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子宮はどこにある?場所をおへそ・膀胱・腸との位置関係で図解

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

子宮は、骨盤のほぼ中央、膀胱のうしろ・直腸の前にあります。体の外から見ると、恥骨のすぐ上からへそより下にかけての下腹部の奥にあたり、妊娠していないときは骨盤の中に収まっているため、おなかの上から触れることはできません。「へその下あたり」というイメージより、実際にはもっと恥骨寄りの低い位置にあります。この記事では、子宮の場所をおへそ・膀胱・腸・卵巣との位置関係で整理し、形と大きさ、正常な傾き、妊娠や閉経での変化、子宮ができるしくみまで解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🩺 子宮の場所・位置関係・大きさ
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 子宮は体のどこにありますか?

A. 骨盤のほぼ中央で、前に膀胱、うしろに直腸がある位置です。体の表面でいえば恥骨のすぐ上の奥にあたり、上には小腸やS状結腸がのっています[1][2]。多くの人は子宮がおなか側へ傾いていますが、約2割の人は背中側に傾いており、これも珍しいことではありません[1]。

  • ➤場所 → 骨盤の中央。前が膀胱、うしろが直腸、両側に卵管と卵巣
  • ➤大きさ → 長さ約8cm・幅約5cm・厚さ約4cm、逆さにした洋梨の形
  • ➤傾き → 約8割がおなか側(前傾)、約2割が背中側(後傾)
  • ➤変化 → 妊娠すると骨盤の外へ大きくなり、産後約6週でほぼ元に戻る

1. 子宮はどこにある?体の中での場所

子宮は骨盤腔(こつばんくう:骨盤に囲まれた空間)の中央にあり、前に膀胱、うしろに直腸が並んでいます。米国国立医学図書館が収載する解剖学の解説でも、子宮は女性の骨盤内で膀胱の後方、直腸の前方に位置すると説明されています[1]。つまり、おなか側から背中側へ向かって「膀胱→子宮→直腸」の順に3つの臓器が重なっている、というのが子宮の場所の基本です。

子宮の上には小腸のループとS状結腸(大腸のうち直腸の手前の部分)がのっており、S状結腸は骨盤の左寄りに位置します[2]。子宮の左右からは卵管が伸び、その先の近くに卵巣があります。下のほうは子宮頸部(しきゅうけいぶ)という細い部分になって腟につながっています。ここからは、体の表面の目印、ほかの臓器との関係、確かめ方の順に見ていきます。

おへそ・恥骨から見た子宮の場所の目安

体の表面から子宮の場所を探すなら、目印になるのはおへそではなく恥骨です。下腹部の真ん中を下へたどっていくと、陰毛の生え際あたりで硬い骨に触れます。これが左右の恥骨がつながる恥骨結合で、子宮はそのすぐ上から奥にかけての骨盤の中にあります。

「子宮はへその下」とよく言われますが、妊娠していないときの子宮は骨盤の中に収まる大きさで、へそよりかなり低い位置にあります。へそから何cm下かという数字は、身長や体型、骨盤の形、膀胱のたまり具合で変わるため、一つの数値で示すことはできません。目安としては「へそと恥骨のあいだの、恥骨に近い側の奥」と考えるとイメージに近くなります。

子宮がへその高さまで上がってくるのは、妊娠して子宮が大きくなったときです。妊娠による位置の変化は第4章で説明します。

📍 体の表面の目印と子宮の位置(妊娠していないとき)

目印 子宮との位置関係
おへそ 子宮よりかなり上。へその真下に子宮があるわけではない
恥骨(恥骨結合) 子宮の前下方。子宮はこのすぐ上から奥にある
下腹部の中央 皮膚の奥、膀胱のさらに奥に子宮がある
腰・お尻の骨(仙骨) 子宮の後方。あいだに直腸がある

※位置関係は解剖学の記載[1][2]にもとづく目安です。体格や膀胱・直腸の状態によって個人差があります。

膀胱・直腸(腸)との位置関係

子宮の前は膀胱、うしろは直腸で、子宮は2つの臓器にはさまれています。子宮と直腸のあいだには腹膜がくぼんだ空間があり、ダグラス窩(か)と呼ばれます。ここは液体がたまりやすい場所として知られています[2]。子宮と膀胱のあいだにも同じようなくぼみ(膀胱子宮窩)があります。

