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子宮復古不全とは?産後に子宮が戻らない症状・原因・治療と受診の目安

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

子宮復古不全(しきゅうふっこふぜん)とは、出産後に子宮が妊娠前の大きさへ戻っていく「子宮復古」が、産後の日数に比べて遅れている状態のことです。赤い悪露(おろ)がいつまでも続く、量が減らない、血の塊が何度も出る、においが強くなるといった変化が手がかりになります。出血が急に増えた、発熱した、強い下腹部痛があるというときは、産後1か月健診を待たずに出産した医療機関へ連絡してください。この記事では、正常な子宮の戻り方の目安、症状と受診のタイミング、原因になりやすい条件、診断と治療、次の妊娠への影響までを順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🤱 産後の子宮・悪露・子宮復古
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 子宮復古不全とはどんな状態ですか?

A. 出産後、子宮は6〜8週ほどかけて妊娠前の大きさに戻ります。この戻りが遅れて、子宮が大きく柔らかいままになり、赤い悪露や出血が長く続く状態を子宮復古不全といいます。胎盤や卵膜の一部が子宮の中に残ることや感染が主な原因で、多くは子宮収縮薬などの治療で回復します。出血が多い、発熱がある、悪露のにおいが強いといった変化は、早めに出産した医療機関へ伝えてください。

  • ➤正常な戻り方 → 産後2週ごろにはお腹の上から子宮に触れなくなり、6〜8週でほぼ妊娠前の状態へ
  • ➤主な症状 → 赤い悪露が長引く、量が減らない、血の塊、悪臭、下腹部痛、貧血によるだるさ
  • ➤主な原因 → 胎盤・卵膜の遺残、子宮内の感染、子宮筋腫、多胎や羊水過多による子宮の引き伸ばしなど
  • ➤治療 → 子宮収縮薬、感染や貧血の治療、必要に応じて子宮内の遺残物を取り除く処置

1. 子宮復古不全とは?

子宮復古不全とは、出産後に子宮が縮んで妊娠前の状態に戻る過程(子宮復古)が遅れ、産後の日数に比べて子宮が大きく柔らかいままの状態を指します。子宮の戻りが遅れると、胎盤がはがれたあとの傷から出る出血が止まりにくくなり、赤い悪露が長く続いたり、量がなかなか減らなかったりします。厚生労働省の母性健康管理の用語解説でも、子宮が元の大きさに収縮しない状態や、悪露が子宮内にとどまって感染を起こしやすい状態が続くことが、産後の回復不全の例として挙げられています[1]。

産後の体が妊娠前の状態に戻るまでの期間を産褥期(さんじょくき)といい、およそ6〜8週間です[2]。子宮復古不全は、この産褥期のうち主に最初の数週間に問題になります。まず、正常な子宮の戻り方を知っておくと、「いまの状態は日数に見合っているか」を考えやすくなります。

子宮復古とは|産後に子宮が元に戻るしくみ

子宮復古とは、妊娠中に大きくなった子宮が、出産後に縮みながら妊娠前の大きさと状態へ戻っていく一連の変化のことです。米国国立医学図書館の医学教科書StatPearlsによると、子宮の重さは出産直後に約1,000g、産後1週の終わりに約500g、産後6週には約50gまで減っていきます[3]。1か月半ほどで重さが20分の1になるほどの、大きな変化です。

この変化の中心にあるのは、子宮の筋肉(子宮筋)の収縮です。胎盤がはがれたあとの子宮の内側には、胎盤とつながっていた血管の断面が多数残ります。子宮筋がぎゅっと縮むと、筋肉の線維のあいだを通る血管が締めつけられ、出血が抑えられます。子宮がしっかり縮むことは、出血を止める仕組みそのものでもあるのです。子宮の内側を覆う子宮内膜も、StatPearlsによれば通常2〜3週間で再生します[3]。

子宮の収縮を後押しするホルモンのひとつがオキシトシンです。赤ちゃんが乳首を吸うと脳からオキシトシンが分泌され、子宮が収縮します。Cochraneのシステマティックレビューでも、授乳時に分泌されるオキシトシンが子宮を収縮させ、産後の痛み(後陣痛)を強めることが説明されています[4]。オキシトシンは子宮筋と乳腺にある受容体に結合して働きます。受容体の構造やバソプレシンとの関係はオキシトシン受容体の解説で扱っています。

💡 用語解説:オキシトシン

オキシトシンは脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで、陣痛のときや出産後に子宮を収縮させる働きと、授乳のときに乳汁を押し出す働きをもっています。医療の現場では、同じ成分の注射薬が陣痛促進や産後の出血予防・治療に使われます。飲み薬ではなく、点滴や注射で使う薬です。

子宮復古はいつまで?正常な戻り方の目安

子宮はおおむね産後6〜8週でほぼ妊娠前の状態に戻ります。母子衛生研究会の解説では、産後1週目にはまだ下腹部あたりで子宮に触れますが、2週目にはさらに縮んでお腹の上からは触れなくなり、4週目には妊娠前の大きさに近づき、6〜8週ごろにおよそ妊娠前の状態に戻るとされています[2]。

出産直後子宮は硬く縮む・約1,000g
▶
産後1週下腹部で触れる・約500g
▶
産後2週お腹の上から触れない
▶
産後6〜8週ほぼ妊娠前・約50g

悪露も、子宮の戻り具合を映す目安になります。悪露とは、出産後に子宮から出てくる血液や子宮内膜のはがれたもの、粘液などが混じった分泌物のことです。StatPearlsによると、悪露は最初の1〜4日ごろは血液が主体の赤い色で、5〜9日ごろには黄色から淡い褐色に変わり、10日目以降は白っぽくなって、長い人では産後5週ごろまで続きます[3]。

