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子宮が痛いのはなぜ?生理じゃないのに痛む原因を場所・時期・痛み方から解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

子宮のあたりが痛むとき、原因は子宮だけとは限りません。卵巣や卵管、腸、膀胱も同じ骨盤の中にあり、痛む場所だけで原因を決めることはできません。生理前後や排卵期に起こる体の変化による痛みもあれば、子宮内膜症や子宮筋腫、骨盤内の感染症、異所性妊娠(子宮外妊娠)のように診察が必要な病気のこともあります。突然の激しい痛み、ふらつき、発熱がある場合や、妊娠の可能性がある場合は、様子を見ずに医療機関を受診してください。この記事では、痛む場所・生理周期のタイミング・痛み方から考えられる原因と受診の目安、そして子宮の病気と遺伝の関係を、臨床遺伝専門医が整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約20分
🩺 子宮の痛み・下腹部痛・受診の目安
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 生理じゃないのに子宮が痛いのはなぜですか?

A. 排卵痛や便秘のように病気ではない痛みのこともあれば、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣の病気、骨盤内の感染症、異所性妊娠などの病気が原因のこともあります。子宮の近くには卵巣・卵管・腸・膀胱があるため、痛む場所だけでは区別できません。急に強く痛む、熱がある、妊娠の可能性がある、生理のたびに痛みが強くなっている場合は、受診して原因を確かめてください。

  • ➤すぐ受診する痛み → 突然の激痛、冷や汗・ふらつき、38℃以上の発熱、妊娠の可能性がある痛み
  • ➤片側だけが痛い → 排卵痛のほか、卵巣・卵管の病気や異所性妊娠。右側は虫垂炎も考える
  • ➤生理のたびに悪化する痛み → 子宮内膜症・子宮腺筋症のサインのことがある
  • ➤遺伝の視点 → 子宮内膜症・子宮筋腫は家族に多い傾向があり、子宮体がん・卵巣がんの一部は遺伝性腫瘍

1. 子宮が痛いのはなぜ?まず知っておきたいこと

「子宮が痛い」と感じる痛みの多くは、下腹部の真ん中から左右にかけての、骨盤の中の痛みです。原因は子宮そのものに限らず、卵巣・卵管、腸、膀胱や尿管、骨盤の筋肉や静脈など、いくつもの臓器が関わります。米国産科婦人科学会(ACOG)の診療指針でも、骨盤の痛みは婦人科・消化器・泌尿器・筋骨格など複数の原因を視野に入れて評価するものとされ、6か月以上続く骨盤の痛みは「慢性骨盤痛」として、複数の原因が重なっている可能性も含めて調べるよう示されています[1]。

そのため、どこが、いつから、どのように痛むのか、生理周期や妊娠の可能性と関係があるのか、痛み以外の症状があるのかを組み合わせて考えることが大切です。

「子宮のあたり」にある臓器

子宮は骨盤の中央にあり、前に膀胱、後ろに直腸が接しています。子宮の左右からは卵管が伸び、その先に卵巣があります。つまり、下腹部の真ん中を押さえて「子宮が痛い」と感じたとき、痛みの出どころは子宮のほかに、膀胱、直腸やS状結腸、左右の卵巣・卵管である可能性があります。右下腹部には虫垂(いわゆる盲腸)もあります。

内臓からくる痛みは、皮膚の痛みと違って場所がはっきりしにくいのが特徴です。痛みを伝える神経の通り道が複数の臓器で重なっているため、腸や卵巣の痛みを「子宮の痛み」と感じることがよくあります。

卵巣の位置や、卵巣を押したときの痛みについては、対になる記事の卵巣を押すと痛いときに考えられる病気で詳しく解説しています。

病気ではない痛みと、病気のサインになる痛み

子宮のあたりの痛みには、体の正常な働きで起こる痛みと、病気のサインになる痛みがあります。病気ではない痛みの代表は、生理のときの痛み(原発性月経困難症)、排卵期の片側の痛み(排卵痛)、便秘やガスによる腸の痛みです。生理痛は、子宮内膜で作られるプロスタグランジンという物質が子宮の筋肉を強く収縮させることで起こります。

