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卵巣とは?2つの役割(卵子と女性ホルモン)と大きさ・構造、年齢による変化や病気・遺伝まで専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

卵巣(らんそう)とは、子宮の左右に1つずつある親指の先ほどの大きさの臓器で、卵子を育てて排卵する役割と、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンをつくる役割を担っています。卵巣の中にある卵子のもとは生まれる前から減り続け、ほぼなくなったときに閉経を迎えます。閉経後も卵巣は完全に働きを止めるわけではなく、男性ホルモンの一部をつくり続けています。この記事では、卵巣の大きさや構造、分泌されるホルモン、年齢による変化、片方または両方の卵巣を失ったときの変化、卵巣に起こる主な病気、そして卵巣と遺伝の関係までを臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🥚 卵巣の役割・ホルモン・年齢変化
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 卵巣とはどんな臓器ですか?

A. 卵巣は女性の生殖腺(性腺)で、子宮の左右に1つずつあります。大きさは長さ3.5cm・幅2cm・厚さ1cmほどです。役割は、卵子を育てて排卵する「生殖」と、女性ホルモンをつくる「内分泌」の2つです。排卵は左右交互ではなく、どちらの卵巣から起こるかはほぼ偶然で決まります。

  • ➤大きさ・構造 → 親指の先ほど。表面近くの皮質に卵胞が並び、中心の髄質を血管が通る
  • ➤ホルモン → エストロゲン・プロゲステロン・アンドロゲン・インヒビン・AMH
  • ➤年齢による変化 → 卵胞は胎児期がピークで、30歳で12%、40歳で3%まで減る
  • ➤卵巣がなくなると → 片方なら残りが働きを補う。両方なら閉経と同じ状態になる
  • ➤遺伝の視点 → BRCA1/2・リンチ症候群・ターナー症候群・FMR1が卵巣に関わる

1. 卵巣とは?女性の体でどんな臓器か

卵巣は、女性の骨盤の中にある左右1対の生殖腺で、胎児期に形成された卵母細胞を卵胞内に保持し、成熟・排卵へ導く器官であると同時に、ホルモンを血液中に送り出す内分泌器官でもあります。胃や腸のように形や動きを感じる臓器ではないため、ふだん意識することはほとんどありません。けれども月経、妊娠、閉経といった女性の体の節目は、どれも卵巣の働きの変化として説明できます。

卵巣の定義と英語名(ovary)

卵巣は英語で ovary(オーバリー)、複数形は ovaries です。語源はラテン語で卵を意味する ovum で、日本語の「卵巣」も「卵の巣」という字のとおり、卵子のもとが蓄えられている場所を表しています。医学用語では、形容詞形の ovarian(卵巣の)がよく使われ、ovarian cancer(卵巣がん)、ovarian cyst(卵巣嚢胞)、ovarian reserve(卵巣予備能)のように病名や検査名に登場します。

生殖腺(性腺)とは、生殖細胞をつくる臓器のことで、男性では精巣がこれにあたります。卵巣と精巣は、胎児期のはじめには同じ「未分化性腺」から出発し、性染色体の構成とそれに続く遺伝子の働きによって、どちらに分化するかが決まります。卵巣は「女性の精巣」と説明されることもありますが、精巣が思春期以降ずっと精子をつくり続けるのに対し、卵巣は生まれる前に用意した卵子のもとを一生かけて使っていく、という点が大きく異なります。この違いが、卵巣の年齢による変化を理解する鍵になります。

卵巣はどこにある?

卵巣は骨盤の中、子宮の左右にあり、骨盤の側壁にある「卵巣窩(らんそうか)」と呼ばれるくぼみにおさまっています。子宮とは靱帯でつながり、卵巣のすぐそばには卵管の先端(卵管采)が広がっていて、排卵された卵子を受け止めます[1]。卵巣と卵管は直接つながっているわけではなく、卵子はいったんおなかの中(腹腔)に出てから卵管に取り込まれます。

体の表面から見た位置や、おへそとの関係、痛みを感じる場所の目安については、卵巣の位置の記事で図を使って詳しく解説しています。

卵巣の大きさと重さ

成人の卵巣は、長さ約3.5cm、幅約2cm、厚さ約1cmほどの楕円形で、うずらの卵や親指の先にたとえられる大きさです。米国の医学教科書データベースStatPearlsでは、正常な卵巣を幅2.0cm・長さ3.5cm・厚さ1.0cmと記載しています[1]。

ただし、卵巣の大きさは年齢によって大きく変わります。超音波などで測った卵巣の体積を、延べ約6万人分のデータからまとめた研究では、2歳で約0.7mLだった体積が思春期に急速に大きくなり、20歳ごろに最大の約7.7mLに達したあと、ゆるやかに小さくなって閉経のころには約2.8mL、その後さらに縮んでいくことが示されました[2]。体積のばらつきの約7割は年齢だけで説明できたとされています[2]。月経周期の中でも、発育中の卵胞や排卵後の黄体の大きさによって、卵巣は一時的に大きく見えることがあります。

