目次
卵巣を取ったあと体がどう変わるかは、「片方か両側か」と「閉経の前か後か」の2つで大きく違います。片方だけなら、残った卵巣が働くので生理や女性ホルモンはおおむね保たれます。一方、閉経前に両側を取ると、その日から閉経した状態になります。これを外科的閉経と呼びます。「卵巣を取ると老ける」「寿命が縮む」と心配される変化の多くは、この外科的閉経に関係しています。この記事では、卵巣摘出のデメリットを医学的な根拠に沿って整理し、老化や寿命への影響、摘出が必要になる病気、遺伝性のがんと予防的な摘出、術後の過ごし方と治療の選択肢までを解説します。
Q. 卵巣を取るとどうなりますか?
A. 片方だけなら、残った卵巣がホルモンをつくり続けるため、生理や体調の変化は小さく、閉経が平均で1年ほど早まる程度と報告されています。閉経前に両側を取ると女性ホルモンが急になくなり、ほてりなどの症状に加えて、骨や血管、認知機能への長期的な影響が問題になります。影響を和らげる方法としてホルモン補充療法(HRT)があり、使えるかどうかは持病や乳がんの既往などで変わります。
- ➤片方の摘出 → 生理・排卵は続く。閉経は平均で約1年早まる
- ➤閉経前の両側摘出 → 外科的閉経。症状が急で強く出やすい
- ➤長期的な影響 → 骨密度の低下、心血管疾患、認知機能との関連が報告されている
- ➤老ける? → 急に老けるのではなく、閉経後の変化が早く来ると考える
- ➤遺伝性のがん → BRCA1/2などでは予防的な摘出が勧められる年齢がある
1. 卵巣を取るとどうなる?片方か両側か・閉経前か後かで違う
卵巣摘出の影響は、「取るのが片方か両側か」と「手術のときに閉経しているかどうか」の組み合わせで決まります。同じ「卵巣を取る手術」でも、30代で片方だけ取る場合と、40代前半で両側を取る場合とでは、術後に起こることがまったく違います。
📊 卵巣摘出の影響の目安(片方か両側か × 閉経前か後か)
| 手術の範囲 | 閉経前に手術 | 閉経後に手術 |
|---|---|---|
| 片方の卵巣 | 生理・排卵は続く。閉経は平均で約1年早まる | ホルモン面の変化はほとんどない |
| 両側の卵巣 | 外科的閉経。症状が急に出やすく、骨・血管・認知機能への長期的な影響が問題になる | 影響は閉経前より小さいが、卵巣が出していたアンドロゲンは減る |
卵巣の2つの役割(卵子をつくる・女性ホルモンを出す)
卵巣には、卵子を育てて排卵する役割と、女性ホルモンを分泌する内分泌器官としての役割の2つがあります。卵巣は子宮の左右に1つずつある親指の先ほどの大きさの臓器で、生まれたときから持っている卵子のもと(原始卵胞)を少しずつ育て、月に1回ほど排卵します。
もう1つの役割が、ホルモンの分泌です。卵胞が育つ過程でエストロゲン(卵胞ホルモン)が、排卵後にはプロゲステロン(黄体ホルモン)がつくられます。エストロゲンは子宮内膜だけでなく、骨、血管、コレステロール、皮膚や腟の粘膜、脳の働きなど全身に作用しています。
卵巣を取るということは、この2つの役割を失う、あるいは減らすことを意味します。そのため、卵巣摘出のデメリットは「妊娠できなくなる」ことだけでは語れません。卵巣の働きや、かかりやすい病気については卵巣の役割の解説もあわせてご覧ください。
片方だけ摘出した場合:生理・妊娠はどうなる?
片方の卵巣を取っても、もう片方の卵巣が働いていれば、生理と排卵は続き、女性ホルモンもおおむね保たれます。2つある卵巣は、どちらか一方でも排卵とホルモン分泌を担えるためです。
ただし、卵子のもとの数(卵巣予備能)は、取った分だけ少なくなります。そのため閉経が早まるのではないかという疑問があり、ノルウェーの女性23,580人を調べた研究では、片方の卵巣を取った人の平均閉経年齢は49.6歳で、両方の卵巣がある人の50.7歳より約1年早いという結果でした[1]。卵子のもとが半分近く減るわりに差が小さいことから、研究者は、残った卵巣がある程度補うように働いている可能性を指摘しています。
妊娠については、残った卵巣と卵管が正常に働いていれば、自然妊娠の可能性は残ります。ただし、妊娠のしやすさは年齢、残った卵巣の状態、手術の理由となった病気(子宮内膜症など)によって大きく変わるため、「片方を取ると妊娠率が何%下がる」という形で一律に示すことはできません。
閉経前に両側を摘出した場合:外科的閉経とは
閉経前に両側の卵巣を取ると、手術の日から卵巣のホルモンがなくなり、閉経した状態になります。これを外科的閉経(surgical menopause)といいます。自然な閉経では、エストロゲンは数年かけてゆっくり減っていきますが、外科的閉経ではほぼ一度に途絶えます。
この急な変化のため、外科的閉経では、ほてり、発汗、腟の乾燥などの症状が、自然閉経に比べて突然、強く出やすいとされています[3]。日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)の患者向けガイドブックも、手術によって急速に閉経となるため、自然な閉経に比べて更年期症状を自覚しやすく、症状が強く出る可能性があると説明しています[4]。
