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「子宮頚管長が短い」「早産になる可能性がある」など、妊娠中期以降に医師から指摘された方もいるかもしれません。妊婦健診で「子宮頚管」という言葉をはじめて聞いたという方も多く、「子宮頚管ってどこにあるの?」と疑問に思った方もおられるのではないでしょうか。
子宮頚管長とは、子宮の入口の長さのことです。子宮頚管長が短くなってしまう原因は今のところはっきりしていませんが、早産のリスクが高まることはわかっています。
そのため、一般的には妊娠18週から妊娠24週くらいまでの間に子宮頚管長を測定し、早産のリスクが高い方は早めに再検査を行ったり治療を行ったりします。
子宮頚管長は、正産期に出産できるかどうかに関わる重要なポイントとなりますので、本記事で子宮頚管に関する基礎知識と早産の関係について知っておきましょう。
子宮頚管とは
そもそも子宮頚管とは、子宮の下の方にある管状の部分で、胎児が入っている子宮から膣につながっています。さらに詳しくいうと、子宮の下の細長く膣に突き出ている部分を子宮頚部といい、その内側の管状の部分を子宮頚管といいます。
ママの体や子宮の大きさなどによって子宮頚管の長さには個人差がありますが、一般的には35〜40mm程度であることが多いです。
妊娠中期以降になると、子宮内腔が大きくなることによって子宮下節がひらくため、超音波検査を行った際、子宮頚管と混同してしまうこともあるようです。
そんな子宮頚管は、女性の体の中でどのような役割を担い、妊娠に伴ってどのように変化していくのでしょうか。
ここでは、子宮頚管に関する基礎知識をいくつかご紹介します。
子宮頚管の役割
以下は、女性の体内における子宮頚管の役割です。
- 感染予防:子宮頚管は外からの雑菌が侵入しやすいため、頚管内部を強い酸性に保つことで細菌による感染を防いでいる。
- 妊娠の成立を助ける:通常、雑菌の侵入を防ぐために子宮頚管には粘度の高い分泌液がたまっているが、排卵前後の数日は頚管粘液の水分量を増加して精子を通過しやすくする。
- 胎児が子宮外に出るのを防ぐ:子宮頚管は、出産が近づくまでは固く、入り口もしっかりと閉じて胎児が子宮外に出てしまうのを防いでいる。
- 出産時は産道になる:出産が近づくと徐々にやわらかく短くなり、分娩直前になると見かけ上は消失しながらも赤ちゃんが通りやすい状態を作る。
子宮頚管は、妊娠していないときは固く狭い状態で、頚管粘液で栓をすることで膣と子宮腔を遮断しています。そうすることで細菌などによる感染を予防していますが、月経周期の中で頚管粘液の性質と状態を変化させ、排卵期には精子が通過しやすくしています。
妊娠に伴う子宮頚管の変化
約10か月にも及ぶ長い妊娠期間、胎児の成長をサポートしてきた子宮頚管。出産が近づくにつれて部分的に変化しはじめます。
赤ちゃんが成長する前に子宮の外へ出てしまわないよう硬く閉じていましたが、出産が近くなると徐々に短く、やわらかく伸び、赤ちゃんが産まれてくる道へと変化していきます(これを「熟化」という)。出産が近づいた子宮頚管は、例えるならば唇くらいのやわらかさです。
分娩時にはさらに薄く長く伸び、マシュマロくらいにまでやわらかくなるため、赤ちゃんがスムーズに産まれてきます。
出産後は、3日目くらいになると開いていた子宮頚管も指が2本入るくらいにまで狭くなり、産後12日が経つ頃には指が1本入るかどうかというくらいにまで戻っていくでしょう。
子宮頚管長の測り方
子宮頚管長は、経膣による超音波検査(エコー検査)を行って測るのが一般的です。妊娠18週から妊娠24週の間に子宮頚管長を測ることが、産婦人科のガイドラインで定められています。
膣内にゼリーを塗った細長い棒のようなプローブを挿入し、注意深く子宮頚管を観察して長さを計測したり開いていないか確認したりします。
近年の医療技術の進歩に伴い、超音波検査の画像もかなり鮮明に映るようになってきており、子宮頚管の詳細な観察が可能です。
子宮頸管が短くなる原因とは
子宮頚管が短くなる原因は、今のところはっきりとわかっていませんが、細菌感染による炎症という説がもっとも有力です。
また、もともとの体質や過去の手術の影響によって子宮頚管が短くなり、子宮口が開きやすくなる「子宮頚管無力症」の可能性もあります。早産の原因となることもあるので、早めに受診して適切な処置を受けなければいけません。
ただし、子宮頚管が短くなったり子宮口が開いたりすること自体に、患者さん自身が自覚できる症状はないため、子宮の収縮を感じて受診して気づくケースも多いです。