重さについては、このように大きさそのものが年齢や周期で変わるため、一律の基準値として語られることはあまりありません。診療の場で卵巣の状態を判断するときに使われるのは、重さではなく経腟超音波で測る大きさや体積、内部の様子です。「卵巣が腫れている」と言われたときに問題になるのも、重さではなく大きさと中身の性状です。

卵巣の構造:皮質・髄質と卵巣を支える靱帯

卵巣の内部は、表面に近い「皮質」と中心部の「髄質」に分かれ、皮質にはさまざまな成熟段階の卵胞が、髄質には太い血管が集まっています。卵巣の表面は1層の立方形の細胞でおおわれ、この層は歴史的に「胚上皮」と呼ばれてきました[1]。名前に反して卵子をつくる場所ではなく、卵子のもとはその内側の皮質にある卵胞の中に収められています。

髄質はゆるい結合組織でできていて、卵巣に出入りする主要な血管、リンパ管、神経が通っています[1]。卵巣が周期ごとにホルモンの量を大きく変えられるのは、この豊富な血流があるからです。

卵巣はおなかの中に浮いているわけではなく、3つの構造で支えられています。1つ目は骨盤の壁から卵巣へ向かう「卵巣提索(らんそうていさく)」で、卵巣動脈・卵巣静脈と神経がこの中を通ります。2つ目は卵巣と子宮をつなぐ「固有卵巣索(こゆうらんそうさく)」で、こちらには主要な血管は含まれません。3つ目は子宮を包む膜(子宮広間膜)から後ろに伸びた「卵巣間膜」です[1]。卵巣に腫瘍ができて重くなると、これらの支えを軸に卵巣がねじれることがあり、これが卵巣茎捻転です。

💡 用語解説:卵巣提索と固有卵巣索

卵巣提索(骨盤漏斗靱帯とも呼ばれます)は、骨盤の側壁から卵巣の上端へ伸びるひだで、卵巣に血液を送る卵巣動脈と、血液を戻す卵巣静脈が通っています。固有卵巣索は、卵巣の下端と子宮の側面をつなぐひも状の組織で、胎児期に性腺を誘導した組織(導帯)の名残です。手術で卵巣を摘出するときは、血管を含む卵巣提索の処理が重要な手順になります。

2. 卵巣の2つの役割

卵巣の役割は、①卵子を育てて排卵する「生殖機能」と、②女性ホルモンをつくる「内分泌機能」の2つです。この2つは別々の仕事ではなく、同じ「卵胞」という構造の中で同時に進みます。卵胞が育つ過程でホルモンがつくられ、そのホルモンが子宮や全身に働きかけ、さらに脳にも信号を返して次の排卵のタイミングを調整しています。

役割① 卵子を育てて排卵する(生殖機能)

卵子は、卵巣の皮質にある「卵胞」という小さな袋の中で育ち、成熟すると卵巣の表面から飛び出します。これが排卵です。卵胞のいちばん未熟な段階は原始卵胞と呼ばれ、1個の卵母細胞(卵子のもと)を1層の平たい細胞が取り囲んだだけの構造です。

卵巣の中の卵母細胞は、胎児期に減数分裂を始めたあと、第一減数分裂の途中で止まったまま、長いものでは数十年にわたって眠り続けます。思春期以降、毎周期いくつかの卵胞が目覚めて育ち始め、そのうち通常1個が選ばれて最後まで成熟し、排卵の直前に減数分裂を再開します。選ばれなかった卵胞は途中で退縮(閉鎖)していきます。

原始卵胞生まれる前から休眠
▶
発育卵胞毎周期いくつかが育ち始める
▶
成熟卵胞グラーフ卵胞
▶
排卵卵子が卵巣の外へ
▶
黄体残った卵胞が変化

成熟した卵胞(グラーフ卵胞)は、脳下垂体から大量に放出される黄体形成ホルモン(LH)を合図に破れ、卵子を外へ送り出します。卵子が出たあとの卵胞は「黄体」という組織に姿を変え、今度は妊娠の準備のためのホルモンをつくります[3]。排卵のときに卵胞の液や少量の血液が腹膜を刺激すると、下腹部の片側に痛みを感じることがあり、これが排卵痛です。

「排卵は左右の卵巣で交互に起こる」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。妊娠歴のある女性80人・199周期を超音波で追跡した研究では、右の卵巣からの排卵は52.3%で、左右がほぼ半々でした。さらに、連続する2周期で排卵する側が入れ替わった割合も51.3%にとどまり、研究者は排卵する側は「おそらくランダム」と結論づけています[4]。自然周期を調べた別の研究でも、右側からの排卵は年齢にかかわらず約55%で、次の周期に反対側へ移る割合は29歳以下で62%、40歳を超えると42%と、年齢とともに低くなっていました[5]。どちらの卵巣から排卵するかは、その周期にどちらの卵胞が選ばれたかによって決まる、と考えるのが実態に近い説明です。

役割② 女性ホルモンをつくる(内分泌機能)