📅 正常な子宮復古と悪露の変化の目安

時期 子宮の状態 悪露の様子
出産直後〜4日ごろ 硬く縮み、重さは約1,000g 赤色(血液が主体)
産後1週ごろ 下腹部で触れる。約500g 黄色〜淡い褐色へ(5〜9日ごろ)
産後2週ごろ お腹の上からは触れなくなる 白っぽい悪露へ(10日目以降)
産後4週ごろ 妊娠前の大きさに近づく 茶色い悪露が混じることもある
産後6〜8週 ほぼ妊娠前の状態(約50g) 多くは終わっている

※子宮の位置と期間は母子衛生研究会[2]、重さと悪露の色の変化はStatPearls[3]による目安です。個人差があり、日数どおりに進まないこと自体がすぐ異常を意味するわけではありません。

StatPearlsは、赤い悪露が1週間を超えて続く場合は子宮復古不全の可能性があると述べています[3]。また、産後数日は子宮が縮むときの痛み(後陣痛)を感じることがあります。Cochraneのレビューによると、後陣痛は出産経験のある人のほうが強く感じやすいとされています[4]。痛みそのものは子宮がきちんと縮んでいる証でもあり、後陣痛を含む子宮収縮の全体像は別の記事で解説しています。

💡 用語解説:悪露(おろ)

悪露は、出産後に子宮から出てくる分泌物の総称です。胎盤がはがれたあとの傷からの出血、はがれ落ちた子宮内膜、粘液などが混じっています。子宮の傷が治るにつれて、赤→褐色・黄色→白へと色が変わり、量も減っていきます。色や量、においの変化は、子宮の回復具合を知るための手がかりになります。

帝王切開のあとは子宮の戻りが遅い?

帝王切開のあとは、経腟分娩に比べて子宮底(子宮のいちばん上の部分)の位置が高めに推移することが報告されています。ただし、それだけで子宮復古不全とは判断されません。国内で帝王切開と経腟分娩の産後経過を比べた研究では、産褥1日目を除いて、帝王切開のほうが子宮底長が高い傾向がみられました[5]。

研究者はこの差の理由として、手術による子宮への操作、術後の長い安静、授乳開始の遅れを挙げています[5]。帝王切開では子宮の筋肉を切開して縫い合わせるため、傷の周りの筋肉は一時的に縮みにくくなります。術後しばらくはベッド上で過ごす時間が長く、赤ちゃんに直接授乳できる時期が遅れることもあります。こうした条件が重なると、経腟分娩よりも子宮の戻りがゆっくり見えることがあります。

一方でこの研究では、帝王切開後に子宮底が高いことと悪露の量には関連がみられず、子宮底長と悪露の量だけでは子宮の収縮状態を判断できないとも指摘されています[5]。帝王切開後の「戻りが遅い」は、ある程度は想定の範囲内です。気になるときは数字だけで判断せず、出血の量や色、痛み、発熱の有無とあわせて、健診や退院時の説明の内容を確認してください。

2. 子宮復古不全の症状と兆候

子宮復古不全の主な症状は、赤い悪露が長く続く、悪露の量が減らない、血の塊が何度も出る、下腹部の痛み、貧血によるだるさや息切れです。感染を伴うと、発熱や悪露のにおいの変化が加わります。厚生労働省の母性健康管理の用語解説でも、子宮復古不全では疲れやすさ、背部痛、下腹痛、出血の持続が、悪露が子宮内にとどまる状態では発熱や分泌物の色・においの変化がみられるとされています[1]。

よくある症状

最も気づきやすいのは、悪露の変化です。通常は数日で赤から褐色に変わるはずの悪露が、1週間を過ぎても赤いまま続く、いったん減ったのに再び鮮やかな赤い出血が増える、といった経過は、子宮の戻りが遅れているサインになりえます[3]。子宮の収縮が弱いと、子宮の中に血液がたまって固まり、レバーのような塊として出てくることもあります。

医療者が診察すると、子宮は産後の日数に比べて大きく、押すと柔らかく触れます。本来なら下腹部の奥に沈んでいるはずの時期に、子宮底が高い位置で触れることもあります。本人が感じる症状としては、下腹部の重苦しさや鈍い痛み、腰の痛みがあります。

出血が長引けば、貧血が進みます。立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすさ、顔色の悪さなどは、授乳や夜間の育児による疲れと区別がつきにくい症状です。産後は誰でも疲れているものだと思い込んで見過ごされやすいので、出血の状況とあわせて考えることが必要です。

すぐに受診すべき危険なサイン

出産から24時間以上たってから起こる多量の出血は「晩期産褥出血(二次性の産後出血)」と呼ばれ、子宮復古不全の代表的な合併症です。米国産婦人科学会(ACOG)は、分娩後24時間を過ぎてから産後12週までに起こる過剰な出血をこう定義し、原因として胎盤付着部の復古不全、胎盤や卵膜などの遺残、感染、遺伝性の凝固異常を挙げています[6]。

晩期産褥出血の頻度は、先進国で分娩の0.47〜1.44%と報告されています[7]。2023年のシステマティックレビューは、高所得国では産後女性の約2%がこの出血で入院していると推定しています[8]。また、晩期産褥出血の95%は産後1か月以内に起こるとされています[7]。退院後、産後1か月健診までの期間がもっとも注意の必要な時期です。

⚠️ 出産した医療機関にすぐ連絡してほしいサイン

・ナプキンが1時間もたないほどの出血や、止まらない鮮血
・大きな血の塊が何度も出る
・38℃以上の発熱や寒気
・悪露のにおいが強くなった、膿のような色になった
・下腹部の強い痛みや、押すと痛む
・めまい、動悸、息切れが強く、立っていられない
夜間や休日で連絡がつかないときは、救急の受診を検討してください。

このうち出血の量は、「生理の多い日よりも明らかに多い」「横になっていても流れ出る」といった感覚も判断材料になります。発熱やにおいの変化は、子宮の中で細菌が増えて炎症が起きている可能性を示します。いずれも、自宅で様子をみるより、まず電話で状況を伝えて指示を受けるのが確実です。

放置するとどうなる?