外科的閉経で問題になるのは、症状だけではありません。本来なら10年以上先に訪れるはずの「エストロゲンがない期間」が前倒しで長くなるため、骨や血管などへの影響も積み重なります。英国の大規模データ(UKバイオバンク)を用いた研究では、40歳未満で外科的閉経となった女性は、心血管疾患を発症するリスクが1.87倍(95%信頼区間1.36〜2.58)と報告されました[5]。40歳未満で自然に閉経した場合の早発閉経(1.36倍)より高い値です。40歳未満での閉経が長期の健康管理を必要とする点は、早発閉経と共通しています。
💡 用語解説:外科的閉経(surgical menopause)
手術で両側の卵巣を取ることによって起こる閉経のことです。卵巣のホルモンが急に途絶えるため、数年かけて進む自然閉経とは経過が異なります。子宮だけを取って卵巣を残した場合は、生理はなくなりますが、卵巣が働いている限り外科的閉経にはあたりません。
閉経後に両側を摘出した場合
閉経後に両側の卵巣を取った場合、影響は閉経前より小さくなりますが、まったくないわけではありません。閉経後の卵巣はエストロゲンをほとんどつくりませんが、アンドロゲン(テストステロンなどの男性ホルモン)を分泌し続けていることがわかっています。
閉経後の女性で卵巣から出る静脈の血液を調べた研究では、テストステロンの濃度が腕の静脈の約24倍あり、閉経から10年以上たっても卵巣がテストステロンの供給源になっていると報告されています[2]。アンドロゲンは脂肪組織などでエストロゲンに変換されるため、閉経後の女性にとっても意味のあるホルモンと考えられています。ただし、閉経後の卵巣のアンドロゲン産生がどの程度健康に寄与しているかについては、研究者の間で見解が分かれている部分もあります。
デンマークの全国データを用いた研究では、良性の病気で子宮を取る際に両側の卵巣も一緒に取った女性と、卵巣を残した女性を比べています。55〜64歳と65歳以上で手術した群でも、10年間のがん発症の累積リスクが卵巣を取った群でわずかに高く(リスク差1.92%、2.54%)、著者らは閉経後の女性でも慎重な判断を求めています[6]。これらは観察研究で因果関係を示すものではありませんが、「閉経後なら卵巣を取っても影響はない」とは言い切れないことを示しています。
2. 卵巣摘出のデメリット:両側摘出で起こりうること
卵巣摘出のデメリットは、主に閉経前の両側摘出で起こる「エストロゲンの急な喪失」によるものです。術後すぐに現れる症状と、年単位で進む見えにくい変化の2種類に分けて考えると整理しやすくなります。米国産科婦人科学会(ACOG)も、両側の卵管卵巣摘出術は卵巣がんのリスクを下げる一方で、心血管疾患、骨粗鬆症、認知機能障害、全死亡のリスクを高める可能性があると述べています[7]。
卵巣欠落症状:ほてり・発汗・不眠・気分の落ち込み
卵巣欠落症状とは、両側の卵巣を取ったり、放射線治療などで卵巣の働きが失われたりしたあとに現れる、更年期障害に似た症状のことです。代表的なのは、顔や上半身が急に熱くなるほてり(ホットフラッシュ)、発汗、冷え、動悸、寝つきの悪さや夜中に目が覚める不眠、イライラや気分の落ち込みです。
エストロゲンの低下で脳の体温調節の仕組みが不安定になることなどが原因と考えられ、外科的閉経では体が慣れる時間がないため、症状が急に、強く出やすいとされています[3][4]。
症状は術後早い時期から現れることがあり、どのくらい続くかは個人差が大きく、一律には示せません。生活に支障がある場合は、第7章で説明するホルモン補充療法などの治療の対象になります。
骨密度の低下と骨粗鬆症
エストロゲンには骨が壊されるのを抑える働きがあるため、閉経前に両側の卵巣を取ると骨密度が下がりやすくなり、骨粗鬆症や骨折のリスクが高まります。骨は、古い骨を壊す細胞(破骨細胞)と新しい骨をつくる細胞(骨芽細胞)が絶えず入れ替わることで保たれており、エストロゲンは主に壊す側の働きを抑えています。
エストロゲンが急になくなると、このバランスが崩れて骨が減る速度が上がります。オーストラレーシア閉経学会の情報シートは、外科的閉経による不利益の1つとして骨密度の低下と骨粗鬆症・骨折リスクの増加を挙げています[3]。JOHBOCのガイドブックも、ホルモンの減少による骨密度の低下を、自覚されにくい変化の1つとして説明しています[4]。
心臓・血管の病気のリスク
閉経前、特に45歳未満で両側の卵巣を取ると、心臓や血管の病気(心血管疾患)が増えることが報告されています。エストロゲンには、血管を広げてしなやかに保つ、悪玉(LDL)コレステロールを下げるといった働きがあり、これが失われると動脈硬化が進みやすくなると考えられています。
米国ミネソタ州の住民を追跡した研究では、45歳未満で両側の卵巣を取った女性で心血管疾患による死亡が増えており、とくにエストロゲンによる治療を受けていなかった女性で目立ちました[8]。前述のUKバイオバンクの研究でも、40歳未満の外科的閉経で心血管疾患のリスクが1.87倍と報告されています[5]。
日本産婦人科医会は、これらの研究をもとに、明確な高リスク因子がない限り、閉経前、特に50歳未満での予防的な両側卵巣摘出には慎重であるべきとしています。その根拠として、50歳未満では両側卵巣摘出後にホルモン補充療法を行っても、摘出しなかった場合より心血管疾患が多いという報告も紹介しています[9]。ホルモン補充療法でリスクが軽くなる可能性はあるものの、完全に打ち消せるとは限らないという点は、手術を検討するうえで知っておきたい事実です。