おなか側腹壁・恥骨
▶
膀胱尿をためる
▶
子宮骨盤の中央
▶
直腸ダグラス窩をはさむ
▶
背中側仙骨

上から見ると、子宮の上には小腸とS状結腸がのっています[2]。腸と子宮はこのように上下・前後で接しているため、下腹部の痛みが子宮から来ているのか腸から来ているのか、自分では区別しにくいことがあります。子宮のあたりが痛むときに考えられる原因は、子宮が痛い原因の記事で整理しています。

膀胱と子宮が接していることは、日常の感覚にも関係します。妊娠して子宮が大きくなるとトイレが近くなるのは、ふくらんだ子宮が前にある膀胱を押すためです。

💡 用語解説:ダグラス窩(直腸子宮窩)

子宮のうしろ側と直腸のあいだにある、腹膜がくぼんでできた空間です。おなかの中で立っているときにいちばん低い位置になるため、出血や腹水などの液体がたまりやすい場所です。英語では pouch of Douglas、recto-uterine pouch と呼ばれます[2]。超音波検査でここに液体がたまっていないかを見ることがあります。

卵巣・卵管・腟とのつながり

子宮の上の左右の角からは卵管が伸び、その先の近くに卵巣があります。卵巣は、子宮体部とつながる卵巣固有靱帯と、骨盤の側壁につながる骨盤漏斗靱帯(卵巣提索)で支えられています[2]。卵巣は子宮と完全に固定されているわけではなく、靱帯でつり下がるような形で子宮の両脇にあります。卵巣の場所については卵巣の位置の記事で詳しく解説しています。

子宮の下の端は子宮頸部で、その先端が腟の奥に少し突き出しています。腟の側から見えるこの部分の中心にある入り口が、子宮口(外子宮口)です。子宮口は、月経血が出てくる通り道であり、お産のときには大きく開いて赤ちゃんの通り道になります。

「腟の入り口から子宮まで何cmか」という疑問については、MRIで腟の大きさを測った研究が参考になります。生殖年齢の女性28人を調べたこの研究では、子宮頸部から腟の入り口までの長さは平均62.7mmでした[3]。つまり、腟の入り口から6cm前後の奥に子宮の入り口があることになります。ただし、これは少人数を対象にした平均値で、年齢や出産歴、体格によって個人差があります。また腟は伸び縮みする臓器なので、状態によって長さは変わります。

子宮は外から触ってわかる?位置の確かめ方

妊娠していないときの子宮は骨盤の中にあるため、おなかの上から自分で触って確かめることはできません。下腹部を押して硬いものに触れた場合、多くは恥骨です。子宮がおなかの上から触れるようになるのは、妊娠して子宮が骨盤の外へ大きくなってからです。

医療機関で子宮の位置や大きさ、傾きを確かめるには、主に次の方法が使われます。

内診(双合診):腟に入れた指と、おなかの上に置いたもう一方の手で子宮をはさむようにして、大きさ・硬さ・傾き・動きやすさをみます。

経腟超音波検査:細い超音波の器具を腟に入れ、子宮と卵巣を近くから観察します。子宮の傾きや筋腫の有無、内膜の厚さなどがわかります。

経腹超音波検査:おなかの上から超音波を当てる方法です。膀胱に尿をためると、膀胱が窓の役割をして奥の子宮が見えやすくなります。

子宮が「後ろに傾いている」「下がっている」などの所見は、こうした診察で初めてわかるもので、自分で位置を判断することはできません。

2. 子宮の形・大きさ・しくみ

子宮は逆さにした洋梨のような形をした、筋肉でできた袋状の臓器です。上の広い部分が子宮体部、下の細い部分が子宮頸部で、中は空洞になっています。この章では、大きさと重さ、各部の名前、壁の構造を順に説明します。

形・大きさ・重さ

妊娠していない成人女性の子宮は、平均で長さ約8cm、幅約5cm、厚さ約4cmです[1]。重さは資料によって幅がありますが、妊娠前の子宮を約70g[4]、出産から6週後に元に戻った子宮を約50gとする記載があり[5]、50〜70g程度がひとつの目安です。

📏 子宮の大きさ・重さの目安(妊娠していない成人女性)