軽い子宮復古不全は、薬や生活の工夫で改善することが多い一方、見過ごされると感染や大量出血につながることがあります。悪露が子宮の中にとどまると細菌が増えやすくなり、子宮の内側に炎症が起こる子宮内膜炎の原因になります[1]。子宮内膜炎は、晩期産褥出血の主な原因のひとつでもあります[8]。

出血が続けば貧血が進み、授乳や育児に必要な体力が戻りにくくなります。大量に出血した場合は、点滴や輸血、子宮の中の遺残物を取り除く処置、子宮に向かう動脈を詰める治療(動脈塞栓術)などが必要になることもあります[8]。晩期産褥出血は頻度の高いものではありませんが、起こったときには急を要する状態です。

「子宮復古不全は命に関わるのか」と心配して調べる人も多いのですが、早い段階で気づいて治療につなげれば、多くは重い状態に進む前に対応できます。産後の出血や発熱を「そのうち治まるだろう」と我慢しないことが、重症化を防ぐいちばんの方法です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「様子をみる」と「連絡する」の線引き】

産後の悪露は日によって量が増えたり減ったりしながら少しずつ落ち着いていくので、どこからが異常なのか、ご本人には判断がつきにくいものです。赤ちゃんの世話に追われて、自分の体のことは後回しになりがちでもあります。

線引きの目安は、「日数に見合った変化をしているか」と「出血・発熱・においの変化があるか」の2点だと考えています。迷ったときは受診するかどうかを自分で決めず、まず出産した医療機関に電話で状況を伝えてください。判断を専門家に預けることも、産後の体を守る方法のひとつです。

3. 子宮復古不全の原因|なりやすい人の特徴

子宮復古不全は、子宮の中に何かが残っていて縮めない場合、子宮の筋肉そのものが縮みにくくなっている場合、感染で回復が妨げられている場合の大きく3つの経路で起こります。ACOGは、子宮が十分に縮まない状態(子宮弛緩)の危険因子として、多胎・羊水過多・巨大児による子宮の過伸展、子宮筋腫、長時間の分娩、絨毛膜羊膜炎、硫酸マグネシウムの使用などを挙げています[6]。ここでは、なりやすい条件を7つに分けて説明します。

🧩 子宮復古不全の原因となりやすい条件

条件 子宮の戻りが遅れる仕組み
胎盤・卵膜の遺残 残ったものが子宮の収縮を妨げ、感染の足場にもなる
子宮筋腫 筋腫のある部分の筋肉が均一に縮みにくい
羊水過多・多胎・巨大児 子宮が強く引き伸ばされ、筋肉が縮みにくくなる
子宮収縮抑制剤の使用 子宮の緊張を下げる薬の作用が残る可能性
授乳ができていない 授乳によるオキシトシンの分泌が少ない
帝王切開 手術操作、術後の安静、授乳開始の遅れ
膀胱・直腸の充満 膀胱や腸が張って子宮を押し上げる

※危険因子は複数が重なることがあります。危険因子がなくても子宮復古不全が起こることはあり、危険因子があっても多くの人は正常に回復します。

胎盤や卵膜が子宮に残っている(最も多い原因)

子宮復古不全と晩期産褥出血の原因として最も多いのは、胎盤や卵膜(赤ちゃんを包んでいた膜)の一部が子宮の中に残ること(遺残)と、子宮内の感染です。産後出血の専門書でも、胎盤組織の遺残と子宮内膜炎が最も多い原因とされています[7]。デンマーク産婦人科学会のガイドラインによれば、産後の女性の約1〜6%に子宮内の遺残物がみられます[9]。

胎盤は通常、赤ちゃんが生まれたあと数分から数十分で子宮の壁からはがれて外に出ます。このとき、胎盤の一部や卵膜の切れ端が子宮の壁に付いたまま残ることがあります。残ったものがあると、子宮はその部分でうまく縮めず、胎盤がついていた場所の血管も閉じにくくなります。さらに、残った組織は細菌が増える足場にもなり、感染の原因になります。

胎盤が子宮の壁に深く入り込んではがれにくくなる癒着胎盤では、遺残が起こりやすくなります。出産時に胎盤を娩出したあと、医師は胎盤の欠けや卵膜の残りを確認しますが、小さな遺残は出産直後にはわからず、産後しばらくたってから出血や超音波検査で見つかることもあります。

子宮筋腫がある

子宮筋腫があると、産後の出血が多くなりやすいことが報告されています。2024年に発表されたメタ解析では、子宮筋腫がある妊婦の産後出血の割合は10.10%で、筋腫がない妊婦の3.96%より高く、ほかの要因を調整したあとの相対リスクは2.29倍でした[10]。ACOGも子宮筋腫を子宮弛緩の危険因子に挙げています[6]。

子宮筋腫は子宮の筋肉からできる良性の腫瘍で、がんとは別の病気です。筋腫のある部分の筋肉は、周りの正常な筋肉と同じようには縮みません。そのため子宮全体が均一に収縮しにくく、胎盤がついていた部分の出血が止まりにくくなることがあります。