一方、次のような特徴がある痛みは、病気が隠れていないかを確かめる必要があります。年々生理痛が強くなっている、鎮痛薬が効きにくい、生理以外の時期にも痛む、性交時に奥のほうが痛む、排便時に痛む、発熱やおりものの異常がある、不正出血がある、妊娠の可能性がある、といった場合です。ACOGは、鎮痛薬やホルモン療法を続けても改善しない月経痛では子宮内膜症を考えるとしており[2]、欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)のガイドラインは、月経痛、性交時の深い痛み、排便痛、排尿痛を子宮内膜症を疑う症状として挙げています[3]。

2. すぐに受診すべき子宮の痛み

子宮のあたりの痛みの中には、時間との勝負になるものがあります。卵巣がねじれる卵巣茎捻転、卵巣や嚢腫からの出血、異所性妊娠の破裂、骨盤内の感染症などです。下の表に当てはまる場合は、自宅で様子を見ずに受診してください。

🚨 すぐに受診を考える子宮・下腹部の痛み

・突然始まった激しい痛み、動けないほどの痛み
・冷や汗、顔色が悪い、ふらつく、気が遠くなる
・38℃以上の発熱とともに下腹部が痛む、おりものの色やにおいがいつもと違う
・吐き気や嘔吐を伴う片側の強い痛み
・お腹を押した手を離したときに響く痛み、歩くと響く痛み
・妊娠の可能性があり、痛みや出血がある

夜間でも救急受診を考える症状

突然始まって数分から数十分で強くなる片側の激痛、とくに吐き気や嘔吐を伴うものは、卵巣茎捻転の可能性があります。卵巣茎捻転は、卵巣が腫れて重くなったり、嚢腫ができたりしたことをきっかけに、卵巣を支える部分がねじれて血流が途絶える状態です。ACOGは、卵巣茎捻転を卵巣を守るために速やかな外科的評価が必要な病気と位置づけ、超音波検査で卵巣の血流が確認できても捻転を否定することはできないとしています[4]。

冷や汗やふらつきを伴う痛みは、卵巣出血や嚢腫・異所性妊娠の破裂などでお腹の中に出血しているサインのことがあります。

発熱とともに下腹部全体が痛み、おりものが増えたり色が変わったりしている場合は、骨盤内炎症性疾患が考えられます。米国疾病予防管理センター(CDC)の治療指針は、性的に活動的な女性で下腹部痛があり、ほかの原因が見当たらず、診察で子宮頸部を動かしたときや子宮・付属器(卵巣と卵管)を押したときに痛みがあれば、骨盤内炎症性疾患として治療を始めることを勧めています[5]。治療が遅れると、不妊症や異所性妊娠、慢性的な骨盤の痛みにつながることがあるためです。

妊娠の可能性があるときの痛み

生理が遅れている、または避妊をしていなかった時期がある場合、子宮のあたりの痛みはまず妊娠との関係を確かめる必要があります。とくに注意が必要なのは異所性妊娠(子宮外妊娠)です。異所性妊娠は、受精卵が子宮の内腔以外、多くは卵管に着床した状態で、卵管が破裂すると大量の腹腔内出血を起こします。ACOGの診療指針は、妊娠反応が陽性で腹痛や性器出血がある場合には、異所性妊娠を念頭に置いて評価するよう求めています[6]。

市販の妊娠検査薬で陽性が出ていて、片側の下腹部痛や出血がある場合は、早めに婦人科を受診してください。痛みがなくても、妊娠を確認したら、子宮の中に胎嚢が見えるかどうかを超音波検査で確かめることが大切です。妊娠初期には、流産の兆候としての痛みや、子宮が大きくなることによる軽い痛みもあり、痛みだけでは区別できません。

異所性妊娠の症状や治療については子宮外妊娠(異所性妊娠)の解説を、出血のない下腹部痛については妊娠初期の出血なしの下腹部痛をご覧ください。

3. 痛む場所別に考えられる原因

痛む場所は、原因を絞る手がかりのひとつです。片側だけが痛むときは卵巣・卵管や腸を、真ん中や全体が痛むときは子宮そのものや膀胱を、お尻や肛門に響くときは子宮の後ろ側の病変を考えます。

