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妊娠初期にお腹が痛い理由|痛みの種類で対策が変わる

妊娠初期は、まだ胎盤も完成しておらず流産リスクも高いため、特に腹痛が起きたときは赤ちゃんが無事かどうか心配になってしまう妊婦さんが多いのではないでしょうか。

妊娠初期の腹痛は、気にしなくても問題ない生理的な腹痛と、病院を受診した方が良い腹痛があります。

本記事では、妊娠初期に起こる腹痛について原因や対処法とあわせて解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

妊娠初期の腹痛は生理的な原因が多い

妊娠初期の腹痛はなぜ起こる?原因と対処法を詳しく紹介

妊娠初期とは妊娠16週未満を指し、一般的に不安定な体調が続く時期です。つわりが始まるだけでなく、腹痛を感じやすい時期でもありますが、なぜ妊娠初期では腹痛が起こるのでしょうか。

妊娠初期に腹痛が起こる原因はいくつか考えられます。まずは、痛みの原因を確認してみましょう。

子宮が大きくなるときに起こる生理的な痛み

引きつるような腹痛は、子宮が大きくなるときの痛みの可能性があります。子宮を支えている円靭帯が引き延ばされるため、なかには足の付け根が痛む人もいるかもしれません。

また、子宮は収縮しながら徐々に大きくなるため、そのときに生理痛に似た痛みを感じる人もいます。いずれの場合も、出血がなくて短時間でおさまる場合は、様子を見ましょう。

妊娠初期では多くの人が生理現象として起こる腹痛を体験しますので、心配しすぎなくても大丈夫です。

卵巣が腫れる痛み

妊娠初期はホルモンの影響で、卵巣が腫れて痛みを感じる人もいます。妊娠すると大量に分泌されるhCGというホルモンが刺激になり、卵巣が過剰反応を起こすことがあるのです。この症状は一般的に「ルテイン嚢胞」と呼ばれています。

ルテイン嚢胞は、腹部にチクチク・ピリピリしたような痛みを感じることが多いようです。このケースの腹痛も生理的なものなので、様子を見ることになります。

hCGは妊娠8週目あたりをピークに以降は減少していきますので、妊娠15週頃には自然と痛みもおさまるでしょう。

便秘や下痢による痛み

妊娠中は、プロゲステロンと呼ばれるホルモンの影響により、腸のぜんどう運動が弱まり便秘になりやすくなります。

普段から便秘の人はより症状が強くなり、便秘ではなかった人にとっては普段感じない膨満感がつらく感じるかもしれません。便秘になるとガスが溜まりおなかが張るため、下腹部がチクチクと痛むことがあります。

妊娠中は安易に下剤は飲めませんので、便秘症状が酷い場合は産婦人科で相談しましょう。妊娠中でも服用できる便を柔らかくする薬や漢方薬を処方してもらえる可能性があります。

また、プロゲステロンは便秘だけでなく下痢を引き起こすこともあるため、その場合も腹痛が起こりやすくなるでしょう。

子宮筋腫の痛み

子宮筋腫がある場合、妊娠したことによるホルモン量増加の影響により、筋腫が大きくなる可能性があります。

痛みや出血が起こることもあるため、医師と今後の治療について相談しましょう。なお、妊娠したことによって、初めて子宮筋腫が見つかるケースもあります。

子宮筋腫は30歳以上の女性の4人に1人できるとも言われていますので、珍しい病気ではありません。しかし、場合によっては流産や早産の原因になることもあるので、妊娠が発覚したら早めに病院にかかるようにしましょう。

絨毛膜下血腫による痛み

絨毛膜下血腫とは、赤ちゃんを包む袋である胎嚢の周りにできる血腫です。受精卵の着床後、胎盤が作られる際にできる血腫なので、妊娠初期によく見られる症状です。
一般的に、不正出血や痛みによって気付くケースが多く、超音波検査をして診断されます。

絨毛膜下血腫が大きいと流産する恐れがありますが、安静にしていることで自然と吸収されれば妊娠継続は可能です。
腹痛を感じないケースもありますが、出血は胎盤が完成される妊娠中期あたりまで続くことがあります。

子宮外妊娠による痛み

妊娠は、受精卵が子宮内膜に着床することで成立するものです。しかし、なかには卵管や卵巣などに着床してしまうケースも存在し、これを「子宮外妊娠(異所性妊娠)」と呼びます。

子宮外妊娠は、気が付かずそのままにしておくと激しい腹痛や出血が起こり、最悪の場合卵管が破裂するなど、母体の命にかかわる深刻な事態になりかねません。

子宮外妊娠でも、妊娠検査薬で陽性反応は出ます。また、痛みなどの自覚症状がないケースもありますので、妊娠初期にまだ産婦人科で確認してもらっていない人は、速やかに受診しましょう。

危険なサインのときに生じる痛み

しばらく様子を見ても痛みがどんどん強くなる場合や、冷や汗をかくような激痛がある場合は、流産の前兆も考えられます。
妊娠初期の腹痛は生理的な痛みであることが多いですが、危険なサインとして現れている痛みの可能性があることも、覚えておきましょう。
横になってもおさまらず我慢できないほどであったり、出血を伴っていたりするときは、すぐに受診しましょう。