子宮頚管長と早産の関係について
上記でご紹介したように、子宮頚管はさまざまな原因によって短くなる可能性があり、それに伴って早産のリスクも高まることが知られています。
妊娠中に気になることはいろいろありますが、お腹に赤ちゃんを宿しているママにとって、子宮頸管が短いと指摘されたときにもっとも気になるのは、早産との関係ではないでしょうか。
そこでここでは、子宮頚管長と早産の関係について詳しくご紹介します。
そもそも早産とは
早産とは、正期産よりも早い出産のことで、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことです。妊娠22週未満での出産は流産と呼び、早産とは異なる分類とされています。分娩週数が早ければ早いほど、ママと赤ちゃんへの負担も大きいため、できる限り避ける必要があります。
早産の種類は、なんらかの原因によって早期に出産することになってしまう「自然早産」と、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全などにより、妊娠を継続できなくなったために人為的に早産させる「人工早産」の2つです。
ちなみに、妊娠中期の後半くらいになるとよく耳にする切迫早産とは、早産の危険性が高い状態のことです。
規則的かつ頻繁なお腹の張りや痛みがあり、子宮口が開いて赤ちゃんが出てきそうな状態であるため、子宮が収縮しないように子宮収縮抑制薬を使用するケースもあります。
子宮頚管長が2.5cm以下の場合は要注意
上記でもご紹介したように、「子宮頚管無力症」は、早産を引き起こす原因のひとつです。
通常、妊娠中は子宮頚管が硬く閉じているため、胎児がお腹の中から出てきてしまうことはありません。しかし、妊娠後期になる頃から徐々に長さが短くなり、赤ちゃんがスムーズに通れるようやわらかくなっていきます。
ところが生まれつき子宮頚管の組織が弱い場合や、子宮頚管円錐切除術などの手術を経験しているなどの場合、早い時期に開いてしまうことも。
これを、子宮頚管無力症といいます。
具体的には、早産になってしまう時期(妊娠22週以降妊娠37週未満)に、子宮頸管長が2.5cmを切っている場合が子宮頚管無力症に当てはまります。
子宮頚管無力症は自覚症状がないため、妊婦さん自身が気づくことはなく、妊婦健診の超音波検査で指摘されることがほとんどです。
早産予防のために大切なことと注意点
子宮頚管無力症と診断されたら、早産にならないよう慎重に経過を観察します。
とくに大切なのは、安静にすることです。胎児や羊水による子宮の重みで、今以上に子宮頚管が短くならないようにするには、横になって安静にしたり、場合によっては張り止めの薬も併用したりします。
最近では産休ギリギリまで仕事をするママも多いですが、子宮頚管無力症と診断された場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード」などに必要事項を記入してもらい、仕事を軽減してください。
状況によっては、入院することもあり得ます。早産になるリスクが高い場合は、「子宮頚管縫縮術」という子宮口を縛る手術を受ける可能性もあるので、家事などは出来るだけ家族に手伝ってもらってください。
ただし、子宮頚管長の数値のみではなく、以下のような指標と照らし合わせて対処法を決定します。
- お腹の張りや痛みの程度
- 破水の有無や状況
- 出血の有無
- 子宮頚管の開き具合 など
これらの専門的な指標により、自宅安静のみか、自宅安静+張り止めの内服で対処するのか、入院して治療を行うのか決めることになるでしょう。
一度短くなった子宮頚管は元に戻りません。早産を予防するためにも、普段からお腹の張りに注意し、妊婦健診をきちんと受けるようにしましょう。
まとめ
子宮頚管の基礎知識と早産の関係性についてご紹介しました。
子宮頚管とは、女性の子宮頚部の内側にある管状の部分のことです。子宮の一部であり、妊娠の維持や感染予防、受精を助ける役割を担っています。
妊娠によって子宮頚管は変化していきますが、まだ胎児が成長するまで期間があるにもかかわらず、子宮頚管が短くなってしまうと早産のリスクが高まってしまいます。早産は、赤ちゃんが未熟な状態で生まれてくるため、合併症のリスクがあり、時には命に関わることも。
妊婦健診で子宮頚管が短いと指摘された場合は、担当の医師の指示にきちんと従い、正産期に出産できるよう心がけましょう。