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子宮脱とは?見た目や初期症状のチェック、自分で治せるか・治療法と受診先を解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

「夕方になると腟から何かが下りてくる感じがする」「お風呂で丸いものに触れた」「座るとボールの上に座っているような違和感がある」。こうした症状は、子宮脱(しきゅうだつ)のサインかもしれません。子宮脱とは、子宮を支える骨盤の底の筋肉や靱帯がゆるみ、子宮が腟の出口に向かって下がってくる状態です。命に直接かかわる病気ではありませんが、排尿や歩行、外出に影響して生活の質を下げることがあります。恥ずかしさから受診をためらう方も多い病気ですが、程度に応じた治療法があります。この記事では、子宮下垂との違い、見た目や初期症状のセルフチェック、自分で治せるか、治療法と受診先を解説し、あわせて「なりやすさ」にかかわる遺伝的な体質についても臨床遺伝専門医の視点から説明します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩺 子宮脱・子宮下垂・骨盤臓器脱
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 子宮脱は自分で治せますか?

A. 下がった子宮が体操だけで元の位置に完全に戻ることは期待しにくいものの、骨盤底筋体操で症状が軽くなる効果は臨床試験で確認されています。症状が強い場合や進行している場合は、ペッサリー(腟に入れて子宮を支える器具)や手術が選択肢になります。尿が出ない、出血している、押しても戻らないといった場合は、早めに婦人科か女性泌尿器科を受診してください。

  • ➤子宮脱とは → 子宮が腟の出口に向かって下がる骨盤臓器脱の一つ。軽い段階は子宮下垂と呼ばれる
  • ➤主な症状 → 股に何か挟まる感じ、丸いものに触れる、頻尿・尿もれ・尿の出にくさ、便秘
  • ➤原因 → 経腟分娩、加齢・閉経、肥満や便秘・慢性の咳など腹圧のかかる生活、体質
  • ➤遺伝の視点 → なりやすさの約4割に遺伝要因がかかわるという双生児研究がある
  • ➤受診先 → 婦人科、または女性泌尿器科(ウロギネ科)

1. 子宮脱とは|子宮が腟の出口に向かって下がる状態

子宮脱とは、子宮が本来の位置から下がり、腟の中へ、さらに進むと腟の外へ出てくる状態です。子宮そのものに腫瘍や炎症があるわけではなく、子宮を下から支えている構造がゆるむことで起こります。

骨盤の底には、筋肉・靱帯(じんたい)・筋膜が重なった「骨盤底」があり、子宮・膀胱・直腸をハンモックのように下から支えています。出産や加齢などでこの支えが弱くなると、お腹に力が入るたびに臓器が少しずつ押し下げられ、やがて腟の出口に向かって下がってきます。子宮が下がる病気なので子宮に原因があると思われがちですが、実際の原因は「支え」の側にあります。

💡 用語解説:骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)

骨盤の底にある筋肉の集まりで、肛門挙筋(こうもんきょきん)などから成ります。靱帯や筋膜と協力して子宮・膀胱・直腸を支え、尿道・腟・肛門を締める働きも担っています。この筋肉が伸びたり傷ついたりすると、臓器を支える力と、尿や便をこらえる力の両方が弱くなります。

骨盤臓器脱のひとつ(膀胱瘤・直腸瘤・腟脱との違い)

子宮脱は、骨盤の臓器が腟の方へ下がる「骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)」の一種です。下がる臓器によって呼び名が変わり、膀胱が腟の前の壁を押して下がるものを膀胱瘤(ぼうこうりゅう)、直腸が腟の後ろの壁を押して下がるものを直腸瘤(ちょくちょうりゅう)と呼びます。子宮を摘出したあとに腟の一番奥が下がってくるものは腟断端脱(ちつだんたんだつ)といい、これらをまとめて「性器脱」と呼ぶこともあります。

骨盤底は一枚の支えなので、子宮だけが下がるとは限らず、膀胱や直腸が一緒に下がっていることもよくあります。子宮脱で排尿や排便の症状が出やすいのはこのためです。「腟脱」という言葉は、腟の壁そのものが下がってくる状態を指して使われます。

📘 骨盤臓器脱の種類

名称 下がる臓器・部位 目立ちやすい症状
子宮脱 子宮 股に挟まる感じ、腟口の丸いふくらみ
膀胱瘤 膀胱(腟の前壁) 頻尿、尿の出にくさ、残尿感
直腸瘤 直腸(腟の後壁) 便秘、便が出きらない感じ
腟断端脱 子宮摘出後の腟の奥 子宮脱と同様の下垂感

※実際には複数が同時に起こっていることがあり、どの臓器がどの程度下がっているかは診察で確認します。

なお、子宮が前に傾く・後ろに傾くといった「向き」の違いは子宮位置異常と呼ばれ、子宮が下に下がる子宮脱とは別のものです。

子宮下垂と子宮脱の違い

子宮下垂(しきゅうかすい)は、子宮が下がっているものの腟の中にとどまっている軽い段階を指し、腟の出口を越えて外へ出てきた状態を子宮脱と呼ぶのが一般的な使い分けです。2つは別の病気ではなく、同じ変化の軽い段階と進んだ段階にあたります。

子宮下垂の段階では自覚症状がないことも多く、婦人科健診の内診で指摘されて初めて気づく方もいます。一方、子宮脱まで進むと、入浴時に丸いものに触れる、歩くと股にこすれるなど、自分で気づくことが増えます。医学的には「下垂」と「脱」の境目よりも、後で説明するステージ(重症度)で程度を表します。

