InstagramInstagram

二人目不妊とは?原因となりやすい人、受診の目安と治療のやめどき

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

二人目不妊とは、一人目を妊娠・出産したあと、次の子を望んで避妊をせずに性交していても妊娠しない状態のことです。医学的には「続発性不妊」と呼ばれ、日本では1年間妊娠しなければ不妊と考えます。女性が35歳以上なら、1年を待たずに半年ほどで検査を考える目安が海外の学会から示されています。一人目が自然に授かったことは、二人目も同じように授かる保証にはなりません。年齢、出産や手術による子宮の変化、授乳中のホルモン、パートナー側の変化が重なるためです。この記事では、原因、なりやすい人、受診の目安、治療の進め方、流産をくり返す場合の遺伝の視点、そして治療のやめどきの考え方までを解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
👶 二人目不妊・続発性不妊
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 二人目がなかなかできないとき、いつ受診すればよいですか?

A. 女性が35歳未満なら1年、35歳以上なら半年を目安に、夫婦そろって検査を考えます。月経不順がある、子宮内膜症や骨盤の感染の既往がある、一人目の妊娠に時間がかかった、といった場合は、期間を待たずに相談してかまいません。「一人目ができたから大丈夫」と待っているあいだにも年齢は進みます。

  • ➤二人目不妊の原因 → 年齢、帝王切開や流産手術による子宮の変化、授乳中のホルモン、男性の加齢、性交渉の機会の減少
  • ➤治療の進め方 → 一人目の授かり方で変わる。体外受精で授かった人は凍結胚の移植から考える
  • ➤保険の回数 → 出産すると、次の子のための回数が追加される(年齢は43歳未満のまま)
  • ➤遺伝の視点 → 流産を2回以上くり返したら、夫婦の染色体検査が検討される

1. 二人目不妊とは|一人目を出産していても起こる「続発性不妊」

二人目不妊は、過去に妊娠・出産した人が、その後に妊娠できなくなる「続発性不妊」の代表的な形です。一度も妊娠したことがない場合の「原発性不妊」と区別するための医学用語で、原因の調べ方や治療の考え方は基本的に同じです。違うのは、一人目の経験があるために受診が遅れやすいこと、そして一人目のときより確実に年齢が上がっていることです。

二人目不妊の定義と、一人目の不妊との違い

日本産科婦人科学会は、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交していても1年間妊娠しない状態を「不妊症」と定義しています。二人目不妊もこの定義にそのまま当てはまります。同学会は、女性に排卵がない、子宮内膜症がある、過去に骨盤腹膜炎にかかった、年齢が高い、といった場合には、1年を待たずに検査や治療を始めることを勧めています[1]。

米国生殖医学会(ASRM)はもう一歩具体的に、女性が35歳未満なら12か月、35歳以上なら6か月で評価を始める目安を示しています[2]。日本の学会は「年齢が高い場合は1年待たない」という書き方で、6か月という月数までは定めていません。ただ、35歳を過ぎてからの半年は妊娠のしやすさに影響する期間なので、目安として知っておく価値はあります。

二人目不妊が一人目の不妊と違う点は、「前はできたのだから」という経験がかえって受診を遅らせることです。一人目のときに不妊治療を受けた人は、いつ受診すべきかを経験から判断できます。一方、一人目が自然に授かった人ほど、原因があるとは思わずに時間が過ぎてしまいがちです。

💡 用語解説:続発性不妊(ぞくはつせいふにん)

過去に妊娠したことがある人が、その後に妊娠できなくなる状態を指します。出産だけでなく、流産や子宮外妊娠の経験がある場合も含まれます。一度も妊娠したことがない場合は「原発性不妊(げんぱつせいふにん)」と呼び、二人目不妊は続発性不妊に含まれます。

二人目不妊はどれくらいある?(割合)

二人目不妊は珍しいものではありません。日本産科婦人科学会は、日本では夫婦の4.4組に1組が不妊に悩んでいると紹介しています[1]。世界190か国の健康調査を分析した研究では、2010年の時点で、出産経験のある女性の10.5%が次の子を持てない続発性不妊の状態にあると推計されました[3]。この研究は「5年間妊娠しない」を基準にした人口調査の推計で、臨床の定義(1年)より厳しい基準で数えた値です。