卵巣のホルモンは、卵胞を取り巻く2種類の細胞が分業してつくっています。外側の「莢膜細胞(きょうまくさいぼう)」が男性ホルモン(アンドロゲン)をつくり、内側の「顆粒膜細胞(かりゅうまくさいぼう)」がそれをエストロゲンに変えます。

具体的には、LHが莢膜細胞に働いてアンドロゲンをつくらせ、アンドロゲンが隣の顆粒膜細胞に移ると、卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用で増えたアロマターゼという酵素によってエストロゲンに変換されます[3]。2つの細胞と2つのホルモン(LHとFSH)がそろって初めてエストロゲンができるこの仕組みは、「2細胞・2ゴナドトロピン説」と呼ばれています。顆粒膜細胞は、卵母細胞と直接やりとりをしながら卵子の成熟も支えています。

排卵後にできる黄体は、プロゲステロンとエストロゲンの両方を分泌します[3]。つまり卵巣は、排卵の前後で主役となるホルモンを切り替えながら働いています。女性ホルモンの影響は子宮だけにとどまらず、骨の量を保つ、血管や脂質の代謝に関わる、皮膚や粘膜のうるおいを保つなど、全身に及びます。閉経や卵巣の摘出によって女性ホルモンが急に減ると、ほてりや発汗だけでなく、骨や血管の状態にも変化が出るのはこのためです。

3. 卵巣から分泌されるホルモン

卵巣から分泌される主なホルモンは、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン、インヒビン、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の5つです。このうちエストロゲンとプロゲステロンは「女性ホルモン」としてよく知られていますが、卵巣は男性ホルモンの一種であるアンドロゲンもつくっており、閉経後もその分泌は続きます。

🧪 卵巣から分泌される主なホルモン

ホルモン 主につくる細胞 主な働き
エストロゲン(主にエストラジオール) 発育卵胞の顆粒膜細胞、黄体 子宮内膜を厚くする、排卵の合図(LHの急上昇)を引き起こす、骨や血管を守る
プロゲステロン(黄体ホルモン) 黄体 子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整える、基礎体温を上げる(高温期)
アンドロゲン(テストステロン・アンドロステンジオンなど) 莢膜細胞、卵巣の間質 エストロゲンの材料になる。閉経後も卵巣から分泌が続く
インヒビン 顆粒膜細胞 脳下垂体のFSH分泌を抑え、育つ卵胞の数を調整する
AMH(抗ミュラー管ホルモン) 小さな発育卵胞の顆粒膜細胞 卵胞の発育開始を調整する。血中濃度は卵巣に残る卵胞の数の目安になる

※細胞と働きはStatPearls[3][6]、閉経後のアンドロゲン分泌は[7]による。

AMHは顆粒膜細胞がつくり、インヒビンBは卵胞期の終わりにかけてFSHの分泌を抑える方向に働きます[6]。AMHは月経周期による変動が比較的小さいため、血液検査で「卵巣に残っている卵胞の数」の目安として使われています。ただし、AMHが示すのは数の目安であって、卵子の質や妊娠のしやすさそのものではありません。この点は第4章と第6章で改めて触れます。

プロゲステロンは、排卵後に黄体から分泌されるホルモンで、「黄体ホルモン」とも呼ばれます。体温を上げる作用があり、基礎体温が排卵後に高温期へ移るのはこのためです。妊娠が成立すると黄体はしばらく働き続け、その後は胎盤がプロゲステロンをつくる役割を引き継ぎます。

脳と卵巣の連携:FSHとLH

卵巣は自分だけで働いているのではなく、脳の視床下部と下垂体からの指令を受けて動いています。その指令役が、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)です。この2つをまとめて性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)と呼びます。

流れを順に追うと、まず視床下部からGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が一定のリズムで分泌され、これを受けた下垂体がFSHとLHを血液中に送り出します。FSHは卵胞の発育を促し、育った卵胞がエストロゲンやインヒビンを分泌すると、それが脳にフィードバックされてFSHの分泌が調整されます[6]。卵胞が十分に成熟してエストロゲンが高い状態が続くと、今度は逆にLHが一気に放出され(LHサージ)、これが排卵の引き金になります。

この仕組みから、卵巣の働きが落ちたときに血液検査でFSHが高くなる理由も説明できます。卵巣からのエストロゲンやインヒビンによる「ブレーキ」が弱まるため、脳が卵巣をもっと働かせようとしてFSHを多く出すのです。閉経後や早発卵巣不全でFSHが上昇するのは、この反応によるものです。

月経周期と卵巣の働き

月経周期は、卵巣の変化から見ると「卵胞期」「排卵期」「黄体期」の3つに分けられます。子宮内膜の変化(月経・増殖期・分泌期)は、この卵巣のリズムを後追いしているにすぎません。

卵胞期卵胞が育ちエストロゲンが増える
▶
排卵期LHサージで排卵
▶
黄体期黄体がプロゲステロンを分泌
▶
月経妊娠しなければ黄体が退縮

卵胞期には、FSHの刺激で卵胞が育ち、エストロゲンが増えて子宮内膜が厚くなります。排卵期にはLHサージによって卵子が放出されます。黄体期には黄体が分泌するプロゲステロンによって子宮内膜が着床に向けて整えられ、基礎体温が高くなります。妊娠が成立しなければ黄体は約2週間で退縮し、ホルモンが急に下がることで子宮内膜がはがれ落ちて月経が始まります。

月経周期の長さに個人差があるのは、主に卵胞期の長さが人によって違うためです。黄体期の長さは比較的一定なので、次の月経予定日から逆算して排卵日を推定する方法が使われます。ストレスや体重の急な変化などで視床下部からの指令が乱れると、卵胞が育たずに排卵が起こらない周期(無排卵周期)になり、月経不順の原因になります。

4. 年齢とともに卵巣はどう変わる?