📘 子宮下垂と子宮脱の違い

項目 子宮下垂 子宮脱
子宮の位置 腟の中にとどまる 腟の出口付近から外に出る
自覚症状 ないことも多い、下腹部の重さ程度 丸いものに触れる、股に挟まる感じ
見つかり方 健診の内診で指摘されることが多い 自分で気づくことが多い
目安のステージ おおむねステージI〜II おおむねステージIII〜IV

※呼び方の境目は資料によって異なります。程度は内診でのステージで判断します。

何人に1人?どれくらい多い病気か

骨盤臓器脱は、症状を感じている人に限ると女性の3〜6%、内診で見つかる軽いものまで含めると最大で約50%にみられると報告されています。骨盤臓器脱の疫学をまとめた総説では、症状にもとづく有病率は3〜6%、腟の診察にもとづく有病率は最大50%とされ、数字の差は「何をもって骨盤臓器脱とするか」の違いによるものです[1]。

つまり、内診で少し下がっていると言われる程度の変化は珍しくないものの、日常生活で困るほどの症状がある人はその一部です。同じ総説によると、骨盤臓器脱の手術は女性1,000人あたり年間1.5〜1.8件行われ、60〜69歳で最も多くなります[1]。出産の直後よりも、閉経を過ぎてから症状が目立ってくることが多い病気です。

2. 子宮脱の見た目と重症度(ステージ0〜IV)

子宮脱の見た目は進み具合によって大きく異なり、軽い段階では外から見てもわからず、進むと腟の入り口から丸いふくらみが見えたり触れたりします。重症度は、腟の入り口を基準に、どこまで下がっているかで0〜IVの5段階に分けます。

軽度(子宮下垂)の見た目と触ったときの感じ

軽い段階では、鏡で見ても外見上の変化はほとんどありません。入浴中にいきんだときや、長く立っていた日の夕方に、腟の入り口の少し奥にやわらかい丸いものが触れる、という形で気づくことがあります。朝起きたときや横になっているときには引っ込み、日中に立ったり歩いたり、重いものを持ったりした後に下がってくるのが特徴です。

ただし、触れたものが子宮とは限りません。膀胱瘤や直腸瘤でも腟の壁がふくらみ、似た感触になります。また、出産後しばらくの時期には会陰の腫れや痔が「何か出ている」ように感じられることもあります。何が下がっているのかは自分では判断しにくいため、気になるときは診察で確認するのが確実です。

POP-Q分類のステージ

重症度は国際的にPOP-Q(ポップキュー)分類で表し、ステージ0(脱なし)からステージIV(完全に外へ出た状態)までの5段階です。基準になるのは腟の入り口にある処女膜輪(しょじょまくりん)の位置で、最も下がった部分がそこより上か下かを測ります[2]。

ステージ0下垂なし
▶
ステージI入り口より1cm超奥
▶
ステージII入り口の前後1cm以内
▶
ステージIII入り口より1cm超外
▶
ステージIV完全に反転して脱出

🩺 POP-Q分類のステージ

ステージ 最も下がった部分の位置 状態のイメージ
0 下垂なし 正常な位置
I 処女膜輪より1cmを超えて上(奥) 軽い下垂。多くは無症状
II 処女膜輪の上下1cm以内 入り口付近まで下がる。触れて気づくことがある
III 処女膜輪より1cmを超えて下(外) 腟の外に出ている
IV 腟が完全に裏返って脱出 子宮全体が外に出た状態

※ステージの定義はMerck Manual専門家版[2]による。実際の測定は内診で、いきんだ状態で行います。

💡 用語解説:POP-Q(ポップキュー)分類

Pelvic Organ Prolapse Quantification(骨盤臓器脱の定量化)の略です。腟の中のいくつかの決まった点が、腟の入り口からどれだけ上または下にあるかをcm単位で測り、ステージを決めます。決まった基準点を使うため、医師が変わっても同じ物差しで程度を比べられることが利点で、推奨される分類法とされています[2]。

写真を見て自分の状態と比べたいと考える方は少なくありません。ただ、同じステージでも見え方には個人差があり、膀胱瘤や直腸瘤との区別も外見だけでは難しいため、この記事では写真ではなく表と図で程度の違いを示しています。

3. 子宮脱の症状と初期症状

子宮脱の代表的な症状は、骨盤や腟の圧迫感・重さ、腟からふくらみが出てくる感覚、尿もれや頻尿、便秘などです。立っている時間が長い日や重いものを持った後に強くなり、横になると楽になるのが典型的です[3]。子宮そのものより、一緒に下がった膀胱や直腸による症状が目立つこともあります。

初期症状:夕方の下垂感・股に何か挟まっている感じ

初期に多いのは、「夕方になると下腹部や腟が重い」「股に何か挟まっているような違和感がある」「座ると丸いものの上に座っている感じがする」といった訴えです。米国国立医学図書館の解説でも、骨盤や腟の圧迫感・重さ、腟のふくらみ、腰の痛みが挙げられ、長く立つ・座る・運動する・持ち上げるといった動作で悪化するとされています[3]。

朝は症状が軽く、夕方に強くなるのは、日中の重力と腹圧で臓器が少しずつ下がるためです。横になって休むと元の位置に近づくため、症状が波のように出たり消えたりします。この「時間帯による変化」は、子宮脱を含む骨盤臓器脱に比較的特徴的な経過です。