📍 痛む場所と考えられる主な原因

痛む場所 婦人科の原因 婦人科以外の原因
左側・右側の片側 排卵痛、卵巣出血、卵巣嚢腫・卵巣茎捻転、異所性妊娠、卵管炎 右:虫垂炎、尿管結石/左:便秘、憩室炎、尿管結石
真ん中・下腹部全体 月経困難症、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患 膀胱炎、便秘、過敏性腸症候群
お尻・肛門・腰に響く 子宮の後ろ側の子宮内膜症、子宮腺筋症、骨盤内うっ血症候群 便秘、腰の筋肉や骨の痛み

※目安であり、診断には診察と検査が必要です。

子宮の左側・右側が痛い

子宮の左右どちらかが痛むとき、痛みの出どころは子宮そのものより、その横にある卵巣や卵管であることが多いと考えられます。排卵期であれば排卵痛、排卵後から次の生理までの時期であれば、排卵のあとにできる黄体からの出血(卵巣出血)が候補になります。卵巣出血は性交のあとに起こることもあり、出血が少なければ自然に治まりますが、多いと強い痛みやふらつきを起こします。

卵巣に嚢腫がある人では、嚢腫がねじれる卵巣茎捻転や、嚢腫の破裂が起こることがあります。妊娠の可能性がある場合は、異所性妊娠も考えます。発熱やおりものの異常を伴う場合は、卵管の感染(卵管炎)を含む骨盤内炎症性疾患の可能性があります。詳しくは卵巣出血と卵巣茎捻転の記事で解説しています。

婦人科以外では、右下腹部なら虫垂炎、左下腹部なら便秘や大腸の憩室炎が代表的です。背中から下腹部に差し込む波のある痛みは尿管結石も考えます。

子宮全体・下腹部の真ん中が痛い

下腹部の真ん中や全体が痛むときは、子宮そのものの痛みの可能性が高くなります。子宮自体が痛む場合、痛みは片側ではなく真ん中を中心に広がって感じられることが多いためです。代表的なのは、生理に伴う月経困難症、子宮内膜症、子宮の筋肉の中に内膜に似た組織ができる子宮腺筋症、子宮の筋肉の良性腫瘍である子宮筋腫です。

生理痛が強くなってきた、経血にレバーのような塊が出る、生理以外の時期にも重い痛みがある、といった変化があれば婦人科で調べます。発熱やおりものの異常を伴う場合は骨盤内炎症性疾患のことがあります。

婦人科以外では、排尿のときにしみる、トイレが近い、残尿感があるといった症状があれば膀胱炎を考えます。便秘や、ストレスで悪化しやすい過敏性腸症候群も、下腹部の真ん中あたりの痛みの原因になります。

お尻・肛門・足の付け根まで響く

お尻や肛門の奥に響く痛み、排便のときの痛み、性交時の奥の痛みは、子宮の後ろ側(直腸との間)にできた子宮内膜症のサインであることがあります。子宮の後ろ側には、ダグラス窩と呼ばれる腹膜のくぼみがあり、ここに内膜症の病変ができると、直腸や子宮を支える靱帯が巻き込まれて、排便痛や性交痛が起こります。ESHREのガイドラインも、排便痛と性交時の深い痛みを子宮内膜症を考える症状として挙げています[3]。

生理のときに腰や太ももの付け根まで重だるくなるのは、子宮の痛みが広がって感じられるためで、それだけで病気とは限りません。ただし、年々強くなる場合や生理以外の時期にも続く場合は、子宮内膜症や子宮腺筋症を考えて受診してください。

4. 生理周期のタイミング別に考えられる原因

子宮のあたりの痛みは、生理周期のどの時期に起こるかで、考えられる原因がある程度変わります。

🗓️ 生理周期のタイミング別に考えられる原因

タイミング よくある原因 受診を考える目安
生理前 子宮の収縮の始まり、腸の動きの変化、子宮内膜症 年々強くなる、生理前から強く痛む、妊娠の可能性がある
生理中 原発性月経困難症、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫 鎮痛薬が効かない、寝込む、経血量が増えた
排卵日ごろ 排卵痛 痛みが強い・2日以上続く・ふらつく
生理後 子宮内膜症、骨盤内炎症性疾患、卵巣嚢腫 生理が終わっても続く、発熱、不正出血