項目 目安
長さ 約8cm[1]
幅 約5cm[1]
厚さ 約4cm[1]
重さ 約50〜70g[4][5]
形 逆さにした洋梨形。上が広く、下が細い

※年齢、出産歴、閉経の前後によって大きさは変わります。

大きさは一生のあいだで大きく変わります。生殖年齢では子宮体部が頸部より大きいのに対し、閉経後は子宮全体が萎縮します[1]。妊娠中には何倍にも大きくなります。こうした変化は第4章でまとめて説明します。

子宮体部と子宮頸部

子宮は上から、子宮底部・子宮体部・子宮峡部・子宮頸部の4つに分けられます[1]。一般には、上の大部分をまとめて「子宮体部」、下の細い部分を「子宮頸部」と呼ぶことが多く、生殖年齢では頸部と体部の比はおよそ1対2です[1]。

子宮体部は子宮の本体にあたる部分です。内側は空洞(子宮腔)になっていて、左右の上の角で卵管とつながっています。卵管で受精した受精卵は子宮腔へ運ばれ、子宮内膜に着床して育ちます。いちばん上の丸い部分は子宮底部と呼ばれ、妊娠中に健診で測る「子宮底長」はここまでの高さのことです。

子宮頸部は子宮の下3分の1ほどを占める筒状の部分で、中を子宮頸管という細い通り道が走っています。月経血はここを通って腟へ出ていき、精子はここを通って子宮の中へ入ります。子宮頸管は妊娠中に赤ちゃんを子宮の中に保つ役割も担っており、早産との関係については子宮頚管の記事で詳しく説明しています。

子宮体部と子宮頸部は、同じ子宮でも性質が違います。後で触れる子宮体がんと子宮頸がんが別の病気として扱われるのは、できる場所も原因も異なるためです。

子宮の壁の3層(内膜・筋層・漿膜)

子宮の壁は、内側から子宮内膜、子宮筋層、漿膜(しょうまく:子宮外膜)の3層でできています[1]。

子宮内膜は子宮の内側をおおう粘膜です。女性ホルモンの働きで月経周期ごとに厚くなり、妊娠が成立しなければはがれ落ちて月経として出ていきます。妊娠が成立すると、受精卵が着床する場所になります。

子宮筋層は壁の大部分を占める厚い筋肉の層で、平滑筋でできています。妊娠中は赤ちゃんの成長に合わせて大きく引き伸ばされ、分娩のときには強く収縮して赤ちゃんを押し出します。産後に子宮が元の大きさに戻っていくのも、この筋層が縮んでいくためです。

漿膜は子宮の外側をおおう薄い膜です[1]。子宮をおおう腹膜は左右に広がって広間膜(こうかんまく)となります。卵管は広間膜の上縁に位置し、卵巣は広間膜の後葉に卵巣間膜を介して付着しています[2]。

💡 用語解説:平滑筋(へいかつきん)

自分の意思では動かせない筋肉で、子宮のほか、胃や腸、膀胱、血管の壁などにあります。手足を動かす骨格筋のような縞模様がなく、ゆっくりと持続的に縮むのが特徴です。子宮の平滑筋は妊娠中に一つひとつの細胞が大きくなることで、臓器全体が大きく伸びることができます。

3. 子宮の「正しい位置」とは?前傾前屈と個人差

子宮の正常な位置は、骨盤の中央でおなか側へ傾いた「前傾前屈(ぜんけいぜんくつ)」が一般的です。ただし、背中側に傾いている人も約2割いて、子宮の角度には個人差があります[1]。また、子宮はまわりの臓器の状態によって位置が変わる、動きのある臓器です。

多くは前に傾いている(前傾前屈)

約80%の女性では、子宮が腟に対してほぼ直角におなか側へ傾いており、これを前傾(anteversion)と呼びます。残りの約20%では子宮が腟の上で背中側へ傾いており、後傾(retroversion)と呼ばれます[1]。骨盤の解剖の解説でも、子宮は通常、前傾前屈の位置で骨盤の中央にあるとされています[2]。

「前傾」と「前屈」は似た言葉ですが、見ている角度が違います。前傾は子宮全体が腟に対してどちらへ傾いているか、前屈は子宮体部が子宮頸部に対してどちらへ曲がっているかを表します。多くの人はどちらもおなか側、つまり膀胱の上にかぶさるような向きになっています。

