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一般的に、女性は健康な状態でも40代前半くらいから徐々に卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌量が減少していきます。それに伴い、さまざまな体調不良や生理不順、情緒不安定などの精神神経症状が現れ、女性のQOL(生活の質)が低下することを更年期障害と呼びます。
しかし近年、若い方でも更年期障害のような症状が出るケースがあるのをご存知ですか?
そのような場合、「卵巣機能不全」と診断される可能性があります。発症する年齢や原因にもよりますが、加齢によって卵巣機能が低下する更年期と違い、卵巣機能不全の中には一過性のものもあるので、適切な治療を受けることで改善できる可能性もあるのです。
この記事では、卵巣機能不全の原因や症状などの基本的な情報、治療と予防についてご紹介します。生理が数か月来ないという方やすでに卵巣機能不全と診断された方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
早期卵巣不全で気をつけるべきこと
早期卵巣不全は女性全体の1~2%に認めらる、決して稀なものではありません。早発卵巣不全の原因はさまざまです。大体はAMHの値が非常に低くて発見されるのですが、それから慌てて不妊治療で体外受精をする前に、していただきたい検査が遺伝専門医としてはあります。
実は、脆弱X症候群の保因者(キャリア)女性は259人に一人の確率で存在しているのですが、脆弱X症候群の保因者の女性は早期卵巣不全を来すのです。
早期卵巣不全だと判って、慌てて必死に、卵巣刺激、採卵、体外受精、着床、妊娠とおめでたいコースをたどってやっと生まれたお子さんが脆弱X症候群という重いX染色体連鎖の知的障害などがある疾患だった…という重い事例が実在します。
本来、産婦人科でこういう情報をきちんと患者さんにお伝えいただければよいのですが、現状、、そうなっていないので、わたしたち遺伝専門医は、早期卵巣不全とわかった段階で、一度、遺伝診療を受けていただきたいなと願っています。『避けられる不幸は避けたほうがいい』と確信しているからです。
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卵巣の機能とは
卵巣は、妊娠に必要な卵子を作り出し約ひと月に1回、受精可能な卵子を排出する機能と、エストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンを分泌する機能をもっています。これらは、女性の一生にとって非常に重要な機能です。
妊娠するためには、卵巣が正常に働いて卵子を作り出す必要がありますが、卵巣の機能は年齢を重ねるごとに低下することもわかっており、それに伴って妊娠しにくくなっていきます。
また、卵巣の機能低下とともに女性ホルモンの分泌量も減少していき、さまざまな心身の不調が現れるようになるのです。
卵巣機能不全とは
「更年期はいずれ誰にでも訪れるものとわかっているけれど、まだまだ自分には関係ない」と思われている方も多いですが、近年ではホルモンバランスの乱れなどにより、若い年齢の方でも卵巣機能不全の状態になることもあります。
卵巣機能不全とは、卵巣が正常に働かなくなることで、さまざまなトラブルが引き起こされる状態です。月経周期の乱れや無月経になるなど、目に見えてわかりやすいので、それらの症状がある場合は早めに受診しましょう。
ここでは、卵巣機能不全の原因や代表的な症状などの基本的な情報をご紹介します。
卵巣機能不全のタイプ
卵巣機能不全は、通常年齢を重ねることで起こりますが、近年では40歳未満で卵巣機能の低下により無月経となる早発卵巣不全(POF、POI)というケースが増えています。
早発卵巣不全では、月経が永久に再開しない早発閉経というタイプと、まれに卵胞発育や排卵が起こる2つのタイプがありますが、これらを見分けることは困難です。
最近では、これらの40歳未満で卵巣の正常な機能が停止した状態のことを、原発性卵巣機能不全と呼ぶようになりました。なぜなら、早発卵巣不全の状態であっても必ずしも閉経したり卵巣の機能が完全に停止したりするわけではなく、誤解を招くこともあるからです。
そのため、原発性卵巣機能不全と診断されたからといって、完全に妊娠が不可能だということではなく、卵巣が正常に機能していないという意味であることを理解しておく必要があります。
卵巣機能不全になりやすい方
以下は、卵巣機能不全になりやすい方の特徴です。
- 先天的に染色体異常があり卵巣機能が低下している方
- 甲状腺機能亢進症やアジソン病、重症筋無力症など自己免疫性疾患の方
- 卵巣摘出手術を受けた方
- 抗がん剤治療を受けた方
- 放射線治療を受けた方 など
卵巣機能不全は、上記でご紹介したようにいくつかのタイプに分けられますが、先天的な疾患の方や一部の治療を受けた経験のある方などが罹患しやすいようです。
卵巣機能不全の原因