生理前に子宮が痛い

生理の1〜2日前から子宮のあたりが重く痛むのは、生理に向けて子宮の収縮が始まることによる痛みのことが多く、それだけで病気とは限りません。生理前はホルモンの変化で腸の動きも変わり、便秘やお腹の張りから下腹部痛を感じることもあります。

一方で、生理の数日以上前から強く痛む、以前より痛みが強くなっている、排便痛や性交痛を伴うといった場合は、子宮内膜症の可能性を考えます[3]。生理が予定どおり来ないときは、妊娠の可能性も確かめてください。

生理中の痛みが強い

生理中の痛みは、プロスタグランジンによる子宮の収縮で起こる原発性月経困難症が基本です。多くは生理の初日から2日目がピークで、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)がよく効きます。低用量のホルモン剤で生理痛を軽くする方法もあります。

これに対して、鎮痛薬を飲んでも寝込むほど痛い、痛みが年々強くなっている、経血量が増えて貧血を指摘されたといった場合は、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫による続発性月経困難症を考えます。ACOGは、鎮痛薬やホルモン療法を3〜6か月続けても月経痛が改善しない場合に、子宮内膜症の評価を考えるとしています[2]。

排卵日ごろに痛い

生理と生理の間、次の生理の約2週間前ごろに下腹部の片側がチクチク、あるいはズーンと痛むのは、排卵痛のことがあります。排卵のときに卵胞が破れて卵子が出る際、卵胞液や少量の血液がお腹の中に流れ出して腹膜を刺激することなどが原因と考えられています。痛みは数時間から1〜2日程度で治まることが多く、左右どちらかに出ます。

排卵のタイミングは排卵日の計算方法で確認できます。排卵期の痛みが毎回とても強い、2日以上続く、ふらつきを伴うといった場合は、排卵後の出血が多くなる卵巣出血などとの区別が必要です。

生理後に痛い

生理が終わると、子宮の収縮による痛みは通常おさまります。生理が終わってからも痛みが続く場合は、生理以外の原因を考えます。子宮内膜症は生理の時期以外にも慢性的な痛みを起こすことがあり、骨盤内炎症性疾患や卵巣嚢腫も、周期と関係なく痛みの原因になります。

発熱やおりものの異常を伴う場合は骨盤内の感染症を考えて早めに受診してください。生理と生理の間の出血は不正出血としての評価が必要で、受診の目安は不正出血はどのくらい続いたら病院へ行くべきかで解説しています。

5. 痛み方でわかること(チクチク・ギューッ・鈍痛・突然の激痛)

チクチク、ギューッ、ズーンといった痛み方の違いも手がかりになりますが、痛み方と病気は1対1には対応しません。下の表は、よく見られる傾向として参考にしてください。

🩺 痛み方とよく見られる原因の傾向

痛み方 よく見られる原因
チクチク・ピリッと短い痛み 排卵痛、腸のガス、軽い便秘
ギューッと締めつける・波のある痛み 生理痛(子宮の収縮)、腸のぜん動による痛み、尿管結石
ズーンと重い鈍痛が続く 子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患、骨盤内うっ血症候群、便秘
突然の激しい痛み 卵巣茎捻転、卵巣出血・嚢腫の破裂、異所性妊娠の破裂、尿管結石
押すと痛い・熱がある 骨盤内炎症性疾患、虫垂炎

※傾向の目安であり、痛み方だけで原因を判断することはできません。

痛み方と同じくらい大切なのが、突然始まったのか、じわじわ強くなったのか、波があるのかといった始まり方と経過です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【痛みは「いつ・どこが・どのように」で伝える】

下腹部の痛みの原因を考えるとき、医師がいちばん頼りにしているのは、痛みそのものについての情報です。いつから始まったか、突然だったのか、生理周期のどの時期か、どこが一番痛いか、ほかに症状はあるか。これらがそろうと、考えるべき病気はかなり絞り込めます。

痛みの最中はうまく言葉にできないことも多いので、スマートフォンのメモに日付と痛み方を残しておくことをおすすめします。最終月経の開始日と妊娠の可能性は、下腹部痛の診察で最初に確認される基本の項目だと考えておいてください。