認知機能への影響(「ボケる」のか)
閉経前に卵巣を取った女性で、のちに認知機能障害や認知症が増えるという関連が報告されています。ただし、これは観察研究による関連であり、卵巣摘出によって誰もが「ボケる」というわけではありません。
米国メイヨー・クリニックの研究グループは、閉経前に片側または両側の卵巣を取った女性を長期間追跡し、卵巣を取らなかった女性と比べて認知機能障害や認知症のリスクが高いことを報告しました。リスクは手術時の年齢が若いほど高い傾向があり、一方で、およそ50歳までエストロゲンによる治療を受けた女性では、リスクの上昇がみられませんでした[10]。
ただし、オーストラレーシア閉経学会の資料は、外科的閉経と認知症などとの関連について、証拠はまだ十分に確立されていないと明記しています[3]。「可能性として知っておき、若い年齢での手術ではHRTの検討材料の1つにする」程度に受け止めるのが妥当です。
腟の乾燥と性生活への影響
両側の卵巣を取るとエストロゲンが減るため、腟の粘膜が薄く乾燥しやすくなり、性交時の痛みや性欲の低下が起こることがあります。エストロゲンには腟の粘膜の厚みや潤い、伸びやすさを保つ働きがあり、これが減ると、少しの刺激で痛みや出血が起こりやすくなります。
JOHBOCのガイドブックは、女性ホルモンの減少によって腟の伸展性の低下や分泌物の減少を自覚することがあると説明しています[4]。また、卵巣でつくられていたテストステロンがなくなることが、性欲の低下に関係するとも指摘されています[3]。
卵巣を取ったことで性行為そのものができなくなるわけではありません。潤滑剤の使用に加え、腟に直接使うエストロゲン製剤や、ホルモンを含まない保湿剤といった対処法があります。北米閉経学会(NAMS、現在は The Menopause Society)の2022年の声明は、腟の乾燥などの症状(閉経関連尿路生殖器症候群)には、腟局所のエストロゲンやエストロゲン以外の治療を、必要に応じて年齢を問わず長期に使えるとしています[11]。
寿命・死亡率への影響
良性の病気で子宮を取る際に、予防のつもりで両側の卵巣も取った女性では、卵巣を残した女性より全体の死亡率がやや高く、どの年齢層でも生存上の利益はみられなかったと報告されています。
米国の看護師を長期間追跡した研究(Nurses’ Health Study)では、良性の病気で子宮摘出を受けた女性のうち、両側の卵巣を取った女性で全死亡のリスクが1.13倍(95%信頼区間1.06〜1.21)でした。卵巣がんや乳がんは減ったものの、冠動脈疾患などによる死亡が増え、差し引きで生存上の利益はどの年齢層でも認められませんでした[12]。同じ研究の先行報告でも、両側の卵巣摘出は卵巣がんを減らす一方で、冠動脈疾患などのリスク上昇と関連していました[13]。閉経前に卵巣を取った女性で死亡率が高くなることは、メイヨー・クリニックの研究でも報告されています[14]。
ここで注意したいのは、これらが「良性の病気で、予防のために卵巣を取った場合」のデータだという点です。卵巣がんが疑われる場合や、遺伝的に卵巣がんのリスクが高い場合は、判断がまったく変わります。「卵巣を取ると寿命が縮む」と一般化するのではなく、「がんのリスクが高くない人が予防的に取ることには、利益より不利益が大きい可能性がある」と理解するのが正確です。
🩺 院長コラム【「取っておけば大丈夫」とは限らない】
子宮の手術のついでに「将来がんにならないように卵巣も取っておきましょうか」という話が出ることがあります。卵巣がんを防げるのは事実ですが、長期の追跡研究を並べてみると、がんのリスクが高くない人では、骨や血管、脳への影響が差し引きで上回る可能性が示されています。
私は、卵巣を取るかどうかは「がんを防げるか」だけでなく、「その人にとって卵巣のホルモンがあと何年分残っているか」とあわせて考えるべきだと考えています。一方で、遺伝的に卵巣がんのリスクが高い人では、この天秤は大きく反対側に傾きます。だからこそ、自分がどちらに当てはまるのかを知ることに意味があります。
3. 卵巣摘出で老ける?見た目と体の変化
卵巣を取ったからといって、ある日突然老けるわけではありません。ただし、閉経前に両側の卵巣を取ると、本来なら閉経後に起こる肌や体型の変化が、前倒しで始まると考えられます。「卵巣摘出 老ける」は多く検索されている疑問ですが、見た目の変化を卵巣摘出だけのせいにできる根拠は限られています。
肌や体型の変化
エストロゲンは皮膚のコラーゲンや厚み、潤いを保つ働きにかかわっているため、エストロゲンが減ると皮膚は薄く乾燥しやすくなります。皮膚とエストロゲンの関係をまとめた総説では、閉経後にエストロゲンが減ることで、皮膚のコラーゲンの減少、乾燥、弾力の低下、傷の治りの遅れなどが起こることが整理されています[15]。
体重や体型については、「卵巣を取ると太る」という声がよく聞かれます。閉経の前後には体脂肪がお腹まわりにつきやすくなる変化が知られていますが、卵巣摘出そのものが体重を増やすことを直接示した質の高い研究は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。術後の活動量の低下や年齢による代謝の変化が重なっている可能性があります。髪の毛の変化についても、卵巣摘出との因果関係ははっきりしていません。
