採血)

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体を採るキットは、検査料金のお支払いのあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身の判断で先に検体を採らないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

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臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

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12. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「手足の皮膚が厚いだけ」と決めないでほしい】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

掌蹠角化症は、見た目では型を見分けにくい病気です。同じように手足の皮膚が厚くても、ある型は皮膚だけの問題で、別の型では心臓や食道を見張る必要があります。日本人に多い長島型は、夫婦で受ける拡大版の保因者検査にも入っていません。だからこそ、「手足の皮膚が厚いだけ」と決めてしまわず、原因を確かめることに意味があると考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで結婚や妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 掌蹠角化症は治りますか?

遺伝性の掌蹠角化症の治療は、厚くなった角質をやわらげる塗り薬や保湿剤、角質を削る処置、一部の方での内服のレチノイドなど、症状をやわらげるものが中心です。どの治療が合うかは型によって違い、たとえば表皮融解性の型ではレチノイドで皮膚が弱くなり痛みが出やすいことが知られています。原因の遺伝子がわかると、型に合った治療の選び方や、皮膚以外で気をつけることがはっきりします。治療は皮膚科で受けていただきます。

Q2. 掌蹠角化症は難病指定されていますか?

2026年10月時点で当院が確認した範囲では、「掌蹠角化症」という病名は、指定難病の一覧にも、小児慢性特定疾病の皮膚疾患群(12疾病)にも載っていません。原因の遺伝子がわかり、心臓の病気など別の病名がついた場合の扱いは病気ごとに違うため、主治医やお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

Q3. 掌蹠角化症は遺伝しますか?子どもに遺伝する確率は?

遺伝性の掌蹠角化症は、型によって遺伝のしかたが違います。顕性(優性)遺伝の型では、親から子へ受け継がれる確率はお子さん1人ごとに2分の1です。長島型のような潜性(劣性)遺伝の型では、ご夫婦がともに同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。どの型かは、遺伝子検査で原因がわかってはじめてはっきりします。

Q4. 掌蹠角化症は何人に1人ですか?

掌蹠角化症全体の正確な頻度はわかっていません。日本人に多い長島型掌蹠角化症については、2013年の研究で日本人の約1万人に1.2人と推定されています。

Q5. 掌蹠角化症から癌になることはありますか?

がんへの注意が必要な型が一部にあります。RHBDF2遺伝子による食道がんを伴う型、SMARCAD1遺伝子によるフーリエ症候群、RSPO1遺伝子による型などです。どの型かがわかると、内視鏡や皮膚の定期的な診察など、見張る内容が決まります。

Q6. 人にうつりますか?掌蹠膿疱症とはどう違いますか?

遺伝子の変化で起こる遺伝性の掌蹠角化症は、人から人へうつる病気ではありません。掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿をもった小さなぶつぶつ(膿疱)をくり返す別の病気です。なお、厚くなった皮膚には白癬(水虫)などが重なることがあり、その場合は合併した感染症の治療が必要です。

Q7. 長島型掌蹠角化症は、ブライダルチェック(保因者検査)でわかりますか?

わかりません。長島型の原因であるSERPINB7遺伝子は、当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787・1009遺伝子、男性版714・911遺伝子)のどれにも含まれていません(2026年10月、遺伝子一覧で確認)。ご家族に長島型の方がいて調べたい場合は、このパネル検査で調べることができます。

Q8. 子どもでも検査できますか?

症状のあるお子さんの原因を調べる検査は、お子さんでも受けられます。検体は血液のほか、唾液や頬の内側の粘膜でも調べられます。症状のないお子さんに、大人になってから出る合併症を調べるかどうかは、遺伝カウンセリングで十分にご相談ください。

🧬 一度の検査で、型と、これからの見張りを知る

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。掌蹠角化症の原因がわかれば、ご自身の治療と合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、結婚・妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断のご相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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  • [2] Gram SB, Brusgaard K, Lei U, et al. Clinical and genetic findings in patients with palmoplantar keratoderma. JAMA Dermatol. 2025;161(2):157-166. [DOI: 10.1001/jamadermatol.2024.4824]
  • [3] Kubo A, Shiohama A, Sasaki T, et al. Mutations in SERPINB7, encoding a member of the serine protease inhibitor superfamily, cause Nagashima-type palmoplantar keratosis. Am J Hum Genet. 2013;93(5):945-956. [DOI: 10.1016/j.ajhg.2013.09.015](PMID: 24207119)
  • [4] Ellis A, Risk JM, Maruthappu T, Kelsell DP. Tylosis with oesophageal cancer: diagnosis, management and molecular mechanisms. Orphanet J Rare Dis. 2015;10:126. [DOI: 10.1186/s13023-015-0346-2](PMID: 26419362)
  • [5] Smith FJD, Hansen CD, Hull PR, et al. Pachyonychia Congenita. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; (Updated 2017 Nov 30). [NCBI Bookshelf NBK1280]
  • [6] Toomes C, James J, Wood AJ, et al. Loss-of-function mutations in the cathepsin C gene result in periodontal disease and palmoplantar keratosis. Nat Genet. 1999;23(4):421-424.
  • [7] Richard G, Rouan F, Willoughby CE, et al. Missense mutations in GJB2 encoding connexin-26 cause the ectodermal dysplasia keratitis-ichthyosis-deafness syndrome. Am J Hum Genet. 2002;70(5):1341-1348. [DOI: 10.1086/339986]
  • [8] Norgett EE, Hatsell SJ, Carvajal-Huerta L, et al. Recessive mutation in desmoplakin disrupts desmoplakin-intermediate filament interactions and causes dilated cardiomyopathy, woolly hair and keratoderma. Hum Mol Genet. 2000;9(18):2761-2766.(PMID: 11063735)
  • [9] Armstrong DK, McKenna KE, Purkis PE, et al. Haploinsufficiency of desmoplakin causes a striate subtype of palmoplantar keratoderma. Hum Mol Genet. 1999;8(1):143-148. [DOI: 10.1093/hmg/8.1.143](PMID: 9887343)
  • [10] Hunt DM, Rickman L, Whittock NV, et al. Spectrum of dominant mutations in the desmosomal cadherin desmoglein 1, causing the skin disease striate palmoplantar keratoderma. Eur J Hum Genet. 2001;9(3):197-203. [DOI: 10.1038/sj.ejhg.5200605](PMID: 11313759)
  • [11] Günther C, Lee-Kirsch MA, Eckhard J, et al. SMARCAD1 haploinsufficiency underlies Huriez syndrome and associated skin cancer susceptibility. J Invest Dermatol. 2018;138(6):1428-1431. [DOI: 10.1016/j.jid.2018.01.015]
  • [12] Lamartine J, Munhoz Essenfelder G, Kibar Z, et al. Mutations in GJB6 cause hidrotic ectodermal dysplasia. Nat Genet. 2000;26(2):142-144. [DOI: 10.1038/79851]
  • [13] McGrath JA, McMillan JR, Shemanko CS, et al. Mutations in the plakophilin 1 gene result in ectodermal dysplasia/skin fragility syndrome. Nat Genet. 1997;17:240-244. [DOI: 10.1038/ng1097-240]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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