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「妊娠中期に入ったのにだるい‥」「無気力で何もする気になれない‥」
妊娠中期のだるさや無気力感は、血液量の増加にともなう貧血、続くつわり、ホルモンや体型の変化、気持ちの落ち込みなどが重なって起こります。多くは休息や生活の工夫で軽くなりますが、2週間以上続く気分の落ち込み、息切れや動悸をともなう強いだるさは、貧血・甲状腺の病気・妊娠中のうつ病のサインのことがあります。この記事では、だるさを感じやすい時期と原因、5つの対処法、受診の目安を解説します。
Q. 妊娠中期にだるくて無気力なのはおかしいことですか?
A. 珍しいことではありません。妊娠中期は血液量が大きく増えて貧血になりやすく、つわりが続く人もいます。気持ちの面でも、妊娠中のうつ病は妊娠中期に約13%にみられたという報告があります[1]。「怠け」ではなく体と心の変化によるものなので、無理をせず、続くときは妊婦健診で相談してください。
- ➤時期 → 妊娠中期は14週0日〜27週6日。初期から続く人も、後期に強まる人もいる
- ➤原因 → 妊娠うつ・つわりの持続・貧血(血液の薄まりと鉄不足)など
- ➤対処 → 相談する・食事・何もしない時間・周囲に甘える・優先順位
- ➤受診の目安 → 落ち込みが2週間以上、息切れ・動悸、寒がり・むくみなど
妊娠中期にだるい&無気力と感じる時期はいつ?

妊娠初期は吐き気や眠気と戦い、やっと安定期に入ったと思った途端、次はだるさと無気力感に襲われる方もいます。家事や仕事を普段通りにこなしたいのに体が思う通りにならないと、自分を責めたくなってしまうかもしれません。
妊娠中期は、日本産科婦人科学会の定義では妊娠14週0日から27週6日までを指します[2]。妊娠月数で数える「5〜7か月(16〜27週)」を中期と呼ぶ資料もあるため、「16週から」と書かれていることもありますが、医学的な区分は14週からです。だるさや無気力感はこの期間のどこでも起こりえます。妊娠初期から続いている人もいれば、お腹が大きくなる妊娠後期に強まる人もいて、時期に当てはまらないからおかしいというわけではありません。
妊娠による体の変化の多くは、出産後に少しずつ元に戻っていきます。ただし、気分の落ち込みは産後にも起こりうるため、「出産すれば治る」と我慢し続けないことが大切です。
妊娠中期に無気力になる原因

妊娠中期に入り、以下のような症状に悩まされていませんか?
- 常に体が火照っている気がする
- 少し動いただけですぐに疲れてしまう
- 休日でも家事すらやる気が起きない
妊娠中は心身の変化が大きく、とくにはじめての妊娠では、何もやる気が出ない自分に不安を感じる方も少なくありません。ここでは、妊娠中期に無気力になる主な原因を紹介します。
妊娠うつ
妊娠うつとは、妊娠中に起こるうつ病(周産期うつ病)のことです。妊娠中のうつ病の頻度をまとめた研究では、妊娠初期で約7%、妊娠中期で約13%、妊娠後期で約12%と報告されており[1]、妊娠中期は決して「心が楽になる時期」とは限りません。
お腹が大きくなることへの不安、思うように体が動かないことへの焦り、仕事や家事がこれまでのようにこなせないことが重なると、本来うれしいはずの妊娠を心から喜べなくなってしまうことがあります。
以下は、妊娠うつの症状の例です。
- 突然イライラする
- 何もやる気が起きない
- 妊娠前に好きだったことが楽しめなくなった
- 食欲にムラがある
- 気分が落ち込む
- 眠れない、疲れが取れずだるい
うつ病は、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失がほぼ毎日、2週間以上続くことが診断の目安になります[3]。だるさや眠気、食欲の変化は妊娠そのものでも起こるため見過ごされやすいのですが、「楽しめない」「自分を責めてしまう」が続くときはうつ病を考える手がかりになります。背景には、ホルモンの変化、妊娠中の生活で感じるストレス、パートナーや家族との関係、過去のうつ病の経験などが関わるとされています[3]。