子宮がこの位置にとどまっているのは、靱帯が支えているためです。うしろ側の仙骨子宮靱帯、前側の恥骨頸靱帯、横側の基靱帯(子宮頸横靱帯)の3つが子宮を固定しており、基靱帯の中には子宮に血液を送る子宮動脈が通っています[2]。これに骨盤の底をハンモックのように支える筋肉が加わって、子宮は骨盤の中の決まった位置に保たれています。

💡 用語解説:前傾・前屈と後傾・後屈

前傾・後傾は「子宮全体が腟に対してどちらへ傾いているか」、前屈・後屈は「子宮体部が子宮頸部に対してどちらへ折れ曲がっているか」を表す言葉です。診察では「後傾後屈」のように組み合わせて表現します。診察で「子宮後屈」と言われた場合、多くは子宮が背中側に傾いている状態を指しています。

子宮は動く臓器:膀胱・直腸の状態で位置が変わる

子宮は靱帯で支えられていますが、完全に固定されているわけではなく、まわりの臓器の状態に合わせてある程度動きます。前にある膀胱に尿がたまってふくらむと子宮は背中側へ押され、うしろの直腸に便がたまると前側へ押されるなど、子宮の位置や角度は一日の中でも変わると考えられています。

この動きやすさは、妊娠と出産を考えると理にかなっています。子宮が骨盤の中でしっかり固定されていたら、妊娠中に大きくふくらむことはできません。靱帯や周囲の組織にゆとりがあるからこそ、子宮は骨盤からおなかの上のほうまで大きくなることができます。

一方で、子宮がまわりの臓器とくっついて動かなくなっていたり(癒着)、支える靱帯や筋肉がゆるんで下がったままになっていたりする場合は、痛みや排尿の症状などにつながることがあります。こうした状態は、次に説明する位置の異常として扱われます。

後屈・下垂など位置の異常について

子宮が背中側へ傾いている後傾後屈は約2割の人にみられ、それだけで病気というわけではありません[1]。生まれつき後屈の人も多く、症状がなければ治療の対象にならないことがほとんどです。ただし、子宮内膜症などで子宮がうしろの直腸と癒着して後屈になっている場合は、月経痛や性交痛の原因を調べる手がかりになります。後屈と言われたときの考え方は子宮後屈の記事で詳しく解説しています。

もうひとつの代表的な位置の変化が、子宮が正常な位置より下がる子宮下垂と、さらに下がって腟の外に出てくる子宮脱です。出産や加齢によって子宮を支える靱帯や骨盤底の筋肉がゆるむことが主な原因とされています。原因や症状、治療については子宮脱の記事をご覧ください。

後屈、下垂、子宮脱などをまとめて「子宮位置異常」と呼び、それぞれの原因や治療、妊娠への影響は子宮位置異常の記事で整理しています。この記事では正常な位置と個人差を中心に扱い、異常の詳細はそれぞれの記事にゆだねます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【教科書の図は「平均的な一例」】

教科書やイラストで見る子宮は、たいてい膀胱の上におじぎをするような前傾前屈の姿で描かれています。けれども、実際には約2割の人が背中側に傾いており、膀胱や直腸の状態によっても角度は変わります。図と違うことが、そのまま異常を意味するわけではありません。

「後屈」「位置がずれている」といった所見の名前と、困る症状があるかどうかは、分けて考えることが大切だと考えています。名前がついたことで不安になるより、その所見がご自身の症状や妊娠の希望とどう関わるのかを、診察した医師に確認してみてください。

4. 妊娠・出産・年齢で子宮の位置はどう変わる?

子宮の大きさと位置は、妊娠・出産・閉経によって大きく変わります。妊娠すると骨盤の外へ出ておなかの上のほうまで大きくなり、出産後は約6週間でほぼ元の大きさに戻り、閉経後は萎縮して小さくなります[1][4][5]。

妊娠週数とともに子宮が上がっていく

妊娠中、子宮の重さは約70gから約1,100gに、容量は約10mLから約5Lにまで増えます[4]。重さでいえば約15倍、容量でいえば約500倍という大きな変化です。この増大は、筋層の平滑筋細胞が大きくなることや、壁が引き伸ばされることで起こります。

増え方は一定ではありません。妊娠12〜16週ごろに子宮の下のほうが広がって子宮は丸みを帯び、羊膜の袋がふくらむ余地ができます。20週を過ぎると胎児の成長が加速し、子宮は急速に縦に伸びて壁が薄くなっていきます。いちばん伸びが大きいのは20〜32週のあいだです[4]。