国内では、公益財団法人1more Baby応援団が2019年、不妊に悩んだことがある約1,000人に調査を行い、35.6%が二人目不妊だったと報告しています。二人目不妊の人の約6割は「一人目ができたから二人目もできる」と考えていました[4]。この35.6%は「不妊の経験者のうちの割合」で、子どもがいる人全体の割合ではない点に注意してください。

2. 二人目不妊の原因|一人目のときから何が変わったのか

二人目不妊の原因は、一人目のあとに起きた変化と、もともとあった要因の組み合わせです。一人目の不妊と同じく、男女どちらにも原因はありえます。どちらかが悪いということではなく、夫婦それぞれの体に何が起きているかを順に確かめていくことが出発点になります。

年齢:卵子の数と質の変化

二人目不妊で最も大きな要因は、一人目のときより年齢が上がっていることです。一人目を33歳で産み、二人目を望んで1年たてば、女性は35歳前後になっています。卵子は生まれる前につくられて年齢とともに数が減り、残った卵子では染色体の数の異常が起こりやすくなります。受精卵の染色体の数がそろっていないと、多くは着床しないか、流産に終わります。

体外受精で得られた胚盤胞15,169個を調べた研究では、染色体の数の異常が最も少なかったのは女性が26〜30歳のときで、それ以降は年齢とともに予測どおり増えていきました。染色体の数がそろった胚が1つも得られない割合は、26〜37歳では2〜6%でしたが、42歳では33%、44歳では53%に上がっていました[5]。これは体外受精の胚を調べたデータで、自然妊娠での個人の確率をそのまま表すものではありませんが、年齢の影響がどれほど大きいかがわかります。

年齢と妊娠率の関係は年齢別の妊娠確率で、卵子で染色体の数の異常が起こる仕組みは卵子の染色体異常(異数性)が加齢で増える仕組みで詳しく解説しています。

💡 用語解説:異数性(いすうせい)

染色体の本数が、正常な46本から1本多い(トリソミー)、または1本少ない(モノソミー)状態のことです。卵子ができる過程で染色体がうまく分かれないと起こり、女性の年齢とともに増えます。受精卵が異数性を持つと、多くは着床しないか、妊娠の早い時期に流産します。

出産・手術のあとの子宮と卵管の変化

一人目の出産や、その後の流産手術が、子宮や卵管に変化を残すことがあります。卵管の先端にある卵管采(らんかんさい)は、イソギンチャクのように広がって、卵巣から出た卵子を卵管に取り込みます。この「ピックアップ」がうまく働かないと、卵子と精子は出会えません。産後の感染などで卵管や周囲に癒着ができると、この仕組みが妨げられることがあります。

帝王切開のあとについては、複数の研究をまとめた解析で、経腟分娩のあとに比べて次の妊娠の割合が9%、出産の割合が11%低いと報告されています。ただし、研究の質が高いものほど差は小さく、帝王切開そのものが原因なのか、帝王切開になった背景(年齢や不妊の既往など)が影響しているのかは、はっきりしていません[6]。

帝王切開の傷あとが子宮の内側でくぼみとして残り、不妊や不正出血の原因になる状態は、2023年に国際的な定義と診断基準が定められ、「帝王切開子宮瘢痕症(Cesarean scar disorder)」と呼ばれるようになりました[7]。体外受精などの生殖補助医療を受けた人を対象とした研究のまとめでは、このくぼみ(ニッチ)がある人は出産に至るオッズが0.58倍と低い結果でしたが、根拠の確かさは「低い」と評価されています[8]。

💡 用語解説:帝王切開子宮瘢痕症(ていおうせっかいしきゅうはんこんしょう)

帝王切開の傷あと(瘢痕)が子宮の内側でくぼみになり、月経のあとも茶色いおりものが続く、月経痛が強くなる、妊娠しにくい、といった症状を起こす状態です。以前は「帝王切開瘢痕症候群」と呼ばれていました。くぼみに血液や液体がたまり、着床の妨げになると考えられています。