マタニティブルーとの違い
妊娠中の落ち込みを「マタニティブルー」と呼ぶことがありますが、医学的なマタニティブルーは「産後」に起こる一時的な気分の不安定さを指します。出産後数日のうちに涙もろさやイライラ、不安が出て、多くは2週間以内に自然におさまります[3]。
つまり、妊娠中期に続くだるさや無気力感は、マタニティブルーではありません。「そのうち治るブルー」と考えて様子を見るのではなく、2週間以上続く落ち込みであれば、上の妊娠うつの可能性を考えて、かかりつけの産婦人科で相談しましょう。
つわり
一般的に妊娠中期に入ると落ち着くといわれているつわりですが、個人差が大きく、妊娠中期に入っても症状が続く人がいます。食事が十分にとれない状態が続けば、それだけで体はだるくなります。
つわりの原因は長くはっきりしませんでしたが、近年、胎盤(赤ちゃん側)がつくるホルモンGDF15と、それに対するお母さん側の感受性が吐き気・嘔吐の強さに関わることが報告されています[4]。体重が減る、水分もとれないといった場合は、妊娠悪阻(にんしんおそ)として治療が必要なこともあります。
胎児の急激な成長
妊娠中期は、胎盤を通して栄養や酸素を受け取りながら、お腹の赤ちゃんが急速に大きくなる時期です。お母さんの血液と赤ちゃんの血液が直接混ざるわけではありませんが、胎盤へ十分な血液を送るために、お母さんの体は大きく変わります。
妊娠中は血液の液体成分(血漿)が約45%増えるのに対し、赤血球の増加は20〜30%ほどにとどまります[5]。そのため血液が薄まった状態になり、さらに赤ちゃんと胎盤のために鉄の必要量が増えるので、鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。妊娠中の貧血は、WHOの基準でヘモグロビン11.0 g/dL未満とされています[6]。貧血まではいかなくても、体内の鉄の貯蔵が減っているだけでだるさを感じることがあります。
貧血では、だるさのほかに動悸や息切れ、立ちくらみが出ることもあります。妊娠中期の眠気や動悸については、それぞれ専用の記事で詳しく解説しています。
妊娠中期の無気力対処法5選

「せっかくの安定期なのに何もやる気が出ない」そんな妊娠中期の無気力にお悩みの方に、5つの対処法を紹介します。妊娠中の症状は感じ方も原因もさまざまなので、自分にできそうなこと、合っていると思うことから試してみてください。
誰かに相談する
妊娠中期のだるさや無気力感には、精神的なストレスも関係しています。友人や先輩ママ、職場の同僚、家族など、話を聞いてもらえる人がいれば頼ってみましょう。日常の小さな困りごとや出産への不安など、ひとりで抱えている悩みを言葉にするだけで気持ちが軽くなることがあります。
身近な人に話しにくいときは、妊婦健診で助産師や医師に伝えたり、自治体の母子保健の窓口(子育て世代の相談窓口)を利用したりすることもできます。
健康的な食事を心がける
妊娠中期は鉄不足による貧血でだるさを感じやすい時期です。毎日の食事を見直してみましょう。
取り入れたいのは、鉄やたんぱく質を多く含む赤身の肉や魚、卵、大豆製品、緑の濃い野菜などです。肉や魚に含まれる鉄は体に吸収されやすく、野菜や大豆の鉄はビタミンCと一緒にとると吸収がよくなるので、果物や野菜を組み合わせるとよいでしょう。なお、レバーは鉄が多い一方でビタミンA(レチノール)も非常に多いため、妊娠中は食べすぎないようにします。
脱水もだるさの原因になるので、水分はこまめにとりましょう。甘い飲み物は糖分のとりすぎにつながるので控えめにします。食事で補いきれない貧血には鉄剤が処方されることがあるため、自己判断でサプリメントを重ねず、健診の血液検査の結果をもとに相談してください。
何もしない時間をつくる
