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妊娠中期に仕事を休む理由で多い5つのケースと会社への伝え方

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

「安定期に入ったのに体調が悪くて仕事に行けない」「産休まではまだ先なのに、休むとは言いにくい」と悩む人は少なくありません。妊娠中期(安定期)でも、体調不良で仕事を休むことは甘えではありません。妊娠中の体調には大きな個人差があり、中期に入ってもつわりやだるさ、お腹の張りなどが続く人がいます。規則的に繰り返すお腹の張りや出血、強い頭痛などは、仕事より受診を優先したいサインです。この記事では、妊娠中期に仕事を休む理由で多い5つのケースと受診の目安、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を使った会社への伝え方を解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約8分
🤰 妊娠中期・仕事・母健連絡カード
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 妊娠中期に体調不良で仕事を休むのは甘えですか?

A. 甘えではありません。「安定期」は流産の頻度が下がる時期を指す通称で、体調が安定することを約束する言葉ではありません。貧血やお腹の張り、腰痛、頭痛、吐き気などで働くのがつらいときは休んでよく、医師から安静や作業の制限を指示された場合は、母健連絡カードで職場に伝えることができます。

  • ➤休む理由で多い5つ → 貧血・お腹の張り・腰痛・頭痛・吐き気
  • ➤受診を急ぐサイン → 規則的な張り・出血・破水感・強い頭痛や目の見えにくさ
  • ➤伝え方 → 症状を具体的に伝え、医師の指導は母健連絡カードで書面に
  • ➤会社の義務 → 男女雇用機会均等法で、指導事項を守るための措置が義務づけられている

妊娠中期に仕事を休む理由で多い5つのケース

腹痛に悩まされる妊娠中期の女性

妊娠中期に入ると、つわりが落ち着く人も多くなります。一方で、お腹が大きくなるにつれて、貧血や腰痛などのマイナートラブル(妊娠に伴うよくある不調)が出やすい時期でもあります。

「安定期だから多少の不調で休むわけにはいかない」と無理を重ねるより、体調を優先して休む、あるいは働き方を調整するほうが大切です。なお、妊娠中期の流産や早産の多くは、子宮頸管や感染、胎盤の問題など、仕事で無理をしたこととは別の原因で起こります。これまで仕事を続けてきたことを責める必要はありません。ただし、症状の中には受診が必要なサインが隠れていることがあるため、以下の目安を参考にしてください。

ここでは、妊娠中期に仕事を休む理由で多い5つのケースを紹介します。

妊娠中期はとくに仕事が休みにくい!

妊娠中期は、日本産科婦人科学会の区分では妊娠14週0日から27週6日までを指し、一般に「安定期」と呼ばれるのはおおむね妊娠16週ごろからです。流産の頻度が初期より下がることから、この時期に入ってから職場に妊娠を伝える人も多いようです。

一方で、つわりがひどく、初期のうちに職場へ伝えざるをえなかった人もいます。「妊娠は病気ではない」と受け止められて、周囲の理解を得にくいこともあります。

また、「安定期に入ったのだから大丈夫なはず」と思われやすいため、妊娠中期は妊娠期間の中でもとくに休みにくいと感じる人が多い時期といえます。

貧血

妊娠中は、血液の液体成分(血漿)が増える割合に比べて赤血球の増え方が小さいため、血液が薄まった状態になります。加えて、赤ちゃんや胎盤のために鉄の需要が増えるため、鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。血液の薄まりは、妊娠中期から後期にかけて目立ってきます。

日本では、妊娠中の貧血はヘモグロビン値11.0g/dL未満、またはヘマトクリット値33%未満が目安とされ、妊婦健診の血液検査で確認します。貧血でよくある症状は次のとおりです。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 動悸
  • 息切れ
  • 疲れやすさ

貧血が重い場合には、低出生体重児や早産との関連が報告されています。多くは鉄剤の内服などで改善が期待できるため、健診で貧血を指摘されたら治療を受け、めまいや立ちくらみがあるときは無理をせず休むことが大切です。立ち仕事や通勤中の立ちくらみは転倒につながるため、勤務時間や通勤時間帯の調整を職場に相談するのもひとつの方法です。

お腹の張り

お腹が大きくなってくる妊娠中期には、「お腹が張る」感覚を自覚する人が増えます。張りとは子宮が収縮して硬くなる状態で、ふだんは柔らかい子宮がギュッと石のように硬くなったり、ピーンと張ったように感じたりします。

一時的な張りで、横になって休むと治まるものは、多くの妊婦さんに見られます。一方で、規則的に何度も繰り返す張り、休んでも治まらない張り、痛みや出血、水っぽいおりもの(破水の疑い)を伴う場合は、切迫流産・切迫早産のサインの可能性があるため、仕事中でもかかりつけの産婦人科に連絡してください。