6. 子宮の痛みの原因になる主な病気

ここでは、子宮のあたりの痛みの原因として代表的な病気を、それぞれの特徴と受診の目安がわかる範囲でまとめます。

月経困難症

月経困難症は、生理に伴う痛みが強く、日常生活に支障が出る状態です。子宮に病気がないものを原発性(機能性)、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などが原因のものを続発性(器質性)と呼びます。原発性は10代後半から20代に多く、プロスタグランジンが子宮を強く収縮させることで痛みが生じ、吐き気や下痢を伴うこともあります。

治療の基本は鎮痛薬と低用量のホルモン剤などです。続けても改善しない場合は子宮内膜症などによる続発性月経困難症の可能性があり、画像検査を含めた評価が勧められます[2]。

子宮内膜症・子宮腺筋症

子宮内膜症は、子宮の内側にあるはずの子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜など子宮の外にできる病気で、生殖年齢の女性の約10%にみられるとされています[7]。病変は生理のたびに炎症を起こし、月経痛、性交痛、排尿痛、不妊、疲れやすさなどの原因になります[7]。卵巣にできると、古い血液がたまった卵巣チョコレート嚢胞になります。

ESHREのガイドラインは、診断にはまず超音波検査やMRIを用いること、ただし画像で見えなくても子宮内膜症を否定できないこと、血液などのバイオマーカーを診断に用いないことを示しています[3]。以前のように腹腔鏡手術で確かめてから治療を始めるのではなく、症状と画像をもとにホルモン療法を始めることも多くなっています。

子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉の層の中にできる病気です。子宮が全体に大きく硬くなり、強い月経痛や経血量の増加を起こします。40代に多いとされますが、年齢だけで判断はできません。詳しくは子宮内膜症、子宮腺筋症、卵巣チョコレート嚢胞の記事で解説しています。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の筋肉(平滑筋)から発生する良性の腫瘍で、生殖年齢の女性にとても多い病気です。発症には年齢、女性ホルモンの影響、家族歴などが関わるとされています[8]。女性ホルモンの影響で大きくなるため、閉経後は小さくなる傾向があります。

症状がない人も多い一方、できる場所や大きさによって、経血量の増加と貧血、月経痛、下腹部の圧迫感、頻尿、便秘などを起こします。詳しくは子宮筋腫の記事をご覧ください。

骨盤内炎症性疾患・子宮頸管炎(クラミジア・淋菌)

骨盤内炎症性疾患は、腟から子宮頸管、子宮、卵管、骨盤の腹膜へと細菌が上がって起こる感染症の総称で、代表的な原因はクラミジアと淋菌です[5]。子宮の入口の子宮頸管に炎症が起きた状態が子宮頸管炎で、ここから奥へ広がると子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎になります。

症状は下腹部痛、発熱、おりものの変化、性交痛、不正出血などですが、クラミジアは症状がほとんどないことも少なくありません。CDCは、疑いがあれば検査結果を待たずに治療を始め、パートナーも検査・治療を受けることを勧めています[5]。

💡 用語解説:骨盤内炎症性疾患(こつばんないえんしょうせいしっかん/PID)

子宮・卵管・卵巣と、その周りの骨盤の腹膜に起こる感染症をまとめた呼び方です。英語の pelvic inflammatory disease の頭文字から PID とも呼ばれます。性感染症の原因菌が子宮頸管から上に広がって起こることが多く、抗菌薬で治療します。CDCが経験的治療の開始を考える最低限の臨床基準は、骨盤痛・下腹部痛があり、ほかの原因が特定できず、内診で子宮頸部移動痛・子宮圧痛・付属器圧痛のいずれかを認めることです。

卵巣の病気(卵巣出血・卵巣嚢腫・茎捻転・破裂)

卵巣は子宮の両横にあるため、卵巣の病気による痛みは「子宮の片側の痛み」として感じられることがよくあります。排卵後の黄体から出血する卵巣出血(黄体出血)は、排卵後から次の生理までの時期に多く、性交がきっかけになることもあります。多くは安静と経過観察で治まりますが、お腹の中の出血が多い場合や血圧が下がる場合は手術が必要になり、どのような場合に手術が選ばれるかを検討した研究もあります[9]。