また、筋腫の位置や大きさによっては、悪露が子宮の外へ流れ出るのを妨げることもあります。悪露が子宮の中にとどまると、子宮が縮みにくくなるうえに感染の危険も高まります。ただし、上のメタ解析が調べているのは産後出血全般で、子宮復古不全だけを分けて評価したものではありません。筋腫があっても、多くの人は問題なく回復します。

羊水過多・多胎・巨大児で子宮が引き伸ばされた

子宮が妊娠中に強く引き伸ばされていた場合、出産後に子宮が縮みにくくなります。ACOGは、多胎妊娠、羊水過多(羊水が多すぎる状態)、巨大児を、子宮の過伸展による子宮弛緩の危険因子として挙げています[6]。

ゴムを限界近くまで引き伸ばすと元に戻る力が弱くなるように、子宮の筋肉も引き伸ばされすぎると、出産後に収縮する力が落ちます。双子などの多胎妊娠では、子宮の中に赤ちゃんと胎盤が複数あるため、単胎妊娠よりも子宮が大きくなります。胎盤がついていた面積も広くなるので、そのぶん出血する範囲も広くなります。

羊水過多や巨大児でも、同じように子宮が大きく引き伸ばされます。こうした妊娠では、分娩直後から子宮収縮薬を使うなど、出血を予防する対応がとられることがあります。退院後も、悪露の変化には通常以上に注意を払ってください。

子宮収縮抑制剤を長く使った

切迫早産などで子宮の収縮を抑える薬(子宮収縮抑制剤)を使っていた場合、出産後に子宮が縮みにくくなる可能性が指摘されています。ただし、根拠となるデータは一致していません。ACOGは硫酸マグネシウムの使用を子宮弛緩の危険因子に含めています[6]。一方、2021年のメタ解析では、硫酸マグネシウムを使った人と使わなかった人とで、子宮弛緩や産後出血の頻度に統計的に明らかな差は認められませんでした[11]。

子宮収縮抑制剤は、早すぎるお産を防ぐために子宮の筋肉をゆるめる薬です。切迫早産の治療で使われ、日本では長期間にわたって使われることもあります。薬の作用が出産の時点まで残っていれば、産後の子宮の収縮に影響する可能性は理論的に考えられます。

しかし、長期間の使用そのものと子宮復古不全との関係を直接調べたデータは限られています。子宮収縮抑制剤を使った人が必ず子宮復古不全になるわけではありません。使用歴がある場合は、出産した医療機関がそれを踏まえて産後の経過をみていますので、過度に心配する必要はありません。

授乳をしていない・できない

授乳のときに分泌されるオキシトシンは子宮を収縮させるため、授乳は子宮の戻りを後押しします。Cochraneのレビューも、授乳時のオキシトシンが子宮を収縮させることを説明しています[4]。授乳中に下腹部がきゅっと痛むのは、このためです。

ただし、授乳をしていないことが子宮復古不全の直接の原因になると示した質の高いデータは限られています。母乳が出にくい、赤ちゃんが入院している、服薬の関係でミルクを選んでいるなど、授乳できない理由は人それぞれです。ミルクで育てている人の子宮も、多くは問題なく元に戻ります。

授乳は子宮の回復を助ける要素のひとつとして考え、授乳できないことに負い目を感じる必要はありません。母乳の出方や授乳の方法に悩みがある場合は、出産した医療機関の助産師や母乳外来に相談すると、具体的な方法を教えてもらえます。

帝王切開で出産した

帝王切開では、経腟分娩に比べて子宮の戻りがゆっくりになる傾向があります。前述の国内研究では、帝王切開後は産褥1日目を除いて子宮底長が経腟分娩より高く、その理由として手術操作、長期の安静、授乳開始の遅れが挙げられていました[5]。

帝王切開の手術では、子宮の筋肉を切開し、赤ちゃんと胎盤を取り出したあとに縫い合わせます。縫い合わせた部分は傷が治るまで縮みにくく、子宮全体の収縮にも影響します。術後は痛みのために体を動かしにくく、ベッドで過ごす時間が長くなりがちです。赤ちゃんとの直接授乳が始まるのが遅れることもあります。

帝王切開の手術中や術後には、多くの施設で子宮収縮薬を使って出血を予防しています。帝王切開だから必ず子宮復古不全になるわけではなく、戻りがゆっくりであることを前提に、医療者が経過を確認しています。気になる症状があれば、帝王切開であることを伝えたうえで相談してください。

膀胱や直腸の充満(排尿の我慢・便秘)

膀胱に尿がたまったり、便秘で腸が張ったりすると、子宮が押し上げられて縮みにくくなります。子宮の前には膀胱が、後ろには直腸があり、どちらかが大きく膨らむと子宮の位置が上がり、収縮の妨げになります。医療者が子宮の戻りを確認するときに、排尿を済ませてから診察するのはこのためです。

産後は、会陰の傷の痛みや分娩による神経の圧迫で尿意を感じにくくなることがあります。赤ちゃんの世話に追われてトイレを後回しにしがちなうえ、水分不足や痛みで便秘にもなりやすい時期です。尿意を感じたら我慢せずトイレに行き、水分と食物繊維を意識してとってください。

食事や水分の工夫で便秘が改善しない場合は、授乳中であることを医師・薬剤師に伝え、使用できる便秘薬について相談してください。授乳中でも使用できる便秘薬がありますが、薬剤ごとに授乳への影響や注意点が異なります。