卵巣の最大の特徴は、卵子のもとを新しくつくることができず、生まれる前に用意した数を一方的に使っていく臓器だという点です。そのため卵巣は、ほかの臓器よりも早い時期から、年齢による変化がはっきりと表れます。

卵子のもとは生まれる前から減り続ける

卵巣の中の休眠中の卵胞(非発育卵胞)の数は、胎児期の妊娠18〜22週ごろにピークを迎え、その後は減る一方です。複数の研究データを統合して卵胞数の推移をモデル化した研究によると、ピーク時の卵胞数は片側の卵巣あたり平均約30万個で、出生時もほぼ同じ約29.5万個でした。そこから減り続け、95%の女性では30歳までにピーク時の12%、40歳までに3%しか残っていないと推定されています[8]。

📉 卵巣に残る卵胞の数の推移(片側の卵巣あたり)

時期 卵胞の数の目安
胎児期(妊娠18〜22週) ピーク:平均約30万個
出生時 平均約29.5万個
30歳 ピーク時の約12%(95%の女性でこれ以下)
40歳 ピーク時の約3%(95%の女性でこれ以下)
閉経のころ 残りがおよそ1,000個まで減る

※卵胞数の推移は[8]、閉経時の数は[9]による。個人差が大きく、同じ年齢でも数倍の違いがあります。

別の研究では、卵胞の減り方は一定の速さではなく、年齢とともに少しずつ加速していくこと、そして閉経は残りの卵胞がおよそ1,000個まで減ったころに起こることが示されています[9]。排卵に使われる卵子は一生で数百個程度にすぎず、卵胞の大部分は排卵に至らずに途中で退縮していきます。卵胞が減っていく主な理由は排卵ではなく、この退縮です。

数が減るのと並行して、卵子そのものにも年齢による変化が起こります。長年休眠していた卵母細胞では、減数分裂で染色体を正しく分けるための仕組みが弱まり、染色体の数の異常が起こりやすくなります。卵子の数については卵子の個数は決まっている?、質の変化については卵子が老化する原因で詳しく解説しています。

閉経とは卵巣機能が低下し月経が終わること/閉経後の卵巣

閉経とは、卵巣内の機能的な卵胞が著しく減少して卵巣機能が低下し、排卵が起こらなくなって月経が永久に停止した状態です。日本人女性の閉経の平均年齢は50歳前後とされ、閉経前後の5年ずつ、合わせて10年間を「更年期」と呼びます[10]。更年期には卵胞の減少によってエストロゲンが大きく揺らぎながら低下し、ほてり、発汗、気分の変化などの症状が出ることがあります。

閉経後の卵巣は小さくなり、閉経時に約2.8mLだった体積はその後さらに縮んでいきます[2]。卵胞がなくなるため、エストロゲンをつくる主な工場は失われ、閉経後の女性のエストロゲンは主に脂肪組織などでアンドロゲンから変換されたものになります。

ただし、閉経後の卵巣が何もしていないわけではありません。閉経後の女性13人で、手術の際に卵巣から出てくる静脈の血液と全身の血液を比べた研究では、卵巣静脈側でテストステロンなどの濃度が有意に高く、卵巣を摘出するとテストステロンが有意に低下しました。研究者は、閉経後の卵巣はホルモンをつくっており、血中のテストステロンに大きく寄与していると結論づけています[7]。この働きは閉経後10年以上たった人でも確認されています。

40歳未満で卵巣の働きが落ちる早発卵巣不全

40歳未満で卵巣の働きが失われる状態を「早発卵巣不全(POI)」といいます。2024年に欧州ヒト生殖学会(ESHRE)などが合同で改訂した国際ガイドラインでは、40歳未満で、月経がまれにしか来ない、または来ない状態が4か月以上続き、FSHが25IU/Lを超えていること(1回の測定で可)を診断の基準としています[11]。以前の版では2回の測定が必要でしたが、1回に簡略化されました。診断に迷う場合は4〜6週後に再検査します。

頻度については、世界各地の研究をまとめたメタ解析で、POIの有病率は統合して3.7%と報告されています[12]。ただし研究ごとに対象や定義が異なり、数字には幅がある点に注意が必要です。原因には、染色体や遺伝子の変化、自己免疫、がん治療(抗がん剤・放射線)や手術などがありますが、原因がはっきりしない例も少なくありません。

