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子宮頸部異形成って病気なの?詳細や治療法まで徹底解説

子宮頸部(けいぶ)異形成という言葉を聞いたことはありますでしょうか。中には初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。

字の通り、子宮にかかわる女性特有の症状が子宮頸部異形成です。子宮頸がん検診を受けた際の診断結果として「異形成」と判定されることがありますが、これはがんとは違います。

では、子宮頸部異形成とは一体どんな症状なのでしょうか。本記事では、そもそも子宮頸部異形成がどういったものなのかや、治療方法、妊娠時の対処などについて解説します。

女性であれば誰でも発症する可能性があるため、初めて子宮頸部異形成という言葉を聞いた方も、ぜひ最後まで読んでみてください。

子宮頸部異形成とは

患者さんから話を聞く女性医師

子宮頸部異形成は、別名で子宮頸部上皮腫瘍とも言われています。子宮頸部異形成は、自覚症状が出ないことから自分では発見できず、子宮頸がん検診の時に発見されることが多いです。

子宮頸がん検診では細胞の形を調べますが、正常・異形成・がんの三種類のうち、いずれかの結果が出ます。この時診断される「異形成」が、子宮頸部異形成のことなのです。

異形成とは、字のごとく通常の細胞とは形が異なっている状態であることを指し、正常ではない状態です。

また、検診結果の種類で異形成とは別に「がん」があることでおわかりになるかと思いますが、子宮頸部異形成はがんではなく、また悪性の腫瘍でもありません。

子宮頚部とは、膣につながっている子宮の下から3分の1の部分を指します。この子宮頚部の細胞が、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスに感染した際に異形成を引き起こすのです。

しかしウイルスの侵入を監視する役割を持つ細胞と免疫細胞によって、HPVが取り除かれれば正常な細胞に戻ります。

子宮頚部異形成はがんではない?

前述した通り、子宮頚部異形成はがんではありませんが子宮頸がんの前段階とも言えます。子宮頸がんや子宮頚部異形成になる方は、日本人女性の中でもとくに20代から30代で増加している傾向があります。

だからこそ、子宮頸がん検診をしっかり受けることはもちろん大事です。

しかし、子宮頚部異形成になったからと言って必ずしも子宮頸がんへと進展するわけではありません。子宮頚部異形成と診断されたとしても、焦らず自分の状態をまずは確認しましょう。

子宮頚部異形成になる原因とは

子宮頚部異形成になる主な原因は、性交渉によるものです。子宮頚部の細胞がHPVというウイルスに感染することで子宮頚部異形成となります。

HPVに感染したとしても、自然とウイルスが消えるケースがほとんどです。しかし、中には数年の歳月を経て子宮頸がんへと変化していくこともあります。

初めての性交渉を迎えることの多い10代や20代でHPVへと感染し、数年経ってから子宮頸がんとなるため、20代から30代の子宮頸がん患者が増加しているのです。

子宮頚部異形成の種類について

子宮頚部異形成は、異形成となった細胞の多さによって軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)に分類されます。

子宮頚部軽度異形成(CIN1)

軽度の場合、2年で約60%の確率でHPVが自然と消えていきます。しかし、約10%の確率でHPVが消えずにそのまま進行していきます。

子宮頚部中等度異形成(CIN2)

中等度の場合、2年で約40%の確率でHPVが自然と消えていきます。しかし、約20%の確率でHPVが消えずにそのまま進行していきます。

子宮頚部高度異形成+上皮内がん(CIN3)

高度+上皮内がんの場合、2年で約20%の確率でHPVが自然と消えていきます。しかし、約30%の確率でHPVが消えずにそのまま進行していきます。

子宮頚部異形成の3分類をご紹介しましたが、もしここからさらに浸潤がんへと進化した場合は速やかに治療が必要です。

子宮頸部異形成の治療方法について

手術でメスを握っている医師

がんへと変化する可能性があると知ったら、すぐに治療した方がよいかと思いますが、実はそうではありません。子宮頚部異形成の治療方法は、軽度・中等度・高度+上皮内がんの場合で異なります。

まず、軽度や中等度ではすぐに治療をする必要はありません。経過を観察しながら自然とHPVが消えていくことを確認します。軽度や中等度の子宮頚部異形成であれば、約半数の方が半年程度で自然と治癒します。

しかし、高度+上皮内がんの場合や、自然治癒せずに長期でHPVが存在する場合はしっかり治療してください。治療方法として有効な薬はなく、子宮頸部円錐切除術と呼ばれる方法が主流となっています。