子宮が大きくなるにつれ、子宮のいちばん上(子宮底)の位置も上がっていきます。一般的な目安として、妊娠12週を過ぎるころに骨盤の外へ出ておなかの上から触れられるようになり、20週前後でへその高さ近くに、妊娠後期にはみぞおち近くまで達します。ただし、身長や体型、胎児の数などで個人差があるため、あくまで目安です。妊婦健診では恥骨から子宮底までの長さ(子宮底長)を測り、赤ちゃんの成長の経過をみています。

非妊娠時骨盤の中
▶
12週ごろ恥骨の上に出る
▶
20週前後へその高さ近く
▶
妊娠後期みぞおち近く

妊娠初期には、大きくなりはじめた子宮が前の膀胱を押すため、トイレが近くなることがあります。子宮が骨盤の外へ出るといったん落ち着き、妊娠後期に赤ちゃんの頭が骨盤へ下りてくると、再び膀胱が圧迫されやすくなります。

出産後の子宮の戻り方

出産直後の子宮は約1,000gありますが、1週間で約500gになり、産後6週ごろには約50gとほぼ妊娠前の大きさに戻ります[5]。この過程を子宮復古といいます。分娩直後の子宮は硬く引き締まっていて、筋層が収縮することで胎盤がはがれた部分からの出血を抑えています。

子宮が元に戻るのに必要なのは「1か月ほど」ではなく、約6週間とみるのが一般的です。この期間は産褥期(さんじょくき)と呼ばれ、悪露(おろ)と呼ばれる出血やおりものが少しずつ減っていきます。

多胎妊娠や赤ちゃんが大きかった場合、長時間の分娩の後などでは、子宮が十分に収縮せず戻りが遅れることがあります。こうした状態は子宮復古不全と呼ばれ、原因や治療は子宮復古不全の記事で解説しています。

閉経後は小さくなる

閉経後は女性ホルモンが減るため子宮は萎縮し、子宮体部が子宮頸部より小さくなります[1]。生殖年齢では体部と頸部の比がおよそ2対1だったものが、逆転するわけです。子宮内膜も薄くなり、月経はなくなります。

閉経後に子宮の位置そのものが大きく変わるわけではありませんが、年齢とともに子宮を支える靱帯や骨盤底の筋肉がゆるみやすくなるため、子宮下垂や子宮脱は閉経後の女性に多くみられます。閉経後の不正出血は、子宮体がんなどの病気を確認するきっかけにもなるため、第6章でも触れます。

5. 子宮はどうやってできる?ミュラー管と子宮の形の違い

子宮は、胎児のときに左右1対あるミュラー管が下のほうで合わさることでできあがります。この合わさり方がうまくいかないと、子宮の形に違いが生じます。子宮ができるしくみと、形の違いについて説明します。

胎児期に2本のミュラー管が合わさって子宮ができる

女性の胎児には左右1対の中腎傍管(ミュラー管)があり、上の部分が卵管に、下で左右が癒合した部分が子宮・子宮頸部・腟の上部5分の1になります[1]。左右の管がくっついた後、あいだの仕切り(中隔)が吸収されて1つの空洞になり、私たちが知っている子宮の形になります。

この過程は、大きく「左右の管ができる」「左右が癒合する」「あいだの仕切りが吸収される」の3段階に分けて考えることができます。どの段階でうまくいかなかったかによって、子宮の形の違いの種類が変わります。

左右1対のミュラー管胎児期にできる
▶
下部が左右で癒合上部は卵管になる
▶
中隔が吸収される1つの子宮腔になる

ミュラー管は男女どちらの胎児にもできますが、男性の胎児では精巣から出るホルモンの働きで退化し、女性の胎児では残って子宮や卵管になります。体の性がどのように分かれていくかという発生のしくみは、発生学の解説で扱っています。

💡 用語解説:ミュラー管(中腎傍管)

胎児期にできる左右1対の管で、女性では卵管・子宮・子宮頸部・腟の上部のもとになります。英語では Müllerian duct、paramesonephric duct と呼ばれます[1]。名前は、この管を記載した19世紀のドイツの生理学者ヨハネス・ミュラーに由来します。

