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葉酸サプリは飲まないほうがいい?正しい摂取方法を徹底解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医・総合内科専門医。ミネルバクリニック院長として、出生前診断と遺伝医療に携わっています。

葉酸サプリは「飲まないほうがいい」わけではありません。妊娠を考えている時期から妊娠初期にかけては、食事に加えてサプリから1日400μgの葉酸をとることが、厚生労働省をはじめ国内外で勧められています。「飲まないほうがいい」と言われる理由の多くは、摂りすぎへの心配や、合成葉酸・添加物への誤解、自閉症や双子にまつわる噂です。本当に気をつけるべきなのは、決められた量を大きく超えて飲むことと、持病や服薬の関係で医師への相談が必要な一部の方の場合です。この記事では、よく聞く噂をひとつずつ医学的根拠で確かめ、妊娠初期に飲んでいなかった方、飲み忘れた方がどう考えればよいかまで、臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
🤰 妊活・妊娠初期の葉酸
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 葉酸サプリは飲まないほうがいいのですか?

A. いいえ。日本では、妊娠を計画している時期から妊娠初期に、食事に加えて通常の食品以外から1日400μgの葉酸をとることが望まれています。胎児の神経管閉鎖障害(二分脊椎や無脳症)のリスクを下げることが、臨床試験で確かめられているためです。注意が必要なのは、上限を超える量を続けて飲む場合と、抗てんかん薬を飲んでいる方など、一部の方だけです。

  • ➤なぜ必要か → 神経管は妊娠に気づく前後の時期にできあがるため、妊娠前からの準備が大切
  • ➤噂の検証 → 摂りすぎ・合成葉酸・添加物・自閉症・喘息・双子・ダウン症を根拠で確認
  • ➤注意が必要な人 → 神経管閉鎖障害の妊娠歴がある方、抗てんかん薬やメトトレキサートを使っている方など
  • ➤飲まなかった方へ → 飲まなかったことがそのまま障害を意味するわけではなく、気づいた日から始めればよい

1. 結論:葉酸サプリは「飲まないほうがいい」わけではない

妊娠を考えている方と妊娠初期の方にとって、葉酸サプリは「飲まないほうがいい」ものではなく、「決められた量を飲むことが勧められている」ものです。厚生労働省は2000年に、妊娠を計画している女性に対し、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、食事に加えて栄養補助食品から1日0.4mg(400μg)の葉酸をとるよう情報提供を始めました[1]。現在の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、妊娠を計画している女性と妊娠初期の女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げるために、通常の食品以外の食品から1日400μgをとることが望ましいとされています[2]。

この考え方は日本だけのものではありません。米国予防医療専門委員会(USPSTF)は2023年、妊娠の可能性がある人に1日0.4〜0.8mgの葉酸サプリを勧める推奨を、最も強い「グレードA」で再確認しています[8]。日本先天異常学会も、妊娠4週前から妊娠12週までの1日400μgの摂取を呼びかけています[3]。

国がサプリからの400μgを勧める理由

理由は、妊娠前後に葉酸を十分にとることで、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが大きく下がることが、ランダム化比較試験で確かめられているからです。神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもとになる「神経管」がうまく閉じないことで起こる生まれつきの病気で、二分脊椎や無脳症が代表です。

1991年に発表された英国のMRC試験では、神経管閉鎖障害の子を妊娠したことがある女性で、葉酸をとった群の再発が約7割少なくなりました[5]。翌1992年にはハンガリーの試験で、はじめての発症の予防効果も示されています[6]。これらをまとめたコクランレビュー(2015年)では、妊娠前後の葉酸補充で神経管閉鎖障害は相対リスク0.31(5試験・6,708出生)と、確実性の高いエビデンスで減ることが示されました[7]。研究や対象によって効果の大きさには幅がありますが、国内の総説でも、妊娠前からの十分な摂取で40〜80%程度のリスク低減が見込めるとされています[4]。

妊娠を考えたら妊娠の1か月以上前から
▶
妊娠に気づく前後妊娠4〜5週ごろ
▶
神経管が閉じる受精後3〜4週(妊娠5〜6週ごろ)
▶
妊娠初期も継続1日400μgが目安