流産のあとの子宮内の癒着も知られています。流産を経験した女性を対象とした研究のまとめでは、約5人に1人(19.1%)に子宮の内側の癒着が見つかり、子宮内容除去術(そうは手術)の回数が主な危険因子でした。ただし、癒着が長い目で見て妊娠にどう影響するかを調べた研究は、この時点ではありませんでした[9]。

ホルモンの変化:授乳中のプロラクチンと甲状腺

授乳しているあいだは、乳汁をつくるホルモンであるプロラクチンが高く、排卵が抑えられやすくなります。授乳中に月経が戻らない、戻っても不規則という状態は、体の自然なしくみです。授乳の回数が減ると排卵は再開しますが、戻るまでの期間には個人差があります。

米国生殖医学会は、排卵障害が疑われる場合には原因検索の一環として甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定し、プロラクチンは乳汁が出る、月経が不規則、月経がない、といった症状があるときに測ることを勧めています[10]。甲状腺の働きの異常は、産後に始まることもあります。甲状腺の病気と妊娠の関係は甲状腺の病気と妊娠で解説しています。

もともとあった要因:一人目は「たまたま」授かった可能性

妊娠しにくい要因がもともとあり、一人目は条件がそろって授かった、というケースもあります。たとえば、排卵が不規則になりやすい多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や、年月とともに進むことがある子宮内膜症は、一人目のときには妊娠を妨げるほどでなかったとしても、年齢が上がるにつれて影響が表に出てくることがあります。

一人目の妊娠までに時間がかかった人や、一人目を不妊治療で授かった人は、このタイプに当てはまる可能性が高いと考えられます。「一人目のときにどれくらいかかったか」は、二人目の受診時期を考えるうえで大切な情報です。

男性側の変化:年齢と精液所見

精子は毎日つくられていますが、男性も年齢とともに精液の状態が変わります。90の研究、約9万4,000人の男性を分析したまとめでは、年齢とともに精液の量、精子の運動率と前進運動率、正常な形の精子の割合が下がり、精子のDNAの断片化(DNAの切れ目)が増えていました。一方、精子の濃度には年齢による明らかな低下は見られませんでした[11]。

女性の年齢のような目立った「曲がり角」がないため、男性側の変化は見落とされがちです。二人目不妊でも、精液検査は女性の検査と同時に受けるのが基本です。男性側の原因と検査の全体像は男性不妊の解説にまとめています。

性交渉の機会が減る

育児や仕事で夫婦の時間が減り、排卵の時期に性交渉の機会がないまま月日が過ぎることも、二人目不妊の大きな背景です。先に紹介した1more Baby応援団の2019年の調査では、二人目不妊の原因として「性交渉の回数が少ない、もしくはセックスレス」を挙げた人が36.2%いました[4]。

夜間の授乳や寝かしつけで疲れていたり、子どもと同じ部屋で寝ていたりと、事情はさまざまです。排卵の時期を知っておくと機会を合わせやすくなります。排卵日の見当のつけ方は排卵日はいつ?で解説しています。

3. 二人目不妊になりやすい人

二人目不妊に「なりやすい人」を確率で示した研究はありませんが、ここまでの原因から、次のような人は早めに検査を考えたほうがよいといえます。当てはまる項目が多いほど、1年待つより早く動く意味が大きくなります。ただし、当てはまるからといって必ず二人目不妊になるわけではなく、当てはまらなくても起こることがあります。

📋 早めの検査を考えたい人(危険因子)

項目 当てはまる例 理由
年齢 女性が35歳以上、または一人目を35歳以上で出産した 卵子の数が減り、染色体の数の異常が増える
一人目の経過 一人目の妊娠に1年以上かかった/不妊治療で授かった もともと妊娠しにくい要因がある可能性
出産・手術 帝王切開、流産手術、産後の子宮や骨盤の感染 子宮のくぼみ、子宮内や卵管の癒着
月経 月経不順、月経後も続く茶色いおりもの、強い月経痛 排卵障害、帝王切開子宮瘢痕症、子宮内膜症
パートナー 男性の年齢が高い、一人目のあと精液検査をしていない 精液の量・運動率・形の変化
流産 一人目のあとに流産を2回以上くり返した 不育症として別の検査が必要になる