形の違う子宮(子宮奇形)とMRKH症候群

ミュラー管の癒合や中隔の吸収がうまくいかずに生じる先天的な子宮の形の違いは、子宮奇形(先天性子宮形態異常)と呼ばれ、一般の女性の約5.5%にみられます[6]。94の研究、約9万人のデータをまとめたシステマティックレビューでは、頻度は不妊の女性で8.0%、流産歴のある女性で13.3%、不妊と流産歴の両方がある女性で24.5%でした[6]。

同じレビューでは、一般の女性でもっとも多いのは子宮の上の部分が浅くへこんだ弓状子宮で、不妊や流産歴のある女性では中隔子宮が多いことが示されました[6]。ただし、これは頻度の違いを示したもので、子宮の形の違いがあれば必ず不妊や流産につながる、という意味ではありません。症状がなく、ほかの検査のときに偶然見つかることも少なくありません。種類ごとの特徴や妊娠への影響は子宮奇形の記事で解説しています。

ミュラー管そのものがうまく発達しなかった場合には、子宮と腟の上部が形成されない、MRKH症候群(メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群)という状態になります。頻度は女児の出生約5,000人に1人と推定されており[7]、デンマークの全国登録にもとづく研究では4,982人に1人と報告されています[8]。

MRKH症候群では、卵巣はふつう両側にあって正常に働いているため、女性ホルモンは分泌され、思春期の体の変化も通常どおり起こります[7]。そのため、月経が来ないことをきっかけに見つかることが一般的です。原因ははっきりしておらず、多くは家族内に同じ状態の人がいない孤発例で、複数の遺伝的・環境的な要因が関わる多因子性と考えられています。家族内で起こる例からは不完全浸透の常染色体顕性(優性)遺伝が示唆されており、腎臓の形の異常などを伴うタイプでは GREB1L(グレブワンエル)という遺伝子のバリアントが報告されています[7]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「生まれつき」と「遺伝」は同じではない】

子宮の形の違いは、胎児のときにできあがる過程で生じる「先天性」のものです。ただ、先天性であることと、親から子へ受け継がれる「遺伝性」であることは、別のことだと考えています。MRKH症候群でも、多くは家族内に同じ状態の人がいない孤発例とされています。

一方で、原因となる遺伝子の研究は少しずつ進んでおり、GREB1Lのように手がかりが見つかりつつある領域もあります。現時点でわかっていることと、まだ明らかでないことを分けて理解する必要があります。

6. 子宮の場所に関係して知っておきたい病気

子宮の病気は、子宮のどの部分にできるかで性質が大きく違います。筋層にできる子宮筋腫、内膜に似た組織がかかわる子宮内膜症や子宮腺筋症、頸部にできる子宮頸がん、体部の内膜にできる子宮体がんが代表的です。ここでは子宮の場所や構造との関係に絞って概要を説明し、詳しい内容はそれぞれの記事にゆだねます。

子宮筋腫

子宮筋腫は子宮の筋層にできる良性の腫瘍で、30歳以上の女性の3割前後にみられます[9]。主な症状は、月経の量が多くなる過多月経とそれに伴う貧血、月経痛で、ほかに月経以外の出血、腰痛、頻尿、不妊などがあります[9]。

筋腫は、できる場所によって3つに分けられます。子宮の内側の粘膜の下にできる粘膜下筋腫は、小さくても症状が強く出やすく、過多月経や不妊の原因になりやすいとされています。筋層の中にできるものが筋層内筋腫、子宮の外側に向かってできるものが漿膜下筋腫で、漿膜下筋腫は大きくなっても症状が出にくい傾向があります[9]。治療が必要かどうかは、筋腫の位置と症状の強さで判断されます。筋腫が前の膀胱を押せば頻尿に、うしろの直腸を押せば便秘や腰痛につながることがあり、ここでも子宮の位置関係が症状に表れます。治療の選択肢は子宮筋腫の記事で解説しています。

子宮内膜症・子宮腺筋症

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外で増える病気で、世界で生殖年齢の女性の約10%(約1億9,000万人)にみられると推定されています[10]。卵巣、卵管、子宮のうしろのダグラス窩の腹膜など、子宮のまわりの骨盤の中に病変ができやすく、強い月経痛や性交痛、排便痛、不妊の原因になることがあります。病変によって子宮とまわりの臓器が癒着すると、子宮が後屈の位置で動かなくなることもあります。卵巣に病変ができて血液がたまったものはチョコレート嚢胞と呼ばれます。詳しくは子宮内膜症の記事をご覧ください。