神経管は受精後およそ3〜4週、つまり妊娠5〜6週ごろに閉じます。多くの方が妊娠に気づくのは、この時期と重なるか、その後です。「妊娠がわかってから飲み始める」のでは間に合わないことがあるため、妊娠を考え始めた時点からの摂取が勧められているのです。妊娠中になぜ葉酸が必要なのか、いつからいつまで飲めばよいのかは、なぜ妊娠前から葉酸が必要なのかで詳しく解説しています。

食事だけでは足りにくい理由

食べ物に含まれる葉酸は体に利用される割合が約50%と低く、サプリの葉酸(食事と一緒にとった場合で約85%)より効率が落ちるためです。米国国立衛生研究所(NIH)の資料では、この差を踏まえて「食事性葉酸当量」という換算が使われています[9]。

食品中の葉酸は、さまざまな還元型葉酸が主にポリグルタミン酸の形で存在し、吸収前に処理が必要です。これに対して、一般的なサプリに使われる合成葉酸(folic acid、プテロイルモノグルタミン酸)は安定性が高く、食品葉酸より利用効率が高いとされています[1]。つわりで食事が思うようにとれない時期でも、サプリなら必要量を確保しやすいという利点もあります。天然の葉酸と合成葉酸の違いは天然葉酸と合成葉酸の違いでまとめています。

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2. 「飲まないほうがいい」と言われる理由を一つずつ検証

「葉酸サプリは飲まないほうがいい」と言われる理由には、根拠のある注意点と、根拠のない誤解が混ざっています。まず全体像を表で整理し、そのあと一つずつ詳しく見ていきます。

🔍 よく聞く噂と、医学的な答え

よく聞く噂 医学的な答え
摂りすぎると危ない 上限はあるが、1日400μgを守れば超えない
合成葉酸は体に悪い 予防効果が確かめられているのは合成葉酸
添加物が心配 葉酸サプリの添加物に特有の害を示す根拠は見当たらない
自閉症や喘息が増える 増えるという根拠はない(自閉症はむしろ低い傾向の報告)
双子が増える はっきりした増加は確認されていない
MTHFRのタイプによっては意味がない MTHFRのタイプにかかわらず葉酸は利用できる
葉酸でダウン症も防げる ダウン症は防げない(起こる仕組みが違う)

※各項目の根拠は本文と参考文献に示しています。

摂りすぎると危ない?

葉酸にはとりすぎの上限がありますが、1日400μgという目安を守っていれば、上限を超えることはありません。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、サプリや強化食品からとる葉酸の耐容上限量を、女性の18〜29歳で1日900μg、30〜64歳で1日1,000μgとしています[2]。上限は年齢の区分で決められていて、妊娠中だけの特別な値ではありません。

上限が設けられている主な理由は、ビタミンB12欠乏症を見えにくくするおそれがあるためです。葉酸を大量にとると、ビタミンB12不足で起こる貧血(巨赤芽球性貧血)が改善してしまい、その陰で神経の障害が進んでも気づきにくくなります[9]。複数のサプリを重ねて飲んだり、飲み忘れた分をまとめて飲んだりすると、上限に近づくことがあります。葉酸を多く含む商品を併用するときは、成分表で合計量を確認しましょう。摂りすぎで起こりうることや具体的な注意点は、葉酸の摂りすぎについて詳しく解説しています。

合成葉酸は体に悪い?

神経管閉鎖障害を減らす効果が臨床試験で確かめられているのは、ほかならぬ合成葉酸(folic acid)です。米国疾病予防管理センター(CDC)も、神経管閉鎖障害の予防に役立つことが示されている葉酸は合成葉酸だけだと説明しています[10]。「天然由来だから安心」「合成だから危険」という区別は、予防効果の面では当てはまりません。

合成葉酸について議論されているのは、体内で使われきらずに血液中に残る「未代謝葉酸」です。1回に300〜400μg程度をとると、大人の血液や臍帯血から検出されることが知られています[9]。ただし、検出されることが健康への害を意味するかどうかは、現時点でわかっていません。「検出される」と「害がある」は別のことで、害を示す確かな根拠はありません。

添加物が心配?