※一般的な危険因子の整理です。個人の確率を示すものではありません。

一人目を出産したときの年齢と、今の年齢の両方を確かめてください。一人目が20代でも、二人目を考え始めたのが30代後半なら、年齢の影響はそのまま受けます。また、流産をくり返している場合は「妊娠しない」のではなく「妊娠が続かない」問題で、第6章で説明する不育症の考え方が必要になります。

4. いつ受診する?|受診の目安と授乳中の考え方

受診の目安は、女性が35歳未満なら避妊をやめて1年、35歳以上なら半年です[1][2]。ただし、これは「それまで待たなければいけない」という意味ではありません。受診の時期は、年齢と、前の章の危険因子の有無で前倒しして考えます。

1年・6か月の目安と、すぐ受診したほうがよい人

1年・6か月という期間は、健康な夫婦であれば多くがその間に妊娠する、という考え方にもとづく目安です。年齢が上がるほど1か月あたりに妊娠する確率が下がり、待っている時間の重みが大きくなるため、35歳を境に期間が短く設定されています[2]。

次のような場合は、期間を待たずに受診を考えてください。月経が不規則またはない、子宮内膜症や骨盤の感染の既往がある、帝王切開のあと月経後に茶色いおりものが続く、一人目のあとに流産をくり返している、40歳前後である、といった場合です。日本産科婦人科学会も、排卵がない、子宮内膜症がある、骨盤腹膜炎の既往、年齢が高い場合は1年待たないよう勧めています[1]。

避妊をやめる35歳未満は1年/35歳以上は半年が目安
▶
夫婦そろって検査排卵・卵管・子宮・精液など
▶
原因に応じた治療一人目の授かり方も考慮
▶
区切りを話し合う年齢・回数・費用・家族の時間

授乳中でも受診・治療はできる?

授乳中でも、受診や検査は始められます。授乳中はプロラクチンの影響で排卵が抑えられやすいため、月経の戻り方を含めて体の状態を確かめること自体に意味があります。一方、治療で薬を使う段階では、授乳を続けるかどうかを考える必要が出てきます。

排卵を促す飲み薬として広く使われるクロミフェン(商品名クロミッド)の添付文書は、授乳中の人について「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」としています[12]。つまり、一律に禁止しているわけではなく、治療の必要性と授乳の利点を比べて決める、という考え方です。

年齢に余裕がある場合は卒乳を待ってから治療を始める選択もありますし、35歳を過ぎていて時間を優先したい場合は、授乳を早めに終えて治療に進む選択もあります。どちらがよいかは年齢と検査の結果によって変わるので、使う薬と授乳について主治医と相談して決めてください。

夫婦そろって受ける検査

二人目不妊でも、検査の内容は一人目の不妊と同じです。米国生殖医学会は、過去の妊娠歴にかかわらず、同じ系統立った評価を行うとしています[10]。主な検査は次のとおりです。

排卵の評価は、月経が21〜35日の周期で規則的なら問診で足りることが多く、必要に応じて血液検査や超音波で確かめます。卵管が通っているかは子宮卵管造影(子宮に造影剤を入れてX線で卵管の通りを見る検査)などで調べ、子宮の中や卵巣の状態は経腟超音波で確認します。卵巣に残っている卵子の目安(卵巣予備能)はAMHなどで評価します。そして、男性の精液検査を同時に行います[10]。

一人目のあと卵管や子宮の状態が変わっている可能性があるため、一人目のときに異常がなかった検査も、二人目のときにあらためて受ける意味があります。どのような検査があるかの全体像は不妊症の原因と検査で解説しています。