排尿・排便の症状(頻尿・尿もれ・尿が出にくい・便秘)

膀胱が一緒に下がると、トイレが近い、急に強い尿意が来る、せきやくしゃみで尿がもれるといった症状が出ます。膀胱炎を繰り返すことも症状の一つとされています[3]。反対に、下がった膀胱によって尿道が折れ曲がると、尿が出にくい、出しきった感じがしないといった症状が出ることもあります。下がった部分を指で押し上げると尿が出やすくなる、という経験から気づく方もいます。

直腸が一緒に下がると、便秘や、便が出きらない感じが生じます[3]。便秘でいきむことが腹圧をさらに高め、下垂を進める要因にもなるため、排便の症状は治療の面でも見逃せません。

進行したときの症状(出血・ただれ・歩きにくさ)

腟の外に出た部分が下着とこすれると、表面がただれて出血したり、おりものが増えたりします[3]。股の間にふくらみがあるため歩きにくくなり、外出や運動を控えるようになる方もいます。性交時の違和感や痛みも、生活の質に影響する症状です。

出血がある場合、それが子宮脱のこすれによるものか、ほかの病気によるものかは区別が必要です。閉経後の出血など、見きわめが必要な出血については不正出血と受診の目安で詳しく解説しています。また、子宮脱では強い痛みが前面に出ることは多くありません。痛みが主な症状であれば、子宮が痛いときに考えられる病気も参考にしてください。

子宮脱のセルフチェック(チェックリスト)

次の項目に当てはまるものが多いほど、子宮脱を含む骨盤臓器脱の可能性があります。ただし、このチェックは受診のきっかけにするためのもので、診断の代わりにはなりません。

✅ 子宮脱のセルフチェック

□ 夕方や長く立った後に、腟や下腹部が重い・下がる感じがする
□ 股に何か挟まっているような違和感がある
□ 入浴時や排便時に、腟の入り口に丸くやわらかいものが触れる
□ 座るとボールの上に座っているような感じがする
□ トイレが近い、尿もれがある、尿が出にくい・出しきれない
□ 便秘がちで、便が出きらない感じがある
□ 下着に血やおりものがつくようになった
□ 横になると上の症状が楽になる

1つでも気になる項目があり、生活に支障を感じているなら、受診を考えるきっかけになります。特に、ふくらみが腟の外に出ている、尿が出にくい、出血があるという場合は、様子を見ずに受診してください。受診先は第9章で説明します。

4. 子宮脱の原因となりやすい人

子宮脱は、骨盤底の支えを弱める要因(出産・加齢・閉経・体質)と、支えに負担をかける要因(肥満・便秘・慢性の咳・重いものを持つ)が重なって起こります。米国国立医学図書館は、経腟分娩、大きな赤ちゃんの出産、加齢、閉経にともなうエストロゲンの低下、慢性の咳、肥満、骨盤の腫瘍、家族歴、重いものを繰り返し持つことを挙げています[3]。

骨盤底(筋肉・靱帯・筋膜)のゆるみが本体

子宮脱の本体は、子宮の病気ではなく骨盤底のゆるみです。専門家向けの医学書では、骨盤臓器脱は骨盤の臓器を支える靱帯・筋膜・筋肉がゆるむことで起こる、ヘルニアに似た状態と説明されています[2]。

骨盤底の支えは、筋肉だけでなく、子宮を上から吊り下げる靱帯と、臓器と腟の間にある筋膜の組み合わせで成り立っています。筋肉が弱っても靱帯や筋膜がしっかりしていれば下がりにくく、逆に靱帯や筋膜が伸びていると筋肉を鍛えても支えきれないことがあります。治療法を選ぶときに「どこの支えが弱いのか」が問題になるのは、このためです。

妊娠・経腟分娩

最も大きな要因は経腟分娩です。赤ちゃんが産道を通るとき、骨盤底の筋肉と神経は大きく引き伸ばされ、ときに傷つきます。経腟分娩の回数が多い、大きな赤ちゃんを出産したといった条件は、子宮脱の要因として挙げられています[3]。専門家向けの医学書でも、経腟分娩の経験(経産)が主な要因の一つとされています[2]。

出産直後にすぐ子宮脱になる人は多くありません。出産で受けた骨盤底の変化に、その後の加齢や閉経が重なり、何年も経ってから症状として現れる、という経過をたどることがよくあります。手術が60代に最も多いことも[1]、こうした時間差を反映しています。

加齢と閉経(エストロゲンの低下)

年齢を重ねると筋肉量が減り、組織の弾力も落ちます。さらに閉経によって女性ホルモンのエストロゲンが減ると、腟や骨盤底の組織が薄く、弱くなります。閉経にともなうエストロゲンの低下は、子宮脱の要因の一つとされています[3]。更年期から60代にかけて症状が目立ってくるのは、出産の影響に加齢と閉経の変化が重なるためです。

腹圧がかかる生活(肥満・便秘・慢性の咳・重いものを持つ)

お腹の中の圧力(腹圧)が繰り返し、長く高まる状態も、骨盤底に負担をかけ続けます。肥満、慢性の咳、重いものを繰り返し持つことは、子宮脱の要因として挙げられており[3]、便秘や重いものを持つことによる慢性的な腹圧の上昇も要因とされています[2]。喘息や気管支炎などで咳が続く方、介護や仕事で重いものを持つ機会が多い方は、気をつけたい要因です。