この方法は子宮を残す形での手術になりますので、手術後も妊娠・出産は可能となるのが特徴です。しかし、手術後に妊娠・出産を望まない場合は子宮をすべて摘出する形で手術を行う場合があります。

また、HPVの感染を予防するためのワクチンは存在しますが、すでに子宮頚部異形成へと変化した細胞を治療するためのワクチンとして効果は発揮しません。

レーザーを使った治療方法もある

切除する手術と聞くと多少抵抗を感じるものです。実は、子宮頸部円錐切除術や子宮を全摘出する手術のほかに、レーザーを使って治療する方法も近年出てきました。

子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療と呼ばれており、子宮頚部のHPVを含む表層全体を炭酸ガスレーザーで焼きます。

治療はわずか10分程度で終わり、痛みもほとんどないため麻酔をしないまま治療をする場合もあります。しかし、痛みを感じる場合は局部麻酔にて対処します。

子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療のメリットとデメリット

レーザーでの治療方法を聞くと、子宮頸部円錐切除術や子宮全摘出手術よりよいのではないかと思ってしまいます。

しかし、もちろんメリットもありますがデメリットもあります。どちらの方がよいということはなく、ご自身の状態に合わせて選択いただけるよう比較してみました。

まずは子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療のメリットからご紹介します。

  • 子宮頸部円錐切除術と違い早産リスクが高くならない
  • 日帰りの手術で負担が少ない
  • 1万円程度で受けられる

子宮頸部円錐切除術を行った場合、2倍程度早産のリスクが高まると言われています。また、子宮頚部が狭くなることで妊娠の可能性が下がるとも言われていることから、今後の妊娠や出産を考えている方にとって子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療がオススメです。

続いて子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療のデメリットをご紹介します。

  • 子宮頸部円錐切除術では治癒率が100%なのに比べ、子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療の治癒率は90%ほど
  • 子宮頸部円錐切除術ではより深部の病変を見つけられることがある

子宮頚部異形成上皮レーザー照射治療は、確実性の部分で子宮頸部円錐切除術に劣っています。子宮頸部円錐切除術では採取した細胞組織の病理検査を行うため、より深部の病変を見つけられる場合があります。

妊娠中に子宮頸部異形成になった時の治療は?

子宮頚部異形成は子宮と深く関係しているため、妊娠や出産に影響が出ないか心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、妊娠中に子宮頚部異形成になった場合、子宮頚部異形成が発展する可能性は低いです。出産が終わった後に自然と消えるという報告もあります。

妊娠初期や、妊娠する前に軽度・中等度の子宮頚部異形成と診断された場合でも、たいていは問題なく出産できますので必要以上に不安になることはありません。

それでもどうしても不安な方は、かかりつけ医に不安であることを相談したうえで安全性を説明してもらい、納得した形で出産に臨むことをオススメします。

子宮頚部異形成になった後に保険は入れる?

病院を積み木に例えてみた

子宮頚部異形成はがんではないものの、がんの前段階の状態であるため、保険に入れるかどうか心配になります。

医療保険の場合

もちろん保険会社によって異なりますが、軽度の子宮頚部異形成の場合通常の医療保険に加入することはできる可能性があります。しかし、子宮部位の不担保など加入に際しては、条件をつけられる可能性もありますのであらかじめどのような対応になるのか確認しておきましょう。

がん保険の場合

がん保険に関しては軽度であれば加入できる可能性が高くなります。しかし、加入した後の90日間は免責期間と呼ばれ、この期間に発症したがんは保険の対象外となってしまうため注意が必要です。

中等度の子宮頚部異形成の場合は、加入の対象外になってしまうことがあるため要注意です。さらに、高度+上皮内がんであればより加入が難しくなります。

まとめ

子宮頚部異形成についてご説明しましたが、理解は深められましたでしょうか。がんではないものの、放っておくとがんになる可能性もあります。また、子宮頚部異形成の状態では自覚症状が出ないため定期的な検診を受けることでしか発見できません。

自分の身体の健康を守るためにも、1年に1度は定期検診を怠らずきちんと行いましょう。また、万が一子宮頚部異形成が見つかった場合でも、軽度・中等度であれば自然とウイルスが消えることも多いため必要以上に焦ることはありません。

医師に相談をしながら、自分にあった対処法を探すのをオススメします。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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