5. 二人目不妊の治療|一人目の授かり方で進め方が変わる

二人目不妊の治療は、一人目の不妊治療と同じく、原因と年齢に応じてタイミング法、人工授精、体外受精と段階的に進めるのが基本です。ただし、一人目をどのように授かったかによって、どこから始めるかが変わります。治療全体の流れは不妊治療の流れで解説しています。

自然妊娠・タイミング法・人工授精で授かった場合

一人目を自然に、あるいはタイミング法や人工授精で授かった場合は、まず検査で原因を確かめ、大きな問題がなければ同じ段階から始めるのが一般的です。排卵の時期に合わせて性交渉をもつタイミング法、洗浄した精子を子宮に入れる人工授精へと進み、一定の回数で結果が出なければ体外受精を検討します。

ただし、年齢が高い場合や、卵管の通りが悪い、精液所見が大きく低下している、といった結果が出た場合は、最初から体外受精を選ぶこともあります。一人目のときと同じ順番にこだわるより、今の年齢と検査結果で決めることが大切です。

体外受精で授かった場合

一人目を体外受精で授かり、凍結保存している胚が残っている場合は、まずその胚を移植することから考えるのが一般的です。凍結した胚は、凍結したときの年齢の卵子からできているため、年齢が上がってから新たに採卵するより条件がよいことがあります。凍結胚移植の方法は、用語解説で説明しています。

「二人目の体外受精は成功率が下がるのでは」と心配する人もいますが、子どもがいることで成功率が下がるわけではありません。英国で体外受精を受けた女性のデータから出産の見込みを予測したモデルでは、過去の出産が予測因子の1つに含まれていました[13]。結果を最も大きく左右するのは、採卵するときの女性の年齢です。

📊 体外受精などの年齢別の生産率(2023年・日本)

女性の年齢 総治療周期あたりの生産率
30歳 23.2%
35歳 20.5%
38歳 15.5%
40歳 10.6%
42歳 5.6%
44歳 2.8%

※日本産科婦人科学会の2023年の集計[14]から抜粋。生産率は生きて生まれた赤ちゃんを得た割合で、1回の治療周期あたりの全国平均です。個人の成功率を示すものではありません。

保険適用の回数は、出産すると追加される

2022年4月から不妊治療は保険適用になり、体外受精などの生殖補助医療には年齢と回数の上限があります。一人目を出産すると、次の子のための回数が追加されます。

こども家庭庁の説明によると、保険が使えるのは治療開始日に女性が43歳未満の場合です。回数は、初めて胚移植の計画を立てたときの年齢が40歳未満なら通算6回、40歳以上43歳未満なら通算3回までです。出産した場合(妊娠12週以降の死産を含む)は、次の子の妊娠を目的とした治療開始日の年齢が40歳未満ならさらに6回、40歳以上43歳未満ならさらに3回、治療を受けられます[15]。

回数が追加されても、43歳未満という年齢の条件は変わりません。また、回数の上限は年齢の区切りによって決まるので、二人目の治療を始める時期によって使える回数が変わります。数え方の詳細や、回数を超えた場合の扱いは不妊治療の保険適用の条件と回数の数え方で解説しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「一人目のとき」を基準にしない】

二人目を考えるとき、多くの方が一人目の経験を物差しにします。一人目は半年で授かったから今回も、一人目は人工授精でうまくいったから今回も、という考え方です。けれども、二人目のときの体は、年齢も、出産の経過も、授乳の状況も違います。

一人目の経験は大切な情報ですが、判断の基準にするのは「今の年齢」と「今の検査結果」だと考えています。特に35歳を過ぎてからは、待つ時間そのものが結果に影響します。前回のやり方にこだわらず、今の条件で選び直すことが、遠回りを減らすことにつながります。

6. 流産をくり返しているとき・上の子に病気があるとき|遺伝の視点から

「妊娠はするのに流産してしまう」をくり返している場合は、妊娠しにくさとは別に、流産の原因を調べる必要があります。ここは臨床遺伝の視点が特に関わる部分です。

流産の多くは受精卵の染色体の偶然の異常

流産組織では約60%に胎児(胎芽)の染色体の数の異常が認められるとされています[16]。多くは卵子や精子ができるときに偶然起こるもので、両親の体質や、妊娠中の行動が原因ではありません。1回の流産は決して珍しいことではなく、流産を経験したから次も流産するとは限りません。