早発卵巣不全では、女性ホルモンが若いうちから不足するため、ホルモン補充療法で骨や血管を守ることが検討されます。また、残っている卵胞がわずかでもあれば、自然に排卵が起こることもあります。一般の方向けの解説は早発閉経(早期閉経)とは、卵巣の働きが低下した状態全般については卵巣機能不全の記事をご覧ください。遺伝的な原因については第7章で扱います。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【卵胞の数は「平均値」で自分を測れない】

「30歳で12%、40歳で3%」という数字は、卵巣の仕組みを理解するうえでは役に立ちますが、ひとりひとりの残り時間を示すものではありません。同じ年齢でも卵胞の数には数倍の開きがあり、平均から大きく外れる人は珍しくないからです。

AMHの値も同じで、数の目安にはなっても、卵子の質や妊娠の時期を言い当てるものではないと考えています。数字は「集団の中での位置」を知る材料として使い、ご自身の見通しは年齢、月経の状態、家族の閉経年齢などを合わせて考えることが大切です。

5. 卵巣がなくなったら・片方になったらどうなる?

卵巣が片方残っていれば、排卵も女性ホルモンの分泌も続きます。両方の卵巣を摘出すると、年齢にかかわらず閉経と同じ状態になります。卵巣は腫瘍や茎捻転、子宮内膜症などの治療で摘出されることがあり、遺伝性の卵巣がんのリスクを下げる目的で予防的に摘出されることもあります。

片方の卵巣が残っていれば

片方の卵巣を摘出しても、残った卵巣が働いていれば、月経も排卵も続き、妊娠することも可能です。卵巣は左右それぞれが独立して排卵とホルモン分泌を行っているため、片方がなくなっても、残った側が単独で役割を担います。

ただし、卵胞の総数はおよそ半分になるため、閉経が少し早まる可能性はあります。ノルウェーの約2万3,580人を対象にした調査では、片側の卵巣を摘出した女性の平均閉経年齢は49.6歳で、両側の卵巣が残っている女性の50.7歳より約1年早くなっていました[13]。研究者は、この差は卵胞が半分になることから予想されるよりも小さく、残った卵巣が働きを補っている可能性があると考察しています[13]。

妊娠を考える場合は、残っている卵巣だけでなく、同じ側の卵管が通っているかどうかも関係します。卵子は腹腔に出てから卵管に取り込まれるので、反対側の卵管が卵子を拾うこともあります。

両方の卵巣を摘出すると

閉経前に両方の卵巣を摘出すると、女性ホルモンが急に失われ、「外科的閉経」と呼ばれる状態になります。自然な閉経では数年かけてホルモンが下がるのに対し、手術では一度に下がるため、ほてりや発汗などの症状(卵巣欠落症状)が強く出やすいとされます。

長期的な健康への影響も調べられています。米国の住民コホート研究では、45歳未満で予防的に両側の卵巣を摘出した女性は、摘出しなかった女性と比べて死亡のリスクが高く(ハザード比1.67)、この上昇は主に45歳までエストロゲンを補充しなかった女性にみられました[14]。研究者自身、これが因果関係かどうかは確定できないと述べています。

看護師を対象にした大規模な追跡研究(Nurses’ Health Study)では、子宮摘出の際に両側の卵巣も摘出した女性は、卵巣を残した女性と比べて総死亡がやや多く(ハザード比1.12)、冠動脈疾患も多かった一方、卵巣がん(ハザード比0.04)と乳がん(0.75)は少なかったと報告されています[15]。つまり卵巣の摘出には、がんの予防という利点と、ホルモン喪失による不利益の両面があります。遺伝性腫瘍の人のように卵巣がんのリスクが高い場合と、そうでない場合とでは、この天秤の傾きが変わります。術後の生活や治療については卵巣を摘出するデメリットで詳しく解説しています。

子宮を取っても卵巣を残した場合

子宮だけを摘出して卵巣を残した場合、月経はなくなりますが、卵巣は引き続き排卵とホルモン分泌を行います。そのため、子宮を取ったからといってすぐに更年期のような状態になるわけではありません。

ただし、子宮摘出のあとは卵巣の働きが早めに低下する傾向が報告されています。卵巣を残して子宮を摘出した女性406人と、摘出していない女性465人を比べた研究では、卵巣機能不全に至るリスクが約1.9倍(ハザード比1.92)で、片側の卵巣も一緒に摘出した場合は約2.9倍でした[16]。手術で卵巣への血流の一部が変わることが理由の一つと考えられています。子宮摘出の理由や術式については子宮摘出の記事で解説しています。

6. 卵巣に起こる主な病気

卵巣は、腫瘍の種類がとても多い臓器です。卵巣には、表面をおおう上皮、卵子のもとになる胚細胞、ホルモンをつくる細胞(性索間質)という性質の異なる細胞がそろっているため、それぞれから良性・悪性さまざまな腫瘍が発生します。さらに、排卵に伴う一時的な変化や、子宮内膜症のような周囲の病気も卵巣に表れます。