葉酸サプリに使われる添加物について、赤ちゃんや母体に特有の害があることを示す医学的根拠は見当たりません。サプリの錠剤やカプセルには、形を保ったり品質を安定させたりするための成分が含まれます。気になる場合は、成分表示を確認して、必要以上に多くの成分が入っていない製品を選ぶとよいでしょう。

一方で、健康食品全般については、まれに体質に合わず体調を崩す例が報告されています。国民生活センターは、健康食品をとっていてだるさ、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気、かゆみなどが続く場合は、摂取をやめて医療機関を受診するよう呼びかけています[18]。これは葉酸に限った話ではありませんが、体調の変化を感じたら無理に続けないことが大切です。

自閉症や喘息が増える?

葉酸サプリで自閉症や喘息が増えるという根拠はありません。自閉症については、むしろ妊娠初期に葉酸をとっていた方のお子さんで低い傾向が報告されています。ノルウェーの約8万5,000人の子どもを対象にした研究では、妊娠前後に葉酸サプリをとっていた場合、自閉性障害のオッズ比は0.61でした[12]。イスラエルの大規模研究でも、妊娠前や妊娠中に葉酸やマルチビタミンをとっていた母親の子どもで、自閉スペクトラム症のリスクが低いという結果が出ています[13]。USPSTFの評価でも、葉酸補充と自閉症の間に統計的に有意な増加は見られていません[8]。

ただし、これらはいずれも観察研究で、「葉酸が自閉症を予防する」とまでは言えません。現時点では、推奨量の葉酸摂取が自閉スペクトラム症を増やすという因果関係は確立していない、と理解するのが正確です。喘息については、複数の研究をまとめたメタ解析で、妊娠初期の葉酸補充と子どもの喘息の間に関連は認められず(相対リスク1.01)、関連を支持しない結論となっています[14]。

双子が増える?

葉酸サプリで双子が増えるという、はっきりした根拠は確認されていません。この噂は、葉酸の摂取と双子の出生の関係を調べた初期の研究に由来します。しかし、2007年の系統的レビューでは、妊娠前の葉酸補充と二卵性双胎の関係はオッズ比1.26(95%信頼区間0.91〜1.73)で統計的に意味のある差ではなく、評価は「可能性がある」という弱いものにとどまりました[15]。

このレビューは、体外受精など不妊治療の影響が研究に十分反映されていないことを大きな問題として指摘しています。不妊治療を受ける方は葉酸サプリを飲んでいることが多く、不妊治療自体が双子を増やすため、葉酸の影響と見分けにくいのです[15]。USPSTFも、葉酸4mgと0.4mgを比べた質の高い試験で双子の頻度に差はなかったとしています[8]。

MTHFR遺伝子のタイプによっては意味がない?

MTHFR遺伝子にバリアントがある方でも、葉酸(合成葉酸)は体の中で利用できます。MTHFRは、葉酸を体内で働く形に変える酵素の遺伝子で、「C677T」というタイプを持つ方はこの変換の力がやや弱いことが知られています。CDCによると、このタイプの方でも同じ量の葉酸をとった場合の血中葉酸は約16%低い程度で、遺伝子のタイプより、とる量のほうが血中濃度を大きく左右します[10]。

「MTHFRのタイプによっては活性型葉酸(メチル葉酸)でないと効かない」という主張について、CDCは誤りだとしています[10]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)も、MTHFRの遺伝子多型を調べる検査は臨床的な有用性が乏しく、神経管閉鎖障害の予防方針を決めるために行うべきではないとしています[11]。一般的なMTHFR多型があることは、合成葉酸を避けたり、別の種類の葉酸へ変更したりする理由にはなりません。CDCは、MTHFR遺伝子型にかかわらず1日400μgの合成葉酸摂取を勧めています。遺伝子そのものについてはMTHFR遺伝子の解説をご覧ください。

葉酸でダウン症は防げる?