ノルウェーで約42万件の妊娠を調べた研究では、流産は妊娠全体の12.8%でした。女性の年齢別では25〜29歳で約10%と最も低く、45歳以上では53%でした。また、前回流産した人は次の流産のリスクが約1.5倍、2回続けて流産した人は約2倍、3回続けた人は約4倍になっていました[17]。年齢が上がると流産が増えるのは、第2章で説明した卵子の染色体の数の異常が増えるためです。流産と染色体の関係は流産の原因になる染色体異常でも解説しています。

2回以上流産したら夫婦の染色体検査を検討

日本では、流産や死産を2回以上くり返した状態を「不育症」と呼び、原因を調べる検査の1つとして夫婦の染色体検査が勧められています。不育症管理に関する提言2025では、夫婦の染色体検査を推奨検査に位置づけています。ただし、検査前に個々のリスクを評価し、十分な遺伝カウンセリングを行ったうえで、同意が得られた場合に実施すべきとしています[16]。

同じ提言によると、日本の不育症の夫婦の3.7%に染色体の構造の異常が見つかり、その内訳は均衡型相互転座が3.0%、ロバートソン転座が0.7%でした[16]。均衡型転座を持つ人は本人は健康で、自分では気づきません。けれども、卵子や精子ができるときに染色体の一部が多すぎたり足りなかったりする組み合わせができやすく、それが流産の原因になることがあります。

💡 用語解説:均衡型転座(きんこうがたてんざ)

2本の染色体の一部が入れ替わっているものの、遺伝情報の量は過不足なくそろっている状態です。本人の健康には通常影響がありません。ただし、子どもに受け渡すときに、入れ替わった部分が片方だけ伝わると、遺伝情報が多すぎたり足りなかったりする受精卵になり、流産や、生まれた子の病気の原因になることがあります。

夫婦の染色体検査は、血液の白血球を使って染色体の本数と形を調べるGバンド法で行います。当院で行っている夫婦の染色体検査(Gバンド法)のページで、検査でわかることを解説しています。転座が見つかった場合でも、多くの夫婦が出産に至っています。結果の意味は、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで、次の妊娠でのリスクや選択肢とあわせて説明を受けてください。

上の子に遺伝性の病気がある場合

上の子に遺伝性の病気がわかっている場合、二人目を考える前に、次の子で同じ病気が起こる可能性(再発率)を確かめることが大切です。再発率は病気の遺伝のしかたによって大きく変わり、「常染色体潜性(劣性)遺伝なら4分の1」といった一般論だけでは決まらないこともあります。上の子の診断がどの検査にもとづくのか、両親が保因者なのか、上の子の変化が新生突然変異(親から受け継いでいない新しい変化)なのかによって、家族ごとに見通しが変わります。

上の子の検査結果を見直すことで、家族の再発率の見通しが変わった実例は、上の子が遺伝性の病気だった場合の二人目の再発率で紹介しています。これは妊娠しにくさの問題とは別ですが、二人目を考えるうえで事前に整理しておきたい点です。

7. 二人目不妊治療のやめどき|区切りをどう決めるか

二人目不妊の治療をいつやめるかについて、医学的に決まった基準はありません。ガイドラインで「何歳まで」「何回まで」と定められているわけではなく、夫婦ごとに判断することになります。そのため、治療を始める前、あるいは始めてまもない時期に、夫婦で区切りの考え方を話し合っておくことが役に立ちます。

やめどきを考える目安

判断の材料になるのは、主に次の5つです。1つ目は年齢で、前の表のとおり、体外受精の1回あたりの生産率は40歳で10.6%、42歳で5.6%、44歳で2.8%と下がっていきます[14]。2つ目は保険の条件で、43歳未満という年齢と回数の上限は、費用の面での1つの区切りになります[15]。ただし、これは制度上の区切りで、医学的に妊娠できなくなる年齢を示すものではありません。