出産や加齢は変えられませんが、体重・便秘・咳・持ち上げ動作は、生活の中で調整できる要因です。子宮脱の予防や進行を抑える工夫は、主にこの部分に向けられます。

20代・30代や出産経験のない人に起こる場合

子宮脱は出産経験のある中高年の女性に多い病気ですが、20代・30代の方や、出産の経験がない方に起こることもあります。専門家向けの医学書は、頻度は低いものの、結合組織の病気も骨盤臓器脱の原因になると記載しています[2]。

出産や加齢といった分かりやすい要因がないのに子宮が下がってくる場合には、組織そのものの「伸びやすさ」、つまり体質がかかわっている可能性があります。この点を次の章で詳しく説明します。

5. 遺伝の視点|子宮脱になりやすい体質は遺伝するか

子宮脱そのものが親から子へそのまま受け継がれるわけではありませんが、なりやすさには遺伝的な体質がかかわっています。家族歴は子宮脱の要因の一つに挙げられており[3]、双生児研究やゲノム研究からも、遺伝要因の関与が示されています。

家族に骨盤臓器脱の人がいるとなりやすい(家族集積・双生児研究・多因子遺伝)

同じ家系に同じ病気が多くみられることを「家族集積」といいます。家族が同じ生活環境で暮らしていることでも家族集積は起こるため、遺伝の影響を取り出すには、遺伝子を100%共有する一卵性双生児と、約50%共有する二卵性双生児を比べる双生児研究が使われます。

一卵性3,376組と二卵性5,067組の女性の双子を調べた研究では、骨盤臓器脱のなりやすさのばらつきのうち約40%が遺伝要因、約40%が双子の間で共有しない環境要因(出産歴など一人ひとり異なる経験)、約20%が共有する環境要因で説明されると推定されました[4]。遺伝と環境がほぼ同じ重みで関係していることになります。

💡 用語解説:多因子遺伝と「遺伝の割合40%」の読み方

多因子遺伝とは、1つの遺伝子ではなく、影響の小さい多数の遺伝子と環境要因が積み重なって病気のなりやすさが決まる仕組みです。双生児研究の「約40%」は、集団の中で骨盤臓器脱のなりやすさに差が生じる理由のうち、どのくらいを遺伝の違いで説明できるかを示す数字で、個人が子宮脱になる確率ではありません。家族に子宮脱の人がいても、必ず発症するわけではありません。

こうした病気の受け継がれ方は、1つの遺伝子で決まる病気とは異なり、遺伝形式の中では多因子遺伝に分類されます。どの遺伝子がかかわるのかを探るため、ゲノム全体の多数の目印を患者と非患者で比べるGWAS(ゲノムワイド関連解析)も行われています。日本人の骨盤臓器脱771人と対照76,625人を比べた研究では、WT1遺伝子の近くの領域がなりやすさと関連していました。欧州の研究で報告された24の領域のうち21の領域で、日本人でも同じ向きの影響がみられ、人種を越えて共通する遺伝的な背景があることも示されています[5]。

ただし、1つひとつの領域の影響はごく小さく、こうした目印を調べて個人の子宮脱のなりやすさを予測できる段階にはありません。現時点では、家族歴を「なりやすさの手がかり」として受け止め、変えられる要因(体重・便秘・咳・持ち上げ動作)に気を配ることが現実的な活かし方です。

結合組織の遺伝性疾患と子宮脱(エーラス・ダンロス症候群・マルファン症候群)

骨盤底の靱帯や筋膜は、コラーゲンなどのたんぱく質でできた結合組織です。結合組織をつくる遺伝子に生まれつきの変化があると、組織が伸びやすく、支える力が弱くなることがあります。

代表的なのが、皮膚や関節が伸びやすくなるエーラス・ダンロス症候群と、背が高く手足が長い体型や大動脈の病気を特徴とするマルファン症候群です。これらの女性を調べた研究では、マルファン症候群12人のうち4人(33%)、エーラス・ダンロス症候群8人のうち6人(75%)に骨盤臓器脱がみられ、尿失禁もそれぞれ42%、50%にみられました[6]。対象者が少ない研究なので割合そのものは幅をもって受け止める必要がありますが、結合組織の弱さが骨盤臓器脱に結びつくことを示す結果です。

💡 用語解説:結合組織(けつごうそしき)

体の組織や臓器をつなぎ、支え、形を保つ組織の総称です。皮膚の真皮、腱、靱帯、血管の壁、骨盤底の筋膜などがこれにあたり、主な材料はコラーゲンやエラスチンといったたんぱく質です。結合組織の遺伝性疾患では、全身の複数の場所に「伸びやすさ」「もろさ」が同時に現れることが多いのが特徴です。

遺伝的な背景を考えたほうがよいサイン

子宮脱のほとんどは出産・加齢・腹圧で説明でき、遺伝性の結合組織疾患が背景にある人は一部です。そのうえで、次のような特徴が重なる場合は、体質としての結合組織の弱さを考えるきっかけになります。

🧬 結合組織の体質を考えるきっかけになる特徴

特徴 具体的な例
発症の年齢・経過 20〜30代での発症、出産経験がないのに子宮が下がる
関節 関節が柔らかすぎる、脱臼や亜脱臼を繰り返す
皮膚 皮膚がよく伸びる、傷あとが広がりやすい、あざができやすい
ほかのヘルニア 鼠径(そけい)ヘルニアなどを繰り返す
家族歴 血縁者に若い年齢での骨盤臓器脱、大動脈の病気、同様の体質の人がいる