子宮だけ摘出して卵巣を残す場合
子宮だけを取って卵巣を残した場合、女性ホルモンを出すのは卵巣なので、ホルモンは基本的に保たれます。子宮を取ったことで急に老けることはないと考えられます。生理はなくなりますが、卵巣は排卵とホルモン分泌を続け、自然な年齢で閉経を迎えます。
ACOGは、良性の病気で子宮を取る場合、卵巣を取るよりも、卵巣を残して卵管だけを切除するほうが優れた選択肢でありうるとしています。卵管の切除は卵巣の働きに影響しないと考えられているためです[7]。子宮摘出の理由や術式については、子宮摘出の解説で詳しく扱っています。
4. 卵巣摘出が必要になる主な病気
卵巣を取る手術が検討される主な理由は、卵巣の腫瘍(良性・境界悪性・悪性)、子宮のがん、そして子宮内膜症や子宮筋腫などの良性疾患の手術です。ただし、病気が見つかったからといって、いつも卵巣を丸ごと取るわけではありません。
卵巣嚢腫・良性の卵巣腫瘍:卵巣を残す手術が基本
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)などの良性の腫瘍では、腫瘍の部分だけを取り除いて正常な卵巣を残す手術(核出術)が基本です。卵巣嚢腫は卵巣の中に液体などがたまって袋状に腫れる病気で、若い女性にも多くみられます。
中身によっていくつかの種類があります。さらっとした液体がたまる漿液性(しょうえきせい)嚢腫、粘り気のある液体がたまる粘液性(ねんえきせい)嚢腫、毛髪や脂肪、歯などを含む皮様嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫)、子宮内膜症が卵巣にできて古い血液がたまる卵巣チョコレート嚢胞などです。種類ごとの特徴は卵巣嚢腫(卵巣嚢胞)の解説で詳しく扱っています。
良性の嚢腫でも、大きくなると卵巣の根元がねじれる卵巣茎捻転を起こすことがあります。茎捻転は激しい腹痛を伴い、血流が途絶えた状態が続くと卵巣が壊死するため、緊急手術が必要になります。壊死が進んでいると卵巣を残せないこともあるため、腫瘍が大きい場合は計画的な手術が検討されます。どのくらいの大きさで手術を考えるかは、腫瘍の種類や症状、年齢によって主治医が判断します。
卵巣がん・境界悪性腫瘍
卵巣がんが疑われる場合は、診断を確定し治療を行うために手術が必要になり、多くの場合、両側の卵巣や卵管、子宮などを取ります。卵巣がんは初期にはほとんど症状がなく、お腹の張りや下腹部の違和感、頻尿などで気づいたときには進行していることが少なくありません。
卵巣の腫瘍が良性か悪性かは、まず超音波(エコー)検査で形や中身を調べ、必要に応じてMRI検査や血液の腫瘍マーカーで絞り込みます。良性と悪性の中間にあたる境界悪性腫瘍が疑われることもあります。ただし、最終的にがんかどうかを確定するには、手術で取り出した組織を顕微鏡で調べる病理検査が必要です。
そのため、画像検査で悪性の可能性がある場合は、診断と治療を兼ねて手術を行います。若い女性で早期の場合や境界悪性腫瘍の場合には、妊娠の希望に応じて片側の卵巣や子宮を残す方法が検討されることもあります。卵巣がんの症状や進み方については卵巣がんの解説をご覧ください。
子宮体がん・子宮がん
卵巣そのものの病気でなくても、子宮のがんの治療で卵巣を一緒に取ることがあります。代表的なのが子宮体がんです。子宮体がんはエストロゲンの影響を受けて増えるタイプが多く、卵巣に転移していることもあるため、手術では子宮とあわせて両側の卵巣と卵管を取り、がんの広がり(進行期)を確かめるのが一般的です。
子宮頸がんでは、年齢や進行の程度、がんの組織型によっては卵巣を残せる場合があります。閉経前に卵巣を取る場合は、がんの既往によってHRTが使えないこともあるため、術後の外科的閉経への対策をあわせて主治医と相談します。
子宮内膜症・子宮筋腫の手術で卵巣をどうするか
子宮内膜症や子宮筋腫は良性の病気なので、閉経前の女性では、手術の際に卵巣を残す方向で考えるのが現在の流れです。以前は「将来の卵巣がんの予防」として、子宮を取るついでに卵巣も取ることが少なくありませんでした。
しかし、前述のように、がんのリスクが高くない女性が予防のために卵巣を取ると、心血管疾患などのリスクが増え、全体として生存上の利益がないことがわかってきました[12][6]。そこで現在は、卵巣を残し、卵巣がんの予防として卵管だけを切除する方法が注目されています[7]。
一方、子宮内膜症が重く、痛みや再発を繰り返している場合は、症状を抑える目的で卵巣の摘出が検討されることもあります。子宮筋腫の手術でも、年齢や卵巣の状態によって判断が分かれます。どちらを選ぶかは、症状の重さと、卵巣を失うことによる長期的な影響を比べて、本人の希望も踏まえて決めることになります。
5. 遺伝性のがんと予防的な卵巣摘出
生まれつき卵巣がんになりやすい体質(遺伝性のがん)を持つ人では、がんを予防するために、健康な卵巣と卵管を取る手術が勧められる場合があります。ここまで「がんのリスクが高くない人が予防的に卵巣を取ることには慎重に」と説明してきましたが、遺伝的にリスクが高い人では判断がまったく異なります。