上記でご紹介した先天的な染色体異常や自己免疫性疾患、卵巣の手術、抗がん剤治療、放射線治療などによる卵巣機能の低下が卵巣機能不全の原因になることもわかっています。それ以外でも、以下のような原因で起こる可能性があるので注意が必要です。
- 急激なダイエット
- 神経性食欲不振症
- 精神的、身体的ストレス
- 痩せ過ぎ
- 肥満
- 激しい運動
- 生活習慣の乱れ
卵巣の働きは、脳の中にある脳下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモン「ゴナドトロピン」によって支配されています。さらに脳下垂体前葉は間脳視床下部によって支配されており、それらはひとつのネットワークを形成し、互いに刺激したり抑制したりしながら卵巣の正常な機能を維持しています。
よって、これらの器官のどれかひとつにでも障害が起こってしまうと、卵巣機能不全が引き起こされてしまうのです。
ただし、先天的な問題や病気の治療が原因で起こる卵巣機能不全以外は、検査をしても原因不明なことが多く、原因の追求は困難です。
また、遺伝によって起こる可能性も少なからずありますが、早発卵巣不全(原発性卵巣機能不全)のほとんどは遺伝によるものではありません。
卵巣機能不全の代表的な症状
以下は、卵巣機能不全の代表的な症状です。
- 月経不順
- 3か月以上生理がこない無月経
- ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ、発汗など)
- うつ症状
- 不眠
- イライラ
- 骨折しやすくなる
- 心臓や血管に動脈硬化などの異常が起こりやすくなる
卵巣機能不全は、発症年齢によって症状が異なります。
たとえば、初潮前の年齢で発症した場合は月経が始まらない、二次性徴がみられないなどの症状を引き起こすこともありますが、妊娠可能な年齢では月経不順にはじまり、無月経や更年期のような症状が起こることも。このほかにも、骨密度の低下により骨折しやすくなったり骨粗鬆症になったりする恐れもあるので注意が必要です。
さらに、卵巣内に残存する卵子の数が非常に少なくなることから、妊娠が極めて困難になるなど、不妊症や不育症になることもあります。
卵巣機能不全の治療と予防について
生理がこない、経血の量が極端に少ないなど、月経異常がある場合は早めに婦人科を受診することが大切です。
病院では、現在妊娠していないことを確認してから、血液によるホルモン値の検査や超音波検査などで詳しく調べていきます。問診時には月経の状況を確認されるので、普段から基礎体温をつけておくとよいでしょう。
では、検査の結果卵巣機能不全と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
卵巣機能不全の治療の選択肢
以下は、卵巣機能不全の治療の選択肢です。
- ホルモン補充療法
- ピル
- 排卵誘発剤
- 漢方薬
卵巣機能不全の治療方法にはさまざまなものがありますが、ホルモン剤を用いて女性ホルモンを補うホルモン補充療法によって更年期症状の改善を図るのが一般的です。
カウフマン療法やホルムストロム療法、低用量ピルなどの服用により不足しているホルモンを補充します。
妊娠を希望する場合は、ホルモン補充療法を行いながら排卵を誘発する治療を行いますが、通常の排卵誘発には反応しないため、自分の卵子での妊娠を諦めざるを得ないケースも多いのが現状です。
将来的に子どもをもちたいという方は、早めに不妊治療を行うことをおすすめしますが、タイミング的にまだ現実的ではない場合は、卵子凍結なども考慮します。
このほか、ほてりなどの更年期症状の緩和を目的に、「当帰芍薬散」や「温経湯」などの卵巣機能不全に効果のある漢方薬も用いられることがあります。
卵巣機能不全の予防について
実際のところ、卵巣機能不全を予防することは難しく、確実な方法はないのが現状です。
しかし、先天的な問題や病気の治療が原因で起こるもの以外の卵巣機能不全を予防するためには、バランスの良い食生活と生活習慣の見直し、ストレスの緩和によって自律神経を整えることが重要だといえます。
近年、10〜20代の若い世代では、過度なダイエットなどによって無月経になる方も少なくありません。極端に食事を減らすのではなく、筋トレなどの運動を取り入れて無理のない範囲でダイエットをすることをおすすめします。
ちなみに、いったん早発卵巣不全と診断されたとしても、その後排卵や月経が起こり妊娠できる可能性もあります。さらなる卵巣機能の低下を避けるためにも、喫煙を避けるなどリスク因子を減らすよう心がけましょう。
まとめ
卵巣機能不全の原因や症状などの基本的な情報、治療と予防についてご紹介しました。
卵巣機能不全は、卵巣から分泌される女性ホルモンが低下している状態で、若い世代から閉経前の世代まで幅広い年代の女性がかかる可能性があります。
原因は、年齢に伴うものから卵巣の手術や抗がん剤治療などによるもの、生活習慣やストレス、過度のダイエットまでさまざまです。
若い世代にみられる卵巣機能不全は、放置してしまうと将来的に不妊症や骨粗鬆症などのリスクを高める原因にもなります。気になる症状がある場合は、早めに婦人科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。