🩺 卵巣に起こる主な病気

病名 どんな病気か
機能性嚢胞(卵胞嚢胞・黄体嚢胞) 排卵の過程で卵胞や黄体に液体がたまったもの。腫瘍ではなく、自然に小さくなることが多い(→卵巣嚢胞)
漿液性嚢胞腺腫 さらさらした液体がたまる良性腫瘍。良性の卵巣腫瘍の50〜70%を占める最多のタイプで、平均年齢は40歳前後[17](→卵巣に水が溜まる)
粘液性嚢胞腺腫 ねばりのある液体がたまる良性腫瘍。良性卵巣腫瘍の約25%で、20代〜50代に多く、非常に大きくなることがある[17]
成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫) 毛髪・脂肪・歯などを含む胚細胞由来の腫瘍。胚細胞腫瘍でもっとも多い。両側にできるのは8〜15%[18](→卵巣奇形腫)
チョコレート嚢胞 卵巣にできた子宮内膜症。古い血液がたまる。子宮内膜症の人の17〜44%にみられる[19](→チョコレート嚢胞/子宮内膜症)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) 小さな卵胞がたくさん育ったまま排卵しにくくなる状態。月経不順や不妊の原因になる(→多嚢胞性卵巣症候群(PCOS))
卵巣がん 卵巣・卵管・腹膜から発生する悪性腫瘍。日本では2023年に12,926例が診断されている[20](→卵巣がん/卵巣腫瘍)
卵巣茎捻転 腫れた卵巣が支えの部分でねじれ、血流が途絶える。急な強い痛みが特徴で、緊急手術が必要になることがある(→卵巣茎捻転)
卵巣出血・卵巣破裂 排卵後の黄体などから出血し、おなかの中に血液がたまる(→卵巣出血/卵巣破裂)

※頻度や年齢の目安は各文献による。個々の診断は画像検査・病理検査で行います。

成熟嚢胞性奇形腫は良性の腫瘍ですが、まれに一部ががん化することがあり、その頻度は0.5〜3%とされ、高齢の方に多いと報告されています[18]。以前は「皮様嚢腫」「皮様性のう腫」とも呼ばれていましたが、現在は成熟嚢胞性奇形腫という名称が使われます。また、粘液性嚢胞腺腫は「閉経後に多い」と説明されることがありますが、実際には20代から50代まで幅広い年代にみられます[17]。

卵巣の病気が見つかりにくい理由と受診の目安

卵巣は骨盤の奥にあり、周りに腸などのすき間も多いため、腫れてもかなり大きくなるまで症状が出にくい臓器です。卵巣がんが「サイレントキャンサー(沈黙のがん)」と呼ばれるのもこのためで、良性の腫瘍でも、健診の超音波検査で偶然見つかることが珍しくありません。

症状が出る場合は、おなかの張り、下腹部の違和感や痛み、膀胱が圧迫されることによる頻尿、腸が圧迫されることによる便秘などがあります。体重が増えていないのにおなかだけがふくらんできた、という変化で気づくこともあります。これらの症状は卵巣以外の原因でも起こるため、症状だけで卵巣の病気かどうかを判断することはできません。数週間以上続く場合は婦人科で超音波検査を受けると、原因をはっきりさせる手がかりになります。卵巣が腫れる原因については卵巣が腫れるとどうなる?で詳しく解説しています。

⚠️ すぐに医療機関を受診してほしい症状

急に始まった強い下腹部痛、吐き気や嘔吐を伴う痛み、冷や汗やふらつきを伴う痛みは、卵巣茎捻転や卵巣出血など、急いで対応が必要な状態のことがあります。我慢せず、夜間でも救急外来を受診してください。

卵巣の状態を調べる検査:経腟エコーとAMH

卵巣の形や腫れの有無を調べる基本の検査は、腟から細い器具を入れて行う経腟超音波検査(経腟エコー)です。おなかの上から当てる超音波よりも卵巣に近い位置から観察できるため、卵胞の数や大きさ、嚢胞の中身の性状まで詳しくわかります。性交経験がない方などには、おなかの上から、または肛門から行う方法もあります。検査の流れや受ける目安については卵巣エコーの記事をご覧ください。

卵巣の「残りの卵胞の数」を血液で推定する検査がAMH検査です。AMHは小さな発育卵胞からつくられるため、その値は卵巣に残る卵胞の数とおおむね連動します。ただし、AMHが低いからといって妊娠できないわけではなく、卵子の質や閉経の時期を正確に予測できるものでもありません。国際ガイドラインでも、早発卵巣不全の診断にAMHを第一の検査として使わないことが強く推奨されており、FSHの結果がはっきりしないときの補助として位置づけられています[11]。AMHでわかることとわからないことは、卵巣予備能の解説で整理しています。

7. 遺伝の視点:卵巣と遺伝子の関係

卵巣の病気や働きの一部は、生まれつきの遺伝子や染色体の違いと深く関わっています。代表的なのが、卵巣がんのリスクを高める遺伝性腫瘍と、卵巣の働きが早く失われる早発卵巣不全の遺伝的な原因です。家族にこうした病気の人がいる場合、その情報は本人の健康管理を考えるうえで意味を持ちます。卵巣がつくられて維持される分子の仕組みをさらに詳しく知りたい方は、卵巣の発生と維持の分子のしくみで遺伝医学の観点から解説しています。