張りと痛みの違いや、受診を急ぐ腹痛の特徴は、妊娠中期の腹痛の原因と受診の目安で詳しく解説しています。

張りやすい人は、長時間の立ち仕事や重い物を持つ作業で張りが増えることがあります。医師から安静や作業の制限を指示された場合は、後述の母健連絡カードで職場に伝えることができます。

腰痛

妊娠中は、リラキシンなどのホルモンの影響で、骨盤まわりの靭帯や関節がゆるみやすくなると考えられています。さらに、お腹が大きくなって重心が前に移り、反り腰の姿勢になりやすいことも腰痛の原因になります。

腰痛がひどいと、通勤ラッシュがつらかったり、座り仕事でも集中できなかったりすることがあります。椅子にクッションを使う、こまめに休憩をとって姿勢を変える、立ち仕事なら休憩の配慮を相談するといった工夫で楽になることもあります。

痛みで動けない、足のしびれが強い、発熱や排尿時の痛みを伴う、規則的なお腹の張りを伴うといった場合は、腎盂腎炎や切迫早産など腰痛以外の原因も考えられるため受診してください。つらいときに無理をせず休むことも選択肢のひとつです。

頭痛

妊娠中期には、後頭部から首筋にかけて締め付けられるような「緊張型頭痛」が起こることがあります。お腹が大きくなって姿勢が変わることや、肩や首のこり、睡眠不足、ストレスなどが関係すると考えられます。なお、妊娠前から片頭痛がある人では、妊娠中期以降に片頭痛が軽くなることも少なくありません。

頭痛で休むことに「妊娠と関係ないと思われないか」と不安になるかもしれませんが、我慢して働く必要はありません。妊娠中に使える鎮痛薬もあるため、自己判断で市販薬を飲む前に、かかりつけの産婦人科に相談してください。

⚠️ すぐに受診したい頭痛

妊娠20週以降に高血圧がみられる妊娠高血圧症候群[3]では、頭痛が症状として現れることがあります。頭痛に加えて、目がチカチカする・見えにくい、急なむくみ、みぞおちの痛みがあるとき、血圧が高いときは、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。突然起こる激しい頭痛は、くも膜下出血などの可能性もあるため、ためらわずに救急要請をしてください。

吐き気

吐き気は、妊娠初期のつわりの症状として知られています。多くは妊娠12〜16週ごろまでに落ち着きますが、妊娠中期に入っても続く人や、いったん治まった後にぶり返す人もいます。ぶり返しについては妊娠中期のつわりのぶり返しでも解説しています。

つわりの吐き気は、我慢するしかないものではありません。食事を少量ずつ回数を分けてとる、においなど吐き気のきっかけを避けるといった工夫に加え、症状に応じてビタミンB6や制吐薬による治療が行われます。水分がとれない、体重が減っている、尿の量が少ないといった場合は、点滴などの治療が必要な妊娠悪阻のことがあるため、早めに受診してください[4]。

また、妊娠中期に入ってから新たに強い吐き気が出てきた場合は、胃腸炎など妊娠以外の原因のこともあります。みぞおちの痛みや頭痛を伴うときは、妊娠高血圧症候群に関連する病気の可能性もあるため受診しましょう。吐き気がつらい日は、横になって休むと楽になることも多いので、無理をせず仕事を休むことも考えてください。

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妊娠中期に仕事を休むときの会社への伝え方

職場に休みの連絡を入れる妊娠中期の女性

妊娠中期は、体調が安定している人が多い一方で、さまざまなマイナートラブルに悩まされる人も多い時期です。体調不良で仕事を休みたいとき、どのように職場へ伝えるかは悩ましい問題です。

ここでは、体調や状況を職場に理解してもらいやすい伝え方を紹介します。

具体的な症状をきちんと伝える

職場に休む理由を伝えるときは、症状を正直に、具体的に伝えるのが基本です。「お腹の張りが続いていて、医師から安静にするよう言われている」「貧血でめまいがあり、通勤が難しい」のように、症状と、医師から受けた指示があればその内容をあわせて伝えると、状況が伝わりやすくなります。

「中期なのにつわりがあると言っても信じてもらえないかも」「頭痛や腰痛くらいで休むのかと思われそう」と不安になる気持ちもわかります。けれども、症状を大げさに伝える必要も、小さく伝える必要もありません。実際の状態をそのまま伝え、口頭では伝わりにくい場合は、次に紹介する母健連絡カードを使いましょう。

急な休みで業務に影響が出そうなときは、引き継ぎの内容や、在宅勤務・時差出勤などで働ける範囲があればあわせて伝えておくと、職場も調整しやすくなります。なお、妊娠中の人は、本人が請求すれば時間外労働・休日労働・深夜業の制限を受けられるほか、ほかの軽易な業務への転換を請求することもできます(労働基準法)。

母性健康管理指導事項連絡カードを利用する

「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」とは、妊娠中・出産後の女性労働者が医師や助産師から受けた指導の内容を、事業主に的確に伝えるためのカードです[1][2]。

