目次
「葉酸サプリ」は、妊活しているとよく聞くサプリメントですが、どんな効用があるのでしょうか。いつから、どのくらいまで飲めばいいのでしょうか。他に妊活の時に、体内に取り入れるもので気をつけなくてはいけないことはあるのでしょうか。そんな疑問をまとめてみました。
葉酸サプリはいつからいつまで飲む?
葉酸とはビタミンB群の一種であり、赤ちゃんの神経管を形成するのに必須の栄養素です。また母親が摂取した栄養素は妊娠中は胎盤を通じて、また出産後は母乳を通じて赤ちゃんに行き渡ることから、葉酸も妊娠前から授乳期まで飲むことが推奨されています。
葉酸は身体に蓄えておくことができないため随時必要量を摂取しないといけませんが、食事だけで全量を摂取することは難しいため、サプリメントの形で継続的に摂取することが有効です。
妊娠前~妊娠初期
赤ちゃんの神経管は、脳や脊髄の基礎になる重要な部分です。ここが形成されるのは赤ちゃんの細胞分裂が盛んになる妊娠初期、受胎後28日前後といわれています。この時期に葉酸が不足すると神経管閉鎖障害の発症リスクが高まります。できれば妊娠初期から赤ちゃんに十分な栄養素が行き渡ることが望ましいため、もしも妊娠を希望する場合は妊娠前から継続的に葉酸を摂るように意識していきましょう。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると18歳以上の日本人の葉酸推奨摂取量は1日240µgとされていますが、妊娠前~妊娠初期にかけては食品およびサプリメントを追加して合計640µg/日の摂取が望ましいとされています。
妊娠中期~妊娠後期
妊娠中期~後期も、引き続き母親の胎内で赤ちゃんは発育していきます。葉酸はビタミンB12とともに赤血球の生産に必要な栄養素であること、また胎児時の細胞分裂にも必要な要素であることを考えると、引き続き不足しないように摂取することが望まれます。
妊娠中期~後期にかけての葉酸の推奨摂取量は、通常は240µg/日ですが、食品から追加して合計480µg/日の摂取が望ましいとされています。
授乳期
葉酸はもともと水溶性で体内に蓄積できないため、出産後も授乳を通じて赤ちゃんに葉酸を送り届けることが必要になってきます。授乳中も葉酸を積極的に摂るようにしていきましょう。
授乳期の葉酸の推奨摂取量は、通常は240µg/日ですが、食品から追加して合計340µg/日の摂取が望ましいとされています。
葉酸を飲んだのに障害が出ることもある?
葉酸は胎児の発育に不可欠で、妊娠前~授乳期まで追加で必要な摂取量が多くなります。では多ければいいのかと際限なく摂取すればよいわけでもありません。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、通常の食品で葉酸を摂取している場合には過剰摂取による障害は報告されていません。しかしビタミンB12が欠乏している人が葉酸サプリメントを過剰摂取することによって、神経に障害が出た例の報告があるとのことです。このため厚生労働省では、12~29歳の葉酸サプリメント等の上限摂取量を900µg/日、30~64歳の葉酸サプリメント等の上限摂取量を1,000µg/日としています。
また葉酸を過剰摂取することと、子どもが自閉症になるリスクとに因果関係があるような研究もされていますが、必ずしも全てに当てはまるわけではありません。葉酸は胎児に必要であることに代わりはありませんから、必要量を摂取していきましょう。
妊娠初期に葉酸を飲んでいなかったら
妊娠に気がついたけど、赤ちゃんに必要な葉酸サプリを意識して摂っていなかった、どうしよう……、と思われるかもしれませんが、赤ちゃんに異常が出るのではと心配しすぎる必要はありません。葉酸は普通の食事にも含まれていますから、バランスの取れた食事を心がけましょう。葉酸が足りなければサプリで追加して摂取しましょう。
妊娠期に必要な栄養素
葉酸の他にも、妊娠中は赤ちゃんの成長のために通常時と比べて様々な栄養素が多く必要とされます。どの栄養素がどんな働きをしているのでしょうか。また1日に必要な摂取量はどのくらいなのでしょうか。
鉄分
鉄は、赤血球の中に含まれるヘモグロビンの一部になって、酸素を全身に運ぶ働きをしています。また酵素を触媒する役割もしており、DNA合成に欠かせない栄養素です。
鉄分の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の月経がある女性で10.5mg/日です。