※これらに当てはまっても、遺伝性疾患があるとは限りません。診断は症状・身体所見・家族歴を総合して行います。

子宮脱の治療そのものは婦人科や女性泌尿器科で行います。そのうえで、全身の所見や家族歴から遺伝性の結合組織疾患が疑われる場合には、臨床遺伝専門医による評価と、必要に応じた結合組織疾患の遺伝子検査が診断の手段になります。遺伝性疾患の診断は、本人の今後の健康管理や血縁者の健康にかかわる情報になるため、検査の前後に遺伝カウンセリングで結果の意味を確認します。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「お産と年齢の病気」だけではない】

骨盤臓器脱は、長く「出産と年齢による病気」として説明されてきました。それは大筋で正しいのですが、同じように出産を経験しても、下がる人と下がらない人がいます。双生児研究で遺伝要因と環境要因がほぼ同じ重みと推定されたことは、その違いの一部を体質が説明していることを示していると考えています。

一方で、遺伝要因は「決まった運命」ではありません。体重や便秘、咳、持ち上げ動作といった変えられる要因も、遺伝と同じくらいの重みを持っています。体質を知ることは、あきらめる理由ではなく、変えられる部分に力を注ぐための手がかりだと考えています。

6. 妊娠中・産後の子宮脱

妊娠中に子宮脱が起こるのはまれで、産後に下がる感じを覚える場合も、時間の経過とともに軽くなることがあります。ただし、妊娠中・産後は体の状態が大きく変わる時期なので、自己判断せずに妊婦健診や産後健診で相談することが基本です。

妊娠中に子宮が下がってきたら

妊娠中の子宮脱は、分娩1万〜1万5千件に1件程度と推定される、まれな状態です[7]。妊娠前から子宮下垂があった人や、経産婦に起こりやすいとされ、妊娠によるホルモンの変化で組織がやわらかくなることも関係すると考えられています[7]。

対応としては、安静、下がった部分をそっと戻す処置、ペッサリーの使用などが報告されており、分娩の方法は妊娠の経過や脱出の程度によって個別に検討されます[7]。妊娠中の「下腹部が重い」「下がる感じがする」という感覚の多くは、大きくなる子宮による圧迫で、子宮脱とは限りません。一方、腟の入り口から何かが出てきている、出血がある、お腹の張りや痛みを伴うといった場合は、妊婦健診を受けている医療機関にすぐ連絡してください。

産後の子宮下垂・子宮脱は自然に治る?

産後しばらくの下がる感じは、骨盤底の回復とともに軽くなることもありますが、どこまで戻るかには個人差があります。出産直後の骨盤底は大きく引き伸ばされた状態にあり、産後の数か月は回復の途中です。

この時期に「陰部から何か出ている」と感じたときは、子宮下垂のほかに、会陰の腫れ、傷の治りかけ、痔などの可能性もあります。産後1か月健診などの機会に、症状を具体的に伝えて確認してもらいましょう。骨盤底筋体操は産後の回復にも使われる方法ですが、始める時期や方法は産後の経過によって異なるため、健診で相談してから始めるとよいでしょう。症状が続く、あるいは強くなる場合は、健診を待たずに受診してください。

7. 子宮脱は自分で治せる?骨盤底筋体操の効果と限界

下がった子宮を体操だけで完全に元の位置へ戻すことは期待しにくいものの、骨盤底筋体操によって症状が軽くなる効果は、臨床試験で確認されています[8]。「自分で治す」というより、「自分でできる範囲で進行を抑え、症状を和らげる」と考えるのが実際的です。

下がった子宮は自然に元に戻るか

軽い段階では、時間帯や体調によって下がり方が変わり、横になると元の位置近くまで戻ります。そのため「治った」と感じる日もありますが、支えの構造が回復したわけではないため、立って過ごすとまた下がってきます。

伸びてしまった靱帯や筋膜は、筋肉のように鍛えて元に戻すことはできません。骨盤底筋体操で筋肉の支えを強めることは、弱った靱帯や筋膜の働きを補う方向の取り組みです。進んだ子宮脱ほど、体操だけで症状を十分に抑えるのは難しくなります。

骨盤底筋体操のやり方

骨盤底筋体操は、肛門と腟を締めたりゆるめたりして、骨盤底の筋肉を鍛える運動です。基本的な流れは次のとおりです。

🏃 骨盤底筋体操の基本

手順 内容
1. 姿勢 あお向けに寝て膝を立てる。慣れたら座った姿勢や立った姿勢でも行う
2. 締める おならや尿をがまんするように、肛門と腟を体の内側へ引き上げるように締める
3. 保つ 締めた状態を数秒保ち、同じくらいの時間をかけてゆっくりゆるめる
4. 繰り返す これを1回として何回か繰り返し、1日に数回行う
注意点 お腹やお尻、太ももに力を入れない。息を止めない。いきむ動作と逆向きであることを意識する

※回数や保つ時間は、筋力に応じて医師や理学療法士などの指導で調整します。

効果を確かめた代表的な研究として、骨盤臓器脱の女性447人を対象にした多施設の臨床試験があります。この試験では、専門職による1対1の骨盤底筋体操の指導を16週間に5回行ったグループで、12か月後の症状スコアが対照グループより改善し、「脱が良くなった」と答えた人は57.2%と、対照グループの44.7%を上回りました[8]。

この結果から分かるのは、正しいやり方を指導のもとで続けることの大切さです。自己流では、締めているつもりで実はいきんでいる、という逆の動作になっていることもあります。やり方に自信がない場合は、受診した医療機関で確認してもらうと確実です。