葉酸サプリでダウン症を防ぐことはできません。神経管閉鎖障害は、胎児の体ができていく過程で神経管がうまく閉じないことで起こります。一方、ダウン症候群は、卵子や精子ができるときの細胞分裂で21番染色体がうまく分かれず、染色体が1本多くなることで起こります。起こる仕組みがまったく違うのです。

米国の大規模な研究(ダウン症候群の子どもを持つ母親702人)では、妊娠前に葉酸を飲まなかったことと、21番染色体が分かれなくなることの間に、全体として関連は見られませんでした[16]。一部の条件の母親だけで関連がみられたという結果もありますが、予防できるという根拠にはなりません。ダウン症候群など染色体の数の変化を妊娠中に調べる方法としては、NIPT(新型出生前診断)などの出生前検査があります。

3. 本当に注意が必要な人(飲む前に医師に相談)

葉酸サプリを飲む前に医師に相談したほうがよいのは、神経管閉鎖障害の妊娠歴や家族歴がある方、抗てんかん薬やメトトレキサートなどを使っている方、ビタミンB12が不足している方です。これらの方は「飲まないほうがいい」のではなく、量や飲み方を医師と決める必要がある、という意味です。

⚠️ 医師に相談してから飲みたい方

① 神経管閉鎖障害の子を妊娠したことがある方・家族歴がある方:一般の方より再発のリスクが高いため、医師の管理のもとで、より多い量の葉酸が必要になることがあります[3][9]。上限量を超えるため、自己判断で増やさないでください。
② 抗てんかん薬を飲んでいる方:一部の薬は血中の葉酸を下げ、逆に葉酸が薬の効き目に影響することもあります[9]。USPSTFの推奨でも、特定の抗てんかん薬を使っている方は一般向けの推奨とは別に扱われています[8]。
③ メトトレキサートを使っている方:がん治療では葉酸が効果を弱める可能性がある一方、関節リウマチなどの低用量では副作用を減らすために葉酸を併用することがあります[9]。
④ ビタミンB12欠乏症や悪性貧血と言われている方:葉酸が貧血を改善して、B12不足による神経の障害に気づきにくくなるおそれがあります[9]。

これらに当てはまる方は、服用中の薬をかかりつけ医や主治医に伝えたうえで、葉酸の量を相談してください。薬を自己判断で中止することも危険です。とくに抗てんかん薬は、妊娠を考えた時点で主治医と薬の調整を含めて話し合っておくことが勧められます。

4. 葉酸を飲まなかった・飲み忘れた方へ

妊娠初期に葉酸を飲んでいなかったとしても、それだけで赤ちゃんに障害が起こると決まるわけではありません。「知らなかった」「気づいたときには妊娠していた」という方は少なくありません。日本では葉酸サプリを飲んでいる妊婦さんは1〜2割程度にとどまるとも報告されています(2016年時点)[3]。妊娠に気づいた時点から、現在の妊娠週数に応じた葉酸摂取と妊婦健診を続けることが重要です。

飲まなかった=障害ではない

葉酸はリスクを下げる大切な要素の一つですが、飲まなかったことがそのまま神経管閉鎖障害を意味するわけではありません。神経管閉鎖障害は、遺伝的な体質や環境など複数の要因が重なって起こる「多因子」の病気です。葉酸を飲んでいても起こることがあり、飲んでいなくても、ほとんどの赤ちゃんは神経管閉鎖障害なく生まれてきます[7]。

日本での神経管閉鎖障害の頻度については、いくつかの報告があります。厚生労働省の資料では、二分脊椎の頻度は出生1万人あたり3.10(1987〜1991年)から5.59(2007〜2011年)に増えたとされています[1]。また国内の総説では、2016〜2018年の神経管閉鎖障害の実際の頻度を出生1万人あたり7.93〜8.82と推計しています[4]。これらは集団全体の頻度で、一人ひとりの確率をそのまま表すものではありません。数え方や対象によって値も異なります。

気づいた今日から始めればよい

妊娠に気づいた時点で、今日から葉酸サプリを飲み始めてかまいません。神経管が閉じる時期(妊娠5〜6週ごろ)を過ぎていた場合、神経管閉鎖障害のリスク低減という目的で期待できる効果は限られますが、葉酸は赤血球をつくるのにも欠かせない栄養素です。妊娠中期・後期には、葉酸の推奨量に1日240μgが上乗せされており[2]、妊娠期間を通じて必要な栄養素であることに変わりはありません。葉酸が足りないときに起こりうることは葉酸不足のサインで解説しています。