3つ目は費用、4つ目は上の子との時間です。通院や治療の予定は、上の子の生活にも影響します。5つ目は夫婦それぞれの気持ちで、二人とも同じ熱量で続けられているか、どちらかが無理をしていないかを確かめることも大切です。「あと何回」「何歳まで」「費用はいくらまで」と具体的な数字で話し合っておくと、結果が出ないときにも判断しやすくなります。

「一人いるならいいじゃない」と言われるつらさ

二人目不妊は、まわりから悩みとして受け止めてもらいにくいという特徴があります。「一人いるならいいじゃない」「贅沢な悩み」と言われたり、一人目の不妊に悩む人の前では話しにくかったりと、打ち明ける場が限られがちです。先の調査でも、通院に困難を感じた人が約69%おり、子どもを連れて行くことへの不安(35.8%)、予約の取りにくさ(32.8%)、周囲の目(28.4%)が理由に挙がっていました[4]。

二人目を望む気持ちは、一人目を望んだときと同じように自然なものです。子連れで通院できるか、上の子の預け先をどうするかは、医療機関を選ぶときにあらかじめ確認しておくと負担を減らせます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【区切りは「始める前」に決めておく】

治療のやめどきは、結果が出ないまま続けているさなかに考えると、どうしても「あと1回だけ」という判断になりがちです。これまでにかけた時間や費用が大きいほど、やめる決断は重くなります。

だからこそ、区切りは治療を始める前に、夫婦で数字を使って決めておくのがよいと考えています。年齢、回数、費用、上の子との時間。どれを優先するかは家族によって違って当然です。決めた区切りを途中で見直すことも自由ですが、最初に基準を持っておくことで、そのときどきの判断に振り回されにくくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 二人目不妊でも卵管造影は必要ですか?

多くの場合、必要です。一人目の出産や、その後の感染・手術で卵管や子宮の状態が変わっていることがあるためです。米国生殖医学会は、過去の妊娠歴にかかわらず、卵管の通りを子宮卵管造影などで調べることを標準的な評価に含めています。

Q2. 授乳中に不妊治療はできますか?

受診や検査は授乳中でも始められます。薬を使う治療では、授乳を続けるかどうかを検討する必要があります。排卵を促すクロミフェンの添付文書は、治療の必要性と授乳の利点を比べて、授乳を続けるかやめるかを検討するよう求めています。年齢と検査結果をふまえて主治医と決めてください。

Q3. 二人目の体外受精は、一人目より成功率が下がりますか?

子どもがいることで成功率が下がるわけではなく、過去の出産は体外受精で出産に至る見込みを予測する因子の1つとされています。結果を最も大きく左右するのは採卵時の女性の年齢で、日本の2023年の集計では、1回の治療周期あたりの生産率は35歳で20.5%、40歳で10.6%でした。

Q4. 二人目の不妊治療にも保険は使えますか?

使えます。治療開始日に女性が43歳未満であることが条件です。一人目を出産した場合、次の子の治療開始日の年齢が40歳未満ならさらに6回、40歳以上43歳未満ならさらに3回、生殖補助医療を受けられます。年齢の条件は変わりません。

Q5. 検査で異常がないのに妊娠しない(原因不明)ときはどうすればよいですか?

検査で明らかな原因が見つからない場合でも、年齢に応じて人工授精や体外受精へ進むことで妊娠に至ることがあります。体外受精では、受精や胚の育ち方といった、それまでの検査ではわからなかった情報が得られることもあります。

Q6. 上の子を連れて受診してもよいですか?

医療機関によって対応が異なります。子連れでの受診を受け入れているか、処置のときに付き添いの大人が必要か、キッズスペースがあるかなどを、受診前に確認してください。

Q7. ミネルバクリニックで二人目不妊の検査や治療はできますか?