💡 用語解説:リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)
遺伝的に卵巣がんのリスクが高い人に対して、がんを発症する前に両側の卵巣と卵管を取る手術です。RRBSOとも呼ばれます。卵巣がんの多くが卵管から発生すると考えられるようになったため、卵巣だけでなく卵管も一緒に取ります。詳しくはリスク低減卵管卵巣摘出術(RRBSO)の解説をご覧ください。
HBOC(BRCA1/2)で予防的な摘出が勧められる時期
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因となるBRCA1に病的バリアントがある人は35〜40歳まで、BRCA2の場合は40〜45歳までにRRSOを受けることが勧められています。JOHBOCの患者向けガイドブックは、BRCA1では遅くとも45歳までに行うことも示しています[16]。
BRCA1の人はより若い年齢から卵巣がんのリスクが高まるため、早めの時期が推奨されています。米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のBRCA研究センターは、米国の診療ガイドライン(NCCN)に基づいて同じ年齢を示し、RRSOで卵巣がんのリスクが90%以上下がると説明しています[17]。JOHBOCも、RRSOをHBOCと診断された人の死亡リスクを下げる最大の予防策としています[16]。
ただし、RRSOのあとも、お腹の内側を覆う腹膜から発生するがん(腹膜がん)のリスクは残るため、術後も経過観察が続きます[16]。日本では2020年4月から、乳がんを発症しHBOCと診断された人のRRSOに健康保険が適用されています[18]。保険の対象は制度改定で変わることがあるため、最新の条件は受診先で確認してください。
🧬 遺伝性のがんとリスク低減手術の時期の目安
| 原因遺伝子 | 勧められる手術 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| BRCA1 | 両側卵管卵巣摘出(RRSO) | 35〜40歳(遅くとも45歳まで) |
| BRCA2 | 両側卵管卵巣摘出(RRSO) | 40〜45歳 |
| MLH1・MSH2(リンチ症候群) | 子宮全摘出+両側付属器切除 | 35歳前後から検討 |
| MSH6(リンチ症候群) | 子宮全摘出+両側付属器切除 | 40歳以降に検討 |
| PMS2(リンチ症候群) | 根拠が不十分で強くは推奨されない | 個別に判断 |
※BRCA1/2はJOHBOC[16]、リンチ症候群はマンチェスター国際コンセンサス[19]による。挙児希望や家族歴などで個別に判断されます。
リンチ症候群の場合
リンチ症候群は、大腸がんに加えて子宮体がんや卵巣がんのリスクが高くなる遺伝性のがんで、原因遺伝子によって予防的な手術を考える年齢が異なります。リンチ症候群は、DNAの複製ミスを修復する遺伝子(ミスマッチ修復遺伝子)の病的バリアントによって起こります。
婦人科のがんの管理について国際的な専門家がまとめたマンチェスター国際コンセンサスは、MLH1とMSH2に病的バリアントがある人では35歳前後から、MSH6の人では40歳以降に、子宮全摘出と両側付属器(卵巣・卵管)切除を検討するよう勧めています。PMS2については、根拠が不十分として強くは推奨していません[19]。
同じコンセンサスは、閉経前にこの手術を受けた人には、自然な閉経の年齢(51歳)まで、エストロゲン単独のホルモン補充療法(できれば貼り薬などの経皮投与)を行うことを強く推奨しています[19]。子宮も同時に取るため、子宮体がんを防ぐためのプロゲスチンを併用する必要がないからです。リンチ症候群では遺伝子ごとにがんのリスクが大きく違うため、手術の時期は遺伝子の種類と家族歴をふまえて個別に決めます。
卵管だけを先に取るという選択肢
卵巣がんの多くは、実は卵巣ではなく卵管から発生すると考えられるようになり、卵巣を残して卵管だけを取るという予防法が広がっています。ACOGは、多くの漿液性がん、類内膜がん、明細胞がんは、卵巣から直接ではなく卵管や子宮内膜から発生している可能性が高いと述べています[7]。
ACOGは、良性の病気で子宮を取る場合などに卵管を切除すること(機会的卵管切除)は安全で、卵巣の働きには影響しないと考えられるとし、卵巣を残して卵管を取ることは、良性疾患での卵巣摘出より優れた選択肢でありうるとしています[7]。卵巣のホルモンを保ったまま、卵巣がんのリスクをある程度下げられる可能性があるためです。
一方、遺伝的リスクが高い人がまず卵管だけを取り、卵巣は閉経が近づくまで残す方法(卵管先行手術)も研究されていますが、標準的な方法とはされておらず、現時点ではRRSOが基本です。
家族歴があるときは遺伝学的検査と遺伝カウンセリングを
血縁者に卵巣がんや、若い年齢で発症した乳がん、大腸がん、子宮体がんの人が複数いる場合は、遺伝性のがんの可能性があります。卵巣の手術を受ける前にこの可能性がわかれば、卵巣を残すか取るかの判断そのものが変わることがあります。