卵巣嚢腫は卵巣にできる袋状の腫れで、閉経前の女性に見つかる卵巣・卵管の腫れ(付属器腫瘤)の多くは良性です[10]。小さいうちは症状がないことがほとんどですが、大きくなるとねじれ(茎捻転)や破裂を起こし、突然の激痛の原因になります[4]。詳しくは卵巣嚢胞や卵巣破裂の記事で解説しています。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

異所性妊娠は、受精卵が子宮の内腔以外に着床した状態で、多くは卵管で起こります。初期には妊娠検査薬が陽性になるだけで症状がないこともありますが、妊娠が進むと片側の下腹部痛や少量の出血が現れ、卵管が破裂すると激しい腹痛と大量の腹腔内出血を起こします。

妊娠反応が陽性で子宮の中に胎嚢が見えない場合は、血液中のhCGの推移と超音波検査を組み合わせて評価します[6]。早い段階で見つかれば、薬による治療や卵管を残す手術を選べる場合があります。

子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん

子宮や卵巣のがんは、早い段階では痛みが出にくい病気で、痛みより出血やお腹の張りが手がかりになります。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関わり、初期は症状がほとんどなく、進むと性交後の出血や不正出血が出てきます。

子宮体がんでは不正出血、とくに閉経後の出血が大切なサインで、卵巣がんはお腹の張りなどで気づかれることがあります。詳しくは子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの記事をご覧ください。

骨盤内うっ血症候群

骨盤内うっ血症候群は、卵巣の静脈など骨盤の中の静脈が広がり、血液がうっ滞することで起こると考えられている慢性の骨盤痛です。子宮や卵巣に目立った病気が見つからないのに、下腹部の重い痛みが長く続く場合に考える病気のひとつで、婦人科以外の視点から評価しないと見落とされることがあると指摘されています[11]。

原因不明の骨盤痛がすべてこの病気というわけではなく、ほかの原因を除外したうえで考えます。慢性の骨盤痛では、子宮内膜症や過敏性腸症候群などが重なっていることもあります[1]。

7. 婦人科以外の原因

子宮のあたりの痛みで婦人科を受診しても、子宮や卵巣に異常が見つからないことがあります。その場合は、腸や膀胱・尿管など婦人科以外の原因を考えます。ACOGの指針も、骨盤の痛みの評価では過敏性腸症候群や膀胱の病気、筋肉や骨格の痛みといった婦人科以外の原因を含めて考えるよう求めています[1]。

もっとも身近なのは便秘です。S状結腸や直腸は子宮のすぐ後ろにあり、便やガスがたまると子宮のあたりの痛みとして感じられます。生理前後はホルモンの影響で便通が変わりやすく、生理と関係がある痛みでも原因が腸のことがあります。

過敏性腸症候群は、腸に異常がないのに腹痛と下痢・便秘を繰り返し、排便すると痛みが軽くなるのが特徴です。膀胱炎は排尿時の痛みや頻尿、尿管結石は脇腹から下腹部に広がる激痛と血尿、虫垂炎はみぞおちから右下腹部へ移る痛みと発熱が典型的です。

8. 何科に行く?受診したら何を調べる?

子宮のあたりの痛みで迷ったら、まずは婦人科(産婦人科)の受診を基本に考えてください。妊娠の可能性の確認や、子宮・卵巣の超音波検査は婦人科で行うことができるためです。日本では、婦人科外来での診療の標準的な考え方が、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の診療ガイドラインにまとめられています[12]。

婦人科・消化器内科・泌尿器科の選び方

生理や妊娠と関係がありそうな痛み、おりものや不正出血を伴う痛みは婦人科が適しています。一方、下痢や便秘、血便など便通の変化が中心なら消化器内科、排尿時の痛みや血尿、頻尿が中心なら泌尿器科が適しています。