男女雇用機会均等法では、妊娠中の女性労働者が健診などで受けた指導事項を守れるよう、事業主は勤務時間の変更や勤務の軽減など、必要な措置を講じなければならないと定められています(第13条)。母健連絡カードが提出された場合、事業主はその記載内容に応じて適切な措置を講じる義務があります[2]。

妊婦健診などを受ける
▶
医師・助産師がカードに記入症状と必要な措置
▶
本人が事業主に提出措置を申し出る
▶
事業主が措置を講じる時短・通勤緩和・休業など

カードには症状と必要な措置を記入する欄があります。たとえば、貧血やめまい・立ちくらみでは勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業の制限、通勤緩和、休憩の配慮など、お腹の張りや子宮収縮では休業(入院加療・自宅療養)や勤務時間の短縮などが、措置の例として示されています[2]。

カードの様式は、厚生労働省の「女性にやさしい職場づくりナビ」からダウンロードできるほか、ほとんどの母子健康手帳にも載っています[1][5]。自分では体調の変化や必要な配慮をうまく職場に伝えられないときは、健診の際にかかりつけ医へ記入を相談しましょう。

💡 知っておきたいこと

男女雇用機会均等法では、母性健康管理の措置を求めたことや措置を受けたことを理由とする解雇・雇止めなどの不利益な取扱いは禁止されています[5]。措置を講じてもらえないなどの困りごとは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「安定期」という言葉に縛られなくていい】

「安定期」は流産の頻度が下がる時期を指す通称で、体調が安定することを約束する言葉ではありません。体調の感じ方には大きな個人差があり、妊娠中期につらい症状が続くことは珍しくありません。

休むかどうかを「周りにどう思われるか」だけで決めるのではなく、症状の中に受診が必要なサインがないかを確かめ、必要な配慮は制度も使って職場に伝える。そうして体調と仕事の折り合いをつけていくことが大切だと考えています。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 妊娠中期に体調不良で仕事を休むのは甘えですか?

甘えではありません。「安定期」は流産の頻度が下がる時期を指す通称で、体調が安定することを約束する言葉ではありません。妊娠中期でも、貧血やお腹の張り、腰痛、頭痛、吐き気などで働くのがつらいときは休んでかまいません。

Q2. お腹の張りで仕事を休む目安は?

横になって休むと治まる一時的な張りは、多くの妊婦さんに見られます。規則的に何度も繰り返す張り、休んでも治まらない張り、痛みや出血、水っぽいおりものを伴う張りは、切迫流産・切迫早産のサインの可能性があるため、仕事中でもかかりつけの産婦人科に連絡してください。

Q3. 会社には何と伝えればいいですか?

症状を正直に、具体的に伝えるのが基本です。医師から安静や作業の制限を指示された場合は、その内容もあわせて伝えましょう。口頭で伝えにくいときは、医師に母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を記入してもらい、事業主に提出する方法があります。

Q4. 母健連絡カードはどこで手に入りますか?

厚生労働省の「女性にやさしい職場づくりナビ」からダウンロードできるほか、ほとんどの母子健康手帳にも様式が載っています。健診のときに医師や助産師に記入を依頼し、本人が事業主に提出します。

まとめ

妊娠中期に仕事を休む理由で多い5つのケース(貧血・お腹の張り・腰痛・頭痛・吐き気)と、会社への伝え方を紹介しました。

妊娠中期に体調不良で仕事を休むことに、罪悪感を覚える人は少なくありません。けれども、体調不良で休むことは甘えではありません。規則的なお腹の張りや出血、破水感、強い頭痛や目の見えにくさは、受診が必要なサインです。無理を重ねず、必要なときは休みましょう。

休むときは、症状を具体的に伝え、医師の指導がある場合は母健連絡カードを使いましょう。引き継ぎなど、できる範囲の準備をしておくと、職場とも調整しやすくなります。

🤰 赤ちゃんの染色体異常が気になるときは

体調のことは、まず妊婦健診を受けているかかりつけの産婦人科に相談してください。赤ちゃんの染色体異常が気になる場合は、ミネルバクリニックでNIPT(新型出生前診断)を受けられます。検査は臨床遺伝専門医が担当し、結果の説明まで行います。

参考文献

  • [1] 厚生労働省. 働く女性の妊娠・出産をサポートするサイト「女性にやさしい職場づくりナビ」. [女性にやさしい職場づくりナビ]
  • [2] 厚生労働省 北海道労働局. 女性労働者の母性健康管理のために. [厚生労働省]
  • [3] 厚生労働省. 母性健康管理に関する用語辞典「妊娠高血圧症候群」. 女性にやさしい職場づくりナビ. [女性にやさしい職場づくりナビ]
  • [4] ACOG Practice Bulletin No. 189: Nausea and Vomiting of Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(1):e15-e30. [PubMed 29266076]
  • [5] 厚生労働省 埼玉労働局. 働く妊産婦の皆さまへ 母性健康管理指導事項連絡カードのご案内. [厚生労働省]

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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