飲み忘れても翌日に2倍量は飲まない

1日や2日飲み忘れても、次の日にまとめて2倍量を飲む必要はありません。飲み忘れに気づいたら、その日から普段どおり1日分を続けてください。まとめて飲むと、1日にとる量が増えて上限に近づくことになります[2]。大切なのは、飲み忘れた分を一度に取り返そうとせず、通常の摂取量に戻して継続することです。飲み忘れが多い方は、歯みがきや朝食など毎日の習慣とセットにすると続けやすくなります。

神経管閉鎖障害はいつ・どう分かるか

神経管閉鎖障害は、主に妊婦健診の超音波検査などで見つかります。病気の種類によって見つかる時期が異なるため、心配な点があれば妊婦健診を受けている医療機関で相談してください。病気の種類、見つかる時期、生まれた後の治療については、神経管閉鎖障害の解説で詳しくまとめています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「飲まなかった」と自分を責めないでほしい】

神経管閉鎖障害は、葉酸摂取の有無だけで決まる病気ではなく、遺伝的要因と環境要因が関与する多因子疾患と考えられています。葉酸を摂取していなかったことだけから、個々の妊娠における原因を特定することはできません。

妊娠に気づいた時点から推奨される葉酸摂取を開始し、通常の妊婦健診を受けることが基本です。神経管閉鎖障害の既往や家族歴など個別のリスク因子がある場合は、主治医や遺伝カウンセリングで相談してください。

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5. 葉酸サプリの選び方・飲み方

葉酸サプリは、1日400μgの葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)がとれる製品を選び、毎日続けることがいちばん大切です。飲み方について細かいルールを気にしすぎて続かなくなるより、無理なく毎日飲めるやり方を見つけることを優先しましょう。

飲むタイミングに決まりはない

葉酸サプリは、朝でも夜でも、食前でも食後でも、いつ飲んでもかまいません。空腹時のほうが体に利用される割合がやや高いとされていますが[9]、1日400μgを飲むうえで、タイミングによって予防効果が変わることを示した研究はありません。「就寝前に飲むと成長ホルモンの分泌を助ける」といった説明にも、医学的な根拠はありません。

1日分を分けて飲むことと、まとめて飲むことのどちらが神経管閉鎖障害の予防に優れるかを示す確立した根拠はありません。製品に記載された1日の目安量と使用方法に従い、継続しやすい方法で摂取してください。

飲み物については、水か白湯がいちばん無難です。緑茶や紅茶と一緒に葉酸0.4mgを飲むと、血中葉酸のピークが約4割下がったという小規模な研究があります[17]。ただしこれは茶に含まれるカテキン類などによる影響と考えられており、カフェインが原因と示されたわけではなく、コーヒーについてのデータもありません。お茶を飲む時間と少しずらす程度で十分です。

1日400μgを目安にし、ほかのサプリとの重複に注意

妊活中・妊娠初期は、サプリから1日400μgを目安にし、複数のサプリを飲むときは葉酸の合計量を確認しましょう。マルチビタミンや妊活サプリにも葉酸が含まれていることが多く、組み合わせると知らないうちに量が増えることがあります。

💡 葉酸サプリを選ぶときのチェックポイント

・1日分で葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)400μgがとれるか
・ほかに飲んでいるサプリと合わせて、上限量(18〜29歳900μg、30〜64歳1,000μg)を超えないか
・成分表示がはっきりしていて、必要以上に多くの成分が入っていないか
・毎日無理なく続けられる粒の大きさや数か

サプリはあくまで補助で、食事から葉酸をとることも大切です。葉酸を多く含む食品には、緑黄色野菜や豆類などがあります。具体的な食品と量は葉酸を多く含む食べ物で紹介しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 葉酸サプリを飲まないほうがいい人はいますか?

「飲んではいけない人」というより、「医師と相談して量を決めるべき人」がいます。神経管閉鎖障害の子を妊娠したことがある方や家族歴がある方、抗てんかん薬やメトトレキサートを使っている方、ビタミンB12欠乏症や悪性貧血と言われている方は、飲む前に主治医に相談してください。

Q2. 妊娠初期に葉酸を飲んでいなかったらどうなりますか?