判断がつかない場合は婦人科か内科を受診し、必要に応じて紹介を受ければかまいません。突然の激しい痛みや冷や汗・ふらつきを伴う痛みは、救急外来を受診してください。

我慢できる程度の痛みでも1週間ほど続く、繰り返す、生理痛で日常生活に支障が出ている、不正出血や月経不順を伴う場合は、近いうちに婦人科を受診してください。

受診時に伝えること・主な検査

受診のときは、痛みが始まった日時と始まり方、一番痛い場所、痛み方、生理周期との関係、最終月経の開始日、妊娠の可能性、痛み以外の症状(発熱・出血・おりもの・排尿や排便の変化)を伝えてください。

検査はおおむね次の流れで進みます。妊娠の可能性がある年齢の女性では、まず妊娠反応を確かめます。これは異所性妊娠を見逃さないためです[6]。そのうえで内診と経腟超音波検査で子宮や卵巣の状態を調べ、必要に応じて血液検査で炎症や貧血の有無を、おりものの検査でクラミジアや淋菌の有無を調べます[5]。子宮内膜症や卵巣の腫れが疑われる場合は、MRI検査を追加することがあります[3]。

問診痛みの経過・最終月経
▶
妊娠反応異所性妊娠の除外
▶
内診・経腟超音波子宮・卵巣の評価
▶
血液・おりもの検査必要に応じMRI・CT

性交の経験がない場合などは、お腹の上からの超音波検査で代える方法もあるので、受診の際に伝えてください。

9. 遺伝の視点:子宮の痛みの背景にある体質と家族歴

子宮の痛みそのものは遺伝する症状ではありません。ただ、痛みの原因になる病気の中には、家族に多い傾向があるものや、一部に遺伝性のものが含まれるものがあります。

子宮内膜症・子宮筋腫は家族に多いことがある

子宮内膜症や子宮筋腫は、母親や姉妹にこの病気がある人でなりやすい傾向があることが知られています。双子を対象にした研究では、子宮内膜症の発症に遺伝要因が関わっていることが示されています[13]。子宮筋腫でも、家族歴はリスク因子のひとつに挙げられています[8]。

ただし、これらは1つの遺伝子の変化で決まる病気ではありません。多くの遺伝子のわずかな違いと、ホルモン環境や生活環境などが積み重なって発症する多因子遺伝の病気と考えられています。そのため、家族にいるから必ずなるわけではなく、遺伝子検査で将来の発症を予測できるものでもありません。

母や姉妹が子宮内膜症や子宮筋腫で治療を受けていて、自分も生理痛が強い場合は、早めに婦人科で相談するきっかけになります。

子宮体がん・卵巣がんとリンチ症候群・HBOC

子宮体がんと卵巣がんの一部は、生まれつきの遺伝子の変化による遺伝性腫瘍として起こります。代表的なのがリンチ症候群と遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)です。子宮のがん全体の整理は子宮がんの総合解説をご覧ください。

リンチ症候群は、DNAの複製の誤りを直すミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2など)の病的バリアントによる常染色体顕性(優性)遺伝の体質で、大腸がんと子宮体がんのリスクが高くなります。大規模な追跡研究では、MLH1・MSH2・MSH6に病的バリアントを持つ女性で、40歳ごろから子宮体がんや卵巣がんのリスクが急に高まることが示されています[14]。

HBOCはBRCA1・BRCA2遺伝子の病的バリアントによる体質で、国際的な前向き研究では、80歳までに卵巣がんを発症する累積リスクがBRCA1で44%、BRCA2で17%と推定されています[15]。これは集団のデータで、個人の確率をそのまま表すものではありません。

大切なのは、子宮の痛みがあるから遺伝性腫瘍を疑う、という関係ではないことです。家族に若くして大腸がんや子宮体がんになった人が複数いる、乳がんや卵巣がんの人がいる、といった家族歴がある場合に、遺伝性腫瘍の可能性を考えます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【家族歴は、自分の体を知る手がかり】

子宮内膜症や子宮筋腫が家族に多いこと、子宮体がんや卵巣がんの一部に遺伝性のものがあることは、知っておいて損のない情報です。ただし、前者は多くの遺伝子と環境が関わる体質の話で、後者は1つの遺伝子の病的バリアントの話であり、意味がまったく違います。

家族の病歴を聞いておくことは、自分がどの病気に気をつければよいかを考える材料になります。家族歴から遺伝性腫瘍が疑われる場合には、遺伝学的検査の結果が本人と血縁者にとってどういう意味を持つかを、臨床遺伝専門医と整理することが大切だと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 生理じゃないのに子宮がギューッと痛いのはなぜ?