やってはいけないこと・悪化を防ぐ生活

子宮脱があるときに避けたいのは、強くいきむこと、重いものを繰り返し持つこと、便秘や慢性の咳を放置すること、体重を増やしすぎることです。生活の工夫としては、減量、重いものを持たないこと、慢性の咳の治療が挙げられています[3]。

便秘の予防には、食物繊維と水分を十分にとり、排便時に強くいきまないことが役立ちます。重いものを持つ必要があるときは、膝を曲げて体に近づけて持ち、息を止めずにゆっくり持ち上げるようにします。咳が長引く場合は、その原因の治療が骨盤底を守ることにもつながります。

下がった子宮を自分で押し戻してよいか

外に出てきた部分を、清潔な手で、横になった状態でそっと押し戻すと、一時的に楽になることがあります。ただし、押し戻しても支えがゆるんだままなので、立って過ごすとまた出てきます。押し戻すことは応急的な対処であって、治療ではありません。

押しても戻らない、戻すときに強い痛みがある、出血している、表面がただれているといった場合は、無理に押し込まずに受診してください。何度も出てくる状態が続くなら、ペッサリーや手術を含めて治療を検討する時期です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「年のせい」で片づけない】

子宮脱は、命にかかわらない病気であるぶん、「年だから仕方ない」「人に言うほどのことではない」と後回しにされやすい病気です。けれども、外出や運動を控える、トイレの場所を気にして予定を立てるといった生活の縮み方は、体の健康にも心の健康にも影響します。

骨盤底筋体操からペッサリー、手術まで、程度と希望に合わせて選べる治療があることは、もっと知られてよいと考えています。「どこに相談すればよいかわからない」ことが受診の壁になっているなら、婦人科か女性泌尿器科が窓口になる、ということだけでも覚えておいていただければと思います。

8. 子宮脱の治療法

子宮脱の治療は、症状の強さ、ステージ、年齢、今後の妊娠の希望、手術への考え方によって選び、骨盤底筋体操などの保存療法、ペッサリー、手術の3つが柱です。症状がない軽い下垂であれば、必ずしも治療を急ぐ必要はなく、生活の工夫をしながら経過をみることもあります。

🩺 子宮脱の主な治療法

治療法 内容 向いている場合の例
保存療法 骨盤底筋体操、減量・便秘対策などの生活指導 軽度〜中等度、まず手術以外を試したい
ペッサリー 腟に器具を入れて子宮を支える 手術を避けたい、持病や年齢で手術が難しい
手術 腟から、またはお腹側から支えを作り直す/腟を閉じる 症状が強い、ほかの方法で改善しない

※どの治療法が合うかは、診察所見と本人の希望を踏まえて担当医と相談して決めます。

保存療法(骨盤底筋トレーニング・生活指導)

保存療法の中心は、第7章で説明した骨盤底筋体操と、腹圧を減らす生活の工夫です。骨盤底筋体操は、指導のもとで行うことで症状を改善する効果が示されています[8]。閉経後の方では、エストロゲンの補充が腟の組織の状態を改善する目的で使われることもあります[3]。

漢方薬が使われることもありますが、子宮脱の治療として効果を確かめた質の高い研究は十分ではありません。薬だけで下がった子宮を元に戻すことは期待しにくいと考えてください。

ペッサリー(リング)療法と注意点

ペッサリーは、腟の中に入れて子宮を下から支える器具で、「リング」とも呼ばれます。ゴムやプラスチックでできたドーナツ状のものなど、いくつかの形があり、定期的に取り出して洗う必要があります[3]。手術を避けたい方や、持病や年齢の関係で手術が難しい方に選ばれることが多い治療です。

💡 用語解説:ペッサリー

腟の中に入れて、下がってくる子宮や腟の壁を支える医療用の器具です。サイズと形が複数あり、合うものを医師が選んで装着します。自分で出し入れして洗う方法と、医療機関で定期的に交換・洗浄する方法があり、どちらを選ぶかは器具の種類や本人の状況で決まります。

ペッサリーについては、4つの臨床試験(478人)をまとめたコクラン・レビューがあります。骨盤底筋体操にペッサリーを組み合わせると、体操だけの場合よりも症状が良くなったと感じる人が増える可能性が高い一方、ペッサリーと体操を単独で比べた場合の優劣ははっきりしませんでした[9]。また、ペッサリーではおりものの増加、尿もれの増加、腟の壁のただれや刺激といった有害事象が体操より多く、組み合わせでは不正出血が増える可能性も示されています[9]。

こうした副作用を早く見つけるため、ペッサリーを使っている間は定期的な通院が欠かせません。おりものの色やにおいの変化、出血、痛みがあれば、次の予約を待たずに相談してください。ペッサリーが抜けてしまったときは、自己着脱の方法を医療者から指導されている場合はその指示に従い、指導されていない場合は無理に自分で入れ直さず、処方した医療機関に連絡します。

サポート下着・ベルト

外側から腟の入り口を支える構造の下着や、骨盤周りに巻くベルトも市販されています。下がる感じを一時的に和らげる目的で使う人がいますが、子宮脱の治療としての効果を比べた研究は限られています。骨盤ベルトの多くは骨盤の関節を支えるための製品で、下がった子宮を持ち上げるものではない点にも注意が必要です。

使ってみて楽になるなら補助的な手段として役立ちますが、症状の原因を治すものではありません。使うことで受診が遅れないよう、ほかの治療と並行して担当医に相談してください。