遺伝性のがんかどうかは、血液などを用いた遺伝学的検査で調べます。HBOCの遺伝学的検査についてはHBOCの遺伝子検査で、がんの遺伝全般については遺伝しやすいがんの解説で詳しく扱っています。
遺伝学的検査を受ける前には、検査でわかることとわからないこと、結果が本人や血縁者の健康管理にどう影響するかを専門医と確認する遺伝カウンセリングを受けることが推奨されています。結果によっては、予防的な手術の時期や、ホルモン補充療法の使い方も変わってきます。
🩺 院長コラム【卵巣を取る前に、家族のがんを振り返る】
遺伝性のがんは、本人ががんになっていなくても、血縁者の病歴から疑うことができます。母や姉妹、おば、祖母などに卵巣がんや若い年齢の乳がんがないか、父方の家系も含めて確認しておくことをお勧めします。
BRCA1やBRCA2の病的バリアントがある場合、RRSOは卵巣がん・卵管がんのリスク低減を目的として推奨される選択肢になります。反対に、遺伝的なリスクが高くない場合は、良性疾患の手術で卵巣を残すかどうかを検討する際の判断材料になります。手術前に遺伝的リスクを評価することは、摘出範囲や手術時期を検討するうえで重要です。
6. 卵巣摘出手術の方法と術後の過ごし方
卵巣を取る手術には、お腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術と、お腹を切り開いて行う開腹手術があります。どちらを選ぶかは、病気の種類、腫瘍の大きさ、悪性の可能性、過去の手術歴などによって決まります。
入院期間や仕事に復帰できるまでの日数は、術式や病気、施設によって大きく異なるため、具体的な日程は手術を受ける医療機関で確認してください。
腹腔鏡手術と開腹手術
腹腔鏡手術は、お腹に数か所の小さな穴を開け、カメラと細い器具を入れて行う手術で、良性の腫瘍や予防的な摘出で多く選ばれます。傷が小さく、術後の痛みが比較的軽く、回復が早いとされる一方で、腫瘍が大きい場合や、がんが強く疑われる場合には向かないことがあります。
開腹手術は、下腹部を縦または横に切って行う手術です。腫瘍が大きい場合、がんが疑われて周囲の組織まで広く取る必要がある場合、癒着が強い場合などに選ばれます。傷は大きくなりますが、お腹の中を直接見て広い範囲を処置できる利点があります。
手術では、卵巣とあわせて卵管も一緒に取ることが多く、その場合は「付属器切除術」と呼ばれます。片方か両側か、子宮も一緒に取るかは、病気と年齢、妊娠の希望によって決まるため、手術の前にどの範囲を取る予定なのかを確認しておくと、術後の変化を見通しやすくなります。
術後に気をつけること:癒着・腸閉塞と長期の健康管理
術後に気をつけたいのは、手術の傷あとによる癒着と、それが原因で起こることのある腸閉塞、そして両側を取った場合の骨や血管の長期的な健康管理です。
お腹の手術では、手術で触れた部分の組織が治る過程で、腸や腹膜などがくっつく癒着が起こることがあります。癒着によって腸の通り道が狭くなったりねじれたりすると、腸閉塞を起こすことがあります。お腹や骨盤の手術全体を対象にした研究のまとめでは、癒着による腸閉塞は2.4%に起こっていました[20]。これは卵巣摘出だけの数字ではありませんが、手術から何年もたってから起こることもあります。腹痛、吐き気、お腹の張り、便やおならが出ないといった症状が続くときは、早めに受診してください。
両側の卵巣を取った場合は、骨密度や血圧、コレステロールなどの値を定期的に確認することが勧められます。JOHBOCのガイドブックは、ホルモンの減少による骨密度の低下、高血圧、脂質代謝異常症、メタボリックシンドロームなど、自覚されにくい変化があると説明しています[4]。適度な運動、カルシウムやビタミンDを意識した食事、禁煙は、骨や血管の健康を保つための基本です。
💡 用語解説:癒着(ゆちゃく)と腸閉塞
癒着とは、本来は離れている臓器や組織どうしが、手術や炎症のあとにくっついてしまう状態です。腸閉塞は、腸の中身が先へ進めなくなる状態で、癒着が原因のものを癒着性腸閉塞といいます。手術で臓器が「空いた場所に移動して」くっつくのではなく、手術で傷ついた組織が治る過程でくっつくことが原因です。
7. 卵巣摘出後の治療の選択肢
閉経前に両側の卵巣を取った場合、失われたエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が治療の中心になります。HRTは、ほてりなどの症状を和らげるだけでなく、骨密度の低下を防ぐ効果もあり、外科的閉経後の長期的な健康管理の柱と考えられています。
ただし、HRTは誰にでも使えるわけではありません。乳がんの既往がある人や、血栓症、重い肝臓の病気などがある人では使えない、または慎重な判断が必要です。HRTが使えない場合にも、症状に応じた別の選択肢があります。日本では、日本女性医学学会などがまとめた『ホルモン補充療法ガイドライン』(2025年度版)が診療の指針になっています[21]。
ホルモン補充療法(HRT):ETとEPT
HRTには、エストロゲンだけを補うET(エストロゲン単独療法)と、エストロゲンとプロゲスチン(黄体ホルモン)を組み合わせるEPT(エストロゲン・プロゲスチン併用療法)があり、子宮があるかどうかで使い分けます。