子宮内膜に似た組織が子宮の筋層の中にできるのが子宮腺筋症です。子宮全体が厚く大きくなり、月経痛や過多月経の原因になります。子宮内膜症とは病変のある場所が異なり、症状や治療の考え方は子宮腺筋症の記事で解説しています。

子宮頸がん・子宮体がん

子宮頸がんは子宮の入り口にあたる頸部にできるがんで、ほぼすべてがヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染によって起こります。発症は30〜40代がピークです[11]。日本での罹患数は2023年に10,457例でした[12]。HPVは性交経験のある女性の大半が一生に一度は感染する一般的なウイルスで、多くは自然に排除されますが、感染が長く続いた一部の人で、数年かけて異形成(がんになる前の状態)を経てがんに進みます[11]。

子宮頸部は腟の奥にあって直接観察しやすく、検診で見つけやすい場所です。国の指針では、20歳以上の女性に2年に1回の細胞診による検診が推奨されています。2024年度からは、条件を満たした自治体で、30歳以上の人を対象に5年に1回のHPV検査単独法も導入されました[13]。細胞診は子宮頸部の細胞に異常がないかを顕微鏡で調べる検査、HPV検査はがんの原因となるHPVに感染しているかを調べる検査で、見ているものが違います。どちらの方法で検診が行われるかは自治体によって異なります。病気の詳細は子宮頸がんの記事で解説しています。

子宮体がんは子宮体部の内膜にできるがんで、子宮頸がんより高い年代に多くみられます。日本での罹患数は2023年に19,945例でした[14]。出産歴がない、肥満、月経不順、卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤だけを使い続けている場合にリスクが高くなるとされ、高血圧や糖尿病、近親者に乳がんや大腸がんの人がいることもリスクとして挙げられています[15]。閉経後の不正出血が見つかるきっかけになることが多い病気です。詳しくは子宮体がんの記事をご覧ください。

家族に大腸がんや子宮体がんの人が多い場合には、遺伝性腫瘍のひとつであるリンチ症候群が関わっていることがあります。リンチ症候群は、DNAの複製の誤りを修復する遺伝子の生まれつきのバリアントによって、大腸がんや子宮体がんなどが若い年齢で起こりやすくなる体質です。家族歴が気になる場合は、遺伝の観点からの評価も選択肢になります。

下腹部(子宮のあたり)が痛いとき

下腹部の痛みは、子宮だけでなく、卵巣、腸、膀胱など、近くにあるさまざまな臓器から起こります。第1章で見たように、子宮は前の膀胱、うしろの直腸、上の小腸・S状結腸、両側の卵巣と接しているため、痛みの場所だけでどの臓器が原因かを見分けるのは難しいことがあります。

月経のたびに痛む、月経以外の時期にも続く、左右どちらかに偏っている、発熱や出血を伴うなど、痛みの出方には原因を考える手がかりがあります。急に強い痛みが出た場合や、妊娠の可能性があって痛みや出血がある場合は、早めに医療機関を受診してください。子宮のあたりの痛みで考えられる病気と受診の目安は、子宮が痛い原因の記事でまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子宮はへそから何cm下にありますか?

へそから何cmと一つの数字で示すことはできません。身長や体型、骨盤の形、膀胱のたまり具合で変わるためです。妊娠していないときの子宮は骨盤の中にあり、へそよりかなり下、恥骨のすぐ上の奥に位置します。子宮がへその高さ近くまで上がってくるのは、妊娠20週前後が目安です。

Q2. 腟の入り口から子宮まで何cmですか?

MRIで測定した研究では、子宮頸部から腟の入り口までの長さは平均62.7mmでした。腟の入り口から6cm前後の奥に子宮の入り口(子宮口)があることになりますが、年齢や出産歴、体格による個人差があり、腟は伸び縮みするため状態によっても変わります。

Q3. 子宮は自分で触って位置がわかりますか?

妊娠していないときの子宮は骨盤の中にあるため、おなかの上から自分で触ってわかることはありません。下腹部で硬く触れるものの多くは恥骨です。子宮の位置や傾きは、内診や経腟超音波検査などで医師が確認します。

Q4. 子宮後屈と言われましたが、問題はありますか?