手術(腟式手術・腹腔鏡下/ロボット支援下仙骨腟固定術・腟閉鎖術)

手術は、症状が強い場合や、ほかの治療で十分に改善しない場合に検討されます。手術の方法は大きく、腟から行う方法、お腹側から行う方法、腟を閉じる方法に分けられます。

腟から行う手術には、子宮を摘出したうえで腟の奥を靱帯に固定する方法や、仙棘靱帯(せんきょくじんたい)に固定する方法などがあります[3]。子宮を取る手術全般については子宮摘出の理由と術式で解説しています。お腹側から行う仙骨腟固定術(せんこつちつこていじゅつ)は、腟や子宮を骨盤の奥の仙骨にメッシュで吊り上げる方法で、腹腔鏡やロボット支援のもとで行われることもあります。腟閉鎖術は腟を狭く閉じる方法で、体への負担が比較的小さい一方、術後に性交はできなくなるため、性交渉の予定がない高齢の方などで選ばれます。

腟の壁にメッシュを入れて補強する経腟メッシュ手術については、米国食品医薬品局(FDA)が2019年4月、骨盤臓器脱の経腟修復用メッシュの販売・流通の中止を製造業者に命じています[10]。国や製品によって状況は異なるため、メッシュを使うかどうか、使う場合の利点と合併症については、手術を担当する医師から説明を受けてください。

どの手術にも再発の可能性があり、術式ごとに回復期間や合併症の種類が異なります。妊娠の希望があるかどうか、性生活への影響をどう考えるかも、術式を選ぶうえで大切な情報です。

9. 子宮脱は何科を受診する?受診の目安

子宮脱は、婦人科、または女性泌尿器科(ウロギネ科)で診てもらえます。尿もれや尿の出にくさが中心なら女性泌尿器科、婦人科健診をかかりつけにしているならまず婦人科、というように、相談しやすい方を選んで構いません。

受診先(婦人科・女性泌尿器科〈ウロギネ〉)

婦人科では内診で程度を確認し、ペッサリーの装着や手術を行う施設もあります。女性泌尿器科やウロギネ科(泌尿器科と婦人科の境目の領域を専門にする診療科)では、排尿の症状を含めて骨盤底全体を評価します。「骨盤臓器脱外来」「骨盤底外来」といった専門外来を設けている病院もあります。

最初にかかった医療機関で手術が必要と判断された場合に、手術を多く行う施設を紹介されることもあります。受診先に迷って症状を我慢しているよりも、まず近くの婦人科か女性泌尿器科を受診するのが近道です。

すぐ受診したほうがよいサイン(尿が出ない・出血・押しても戻らない)

⚠️ 早めの受診が必要なサイン

・尿がほとんど出ない、または出にくい状態が続く
・脱出した部分から出血している、ただれている
・押しても戻らない、戻すと強く痛む
・発熱や、においの強いおりものがある
・妊娠中に腟の入り口から何かが出てきた

これらは、排尿の障害や感染、組織の傷みが起きている可能性を示すサインです。子宮脱の多くはゆっくり進む病気ですが、こうした症状があるときは次の予約を待たずに受診してください。

診察で行うこと

診察では、症状、出産歴、既往歴、服用中の薬などを確認したうえで、内診で子宮や腟の壁がどこまで下がるかを調べます。いきんだ状態で測ることで、日常生活で最も下がったときの状態を再現し、POP-Q分類のステージを決めます。

あわせて、超音波検査で子宮や卵巣の状態を確認し、尿検査で感染の有無を調べます。尿が出にくい症状がある場合は、排尿後に膀胱に残っている尿の量(残尿量)を測ることもあります。多くの場合、初診の時点でおおよその重症度と治療の方向性が決まります。

10. 子宮脱を放置するとどうなる?

子宮脱は命に直接かかわる病気ではなく、症状がない軽い段階であれば、治療せずに経過をみることもあります。一方、腟の外に出た状態が続くと、子宮頸部や腟の壁のただれや感染が起こることがあり、尿路感染症や、便秘にともなう痔を生じることもあります[3]。

尿の出にくさが強くなると、膀胱に尿が残りやすくなり、膀胱炎を繰り返す原因になります。また、外出や運動を控えることで体力が落ち、活動量の低下がさらに筋力の低下を招く、という悪循環に入ることもあります。

放置した場合にどうなるかは、ステージや症状、年齢によって大きく異なります。「今すぐ手術が必要か」と身構える必要はありませんが、生活に支障がある、症状が強くなってきたと感じたら、治療の選択肢を知るために一度受診しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 一度子宮脱になったらどうなりますか?

いったんゆるんだ支えの構造は自然には元に戻りにくいため、子宮脱は治療をしなければ続くことが多い状態です。ただし進み方はゆっくりで個人差が大きく、症状がない軽い段階なら経過観察も選択肢になります。症状がある場合は、骨盤底筋体操、ペッサリー、手術で改善をめざせます。

Q2. 子宮脱は何人に1人くらいですか?

子宮脱を含む骨盤臓器脱は、症状を感じている人に限ると女性の3〜6%、内診で見つかる軽いものまで含めると最大で約50%にみられると報告されています。軽い下垂は珍しくありませんが、生活に困るほどの症状がある人はその一部です。

Q3. 子宮脱の手術は大変ですか?