妊娠初期の妊婦はこれに2.5mg/日、妊娠中期~後期の妊婦は9.5mg/日、授乳期は2.5mg/日を追加して摂取しましょう。
鉄分が多く含まれる食品は、レバー(豚・鶏・牛)・カツオ・ひじき などです。
カルシウム
カルシウムはミネラルの一種で、骨や歯を形成するだけでなく、体内機能の調節にも欠かせない栄養素です。
カルシウムの1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の女性で650mg/日です。
妊婦・授乳中の人の追加推奨量は特にありませんが、上限の摂取量2500mg/日となりますので留意しましょう。
カルシウムが多く含まれる食品は、牛乳・小魚・大豆製品 などです。
ビタミンB群
ビタミンB群とは、水溶性ビタミンのうち、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類の総称です。
酵素だけでは活性化できない時に必要な補酵素として働き、エネルギー代謝に必要な栄養素です。
ビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーに変える際に必要な栄養素です。
ビタミンB1の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の月経がある女性で1.1mg/日です。
妊婦・授乳期はこれに0.2mg/日を追加して摂取しましょう。豚肉・玄米・豆腐などに多く含まれます。
ビタミンB2は、小腸から吸収され、脂質の代謝や細胞の再生にも必要な栄養素です。
ビタミンB2の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の月経がある女性で1.2mg/日です。
妊婦はこれに0.3mg/日、授乳期は0.6mg/日を追加して摂取しましょう。豚レバー・うなぎなどに多く含まれます。
ビタミンB6は、たんぱく質からエネルギーを作り出す際に働く栄養素です。
ビタミンB6の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の月経がある女性で1.1mg/日です。
妊婦はこれに0.2mg/日、授乳期は0.3mg/日を追加して摂取しましょう。上限の摂取量は45mg/日となりますので留意しましょう。
赤身の魚・ヒレ肉・鶏ささ身などに多く含まれます。
ビタミンB12は、葉酸と関係して赤血球の中のヘモグロビンを作る際に働く栄養素です。
ビタミンB12の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の月経がある女性で2.4mg/日です。
妊婦はこれに0.4mg/日、授乳期は0.8mg/日を追加して摂取しましょう。
牡蠣・あさり・鯖などに多く含まれます。
ナイアシンは、補酵素としてエネルギー代謝・皮膚や粘膜の炎症を防ぐ際などに働く栄養素です。加熱しても失われにくい特性があります。
ナイアシンの1日の推奨摂取量は、18~29歳の女性で11mgNE/日、30~49歳の女性で12mgNE/日です。授乳期はこれに3mgNE/日を追加して摂取しましょう。
たらこ・レバー・エリンギなどに多く含まれます。
パントテン酸は、糖質・脂質・たんぱく質の代謝と、エネルギーを作り出す際にも必要な栄養素です。
パントテン酸の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の女性で5mg/日です。
妊婦はこれに5mg/日、授乳期は6mg/日を追加して摂取しましょう。
動物性・植物性問わず比較的広範囲の食品に含まれていますが、多く含まれるのは鶏レバー・鶏ささみなどです。
ビオチンは、糖の代謝、皮膚や髪、爪などの発育にも関わる栄養素です。
ビオチンの1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の女性で50㎍/日です。
妊婦・授乳期はこれに50㎍/日を追加して摂取しましょう。きのこ類に多く含まれます。
ビタミンC
ビタミンCは、骨・皮膚・血管などに存在するコラーゲンを作るために欠かせない栄養素です。不足するとコラーゲンが作られないために血管がもろくなり壊血病が起きてきます。また鉄の吸収を助ける、日焼けを防ぐなどの働きがあります。
ビタミンCの1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の女性で100mg/日です。妊婦はこれに10mg/日、授乳期は45mg/日を追加して摂取しましょう。