子宮が背中側に傾いている状態は約2割の女性にみられ、それだけで病気というわけではありません。症状がなければ治療の対象にならないことがほとんどです。ただし、子宮内膜症などで癒着して後屈になっている場合もあるため、強い月経痛などの症状がある場合は、診察した医師に原因を確認してください。

Q5. 妊娠すると子宮はどこまで上がりますか?

一般的な目安として、妊娠12週を過ぎるころに骨盤の外へ出ておなかの上から触れるようになり、20週前後でへその高さ近く、妊娠後期にはみぞおち近くまで上がります。子宮の重さは約70gから約1,100gに、容量は約10mLから約5Lにまで増えます。体型や胎児の数などで個人差があります。

Q6. ミネルバクリニックで子宮の検査や治療はできますか?

いいえ、当院は遺伝診療を専門とするクリニックのため、子宮の位置や子宮の病気についての一般的な婦人科の検査・治療は行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。子宮の症状が気になる場合は、婦人科を受診してください。

まとめ

子宮は骨盤のほぼ中央にあり、前に膀胱、うしろに直腸、上に小腸とS状結腸、両側に卵管と卵巣がある位置関係です[1][2]。体の表面では恥骨のすぐ上の奥にあたり、妊娠していないときはへそよりかなり低い位置で、おなかの上から触れることはできません。大きさは長さ約8cm・幅約5cm・厚さ約4cmで、約8割はおなか側へ、約2割は背中側へ傾いています[1]。

子宮は膀胱や直腸の状態に合わせて動く臓器で、妊娠すると重さ約15倍、容量約500倍にまで大きくなり[4]、産後約6週でほぼ元に戻ります[5]。胎児のときに左右のミュラー管が合わさってできるため、その過程の違いから形の違う子宮が生じることもあります[1][6]。子宮の病気は、筋層、内膜、頸部など、どこにできるかで性質が異なります。位置や形について診察で指摘を受けた場合は、その所見が症状や妊娠の希望とどう関わるのかを、診察した医師に確認してください。

🏥 子宮の検査・治療をお考えの方へ

当院は遺伝診療を専門とするクリニックのため、子宮の位置や子宮の病気についての一般的な婦人科の検査・治療は行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
子宮の症状が気になる場合は、婦人科を専門とする医療機関へご相談ください。

この記事は子宮のしくみを正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、家族に子宮体がんや大腸がんが多いなど、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

  • [1] Anatomy, Abdomen and Pelvis: Uterus. StatPearls. NCBI Bookshelf (updated 2025). [NCBI Bookshelf NBK470297]
  • [2] Anatomy, Abdomen and Pelvis: Female Pelvic Cavity. StatPearls. NCBI Bookshelf (updated 2023). [NCBI Bookshelf NBK538435]
  • [3] Baseline dimensions of the human vagina. Hum Reprod. 2006;21(6):1618-1622. [Human Reproduction]
  • [4] Physiology, Pregnancy. StatPearls. NCBI Bookshelf (updated 2023). [NCBI Bookshelf NBK559304]
  • [5] Physiology, Postpartum Changes. StatPearls. NCBI Bookshelf (updated 2022). [NCBI Bookshelf NBK555904]
  • [6] The prevalence of congenital uterine anomalies in unselected and high-risk populations: a systematic review. Hum Reprod Update. 2011;17(6):761-771. [Human Reproduction Update]
  • [7] Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser (MRKH) syndrome: a comprehensive update. Orphanet J Rare Dis. 2020;15:214. [Orphanet J Rare Dis]
  • [8] Prevalence and patient characteristics of Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser syndrome: a nationwide registry-based study. Hum Reprod. 2016. [PubMed 27609979]
  • [9] 子宮筋腫. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
  • [10] Endometriosis. World Health Organization, Fact sheet (2025). [WHO]
  • [11] 子宮頸がん. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
  • [12] 子宮頸部:がん統計. 国立がん研究センター がん情報サービス. [がん情報サービス]
  • [13] HPV検査単独法による子宮頸がん検診の導入. 厚生労働省(第90回がん対策推進協議会資料, 2024年8月5日). [厚生労働省]
  • [14] 子宮体部:がん統計. 国立がん研究センター がん情報サービス. [がん情報サービス]
  • [15] 子宮体がん. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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