妊娠12週未満の初期段階で起こる流産は全体の8割以上であるため、妊娠初期の流産リスクは高く、防ぐことも難しいと言われています。

妊娠初期の腹痛の対処法を知って痛みを和らげよう

妊娠初期の腹痛は問題ない場合が多いとはいえ、不安が増してしまう方もいるでしょう。ここでは、妊娠初期に起こる生理的な腹痛への対処法を紹介します。

安静にして様子を見る

痛みがあるときは、まず安静にすることが大切です。生理的な痛みとは言っても、おなかの張りが強く、痛みを感じるときは休む必要があります。
休憩しながらしばらく様子を見て、痛みがおさまるまで待ちましょう。

仕事中は自由に休憩が取れず、妊娠初期ではまだ周囲にも知らせていないこともあるため、痛みがあっても休めないかもしれません。
そのようなときは、なるべく周りに体調不良であることを伝え、作業量を減らしたり、作業ペースを落としたりして、身体に負担をかけないようにしましょう。

身体を温める

妊娠すると慎重な生活を送るようになるため、特に妊娠初期の時期は運動不足に陥りやすくなります。身体を動かす頻度が減ることで筋肉が硬くなり、血行が悪くなって冷えにつながる場合があるのです。

冷えは、腹痛を引き起こす原因にもなりますので、身体を温めるよう心掛けてください。冬はカイロでおなかを温めたり、湯たんぽを使ったりしましょう。
夏は冷房で身体が冷えやすくなるため、注意が必要です。冷たすぎる飲み物は控えましょう。

食べ物で痛みを和らげる

便秘によって腹痛が起きている場合は、食物繊維が含まれた食材を積極的にとるようにしましょう。
例えば、きのこ・豆類・根菜類などは食物繊維が豊富なので、毎日の食事に取り入れたい食材です。他にも、ヨーグルトや味噌などの発酵食品も、便秘に効果があります。

下痢でおなかが痛いときは、消化の良いお粥やうどんなどがおすすめです。下痢をしているときに大切なことは水分をとることなので、白湯を飲んで水分補給をしつつ、身体を温めましょう。
また、腹痛があるときは、香辛料などの刺激物は控えてください。体調が良いときであっても、刺激の強い香辛料は胃腸に負担がかかるため、摂り過ぎに注意しましょう。

自己判断での服薬はNG

腹痛を和らげるため、市販の痛み止めや胃腸薬を使用したくなってしまうかもしれません。しかし、特に妊娠初期は薬の成分が赤ちゃんに影響しやすい時期なので、自己判断での服薬は避けましょう。

万が一、薬を飲んでしまったとしても、実際は市販薬で赤ちゃんに悪い影響を及ぼすものは多くありません。ですが、「あのとき薬を飲んでしまった」と不安がつきまとう原因にもなりますので、服薬に関しては産婦人科で相談しましょう。

妊娠初期の腹痛で受診した方が良い2つのケース

先ほど述べた通り、妊娠初期の腹痛は流産の前兆や他の病気が隠れている場合もありますので、受診した方が良いケースについて詳しく解説します。

激しい痛みが続く場合

時間を確認し、1時間のうちに何度も激しい痛みがある場合は病院を受診した方が良いでしょう。時間が経過しても痛みが引かない場合は、切迫流産の恐れもあります。
痛みの程度や感じ方は人それぞれなので、「診てもらったけど問題なかった」という場合もあるかもしれません。

しかし、実際に超音波検査をして医師から大丈夫と言われることで安心して過ごせますので、腹痛が気になる場合は、産婦人科を受診することをおすすめします。

腹痛に伴い大量に出血している場合

妊娠初期に出血が見られると、流産したのではないかと心配になってしまいますが、出血があったとしても必ずしも問題があるわけではありません。
例えば、絨毛膜下血腫や子宮内膜ポリープが原因の場合は妊娠初期に出血が見られることがあります。この場合は医師の指示に従って安静に過ごしていれば、そのまま妊娠が継続できることも多いでしょう。

しかし、腹痛と同時に大量出血を起こしている場合は要注意です。生理よりも多い量の出血がある場合は、子宮外妊娠や流産の可能性があるため、速やかに受診する必要があります。

【まとめ】妊娠初期に起こる腹痛は適切に対処しよう

妊娠初期はさまざまな原因によって、腹痛が起こりやすい時期です。
多くは、妊娠による身体の変化で起こっている生理的な腹痛なので、安静にして様子を見ても問題ありません。しかし、なかには何かしらのトラブルが腹痛となって現れている可能性もあります。

今回紹介した腹痛の対処法は、問題のない腹痛の際に役立つ方法です。もしも、激しい痛みが続くときや腹痛とともに大量に出血するときなどは、すぐに病院で診てもらう必要があります。
痛みの感じ方には個人差がありますので、腹痛が気になるときや不安が大きい場合は、ためらわず、かかりつけ医に相談するようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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