ビタミンCが含まれる食品は野菜・果物などですが、その中でも多く含まれているのはピーマン・ブロッコリー・キウイ などです。
亜鉛
亜鉛は酵素を活性化する栄養素です。細胞分裂や新陳代謝が活発な胎児にも欠かせないもので、免疫力を上げる働きもしています。
亜鉛の1日の推奨摂取量は、18~29歳・30~49歳の女性で8mg/日です。
妊婦はこれに2mg/日、授乳期は4mg/日を追加して摂取しましょう。なお上限の摂取量は35mg/日となりますので留意しましょう。
亜鉛が含まれる食品は肉類・魚介類・海藻・野菜など比較的広範囲にわたっています。
その中でも多く含まれているのは、牡蠣・うなぎ・豚レバー などです。
妊活中に気をつけたい食品
普段は嗜好品として飲食しているものでも、妊活中には控えたほうがいい食品があります。主なものとして、
- ・トランス脂肪酸
- ・カフェイン
- ・アルコール
があげられます。どんな理由で控えた方が良いのでしょうか。
トランス脂肪酸
私たちが日常で摂取している油脂は、脂肪酸とグリセリンが結合したものです。このうちの脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種です。そしてトランス脂肪酸には食品中に天然に含まれるものと、油脂を加工する際にできるものの2種類があります。
トランス脂肪酸が天然に含まれる食品としては、牛肉・羊肉・乳製品などがあります。
油脂を加工する際に工業的に生み出された食品としては、マーガリン・ファットスプレッド・ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物があります。
このうち工業的に生み出されたトランス脂肪酸を摂りすぎると悪玉コレステロール値が上がります。心臓病や糖尿病になりやすい統計もあります。妊娠中は、工業的に生み出されたトランス脂肪酸は摂らないようにしましょう。
WHO(世界保健機関)では、トランス脂肪酸の摂取量を「総エネルギー摂取量の1%未満」にすることを推奨しています。日本人のトランス脂肪酸摂取量は総エネルギーの0.3%ですからWHOの基準を大きく下回っています。バランスの取れた食生活をしていれば、トランス脂肪酸を摂りすぎる心配はありません。
カフェイン
カフェインには中枢神経を刺激し、血管を拡張する作用があり、コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれています。
赤ちゃんの肝臓は、母親の胎盤を通じて届いたカフェインを分解する機能が未熟なので負担をかけてしまいます。また妊婦さんはカフェインを分解するスピードが、通常時より下がります。
妊娠中だったらコーヒーなら薄めのものを1日1~2杯程度、紅茶や緑茶だったら2~3杯程度にしておきましょう。ノンカフェイン(カフェインを全く含まない)などの飲み物もありますので、上手く利用しましょう。
アルコール
アルコールは酒類全般、もしくは酒類を使用した食品(飲料・菓子・総菜など)に含まれ、摂取すると消化器・脳・血管などほぼ全ての器官に影響が出ます。
妊娠期間中に妊婦がアルコールを摂ると、胎盤を通じて赤ちゃんにもアルコールが行きます。赤ちゃんはアルコールを上手く分解できないため、体内に溜まっていってしまいます。特に胎児の脳に大脳皮質が作られる妊娠初期から中期にかけてアルコールを妊婦が大量に摂取すると、「胎児性アルコール症候群」のような深刻なケースにつながることもあります。
妊娠中に「この量ならアルコールを摂っていい」という安全量の統計はありません。妊娠したら、アルコールは控えましょう。
まとめ
妊娠していない時は意識せずに飲んだり食べたりしていたものも、胎盤を通じて全部赤ちゃんに運ばれるとなったら、どんなものをどのくらい摂取すればいいかを考える必要があります。「これは好きじゃないけど食べた方がいいかな」とか、「毎日飲んでいたものを制限しないといけない」など、好みを変えるのは大変なことと思いますが、妊娠をきっかけにこれまでの食生活を見直すいいチャンスだと思って、楽しんで過ごせるといいですね。
東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。
妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。