排卵痛や便秘、腸のぜん動による痛みのように病気ではないこともあれば、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣の病気、骨盤内炎症性疾患、異所性妊娠などが原因のこともあります。子宮の近くには卵巣・卵管・腸・膀胱があるため、痛む場所だけでは区別できません。急に強く痛む、発熱がある、妊娠の可能性がある場合は受診してください。

Q2. 生理前に子宮が痛いのは病気?

生理の1〜2日前からの軽い痛みは、子宮の収縮が始まることや腸の動きの変化によるもので、病気とは限りません。ただし、以前より痛みが強くなっている、生理の数日以上前から強く痛む、排便痛や性交痛を伴う場合は、子宮内膜症の可能性があるため婦人科で相談してください。生理が予定どおり来ない場合は妊娠の可能性も確かめてください。

Q3. 排卵日に子宮の片側が痛むのは普通?

排卵期に下腹部の片側が痛む排卵痛は、病気ではなく起こりうる痛みです。数時間から1〜2日程度で治まることが多いとされています。痛みがとても強い、2日以上続く、ふらつきや冷や汗を伴う場合は、卵巣出血などとの区別が必要なので受診してください。

Q4. ストレスで子宮が痛くなることはある?

ストレスが直接子宮の病気を起こすとは言えません。ただ、ストレスは痛みの感じ方や腸の動きに影響し、過敏性腸症候群のように下腹部痛を起こす病気を悪化させることがあります。ストレスのせいだと決めつけず、痛みが続く、繰り返す場合は一度受診して原因を確かめてください。

Q5. 妊娠初期に子宮が痛いのは大丈夫?

妊娠初期には子宮が大きくなることによる軽い痛みもありますが、異所性妊娠や流産の兆候としての痛みのこともあり、痛みだけでは区別できません。妊娠検査薬で陽性が出て、片側の痛みや出血がある場合は、早めに婦人科を受診し、子宮の中に胎嚢があるかを超音波検査で確かめてください。

Q6. 子宮の痛みは何日続いたら受診すべき?

突然の激しい痛み、冷や汗やふらつき、38℃以上の発熱、妊娠の可能性がある痛みは、日数に関係なくすぐに受診してください。我慢できる程度の痛みでも、1週間ほど続く、同じ痛みを繰り返す、生理痛で日常生活に支障が出ている、不正出血を伴う場合は、近いうちに婦人科を受診してください。

Q7. ミネルバクリニックで子宮の痛みの診察や治療はできますか?

いいえ、当院は遺伝診療の専門クリニックのため、子宮の痛み・下腹部痛の診察や治療は行っておりません。この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしておりません。子宮の痛みがある場合は、婦人科(産婦人科)を受診してください。

まとめ

子宮のあたりの痛みは、子宮だけでなく、卵巣・卵管、腸、膀胱など骨盤の中の多くの臓器が原因になります[1]。排卵痛や生理痛のように病気ではない痛みもある一方で、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内炎症性疾患、卵巣の病気、異所性妊娠のように診察が必要な病気もあります。痛む場所、生理周期との関係、痛み方と経過を組み合わせることで、原因を絞り込む手がかりになります。

突然の激しい痛み、冷や汗やふらつき、発熱、妊娠の可能性がある痛みは、様子を見ずに受診してください。生理痛が年々強くなる、鎮痛薬が効かない、生理以外の時期も痛むといった変化も婦人科で相談する目安です。子宮内膜症や子宮筋腫は家族に多い傾向があり、子宮体がんや卵巣がんの一部は遺伝性腫瘍として起こります。

🏥 子宮の痛み・下腹部痛の診察をお考えの方へ

当院では、子宮の痛み・下腹部痛の診察・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
子宮の痛みがある場合は、婦人科(産婦人科)を受診してください。突然の激しい痛みや、ふらつき・発熱を伴う場合は救急外来をご利用ください。

この記事は症状の原因を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、ご家族の病歴から遺伝性腫瘍などについて具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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