遺伝性の卵巣がん:HBOCとリンチ症候群

卵巣がんの一部は、親から受け継いだ遺伝子の病的バリアントによって起こりやすくなっています。代表的なのが遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とリンチ症候群です。米国の統計では、一般の女性が生涯に卵巣がんと診断される割合は約1.1%です[21]。

これに対し、HBOCの原因となるBRCA1遺伝子に病的バリアントを持つ女性では、80歳までの卵巣がんの累積リスクが44%、BRCA2遺伝子では17%と推定されています[22]。大腸がんや子宮体がんで知られるリンチ症候群でも卵巣がんのリスクは高くなり、75歳までの累積発生率はMLH1遺伝子で11.0%、MSH2遺伝子で17.4%、MSH6遺伝子で10.8%と報告されています[23]。PMS2遺伝子ではリスクは低く、推定値の幅も大きいとされています[23]。詳しくは遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とリンチ症候群の解説をご覧ください。

近年、卵巣がんの中で最も多い「高異型度漿液性がん」の多くは、卵巣そのものではなく卵管の先端から発生することがわかってきました。卵巣がんの組織を遺伝子レベルで解析した研究では、卵管にできる前がん病変が出発点となり、そこから卵巣へ広がっていく経過が示されています[24]。BRCA1/2の病的バリアントを持つ人に行われる予防的な手術で、卵巣と卵管を一緒に摘出するのはこのためです。

遺伝以外の要因も知られています。子宮内膜症は、明細胞がん(オッズ比3.05)、類内膜がん(2.04)、低異型度漿液性がん(2.11)のリスク上昇と関連していました[25]。更年期のホルモン補充療法を現在または最近使用している人では、卵巣がんのリスクが約1.4倍(相対リスク1.37)と報告されています[26]。一方、不妊治療の排卵誘発剤については、37研究・約470万人を対象としたコクラン・レビューで、浸潤性の卵巣がんのリスクを高めるという確かな根拠は見つかっていません[27]。排卵誘発剤の使用が卵巣がんの原因になると断定できる状況ではない、というのが現時点の評価です。

卵巣の働きに関わる遺伝要因:ターナー症候群・FMR1プレミューテーション

早発卵巣不全の原因として、染色体や遺伝子の変化が見つかることがあります。代表的なのが、X染色体が1本足りない(または一部が欠ける)ターナー症候群と、FMR1遺伝子のプレミューテーションです。国際ガイドラインでは、医療行為によらない早発卵巣不全のすべての人に、染色体検査とFMR1プレミューテーションの検査を行うことが強く推奨されています[11]。

ターナー症候群では、胎児期から卵胞が急速に失われるため、多くの人で卵巣の働きが早くから低下します。それでも約30%の人では思春期の発来が自然にみられ、自然に初経を迎えるのは10〜20%、自然妊娠は2〜8%と報告されています[28]。X染色体の構成が一部の細胞だけ異なるモザイク型では、自然な思春期や妊娠がみられる割合が高いとされています[28]。

FMR1遺伝子は、脆弱X症候群(ぜいじゃくエックスしょうこうぐん)の原因遺伝子として知られています。この遺伝子の中にあるCGGという3つの塩基のくり返しが、正常より多いものの脆弱X症候群を起こすほどではない状態を「プレミューテーション」と呼びます。プレミューテーションを持つ女性の約20%は、40歳までに卵巣の働きが低下する脆弱X関連原発性卵巣不全(FXPOI)を発症するとされています[29]。プレミューテーションは子どもに受け継がれるときにくり返しの数が増えることがあるため、本人の卵巣の問題だけでなく、家族計画にも関わる情報になります。早発卵巣不全の遺伝的な原因の全体像は、早発卵巣不全(POI)の解説にまとめています。

💡 用語解説:プレミューテーション

プレミューテーションとは、遺伝子の中の短い塩基配列のくり返し回数が、正常の範囲より多いものの、病気を起こす「フルミューテーション」には達していない状態です。FMR1遺伝子ではCGGのくり返し回数で区分されます。プレミューテーションは不安定で、母から子へ受け継がれるときにくり返し回数が増え、フルミューテーションになることがあります。

家族歴が気になるとき

血縁者に卵巣がんや乳がん、若いうちの大腸がんや子宮体がんの人が複数いる場合、あるいは家族に早い閉経や脆弱X症候群の人がいる場合は、遺伝的な要因が関わっている可能性があります。ただし、家族にがんの人がいても、多くは遺伝性ではありません。遺伝性かどうかを見分ける手がかりは、がんの種類の組み合わせ、診断された年齢、同じ側の家系に集中しているかどうかなどです。