術式によって体への負担は異なります。腟から行う手術、お腹側から腹腔鏡などで行う手術、腟を閉じる手術があり、年齢や持病、妊娠の希望、性生活への考え方によって選びます。入院期間や回復の見込み、再発の可能性は術式ごとに違うため、担当医から具体的な説明を受けてください。

Q4. 子宮脱でも性生活や妊娠はできますか?

程度や治療法によって異なります。軽い段階では性生活に大きな支障がないこともありますが、違和感や痛みがあれば担当医に伝えてください。腟閉鎖術を受けると性交はできなくなります。今後の妊娠を希望する場合は、子宮を残す治療法を選ぶ必要があるため、治療を決める前に必ず希望を伝えてください。

Q5. リング(ペッサリー)が取れたらどうすればいいですか?

自己着脱の方法を医療者から指導されている場合はその指示に従ってください。指導されていない場合は無理に自分で入れ直さず、清潔に保管して、処方した医療機関に連絡してください。抜けやすい場合はサイズや形が合っていない可能性があり、別の種類に替えることで改善することがあります。出血や痛みがある場合は早めに受診してください。

Q6. 骨盤ベルトは子宮を圧迫しませんか?

骨盤ベルトの多くは骨盤の関節を支える目的の製品で、下がった子宮を持ち上げるものではありません。子宮脱の治療としての効果を確かめた研究も限られています。使って楽になるなら補助的に使ってもよいですが、締めつけで不快感や痛みがあれば中止し、治療については担当医に相談してください。

Q7. 20代でも子宮脱になりますか?

頻度は低いものの、20代で起こることもあります。出産後の骨盤底の変化が原因のこともあれば、出産経験がないのに下がる場合には、結合組織の体質がかかわっていることもあります。関節が柔らかすぎる、皮膚がよく伸びるなどの特徴が重なる場合は、診察の際に伝えてください。

Q8. 子宮脱は遺伝しますか?

子宮脱そのものがそのまま遺伝するわけではありませんが、なりやすさには遺伝的な体質がかかわります。双生児研究では、骨盤臓器脱のなりやすさのばらつきの約40%が遺伝要因で説明されると推定されています。これは個人の発症確率ではなく、家族に子宮脱の人がいても必ず発症するわけではありません。

Q9. ミネルバクリニックで子宮脱の検査や治療はできますか?

いいえ、当院では子宮脱の検査・診断・治療を行っておらず、この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。子宮脱が疑われる場合は、婦人科または女性泌尿器科(ウロギネ科)にご相談ください。

まとめ

子宮脱は、骨盤底の筋肉・靱帯・筋膜がゆるみ、子宮が腟の出口に向かって下がる状態で、骨盤臓器脱の一つです。軽い段階は子宮下垂と呼ばれ、程度はPOP-Q分類のステージで表します[2]。骨盤臓器脱は、症状のある人に限ると女性の3〜6%にみられます[1]。

主な原因は経腟分娩、加齢と閉経、腹圧のかかる生活で、なりやすさには遺伝的な体質もかかわっています[4]。下がった子宮が体操だけで完全に戻ることは期待しにくいものの、骨盤底筋体操で症状は軽くなり得ます。ペッサリーや手術を含め、程度と希望に合わせて治療を選べるので、気になる症状があれば婦人科か女性泌尿器科を受診してください。若い年齢での発症や関節・皮膚の特徴がある場合は、結合組織の体質という視点も手がかりになります。

🏥 子宮脱の検査・治療をお考えの方へ

当院では、子宮脱の検査・診断・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
子宮脱が疑われる場合は、婦人科または女性泌尿器科(ウロギネ科)を専門とする医療機関へご相談ください。

この記事は病気を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

  • [1] Barber MD, Maher C. Epidemiology and outcome assessment of pelvic organ prolapse. Int Urogynecol J. 2013;24(11):1783-1790. [PubMed 24142054]
  • [2] Overview of Pelvic Organ Prolapse (POP). Merck Manual Professional Edition. [Merck Manual]
  • [3] Uterine prolapse. MedlinePlus Medical Encyclopedia. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [4] Altman D, Forsman M, Falconer C, Lichtenstein P. Genetic influence on stress urinary incontinence and pelvic organ prolapse. Eur Urol. 2008;54(4):918-922. [DOI 10.1016/j.eururo.2007.12.004]
  • [5] Matsunami M, Imamura M, Maeda S, et al. Genome-wide association studies for pelvic organ prolapse in the Japanese population. Commun Biol. 2024;7:1188. [DOI 10.1038/s42003-024-06875-2]
  • [6] Carley ME, Schaffer J. Urinary incontinence and pelvic organ prolapse in women with Marfan or Ehlers-Danlos syndrome. Am J Obstet Gynecol. 2000;182(5):1021-1023. [PubMed 10819815]
  • [7] Houmaid H, Harou K, Fakhir B, et al. Uterine prolapse in pregnancy: a case report and literature review. Pan Afr Med J. 2024;49:101. doi:10.11604/pamj.2024.49.101.43712. [PAMJ]
  • [8] Hagen S, Stark D, Glazener C, et al. Individualised pelvic floor muscle training in women with pelvic organ prolapse (POPPY): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2014;383(9919):796-806. [PubMed 24290404]
  • [9] Bugge C, Adams EJ, Gopinath D, et al. Pessaries (mechanical devices) for managing pelvic organ prolapse in women. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Nov 18;11(11):CD004010. doi:10.1002/14651858.CD004010.pub4. [Cochrane CD004010.pub4]
  • [10] FDA’s Activities: Urogynecologic Surgical Mesh. U.S. Food and Drug Administration. [FDA]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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