そのほかのリスク

長時間の分娩や、陣痛促進のためのオキシトシンの長時間使用、分娩中の感染(絨毛膜羊膜炎)も、子宮が縮みにくくなる要因です。ACOGはこれらを子宮弛緩の危険因子に挙げ、晩期産褥出血の原因としてフォン・ヴィレブランド病などの遺伝性の凝固異常も挙げています[6]。

長時間の分娩では、子宮の筋肉が長く収縮を続けたことで疲れ、産後に十分な力で縮めなくなることがあります。絨毛膜羊膜炎は、赤ちゃんを包む膜や胎盤に細菌が感染した状態で、産後の子宮内の感染にもつながりやすくなります。

血が止まりにくい体質(凝固異常)は、産後の出血が長引く原因として見落とされやすいものです。以前から鼻血が止まりにくい、月経の量が多い、抜歯のあとの出血が長引いた、家族に同じような人がいる、といった心当たりがある場合は、妊娠中の健診のうちに伝えておくと、出産時の備えにつながります。

4. 「動きすぎ」は子宮復古不全の原因になる?

産後に「動きすぎ」たことが子宮復古不全の直接の原因になることを示すデータは、今回確認した範囲では見当たりません。むしろ長い安静は子宮の戻りを遅らせる要因として挙げられており、体調に合わせて少しずつ体を動かすのが基本です。帝王切開後に子宮底が高めに推移した国内研究でも、その理由のひとつとして術後の長期の安静が挙げられています[5]。

かつては、産後は長く床についているべきだと考えられていました。現在は、経腟分娩でも帝王切開でも、体調が許す範囲で早めに起き上がって歩くこと(早期離床)が一般的です。体を起こしていると悪露が子宮の外へ流れ出やすくなり、排尿や排便も促されます。先に述べたとおり、悪露が子宮の中にとどまることや、膀胱・直腸の充満は、どちらも子宮の戻りを妨げる要因です。

一方で、「動けるから」といって産後すぐに家事や上の子の世話をすべて引き受け、休む時間がほとんどない状態が続くと、疲労が重なります。疲れで食事や水分が不足すると、便秘や貧血も進みやすくなります。悪露は日によって量が増えたり減ったりしながら少しずつ落ち着いていくものなので、活動した日に多少増えること自体は珍しくありませんが、横になって休んでも出血が減らない、鮮やかな赤い出血が続く、血の塊が増えるといった変化は、動きすぎとは別に子宮の状態を確認する必要があるサインです。

目安としては、「疲れたら横になれる」「授乳や自分の食事・睡眠の時間が確保できている」範囲で動くことです。産後1か月ほどは、重い物を持つ、長時間立ち続ける家事などは周りの人に頼み、休息と軽い活動を組み合わせてください。家族の協力が得にくい場合は、自治体の産後ケア事業や家事支援サービスを利用する方法もあります。

「動きすぎたせいで子宮の戻りが悪くなったのでは」と自分を責める必要はありません。子宮復古不全の主な原因は、前章で説明した胎盤・卵膜の遺残や感染、子宮の過伸展などです。気になる症状があるときは、活動量の問題として片づけず、症状そのものを出産した医療機関に伝えてください。

5. 子宮復古不全の診断

子宮復古不全は、産後の日数に比べて子宮が大きく柔らかいかどうかを触診で確かめ、超音波検査で子宮の中の遺残物や血液のたまりを調べ、血液検査で貧血や炎症の程度をみて診断します。晩期産褥出血の評価では、血液検査、凝固検査、腟の分泌物の細菌培養、骨盤の超音波検査が行われます[7]。

触診で子宮底の高さと硬さをみる

最初に行われるのは、お腹の上から子宮に触れて、子宮底の高さと子宮の硬さを確かめる診察です。正常に戻っている子宮は硬く締まって触れ、産後の日数に応じて下腹部の低い位置へ沈んでいきます。子宮復古不全では、日数に比べて子宮底が高く、押すと柔らかく触れます。

この診察は、正確に行うために排尿を済ませてから行います。膀胱に尿がたまっていると、子宮が押し上げられて実際より高く触れてしまうためです。あわせて、悪露の量・色・においを確認し、子宮を押したときに痛みがないかも調べます。子宮を押すと強く痛む場合は、子宮内膜炎などの感染が疑われます。

帝王切開後は、前述のように経腟分娩よりも子宮底が高めに推移することがあります[5]。そのため子宮底の高さだけで判断せず、出血の状況や全身状態、次に説明する超音波検査の結果をあわせて評価します。

超音波検査で子宮内の遺残物をみる

超音波検査は、子宮の大きさと、子宮の中に胎盤や卵膜の遺残物、血液のたまりがないかを確認するための中心的な検査です。産後出血の専門書では、骨盤の超音波検査で遺残物がないと判断された場合、その結果が正しい確率(陰性的中率)は96%と紹介されています[7]。

ただし、遺残物の診断は超音波検査でも難しいことがあります。デンマーク産婦人科学会のガイドラインは、遺残物が超音波上で正常な産後の子宮の変化と似て見えることがあると指摘し、子宮内膜の厚みや内部の塊、カラードプラ法による血流の有無を、症状とあわせて判断するよう勧めています[9]。産後の子宮の中には、遺残物がなくても血液の塊や分泌物がある程度たまっているためです。

超音波検査で判断が難しい場合や、血管の異常が疑われる場合には、MRIなどの画像検査が追加されることもあります。どの検査を行うかは、出血の量や症状、超音波検査の所見によって決まります。