こうした家族歴の整理や、遺伝学的検査を受けるかどうかの判断材料をそろえる場として、遺伝カウンセリング・遺伝診療があります。遺伝学的検査で病的バリアントが見つかった場合は、本人の検診や予防策を検討できるだけでなく、血縁者が同じバリアントを持っているかどうかを調べる手がかりにもなります。検査の結果は本人だけのものではなく、家族にも関わる情報であることを理解したうえで検討することが基本です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【卵巣は「家族の情報」で見え方が変わる臓器】

私はがん薬物療法専門医として臓器を横断してがんの診療に携わるなかで、遺伝性腫瘍という考え方と向き合うようになり、臨床遺伝専門医の資格を取りました。卵巣がんは、その遺伝性腫瘍の考え方がとくに大きな意味を持つがんの一つだと考えています。

卵巣は症状が出にくく、検診だけで早く見つけることが難しい臓器です。だからこそ、家族の病歴という「目に見えない情報」が、予防策を考えるうえで重みを持ちます。卵巣の働きや病気を理解するときには、自分の体の中だけでなく、家系の中での位置づけにも目を向けることが大切だと考えています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 卵巣はなぜ2つあるのですか?

卵巣は、胎児期に体の左右に1つずつできる性腺がもとになっているため、左右1対の臓器として存在します。左右それぞれが独立して排卵とホルモン分泌を行うので、片方を失っても、もう片方が働きを担うことができます。

Q2. 排卵は左右交互に起こりますか?

いいえ、厳密に交互ではありません。超音波で排卵を追跡した研究では、右側からの排卵は約52〜55%で、次の周期に反対側へ移る割合も約半分でした[4][5]。どちらの卵巣から排卵するかは、その周期にどちらの卵胞が選ばれたかで決まり、ほぼ偶然と考えられています。

Q3. 卵巣は外から触ってわかりますか?

正常な大きさの卵巣は骨盤の奥にあるため、おなかの上から触れてわかることは通常ありません。婦人科の内診では触れることがありますが、形や大きさを確かめるには経腟超音波検査が使われます。おなかの上からしこりとして触れる場合は、卵巣がかなり大きくなっている可能性があります。

Q4. プロゲステロンは卵巣ホルモンですか?

はい。プロゲステロンは、排卵後に卵巣にできる黄体から分泌される卵巣ホルモンで、黄体ホルモンとも呼ばれます[3]。子宮内膜を着床しやすい状態に整え、基礎体温を上げる働きがあります。妊娠が成立すると、しばらくしてから胎盤がその分泌を引き継ぎます。

Q5. 卵巣が片方でも妊娠できますか?

残った卵巣が働いていれば、排卵は続くので妊娠は可能です。ただし卵胞の数はおよそ半分になるため、閉経が約1年早まるという報告があります[13]。妊娠を考える場合は、卵管の状態も含めて評価することが大切です。

Q6. 排卵痛とは何ですか?

排卵の前後に下腹部の片側に感じる痛みで、生殖年齢の女性の40%以上にみられるとされています[30]。月経周期のなかごろに起こり、通常は数時間から半日ほどでおさまります。痛みが強い、長く続く、発熱を伴う場合は、ほかの病気との区別が必要です。卵巣周辺の痛みの原因については卵巣を押すと痛いの記事で解説しています。

Q7. 閉経後の卵巣は何もしていないのですか?

いいえ。閉経後の卵巣は小さくなり、排卵は止まり、卵胞由来のエストロゲン産生は大幅に低下しますが、テストステロンなどのアンドロゲン産生は続きます。閉経後の女性を調べた研究では、卵巣を摘出するとテストステロンが有意に低下しました[7]。

Q8. 卵巣の病気の検査や治療はミネルバクリニックでできますか?

いいえ、当院では卵巣嚢胞や卵巣がんなど卵巣の病気の検査・診断・治療は行っておらず、この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。卵巣の症状や病気については、婦人科を受診してください。

まとめ

卵巣とは、子宮の左右に1つずつある長さ約3.5cmほどの生殖腺で、卵子を育てて排卵する役割と、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンをつくる役割を担っています[1][3]。卵巣は脳の視床下部・下垂体と連携してホルモンの量を調整し、そのリズムが月経周期をつくっています。

卵巣の中の非発育卵胞は胎児期にピークを迎えてから減り続け、モデル上、30歳でピーク時の12%、40歳で3%ほどになり、およそ1,000個まで減ったころに閉経を迎えます[8][9]。閉経後も卵巣は男性ホルモンをつくり続けており、完全に役目を終えるわけではありません[7]。片方の卵巣が残っていれば排卵もホルモン分泌も続きますが、両方を摘出すると閉経と同じ状態になります。卵巣は腫瘍の種類が多く症状が出にくい臓器であり、BRCA1/2やリンチ症候群などの遺伝的な背景が卵巣がんのリスクに関わることもあります[22][23]。

🏥 卵巣の病気の検査・治療をお考えの方へ

当院では、卵巣の病気(卵巣嚢胞・卵巣腫瘍・卵巣がんなど)の検査・診断・治療を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
卵巣の病気が疑われる場合は、婦人科を専門とする医療機関へご相談ください。
この記事は卵巣を正しく知っていただくための解説であり、当院での診療をご案内するものではありません。なお、他の診療の過程で具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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