飲んでいなかったことだけで、赤ちゃんに障害が起こると決まるわけではありません。神経管閉鎖障害は複数の要因で起こる病気で、飲んでいなくてもほとんどの赤ちゃんは問題なく生まれます。気づいた時点から飲み始め、妊婦健診をきちんと受けることが大切です。

Q3. 葉酸を2日飲み忘れたらどうすればいいですか?

次の日から普段どおり1日分を飲んでください。飲み忘れた分をまとめて2倍量飲む必要はありません。まとめて飲むと1日の量が増えて上限に近づくため、毎日続けることを優先しましょう。

Q4. 葉酸サプリで自閉症のリスクが上がるというのは本当ですか?

増えるという根拠はありません。大規模な観察研究では、妊娠初期に葉酸をとっていた母親の子どもで、自閉症のリスクがむしろ低い傾向が報告されています。ただし観察研究のため、葉酸で自閉症を予防できるとまでは言えません。

Q5. 葉酸サプリでダウン症は防げますか?

防げません。葉酸が減らすのは神経管閉鎖障害(二分脊椎や無脳症)で、ダウン症候群は21番染色体が1本多くなることで起こる、仕組みの違う病気です。ダウン症候群を妊娠中に調べる方法としてはNIPTなどの出生前検査があります。

Q6. 妊娠中期以降も葉酸サプリは必要ですか?

日本の食事摂取基準では、神経管閉鎖障害のリスク低減を目的とする400μgの付加は妊娠初期が対象です。妊娠中期・後期には食事由来の葉酸に1日240μgの付加量が設定されています。妊娠初期を過ぎたらサプリを必ず中止しなければならないという意味ではなく、使用する場合は他のサプリとの重複や含有量を確認してください。

Q7. 葉酸が不足するとどんなサインがありますか?

葉酸が不足すると、赤血球がうまくつくられず、貧血による疲れやすさ、息切れ、めまいなどが起こることがあります。ただし症状だけで葉酸不足かどうかは判断できないため、気になる場合は血液検査などで確認してください。

まとめ

葉酸サプリは「飲まないほうがいい」ものではなく、日本では、妊娠を考えている時期から妊娠初期に、食事に加えて通常の食品以外から1日400μgをとることが望まれているものです[1][2]。摂りすぎの上限はありますが、目安の量を守れば問題になりません。合成葉酸、添加物、自閉症、喘息、双子にまつわる噂は、いずれも「飲まないほうがいい」という結論を支える根拠になりません。一方で、ダウン症候群を防げるわけではありません。

神経管閉鎖障害の妊娠歴がある方や、抗てんかん薬などを使っている方は、医師と相談して量を決めてください。妊娠初期に葉酸を摂取していなかったことに気づいた場合も、それだけで神経管閉鎖障害が起こると決まるわけではありません。妊娠に気づいた時点から、妊娠週数に応じた葉酸摂取と妊婦健診を続けてください。葉酸の必要性については親記事もあわせてご覧ください。

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ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを行っています。神経管閉鎖障害の既往や家族歴、出生前検査について相談したい場合は、遺伝カウンセリングで、専門医に相談してみてください。

参考文献

  • [1] 厚生労働省. 葉酸とサプリメント-神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果. e-ヘルスネット. [厚生労働省 e-ヘルスネット]
  • [2] 厚生労働省. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書. 2024. [報告書PDF]
  • [3] 日本先天異常学会. 日本先天異常学会のメッセージ:葉酸サプリメントの摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクを減らしましょう. 2016. [日本先天異常学会]
  • [4] 近藤厚生, ほか. 葉酸による神経管閉鎖障害の予防:発生率,リスク因子,葉酸サプリメントの摂取,行政への要望. 日本周産期・新生児医学会雑誌. 2021;57(1):8-18. [J-STAGE]
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  • [18] 独立行政法人国民生活センター. 健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります-「医師からの事故情報受付窓口」から-. 2017年8月3日. [国民生活センター]

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プロフィール

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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