血液検査で貧血と炎症をみる

血液検査では、出血による貧血の程度と、感染による炎症の有無を確認します。ヘモグロビン値で貧血の程度を、白血球数やCRPなどで炎症の程度を評価します。出血が長引いている場合や、原因がはっきりしない場合には、血液の固まりやすさを調べる凝固検査も行われます[7]。

発熱や悪臭のある悪露など感染が疑われる場合は、腟や子宮の分泌物を採って細菌培養を行い、原因となっている菌の種類と、効く抗菌薬を調べます[7]。培養の結果が出るまでには数日かかるため、症状が強い場合は結果を待たずに治療を始めます。

貧血の程度は、治療方針や、授乳・育児をどこまで続けられるかにも関わります。ヘモグロビン値が大きく下がっている場合は鉄剤による治療が必要になり、出血が多い場合は入院での治療が検討されます。

6. 子宮復古不全の治療

子宮復古不全の治療は、子宮の収縮を促す薬(子宮収縮薬)が中心で、感染があれば抗菌薬、貧血があれば鉄剤を使い、子宮の中に遺残物があって薬で改善しない場合は取り除く処置を行います。産後出血の専門書でも、晩期産褥出血の治療として子宮収縮薬、抗菌薬、遺残物が疑われる場合の子宮内容の除去が挙げられています[7]。軽症なら外来での内服治療、出血が多い場合や感染が強い場合は入院での治療になります。

子宮収縮薬(飲み薬・注射)

子宮復古不全の飲み薬として代表的なのは、メチルエルゴメトリンという子宮収縮薬です。国内の添付文書では、メチルエルゴメトリン錠の効能に「子宮復古不全」が明記されており、通常1回0.125〜0.25mgを1日2〜4回服用します[12]。出血が多い場合には、同じ成分の注射薬や、オキシトシンの点滴・注射が使われます[13]。オキシトシンは飲み薬ではなく、点滴や注射で使う薬です。

メチルエルゴメトリンは、子宮の筋肉を持続的に収縮させることで、出血を抑え子宮の戻りを助けます。一方で血管を収縮させる作用もあるため、ACOGは高血圧や妊娠高血圧腎症、心血管疾患のある人には使わないとしています[6]。国内の添付文書でも、重い虚血性心疾患や敗血症のある人などは使用できないとされています[12]。妊娠中に血圧が高かった人は、そのことを必ず伝えてください。

授乳中の服用について、国内の添付文書は、薬が母乳に移ることが報告されているため、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考えて、授乳を続けるか中止するかを検討するよう求めています[12]。米国の医薬品と授乳のデータベースLactMedは、出産直後の短期間の使用であれば乳児に問題となる量が移る可能性は低いとする一方、数日間使用した場合に乳児の血圧上昇や嘔吐などの報告があることや、使用期間によっては母乳の量が減る可能性にも触れています[14]。授乳を続けるかどうかは、処方を受けるときに医師と相談して決めてください。

💡 用語解説:子宮収縮薬

子宮収縮薬は、子宮の筋肉を縮める作用をもつ薬の総称です。陣痛を強めるため、または産後の出血を予防・治療するために使われます。産後に使う主な薬は、飲み薬と注射があるメチルエルゴメトリン(麦角アルカロイドという成分の仲間)と、点滴や注射で使うオキシトシンです。どの薬をどの方法で使うかは、出血の量や血圧などの状態によって決まります。

感染や貧血の治療(抗菌薬・鉄剤)

子宮内膜炎などの感染を伴う場合は抗菌薬を、出血による貧血がある場合は鉄剤を使います。晩期産褥出血の治療では、子宮収縮薬に加えて、幅広い細菌に効く抗菌薬が使われます[7]。感染が治まると子宮の炎症がひいて、子宮が縮みやすくなり、出血も落ち着いていきます。

抗菌薬は、最初は原因菌を想定して選び、細菌培養の結果が出たら、その菌に効く薬に切り替えることがあります。症状が軽くなっても、処方された日数は飲み切ることが基本です。授乳中でも使える抗菌薬は多いので、授乳していることを必ず伝えたうえで処方を受けてください。

貧血には、飲み薬の鉄剤がよく使われます。ヘモグロビン値が大きく下がっている場合や、飲み薬で胃の不調が強い場合は、点滴で鉄を補うこともあります。鉄剤は便秘を起こしやすいので、便秘が子宮の戻りに影響しないよう、必要に応じて便をやわらかくする薬もあわせて相談してください。出血が多く貧血が急に進んだ場合は、輸血が必要になることもあります。

子宮内の遺残物を取り除く処置

子宮の中に胎盤や卵膜が残っていて、薬で出血が治まらない場合は、遺残物を取り除く処置が検討されます。デンマーク産婦人科学会のガイドラインは、全身状態が安定していれば経過観察も選択肢になるとしたうえで、薬による治療の効果は限られており、処置が必要になることが多いと述べています[9]。

処置の方法には、器具で子宮の内側をかき出す子宮内容除去術と、子宮の中にカメラ(子宮鏡)を入れて見ながら遺残物だけを切り取る子宮鏡下手術があります。同ガイドラインは、見えない状態で行う子宮内容除去術には子宮の壁に穴があく(子宮穿孔)ことや、子宮の内側が癒着して将来の妊娠に影響する可能性があることを指摘し、直接見ながら行える子宮鏡下手術を推奨しています[9]。どちらを行うかは、施設の体制や出血の状況によって決まります。