妊娠中も、仕事や家事、上の子の世話などで休む時間がなかなか取れない方は多いでしょう。そんな方におすすめなのが、1日の中で何もしない自分だけの時間をつくることです。
たとえば、数十分ソファで横になる、温かい飲み物を飲みながらぼんやりするなど、ゆったりした時間をもつことでメリハリがつき、気力が戻ってくることがあります。夜にしっかり眠れていない場合は、短い昼寝も助けになります。
周囲に甘える
妊娠中期はお腹が急に大きくなる時期で、体のバランスがとりにくくなり、転びやすくもなります。お母さんの体が安全で、無理のない状態でいることが、赤ちゃんにとっても大切です。
体がだるいときは、重い荷物を持つ、高いところの物を取るといった作業を家族に任せるなど、遠慮せずに周囲に頼りましょう。職場では、医師の指導内容を事業主に伝える「母性健康管理指導事項連絡カード」を使って、勤務の配慮を求めることもできます。
やるべきことに優先順位をつける
まずは心身の健康を保つことを目標にして、やるべきことに優先順位をつけ、無理をしないようにしましょう。料理や洗濯、掃除、買い物などを「今日やること」「後回しにできること」「やらなくても何とかなること」に分け、やる気が出ない日は体を休めることを優先してかまいません。
🩺 院長コラム【「だるい」を気合いで片づけない】
妊娠中期のだるさは「安定期なのに」と自分を責める気持ちと結びつきやすいものです。けれども、血液が薄まって鉄が足りなくなる、甲状腺の働きが落ちる、うつ病が始まっているなど、だるさの背景には治療で軽くできるものが含まれています。
だるさや無気力感を「気の持ちよう」で片づけず、まず血液検査などで確かめられる原因を除いておくことが大切だと考えています。原因がはっきりすれば対処も具体的になり、ご本人が自分を責める理由もなくなるからです。
こんなときは受診を|貧血・甲状腺・うつのサイン
休んでもだるさが抜けない、ほかの症状をともなうといった場合は、次回の健診を待たずにかかりつけの産婦人科に相談しましょう。妊婦健診では、妊娠初期・24〜35週・36週以降に血液検査で貧血を確認することが国の基準で示されています[7]が、症状があれば時期を問わず調べてもらえます。
🩺 だるさ・無気力感で受診を考えたいサイン
| こんな症状 | 考えられること |
|---|---|
| 息切れ・動悸・立ちくらみ、顔色が悪い | 鉄欠乏性貧血 |
| 寒がり・むくみ・便秘・肌の乾燥が強い、首の腫れ | 甲状腺の働きの低下(甲状腺機能低下症) |
| 落ち込み・楽しめない状態が2週間以上続く | 妊娠中のうつ病 |
| 吐き気で水分もとれない、体重が減る | つわりの悪化(妊娠悪阻) |
| 発熱、強い頭痛、急なむくみ | 感染症、妊娠高血圧症候群など |
※症状だけで原因を決めることはできません。ここに当てはまるかどうかにかかわらず、気になるときはかかりつけの産婦人科に相談してください。
甲状腺の働きが落ちると、だるさ、寒がり、むくみ、便秘など、妊娠そのものとよく似た症状が出るため気づかれにくいのが特徴です。米国甲状腺学会のガイドラインも、妊娠中の甲状腺機能低下症は治療の対象であり、血液検査(TSHなど)で確認するよう示しています[8]。甲状腺の病気を指摘されたことがある方、家族に甲状腺の病気がある方はとくに、健診で伝えておきましょう。
⚠️ すぐに相談してほしいとき
気持ちの落ち込みが強く、「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」と感じるときは、ひとりで抱えずに、すぐにかかりつけの産婦人科や精神科、自治体の窓口に相談してください。夜間や休日で連絡がつかないときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)も利用できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 妊娠中期にだるいのはいつまで続きますか?