子宮がある人がエストロゲンだけを使うと、子宮内膜が厚くなりすぎて子宮体がんのリスクが高まるため、内膜を守るプロゲスチンを併用するEPTを使います。子宮を一緒に取った人では、その心配がないためETを使います[3]。飲み薬のほか、貼り薬や塗り薬など皮膚から吸収させる製剤もあります。
どのくらいの期間続けるかについて、NAMSの2022年の声明は、早発閉経や早期閉経(外科的閉経を含む)の女性では、禁忌がなければ少なくとも平均的な閉経年齢まではHRTを使えるとしています[11]。オーストラレーシア閉経学会も、45歳未満で卵巣を取ったすべての女性に、平均閉経年齢の51歳までHRTを行うことを推奨しています[3]。本来なら卵巣がホルモンを出していた年齢までは補う、という考え方です。
💊 ホルモン補充療法(HRT)の種類
| 種類 | 使うホルモン | 対象 |
|---|---|---|
| ET(エストロゲン単独療法) | エストロゲンのみ | 子宮を取っている人 |
| EPT(エストロゲン・プロゲスチン併用療法) | エストロゲン+プロゲスチン | 子宮が残っている人(子宮内膜を守るため) |
| 腟局所のエストロゲン | 腟に直接使うエストロゲン | 腟の乾燥・性交痛が主な症状の人 |
⚠️ 乳がんの既往がある場合のHRT
乳がんをすでに発症した人では、再発の懸念からHRTを避けて対応するのが基本です[4]。一方、BRCA1/2の病的バリアントがあり、乳がんを発症していない人がRRSOを受けた場合は、HRTを使っても乳がんのリスクは有意に上がらなかったとするメタ解析があります(ハザード比0.98、95%信頼区間0.63〜1.52)[22]。JOHBOCも、乳がん未発症でRRSOを受けた人がHRTを行っても、5年程度であれば乳がんの発症頻度は上がらないとしています[4]。
HRTは、60歳未満または閉経から10年以内に始めた場合に、多くの健康な女性で利益がリスクを上回るとされています[11]。外科的閉経の女性の多くはこの条件に当てはまりますが、個々の持病や家族歴によって判断は変わるため、HRTを始めるかどうか、どの製剤を使うかは、手術を担当する婦人科の主治医と相談して決めることになります。
HRTが使えない場合の選択肢(漢方・非ホルモン療法・腟の局所療法)
乳がんの既往などでHRTが使えない場合でも、症状に応じて漢方薬、ホルモンを含まない薬、腟の局所療法などの選択肢があります。
漢方薬は、更年期の症状に対して日本の婦人科で広く使われています。とくに当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は婦人科の三大処方と呼ばれ、体力や体質、症状に合わせて選ばれます。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の『産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編』(2023年版)にも、更年期障害に対する漢方治療・補完代替医療を扱う項目があります[23]。漢方薬にも副作用はあり、ほかの薬との飲み合わせにも注意が必要なため、医師の処方のもとで使います。
腟の乾燥や性交痛には、ホルモンを含まない保湿剤や潤滑剤のほか、腟に直接使うエストロゲン製剤があります。NAMSの声明では、乳がんの既往がある人の一部で、ホルモンを含まない治療で改善しない場合に、低用量の腟局所エストロゲンが安全に使えた観察データがあるとされています[11]。いずれも、がんの主治医とあわせて相談しながら選ぶことになります。
8. 卵巣を取るか迷ったときに確認したいこと
「卵巣摘出は50歳までにするべきか」という疑問がありますが、医学的な考え方は逆で、がんのリスクが高くない人では、閉経前、特に50歳未満での予防的な両側卵巣摘出には慎重であるべきとされています[9]。一方で、卵巣がんが疑われる場合や、BRCA1/2などの遺伝的リスクがある場合は、年齢に応じて摘出が勧められます。
卵巣を取るかどうかは年齢だけでは決まりません。「卵巣も一緒に取りますか」と聞かれたときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
1つめは、片方か両側か、卵巣を残せる可能性はあるかです。良性の腫瘍なら腫瘍だけを取って卵巣を残せないか、両側を取る必要が本当にあるのかを確認します。2つめは、閉経しているかどうかです。閉経前なら外科的閉経への対策が必要になり、閉経後でも影響がゼロではないことはすでに説明しました。
3つめは、遺伝的なリスクがあるかどうかです。血縁者に卵巣がんや若い年齢の乳がんがある場合は、遺伝学的検査の結果によって、予防的な摘出が勧められる側に判断が変わる可能性があります。4つめは、術後にHRTが使えるかどうかです。乳がんの既往などでHRTが使えない場合は、外科的閉経の影響をどう補うかを事前に考えておく必要があります。
これらを確認したうえで、卵巣を残す、卵管だけを取る、卵巣も取る、のどれを選ぶかを主治医と話し合います。手術は取り直しがきかないため、急を要する場合を除き、納得できるまで説明を受けてから決めてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 卵巣を摘出すると老けますか?