いいえ、当院では不妊症の検査や治療(タイミング法・人工授精・体外受精など)は行っておらず、この件についてのご予約・お問い合わせもお受けしていません。生殖医療を専門とする医療機関へご相談ください。当院では、流産をくり返している場合の夫婦の染色体検査など、遺伝学的な検査と遺伝カウンセリングを行っています。

まとめ

二人目不妊は、一人目を出産したあとに次の子を授かれない状態で、医学的には続発性不妊と呼ばれます。日本では1年、女性が35歳以上なら半年を目安に検査を考えます[1][2]。原因は、一人目のときからの年齢の上昇、帝王切開や流産手術による子宮や卵管の変化、授乳中のホルモン、男性の加齢、性交渉の機会の減少などが重なったものです。

治療は一人目と同じく段階的に進めますが、どこから始めるかは今の年齢と検査結果で決めます。保険の回数は出産によって追加されますが、43歳未満という条件は変わりません[15]。流産を2回以上くり返している場合は、夫婦の染色体検査を含む不育症の検査が勧められます[16]。やめどきに決まった基準はないため、始める前に夫婦で区切りを話し合っておくことが、後の判断を助けます。

🏥 二人目不妊の検査・治療をお考えの方へ

当院では、不妊症の検査・治療(タイミング法・人工授精・体外受精など)を行っておりません。
この件についてのご予約・お問い合わせはお受けしておりません。
二人目不妊の検査・治療は、生殖医療を専門とする医療機関へご相談ください。

この記事は二人目不妊を正しく知っていただくための解説であり、当院での不妊治療をご案内するものではありません。なお、流産をくり返している場合の夫婦の染色体検査など、具体的な遺伝学的評価が必要と判断された場合に限り、遺伝カウンセリングが関係することがあります。

参考文献

  • [1] 不妊症. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
  • [2] Definition of infertility: a committee opinion. Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertil Steril. 2023. [ASRM]
  • [3] National, regional, and global trends in infertility prevalence since 1990: a systematic analysis of 277 health surveys. PLoS Med. 2012;9(12):e1001356. [PLOS Medicine]
  • [4] 「ニ人目不妊」~不妊で悩んだことがある人1,000名に聞いてわかった現実~. 公益財団法人1more Baby応援団. [1more Baby応援団]
  • [5] The nature of aneuploidy with increasing age of the female partner: a review of 15,169 consecutive trophectoderm biopsies evaluated with comprehensive chromosomal screening. Fertil Steril. 2014;101(3):656-663.e1. [Fertility and Sterility]
  • [6] Impact of Caesarean section on subsequent fertility: a systematic review and meta-analysis. Hum Reprod. 2013;28(7):1943-1952. [Human Reproduction]
  • [7] Definition and Criteria for Diagnosing Cesarean Scar Disorder. JAMA Netw Open. 2023;6(3):e235321. [PubMed 36988956]
  • [8] The impact of caesarean scar niche on fertility – a systematic review. J Obstet Gynaecol. 2024;44(1). [DOI]
  • [9] Systematic review and meta-analysis of intrauterine adhesions after miscarriage: prevalence, risk factors and long-term reproductive outcome. Hum Reprod Update. 2014;20(2):262-278. [Human Reproduction Update]
  • [10] Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion. Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertil Steril. 2021;116:1255-1265. [ASRM]
  • [11] Consistent age-dependent declines in human semen quality: a systematic review and meta-analysis. Ageing Res Rev. 2015;19:22-33. [PubMed 25462195]
  • [12] クロミッド錠50mg 添付文書(9.6 授乳婦). [KEGG MEDICUS]
  • [13] Predicting the chance of live birth for women undergoing IVF: a novel pretreatment counselling tool. Hum Reprod. 2016;31(1):84-92. [Human Reproduction]
  • [14] 2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. [日本産科婦人科学会]
  • [15] 不妊症・不育症へ向き合いやすく 保険診療の基礎知識. こども家庭庁「みんなで知ろう、不妊症不育症のこと」. [こども家庭庁]
  • [16] 不育症管理に関する提言2025. 「不育症管理に関する提言」改訂委員会. [こども家庭庁]
  • [17] Role of maternal age and pregnancy history in risk of miscarriage: prospective register based study. BMJ. 2019. [PubMed 30894356]

関連記事

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

関連記事