出血が大量で止まらない場合には、足の付け根などから細い管を入れて子宮に向かう動脈を詰める動脈塞栓術が行われることもあります。2023年のシステマティックレビューでは、報告されている研究ごとの出血が治まった割合は、薬による治療で8.2〜84.6%、遺残物を取り除く手術で89.3〜100%、動脈塞栓術で87.5〜100%と幅がありました[8]。研究の条件がばらばらで、どの治療が最適かを決める十分な根拠はまだないと、著者らは結論しています。遺残物がはっきりしていて出血が続く場合は、処置を先延ばしにせず取り除くことが検討されます。

授乳・排泄・休養など自分でできること

医療機関での治療と並行して、授乳、こまめな排尿と便通の管理、休息と栄養は、子宮の戻りを助けます。授乳時に分泌されるオキシトシンは子宮を収縮させます[4]。母乳で育てている場合は、授乳の回数が少なくなりすぎないようにすることも回復の助けになります。

尿意を感じたら我慢せずトイレに行き、水分と食物繊維を意識してとり、便秘を防いでください。膀胱や直腸が膨らむと子宮が押し上げられ、縮みにくくなります。出血で失われた鉄を補うため、赤身の肉や魚、大豆製品、緑の濃い野菜などを食事に取り入れ、処方された鉄剤はきちんと飲みましょう。

休養も治療の一部です。赤ちゃんが眠っているあいだは家事を後回しにして、一緒に横になる時間をつくってください。治療中は、悪露の量・色・においを毎日なんとなく観察しておくと、良くなっているか悪くなっているかを伝えやすくなります。薬を飲んでも出血が減らない、発熱した、腹痛が強くなったといった場合は、次の受診日を待たずに連絡してください。

子宮底輪状マッサージは医療者の指導で

子宮底輪状マッサージは、お腹の上から子宮のいちばん上(子宮底)を手のひらで円を描くようにさすり、子宮の収縮を促す方法です。行う場合は、医師や助産師から方法を教わってからにしてください。分娩直後の出血が多いときに医療者が行うことが多く、産後の入院中に子宮の戻りを確認しながら指導されることもあります。

マッサージによって子宮の筋肉が刺激されると、子宮が硬く縮み、胎盤がついていた部分からの出血が抑えられます。ただし、子宮の位置を正しくとらえられていないと効果がなく、帝王切開の傷がある場合や、強い痛みや感染がある場合には、自己流で強く押すことで痛みが増したり、体調を崩したりするおそれがあります。

子宮を冷やすと収縮が促される、という情報を見かけることがありますが、子宮復古不全の治療として腹部を冷却することを支持する十分な根拠は確認できません。自宅で子宮収縮を目的に腹部を冷やす必要はなく、出血や痛みがある場合は医療機関の指示に従ってください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【薬を飲むか、授乳を続けるかを二択にしない】

子宮収縮薬を処方されたとき、「薬を飲むなら授乳をやめなければならないのでは」と迷う方は少なくありません。添付文書が求めているのは、治療の必要性と母乳の利点を比べて決めることで、一律に授乳をやめることではありません。

薬の種類、使う期間、赤ちゃんの月齢や体調によって、選べる方法は変わります。授乳を続けたいのか、いったん休んでもよいのか、ご自身の希望を処方する医師に伝えて、そのうえで決めることが納得につながると考えています。

7. 子宮復古不全は次の妊娠に影響する?

子宮復古不全は、治療によって子宮が元の状態に戻れば、多くの場合、次の妊娠そのものへの影響は考えにくいとされています。ただし、子宮復古不全を経験した人が次の妊娠でどのくらい妊娠しにくくなるか、あるいは再び起こりやすいかを直接調べたデータは限られています。

次の妊娠に関わりうるのは、子宮復古不全そのものよりも、その原因や治療の内容です。前章で述べたように、見えない状態で行う子宮内容除去術では、子宮の内側が癒着して将来の妊娠に影響する可能性が指摘されています[9]。子宮の内側の癒着は、月経の量が極端に少なくなる、月経が来ないといった変化で気づかれることがあります。処置を受けたあとに月経の様子が以前と大きく変わった場合は、婦人科で相談してください。

また、子宮復古不全の原因になった条件の中には、次の妊娠でも重なりうるものがあります。子宮筋腫がある、前回の妊娠で癒着胎盤があった、帝王切開で出産した、といった場合は、次の妊娠の初期に妊婦健診を受ける医療機関へ、前回の出産の経過(子宮復古不全や晩期産褥出血があったこと、受けた治療)を具体的に伝えてください。出産時の出血への備えや、産後の経過観察の計画に役立ちます。

授乳していない場合、産後の月経は比較的早く戻ることがあり、月経が戻る前に排卵が起こって妊娠する可能性もあります。子宮の回復を待ちたい、体力を戻したいという場合は、産後1か月健診などの機会に避妊の方法もあわせて確認しておいてください。次の妊娠までの間隔や、年齢を踏まえた計画については、前回の出産の経過を知っている医療機関と相談しながら考えていくのが確実です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 悪露はいつまで続いたら受診したほうがよいですか?

赤い悪露が産後1週間を過ぎても続く、いったん減った出血が再び増えた、においが強くなった、という場合は、産後1か月健診を待たずに出産した医療機関へ連絡してください。通常、悪露は数日で赤から褐色、10日目以降は白っぽく変わり、長い人でも産後5週ごろまでに落ち着いていきます。

Q2. 血の塊が出たら子宮復古不全ですか?

産後数日のうちは、小さな血の塊が混じることは珍しくありません。一方、産後1週間を過ぎても大きな塊が何度も出る、塊と一緒に出血が増える、という場合は、子宮の収縮が弱い、または子宮の中に遺残物がある可能性があります。塊の大きさや回数を伝えて、出産した医療機関に相談してください。

Q3. 子宮復古不全は入院が必要ですか?