急に老けるわけではありません。ただし、閉経前に両側の卵巣を取ると、エストロゲンが急になくなるため、肌の乾燥やコラーゲンの減少など、本来は閉経後に起こる変化が早く始まると考えられます。片方だけを取った場合や、子宮だけを取って卵巣を残した場合は、ホルモンがおおむね保たれるため、こうした変化は起こりにくいです。
Q2. 片方の卵巣を取っても生理や妊娠はできますか?
もう片方の卵巣が働いていれば、生理と排卵は続き、自然妊娠の可能性も残ります。閉経は平均で約1年早まると報告されています。妊娠のしやすさは、年齢、残った卵巣の状態、手術の理由となった病気によって変わるため、個別に確認が必要です。
Q3. 卵巣摘出は50歳までにするべきですか?
いいえ。がんのリスクが高くない人では、閉経前、特に50歳未満での予防的な両側卵巣摘出には慎重であるべきとされています。一方、卵巣がんが疑われる場合や、BRCA1/2などの遺伝的リスクがある場合は、遺伝子ごとに勧められる年齢で摘出が検討されます。
Q4. 閉経後に卵巣を取ると寿命は縮みますか?
閉経後の影響は閉経前より小さいと考えられますが、ゼロではありません。良性の病気で予防的に両側の卵巣を取った女性では、どの年齢層でも生存上の利益はみられなかったという報告があります。閉経後の卵巣もアンドロゲンを分泌しているため、「閉経後なら取っても影響はない」とは言い切れません。
Q5. 卵巣摘出後に太りますか?
卵巣摘出そのものが体重を増やすことを直接示した質の高い研究は、確認した範囲では見当たりません。閉経の前後には体脂肪がお腹まわりにつきやすくなる変化が知られており、術後の活動量の低下や年齢による代謝の変化が重なって体重が増えることはあります。
Q6. 卵巣摘出後に性行為はできますか?
できます。ただし、両側の卵巣を取るとエストロゲンが減るため、腟の乾燥や性交時の痛み、性欲の低下が起こることがあります。潤滑剤、ホルモンを含まない保湿剤、腟に直接使うエストロゲン製剤などで対処できます。
Q7. 更年期のような症状はいつから、いつまで続きますか?
閉経前に両側の卵巣を取った場合、手術後早い時期から症状が出ることがあります。どのくらい続くかは個人差が大きく、一律には言えません。症状が生活に支障をきたす場合は、ホルモン補充療法などの治療の対象になります。
Q8. 子宮だけ摘出すると老けますか?
子宮だけを取って卵巣を残した場合、女性ホルモンを出すのは卵巣なので、ホルモンは基本的に保たれます。生理はなくなりますが、卵巣が働いている限り閉経前と同じホルモン環境が続くため、子宮を取ったことで急に老けることはないと考えられます。
Q9. ミネルバクリニックで卵巣摘出の手術や術後の治療は受けられますか?
いいえ、当院では卵巣摘出の手術や術後の管理は行っておらず、この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしていません。手術や術後のホルモン補充療法については、婦人科(産婦人科)の主治医にご相談ください。
まとめ
卵巣を取ったあとの体の変化は、片方か両側か、閉経の前か後かで大きく違います。片方だけなら、残った卵巣が働くため生理やホルモンはおおむね保たれ、閉経が平均で約1年早まる程度です[1]。閉経前に両側を取ると外科的閉経となり、ほてりなどの症状が急に強く出やすいほか、骨密度の低下、心血管疾患、認知機能との関連が報告されています[5][10]。
「卵巣を取ると老ける」「寿命が縮む」という心配は、多くが外科的閉経に関係しています。がんのリスクが高くない人が予防的に卵巣を取ることには、利益より不利益が大きい可能性があり[12]、良性の病気では卵巣を残す方向が基本です。一方、BRCA1/2などの遺伝的リスクがある人では、予防的な摘出が命を守る選択になります[16]。閉経前に両側を取った場合は、禁忌がなければホルモン補充療法を平均閉経年齢まで検討することが勧められています[11]。
🏥 卵巣摘出の手術・術後の治療をお考えの方へ
当院では、卵巣摘出の手術や術後の管理(ホルモン補充療法など)は行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
手術や術後の治療については、婦人科(産婦人科)の主治医にご相談ください。
この記事は卵巣摘出について正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、血縁者に卵巣がんや若い年齢で発症した乳がんがあるなど、遺伝性のがんについて具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。
参考文献
- [1] Is unilateral oophorectomy associated with age at menopause? A population study (the HUNT2 Survey). Hum Reprod. 2014;29(4):835-841. [DOI]
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- [3] Surgical Menopause. Australasian Menopause Society. [AMS]
- [4] 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC). Q44 リスク低減卵管卵巣摘出術を受けた後のからだの変化や生活への影響が心配です。 [JOHBOC]
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- [23] 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023(Mindsガイドラインライブラリ). [Minds]