原因によって異なります。つわりが残っている場合は落ち着くとともに軽くなることが多く、貧血が原因なら鉄の補充で改善が期待できます。お腹が大きくなる妊娠後期に強まることもあるため、続く場合は原因を確かめることが大切です。
Q2. 妊娠中期の無気力はマタニティブルーですか?
医学的なマタニティブルーは、出産後数日のうちに起こり、多くは2週間以内におさまる一時的な気分の不安定さを指します。妊娠中期に続く無気力感はマタニティブルーではなく、2週間以上続く場合は妊娠中のうつ病の可能性も考えて、かかりつけの産婦人科で相談してください。
Q3. だるさは貧血のせいですか?
妊娠中は血液の液体成分が赤血球より多く増えて血液が薄まり、鉄の必要量も増えるため、貧血になりやすくなります。貧血は妊婦健診の血液検査で確認できるので、息切れや動悸、立ちくらみをともなうときは早めに相談しましょう。
Q4. 妊娠中期は何週から何週までですか?
日本産科婦人科学会の定義では、妊娠14週0日から27週6日までです。妊娠月数で5〜7か月(16〜27週)を中期と呼ぶ資料もありますが、医学的な区分は14週からです。
まとめ
妊娠中期(14週0日〜27週6日)のだるさや無気力感は、血液が薄まって起こる貧血、続くつわり、体型やホルモンの変化、気持ちの落ち込みなどが重なって起こります。相談する、食事を整える、何もしない時間をつくる、周囲に甘える、優先順位をつけるといった工夫で、少しずつ楽になることが多いものです。
一方で、2週間以上続く落ち込み、息切れや動悸、寒がりやむくみをともなう強いだるさは、貧血・甲状腺の病気・妊娠中のうつ病のサインのことがあります。「安定期だから」と我慢せず、かかりつけの産婦人科に相談してください。だるさは怠けではなく、体と心が変化しているサインです。
🧬 赤ちゃんの健康が気になったら
ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、NIPT(新型出生前診断)の前後の遺伝カウンセリングまで一貫して担当しています。検査を受けるかどうか迷っている段階のご相談もお受けしています。
参考文献
- [1] Bennett HA, Einarson A, Taddio A, Koren G, Einarson TR. Prevalence of depression during pregnancy: systematic review. Obstet Gynecol. 2004;103(4):698-709. [PubMed 15051562]
- [2] 日本産科婦人科学会 編. 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版. 日本産科婦人科学会; 2018.
- [3] O’Hara MW, Wisner KL. Perinatal mental illness: definition, description and aetiology. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol. 2014;28(1):3-12. [PubMed 24140480]
- [4] Fejzo M, Rocha N, Cimino I, et al. GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy. Nature. 2024;625(7996):760-767. [PubMed 38092039]
- [5] Soma-Pillay P, Nelson-Piercy C, Tolppanen H, Mebazaa A. Physiological changes in pregnancy. Cardiovasc J Afr. 2016;27(2):89-94. [PubMed 27213856]
- [6] World Health Organization. Haemoglobin concentrations for the diagnosis of anaemia and assessment of severity. WHO/NMH/NHD/MNM/11.1. 2011. [WHO]
- [7] 厚生労働省. 妊婦に対する健康診査についての望ましい基準(平成27年厚生労働省告示第226号).
- [8] Alexander EK, Pearce EN, Brent GA, et al. 2017 Guidelines of the American Thyroid Association for the Diagnosis and Management of Thyroid Disease During Pregnancy and the Postpartum. Thyroid. 2017;27(3):315-389. [PubMed 28056690]