症状によって異なります。出血が少なく全身状態が安定していれば、子宮収縮薬の飲み薬などで外来治療になることが多いです。出血が多い、強い貧血がある、発熱など感染の症状が強い、子宮内の遺残物を取り除く処置が必要、といった場合は入院での治療が検討されます。

Q4. 授乳していないと子宮は戻りにくいですか?

授乳のときに分泌されるオキシトシンには子宮を収縮させる働きがあるため、授乳は子宮の戻りを後押しします。ただし、授乳していないことが子宮復古不全の直接の原因になると示した質の高いデータは限られており、ミルクで育てている人の子宮も多くは問題なく戻ります。授乳できないことに負い目を感じる必要はありません。

Q5. 高齢出産だと子宮は戻りにくいですか?

年齢そのものが子宮復古不全の直接の原因になることを示した明確なデータは、今回確認した範囲では見当たりません。子宮復古不全に関わるのは、胎盤・卵膜の遺残、感染、子宮筋腫、多胎、帝王切開などの条件です。年齢とともにこうした条件が重なりやすい面はあるため、高齢出産のリスクもあわせて確認しておくと、産後の経過を考える参考になります。

Q6. 子宮が戻るときは痛いですか?

産後数日は、子宮が縮むときの痛み(後陣痛)を感じることがあります。出産経験のある人のほうが強く感じやすく、授乳中に強くなることもあります。後陣痛は子宮収縮に伴って起こりますが、日がたつにつれて強くなる痛み、押すと痛む、発熱を伴うといった場合は、感染などの可能性があるため医療機関に相談してください。

Q7. ミネルバクリニックで子宮復古不全の検査や治療はできますか?

いいえ、ミネルバクリニックでは子宮復古不全の検査・診断・治療は行っていません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。産後の出血や子宮の戻りが気になる場合は、出産した医療機関、または産科・婦人科を診療している医療機関にご相談ください。

まとめ

子宮復古不全は、出産後に子宮が妊娠前の状態へ戻る過程が遅れ、子宮が大きく柔らかいまま、赤い悪露や出血が長く続く状態です。正常な経過では、子宮は産後2週ごろにお腹の上から触れなくなり、6〜8週でほぼ妊娠前の状態に戻ります[2]。赤い悪露が1週間を超えて続くことは、子宮復古不全を疑う手がかりになります[3]。

原因として多いのは胎盤・卵膜の遺残と子宮内の感染で、子宮筋腫、多胎や羊水過多による子宮の過伸展、帝王切開なども関わります[6][7]。治療は子宮収縮薬が中心で、感染や貧血の治療、必要に応じて遺残物を取り除く処置が加わります。大量の出血、発熱、悪臭のある悪露、強い腹痛は晩期産褥出血や感染のサインになりうるため、産後1か月健診を待たずに出産した医療機関へ連絡してください。

🏥 子宮復古不全の検査・治療をお考えの方へ

当院では、子宮復古不全の検査・診断・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
子宮復古不全が疑われる場合は、出産した医療機関、または産科・婦人科を専門とする医療機関へご相談ください。

この記事は病気を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

  • [1] 産後の回復不全. 母性健康管理に関する用語辞典. 厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト. [厚生労働省]
  • [2] 子宮復古. 赤ちゃん&子育てインフォ よくわかる用語辞典. 公益財団法人 母子衛生研究会. [母子衛生研究会]
  • [3] Kunarathnam V, Carlson K. Physiology, Postpartum Changes. StatPearls [Internet]. StatPearls Publishing(2026年6月17日更新). [NCBI Bookshelf NBK555904]
  • [4] Relief of pain due to uterine cramping/involution after birth. Cochrane Database Syst Rev. 2020. DOI: 10.1002/14651858.CD004908.pub3 [PMC8094397]
  • [5] 帝王切開と経腟分娩の子宮底長と悪露量の経時的変化. 日本農村医学会学術総会抄録集. 2006;55. DOI: 10.14879/nnigss.55.0.145.0 [J-STAGE]
  • [6] Practice Bulletin No. 183: Postpartum Hemorrhage. American College of Obstetricians and Gynecologists. Obstet Gynecol. 2017. [ACOG]
  • [7] The Management of Secondary Postpartum Hemorrhage. In: Postpartum Hemorrhage, 2nd edition, Chapter 56. Global Library of Women’s Medicine. [GLOWM]
  • [8] Management of secondary postpartum haemorrhage: A systematic review. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2023. DOI: 10.1016/j.ejogrb.2023.01.023 [PubMed 36708658]
  • [9] DSOG Guideline Bulletin: Retained Products of Conception in Postpartum Women. Danish Journal of Obstetrics and Gynaecology. 2025. DOI: 10.56182/6gvh5495 [DJOG]
  • [10] The influence of uterine fibroids on adverse outcomes in pregnant women: a meta-analysis. BMC Pregnancy Childbirth. 2024. DOI: 10.1186/s12884-024-06545-5 [BMC]
  • [11] Magnesium sulfate and risk of postpartum uterine atony and hemorrhage: A meta-analysis. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2021. DOI: 10.1016/j.ejogrb.2020.11.005 [ScienceDirect]
  • [12] メチルエルゴメトリン錠0.125mg「あすか」 添付文書(2026年3月改訂 第5版). [KEGG MEDICUS]
  • [13] メチルエルゴメトリン注0.2mg「あすか」 添付文書(2026年3月改訂 第5版). [KEGG MEDICUS]
  • [14] Methylergonovine. Drugs and Lactation Database (LactMed). National Institute of Child Health and Human Development(2025年6月改訂). [NCBI Bookshelf NBK501342]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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